scp財団幻想録 彼の99回目   作:妖ヶ夢

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まだ主人公の能力が出てきてないから戦闘描写は乏しいですがそこは割愛してください。


4話 誰も許さず

  希望はない

              

               何回やり直した?

 

  こんな結末は許されない     

 

 

      覚えているのか?

 

 

緋色を宿している子

 

               なぜ生きている?

                   

   最愛を失った

 

           何回殺した?

 

   

 諦める事を考えるな

 

           お前に救うことは出来ない

  

 

       心を固めよケツイを漲らせろ

 

 

    

       「神に捧ぐは焔の舞い」

_____________________________________________

 

目覚めの瞬間、肌を伝う冷や汗の不快感で意識が覚醒した。文字通りの悪夢であった。

 

かつてSCPオブジェクトと呼ばれる、世界の理を外れた怪異や超常的存在と死線を潜り抜けてきた。その過酷な経験がもたらした後遺症なのか、あるいはそれ以前からの宿痾なのかは判然としない。いずれにせよ、悪夢というものは、決して面白いものではなかった。

 

「……はぁ。最悪の目覚めだな」

 

今日見た夢は、果てのない暗黒をただ一人で落下し続け、周囲から自分自身の声と、見知らぬ少女の不気味な囁きが幾重にも重なって響いてくるという、精神を摩耗させる内容であった。

 

いつもの溜息を吐き出しながら寝床を抜け、衣服を着替え、必要最低限の物資を詰めたバッグを背負って外へと踏み出す。

 

向かったのは、滞在先の近くにある大衆食堂であった。適当に安価な定食を注文する。厨房の手際が良いのか、注文からわずか二分ほどで料理が運ばれてきた。箸を動かしながら、自身の現状と今後の展望について思考を巡らせる。

 

昨日、この奇妙な土地での当面の働き口が決まった。これにより経済的な困窮からは脱却し、生活基盤は安定するはずである。しかし、客観的に考えて今後どれほどの資金が必要になるかは不透明だ。「いっそのこと、自分で店でも開こうか」という考えが脳裏をよぎる。

それと同時に、切実に欲しているのは「武器」であった。かつて財団の戦闘任務に就いていた頃、愛用していたのは刀とピストルである。近接と遠距離を補完し合うその組み合わせこそが、自身の戦闘スタイルに最も適合している。一刻も早く、信頼できる得物を手に入れたかった。

「ご馳走さま」

手早く食事を平らげ、代金を支払って店を出た。今日の目的地は、昨日行き損ねたという「博麗神社」である。

人間の里と呼ばれる区域を歩いていると、往来の住人たちから不躾な視線が突き刺さるのを感じた。それも無理はない。自身が着用しているのは「外の世界」の衣服であり、この閉鎖的な世界においては、奇異あるいは不審の目で見られるのは必然であった。

 

「明日、香霖堂へ行って、この土地に馴染む服でも買い求めるようかな……」

 

人里を離れ、鬱蒼とした街道を思考しながら歩くこと約三十分。目の前に視界が開け、広大な湖が姿を現した。その時、前方から青色の短髪を揺らし、背中に氷の結晶のような羽を生やした一人の少女が、突進してきた。

 

「そこのお前! あたいと勝負しろっ!!」

 

「ちょっと、待ってよチルノちゃん!」

 

背後から慌てて追いかけてくる、緑髪の羽を持つもう一人の少女。

 

直感した。またしても面倒な事態に巻き込まれたのだと。私は内心の辟易を押し殺し、努めて冷静に問いかけた。

「……俺に何か用がありますか?」

 

「す、すいません! 私たちは大妖精とチルノと言います。チルノちゃん、たまにこうやって見境なくなっちゃうんですよ!」

 

大妖精と名乗った少女が平謝りする傍らで、チルノと呼ばれた妖精は勝ち誇ったように人指し指を突きつけてくる。

「お前がルーミアを倒した奴だな! 最強のあたいが直々にやっつけてやる!」

まさか、先日やむを得ず撃退した妖怪ルーミアの一件が、早くも知れわたっているようだ、僕の勘はあたった

 

「ルーミアの仇はあたいが取る! スペルカード発動

――『アイシクルフォール』!」

 

「ちょっとチルノちゃん、やめてってば!!」

 

大妖精の悲痛な制止の声は、チルノには届いていない、私は内心で大妖精に御愁傷様と深い同情を寄せた。

 

だが、私にとってもこれは見過ごせない由々しき事態である。

 

直後、チルノの手から放たれた無数の氷の弾丸が、幾何学的な軌道を描いて空間を埋め尽くした。

 

「――常時発動。『確率論的回避」

 

ボソリと呟き、脳内の演算処理を戦闘モードへと移行させる。

 

この能力は、自身に迫る攻撃の軌道を確率論的に計算し、最小限の挙動で肉体を安全な座標へと滑り込ませる防衛術である。規則正しく、しかし圧倒的な質量で押し寄せる弾幕の嵐。その僅かな隙間を見出すべく、視線を鋭く走らせて反撃の機会を伺う。

 

凄まじい風切り音と共に、冷気を孕んだ結晶弾が衣服を掠め、肌に微かな擦り傷を作っていく。数発の被弾を許したものの、いずれも致命傷からは程遠い浅手だ。戦闘継続に何ら支障はない。

 

冷気の圧迫感に耐えながら、私は一歩、また一歩と、弾幕の起点であるチルノの懐へと確実に距離を詰めていく。

「そこだ……!」

 

弾幕の波形が一瞬途切れ、隙が生じたその刹那。私は爆発的な踏み込みで肉薄し、全体重を乗せた右拳を突き出した。

 

狙うは、共振現象を起こして使う技必殺の一撃

――「共振パンチ」である。

 

しかし、その拳が届く直前、チルノの驚異的な直感によって、二人の空間の間に分厚い氷の障壁が急速に形成された。

「まじか」

この技は、対象に直接接触して固有振動数を同調させることで、いかなる強者をも一撃で無力化し得る威力を誇る。しかし、威力を調整して共振現象を引き起こすという特性上、「障害物」の存在は致命的であった。

 

仮に氷の障壁に威力を適合させれば、共振現象は氷を粉砕するだけで霧散し、その先にあるチルノ本体には「ただの拳撃」程度の微弱な衝撃しか伝わらない。逆にチルノの肉体に適合させようとしても、手前の氷が物理的な緩衝材となり、結果として同様に威力を減衰させてしまう。

結果は明白であった。チルノを完全に戦闘不能(ノックアウト)にするだけのエネルギーは伝達されず、衝撃波が霧散する。

そればかりか、超硬度の氷を素手で殴りつけた反動が、私の右拳に激痛となって跳ね返ってきた。激しい鈍痛に顔をしかめる。

 

「やっぱり武器が必要だな。……メリケンサックのような打撃補助具も購入リストに入れてこうか。」

 

私は一度地を蹴り、後方へと跳躍して間合いをリセットした。仕切り直しである。

 

チルノは衝撃で後方へ一、二メートルほど吹き飛んだ。

 

一瞬だけ苦悶の表情を浮かべたものの、即座に体勢を立て直す。彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、不敵に宣言した。

 

「最強のあたいと互角にやり合うなんて、なかなかやるね! だけど、ここで終わりだよ! スペルカード発動――『パーフェクトフリーズ』!」

 

直後、先ほどとは比較にならない規模の、色鮮やかな光弾が全方位から展開された。

 

私は再び『確率論的回避』の演算を限界まで引き上げ、流れるように弾幕を躱していく。左右へのステップ、最小限の頭部の傾き。完璧な回避をしていた、その時だった。

 

「……何ッ!?」

 

空間を満たしていた色とりどりの光弾が、まるで時間が凍結したかのように、その場にピタリと静止した。

 

凝固する思考。それが何を意味するのかを理解する猶予など、戦場には存在しない。次の瞬間、新たに放たれた追撃の弾丸が視界を埋め尽くした。それを辛うじて回避した瞬間、背後や周囲に静止していた「凍った弾丸」が、不規則(ランダム)かつ爆発的な速度で一斉に軌道を変えて襲いかかってきた。

 

「くっ……!」

気づいた時には、すでに回避不能な死角を突かれていた。強烈な衝撃と共に、三発の光弾が脇腹と肩に直撃する。鋭い痛みが走る。

チルノはそのまま、ランダムな弾幕を連射し続けた。規則性のない混沌とした攻撃。これでは回避の演算が追いつかず、反撃の隙が一切見出せない。

 

「このまま削られ続ければ、ジリ貧で敗北するな……」

 

私は覚悟を決め、財団時代にも滅多に使用しなかった、量子指弾を発動した。

 

チルノの周囲の空間へと数発の弾丸を撃ち込んだ。

 

これは殺傷が目的ではない。敵の行動を制限するための「誘導(リーディング)」である。

 

突如として周囲の空間が爆縮を起こし、退路を断たれたチルノの動きが一瞬だけ硬直した。

 

「しまっ――」

「そこだ」

 

その静止の瞬間を、私は見逃さなかった。

冷気の嵐を強引に突き破り、全速力でチルノの懐へと肉薄する。驚愕に目を見開く彼女の視界に、私の右手が滑り込んだ。

 

鍛え上げられた鋭い「手刀」が、チルノの頸椎の急所へと正確無比に叩き込まれる。

 

ドン、と鈍い音が響き、チルノの意識は一瞬で刈り取られた。彼女はそのまま力なく地面へと崩れ落ち、完全な昏睡状態に陥った。

「ふぅ……。やれやれ、意外と手こずったな」

私は荒い呼吸を整えながら、痛む右拳と脇腹を押さえた。

 

傍らでは、大妖精が文字通り口をあんぐりと開けたまま、石のように硬直してこちらを見つめていた。チルノが、人間の格闘術によって正面から捩じ伏せられた光景が、よほど信じがたいのだろう。

私は彼女に向けて、苦笑いを浮かべながら声をかけた。

「色々と大変そうですが、頑張ってくださいね。……それじゃ、俺はもう行きますから」

気まずい空気に耐えかねて、私はその場を後にした。

歩きながら、身体に残留する冷気とダメージを排除するため、自己治癒技術である元素攻法を発動する。傷口を急速に塞いでいく。

気がつけば、当初の予定よりも大幅に時間をロスしてしまっていた。私は博麗神社への遅れを取り戻すように、鬱蒼とした森の参道を、速度を上げて駆け抜けていった。

 

 

 




次で主人公の能力が判明します。

           出典

著者: Kwana
タイトル: SCP-710-JP-J - 財団神拳
URL: http://scp-jp.wikidot.com/scp-710-jp-j
作成年: 2014

著者: sakagami
タイトル: INTRODUCTION OF 財団神拳
URL: http://scp-jp.wikidot.com/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
作成年: 2016
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