scp財団幻想録 彼の99回目   作:妖ヶ夢

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『それはまるで最悪な終焉のような』


5話『それはまるで最悪な終焉のような』

 

 見上げるほどに高く、そしてどこまでも続いているかのような、果てしない石段が目の前に立ちはだかっていた。

 

「はぁ……はぁ……、嘘だろ、これを登るのか……?」

 

 僕は博麗神社の階段下で、思わず天を仰いで絶望の溜息を漏らした。ここまでずっと走ってきたのだ。足の筋肉はすでに限界を迎えている。

 

「……よし、あと、もうちょっとだ。気合を入れろ、自分……!」

 

 声に出して自分を鼓舞し、震える膝を力ずくで動かす。一段、また一段と、重い足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

男性移動中...

 

 

 

 

 

 

 

登りきった先には、どこか厳かで、しかしどこか寂れた雰囲気を漂わせる神社が佇んでいた。

 

 日本人なら誰でも見慣れた、大きな鈴。そして、その真下に鎮座する木製の“賽銭箱”。

 

 それらを目にした瞬間、僕の脳裏に、ここへ来る途中の情報収集で立ち寄った、お団子屋さんの店主である「鈴瑚」の言葉が鮮烈に蘇ってきた。

 

『霊夢さんは現金なので合ったときはなるべく神社にお賽銭をした方がいいです。多めに』

 

 ――巫女が現金だなんて、普通は想像がつかない。どんなに欲深くても、普通の巫女なら宗教的な建前やプライドがあって、少しは取り繕うものだろう。だが、鈴瑚がわざわざ念を押すように忠告してきたのだ。ただ事ではない。

 

「……まぁ、あそこまで言われたんだ。ここは出し惜しみする場面じゃないよな」

 

 僕は財布を開き、少しの躊躇と後悔を覚えながらも、思い切って一万円札が一枚と、五百円玉を一枚、指先でつまみ出した。さらば1万円と500円!!覚悟を決めて賽銭箱の隙間へと滑り込ませる。

 

「チャリン――」

 五百円玉が立てた硬質な音が、誰もいない静まり返った境内に、驚くほど綺麗に響き渡った。一万円札は音もなく吸い込まれていく。

 

 ――その、次の瞬間だった。

 

「ゴトン!!」

 

 

背後の本殿の扉が激しく開き、中から頭に大きな赤いリボンを付けた、独特な袖の無い巫女服を着た少女が猛烈な勢いで飛び出してきた。

 

「あなた! 今、何円、賽銭箱に入れたの!?」

 

少女は血相を変えて僕に詰め寄ってきた。あまりの迫力に圧倒されながらも、僕は素直に答える。

 

「一万五百円ほど入れまし――」

 

「ちょっとそこどいて!!」

 

彼女は僕の言葉を最後まで聞くことなく、強あろうことか賽銭箱の中へ思いっきり顔を突っ込んだのだ。

 

……本当にここまで露骨で現金な人間だったとは。言葉を失って呆然とする僕を余所に、彼女は箱の底から一万円札を引っ張り出し、太陽の光を顔にあてながら満面の笑みを浮かべた。

 

「一万円……! 本物の一万円札! あなた、なんて良い人なの!!」

 

さっきまでの険しい表情が嘘のように、彼女は目を輝かせて僕を大絶賛し始めた。現金すぎる対応に苦笑しつつも、僕は本来の目的を果たすべく、切り替えた。

 

「お喜びのところ大変恐縮ですが、それよりも言いたいことがあるんです。私はこの世界の人間ではない、外来人です。」

 

「へぇ、外来人? 最近妙に多いわね、結界が緩んでるのかしら。それで? どうせ元の世界に帰りたいって泣きついてくるんでしょ?」

 

「いえ、元から帰る気はありません。僕はただ、この世界のことを知りたくてここに来ました。それと、道中で目撃した、妖怪や妖精たちが使っているあの不思議なエネルギーの弾……あれの事を、僕にも教えてくれませんか?」

 

「ふーん、変わった奴ね。あ、別にそんな堅苦しい敬語じゃなくて良いわよ。それに一万円もの大金を貰った恩もあるし、そのくらいなら教えてあげる。それと私の名前は博麗霊夢。この博麗神社の巫女よ」

 

「分かりました。敬語は出来るようになったらします。」

 

霊夢は一万円札を大事そうに懐にしまいながら、フランクに話を続けた。

 

「まず、あなたが迷い込んだこの世界は『幻想郷』と言われる場所よ。人間だけじゃなくて、妖精、妖怪、幽霊、それに神様だっているわ」

 

(やっぱり、元の世界の報告書に書いていなかっただけで、ここには神様も実在しているんだな……)

 

僕は心の中で静かに驚き、その言葉を頭の片隅に置いた

 

「あと、あなたが言っていた不思議なエネルギーの弾だけど、あれはこっちでは『弾幕』って呼ばれているわ。そして、その弾幕を使った決闘のことを『弾幕ごっこ』って言うのよ。これはね、ある絶対的な決まり……『スペルカードルール』に則って行われているの。」

 

「スペルカードルール……ですか?」

 

 初めて聞く単語に僕が首を傾げると、霊夢は人差し指を立てて、少し得意げに説明を始めた。

 

「そう。一言で言えば『誰も死なない、怪我をしないための、美しさを競う模擬戦のルール』よ。昔の幻想郷は、妖怪が人間を襲って、人間がそれを退治するっていう殺し合いが日常茶飯事だったの。でも、それだとお互いに消耗するし、万が一どっちかが全滅したら、この世界のバランスが崩れて幻想郷自体が消えてしまうでしょ? だから、誰かがこのルールを作ったのよ。」

 

霊夢は言葉を区切り、神社の境内の空を見上げた。

 

「ルールの中身は簡単よ。まず、自分が使う技に名前を付けて、それを『スペルカード』という紙の札に登録するの。戦う前に、お互いが持っているカードの枚数を提示し合って、その枚数分の技を出し尽くすか、先に体力が尽きた方が負け。そして何より重要なのは、攻撃する側は絶対に『回避できる隙間』を作って弾幕を放たなきゃいけないってこと。どんなに強力な魔法や妖力を使っても、相手が実力で避けられる余地を残さないと反則負けになるわ。」

 

彼女の説明を聞いて、僕は目から鱗が落ちるような衝撃を受けた。

 

「つまり……力任せの殺し合いだけではなく、どれだけ綺麗で、洗練された弾幕を展開できるか競うと言うことですか?」

 

「察しがいいじゃない。そう、これは殺し合いじゃなくて遊びであり、一種のスポーツみたいなものよ。これによって、負けた側も不満を残さず、お互いにすっきり終われる。これは共存の為の知恵なのよ知恵。」

 

共存を可能にする知恵。僕は目の前の、現金と思っていた霊夢に対する見方を完全に改めた。

 

「スペルカードルールのことはよく分かりました。本当に素晴らしい仕組みですね。」 

 

「もっと褒めてもいいのよ。あともう一枚1万円札をくれたりとか。あとあなた何者?霊力、妖力、神力を持っているじゃない普通の人間じゃあり得ないわよ。あなたがいいのなら私が弾幕を教えてあげてもいいわよ。」

 

教えて貰おうか少々迷ったがこれは任務少しでも戦う術は増やしておいた方がいいだろう。

 

「もうお金は残ってませんよ。あと霊力、妖力、神力って何の事ですか?」

 

「簡単に言えば霊力は人間の巫女などが持っている力で妖力は妖怪の持っている力、神力は神が持っている力と言うべきね。人間は普通妖力と神力を持っていないのになぜかしら?」

 

「ありがとうございます、まぁとりあえず弾幕を教しえてくれませんか?」

 

「まぁいいわよ。あなた弾幕をすぐ習得出来るって博霊の勘が言ってるもの。あと敬語本当に止められない?堅苦しくってありゃしないんだけど。幻想郷のみんなそんな感じよため口に慣れときなさい。」 

 

「まぁ職業柄敬語しか使ってないので難しいですかね。」

 

 

 

 

 

その時ロシア某所の地下深く...

 

冷たい電子音だけが響く薄暗い監視室壁一面の大型モニターが、男たちの顔を青白く不気味に照らし出していた。画面に映っているのは、財団の最高機密データベースから不正にハッキングされ、引き出されたデータ。

 

そこには、戦術神学部門のトップを務める男「高柳昇」の顔写真と、詳細な個人プロファイルが表示されていた。

 

「あぁ、その通りだ。あそこを支配下に置くことができれば、我々はとてつもない戦力を手に入れることになるだろうな……」

 

一人の男が、画面を見つめながら低く、確信を込めた声で呟いた。もう一人の男が、椅子の背もたれに深く寄りかかりながら、冷酷な笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「計画通りに事が進みさえすれば、何の問題もない。ただ、計算を狂わせる危険因子が一つだけある。それがこの『高柳昇』だ。奴はいわゆる、本物の才能の原石。もし奴がこちらの動きを察知し、妨害を仕掛けてきた場合、こちらの勝率は五分五分といったところだろうな。だが、見方を変えれば、ここで奴を確実に殺害することができれば、財団側が被る損失は計り知れないものになるはずだ。」

 

男たちは、高柳の経歴をスクロールしながら、その実績を見て警戒しつつも、冷徹にその排除方法を模索していた。

 

「それにしても、最高幹部であるO5も本当に馬鹿だな。戦術神学部門のトップという重要人物を、あんな危険な空間に直接送り込むなんて、正気の沙汰とは思えない。セキュリティもガバガバだ。かつて自分が昔、あんな組織に身を置いていたと思うと尚更、財団を捨ててここに来て本当に良かったと心から思うよ。しかも■■■は素晴らしい財団にも■■■の救済を分けてやろう!」

 

男は自嘲気味な言葉と■■■に対しての称賛をしているそれは彼の大切なナニカだ、それが彼に何の影響を及ぼしている神をも殺す『それはまるで最悪の終焉ような』

 

影の中に佇むもう一人の男が、満足そうに深く頷いた。

 

「良かったな。俺たちは財団の体制にガッカリし、絶望した人間なら誰であっても受け入れる。そして、傲慢な財団を徹底的に打倒する。それこそが我々『カオス・インサージェンシー』のあり方であり、果たすべき絶対的な使命なのだから。確かにそうだな財団もまだ変われる■■■による救済を分けてやろう!」

 

静かな狂気と決意を孕んだ男たちの会話は、高柳へその狂気が放たれた事を意味していた。




■■■は何者何でしょう『それはまるで最悪な終焉のような』
あと最初のプロフィールはこれの3年後のプロフィールなので高柳の幻想入りして手に入れた能力はまだプロフィールに書かれていません。



カオス・インサージェンシーハブ
(記録用:Chaos Insurgency Hub)

著者:TwistedGears

URL:http://scp-jp.wikidot.com/old:chaos-insurgency-hub

作成年:2014年


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