【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww 作:車検のコダック
【先生視点】
カイザーPMC理事の引き連れた圧倒的な物量によって蹂躙されかけたアビドス。
しかしその絶望的な包囲網は、突如として戦場に舞い降りた『便利屋68』と、彼女たちが引き連れてきた正体不明の精鋭部隊の加勢により完全に瓦解した。
予期せぬ強力な第三勢力の介入とアビドス対策委員会の猛攻で、先生たちはなんとかカイザーPMC理事を撤退させることができたのである。
ひとまず、学校は守られた。
だが、勝利の喜びに浸る余裕など無い。
小鳥遊ホシノを取り返さなくてはならないのだ。
先生は彼女との会話から、今回の事件の裏に居る人物――黒服との接触に成功した。
『――彼女は自らの意志でここへ来ました。届け出の提出もされているはずです。ホシノはもう、アビドスの生徒ではありません』
暗い雑居ビルの一室。
黒服と対峙した先生は彼の言葉に対し言った。
『”私がまだ、許可していない”』
連邦生徒会長から超法規的権限を付与された『シャーレの先生』。
彼は現在、アビドス廃校対策委員会の顧問であるのだ。
『先生』の認可がなければ受理されない――。
先生の反論に黒服は少し驚いたような素振りを見せた後、愉快そうに納得を返してきた。
『クックック……なるほど。『先生』という『記号』はなかなか厄介なようだ……。
いいでしょう、ホシノは諦めることとします』
代わりに黒服が所属する『ゲマトリア』なる組織に勧誘される等、問答はあったものの。
彼はあっさりと引き下がり、そしてホシノが監禁されている場所を告げた。
――アビドス自治区の砂漠に建設された、カイザーPMC基地。
その最深部である地下施設こそが、彼らの目的地であった。
だが、敵はあまりにも強大である。
先日のアビドス襲撃の規模から考えても、本拠地である基地にはあれ以上の戦力が敷かれていることは想像に難くない。
アビドスだけでは、到底相手にするのは不可能。
戦いが成立するだけの戦力が必要だ。
そう考えた先生は翌日、キヴォトスでもトップクラスに巨大な二校――ゲヘナとトリニティに向かった。
まずは、ゲヘナ学園。
風紀委員会の切り込み隊長であるイオリと一悶着(足舐め妖怪爆誕)はあったものの、トップである空崎ヒナとの接触に成功した。
ヒナはアビドスの背後で蠢くカイザーの不穏な動きを認識し、忠告していた。
彼女は先生の事情を聞き入れると、ゲヘナとして力を貸すことを約束してくれたのだった。
そして次に向かったのが、トリニティ総合学園である。
(”ここからが問題だ……”)
校門を入ってすぐ。
トリニティ総合学園の歴史と気品を感じさせる広場を前に、先生は途方に暮れていた。
ゲヘナと違い、先生はトリニティのトップである生徒会『ティーパーティー』の面々と個人的な面識が一切なかったのである。
『先生』という役職と身分証明があったことで敷地には入れたが、組織のトップに突然面会などできるわけもない。
(”ハスミに連絡してみるとか……?”)
どうしたものかと思案しながら広場を歩いていると、不意に聞き覚えのある声が先生の鼓膜を揺らす。
「あ、先生!!どうされたんですか?」
声に反応して振り返ると、そこには見覚えのあるリュックを揺らす少女――阿慈谷ヒフミが立っていた。
”ヒフミ!無事だったんだね”
アビドスで「本物のファウストに消されたのではないか」と散々心配されていた彼女だったが、シロコへの返信通りピンピンしているようで安心した。
「えっ、私また命の危険に!?」
”いや、こっちの話だから大丈夫だよ”
「そ、そうですか……?」
首を傾げるヒフミに、先生はトリニティを訪れた事情を簡潔に説明した。
「……なるほど、ホシノさんが。それは大変ですね……。私にできることがあれば、言ってくださいね!」
”助かるよ。……早速で悪いんだけど、ティーパーティーに面会したいんだ。でも面識がなくてね”
「ティーパーティーですか? それなら私が少しだけ面識があるので、お取り次ぎできるか聞いてみましょうか?」
”本当? ありがとう!”
まさに渡りに船だった。
彼女の言う「少しの面識」がどの程度のものかはわからなかったが、ヒフミが連絡を取ってくれたおかげで事態は驚くほどスムーズに進んだ。
……少しの面識で取次できるものなのかは、置いておくとしよう。
数十分後。
先生はヒフミの案内でティーパーティーのホストを務める桐藤ナギサが待つ執務室へと通されていた。
「……よくいらっしゃいました、シャーレの先生。ティーパーティーへようこそ」
優雅な調度品に囲まれた、トリニティの権威を象徴するような内装。
円卓の席についたナギサは、上品な微笑みを浮かべて先生たちを迎え入れた。
のだが、その表情には隠しきれない深い疲労の色が濃く滲んでいた。
目の下には薄っすらと隈ができており、カップの紅茶を口に運ぶ所作もどこかたどたどしい。
”初めまして、桐藤ナギサさん。……その、大丈夫?”
その様子に思わず先生が気遣いの言葉を掛けると、ナギサは小さくため息をつきカップをソーサーに置いた。
「ええ、はい……。お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。このような顔色では説得力がないかもしれませんが……。
ともかく、事は一刻を争うようですので先生の用件を伺いましょう」
ナギサに促され現在アビドスが置かれている状況と、カイザーPMCの基地へ強襲をかけるために戦力を貸してほしい旨を、単刀直入に伝えた。
静かに耳を傾けていたナギサは、ふむ、と目を伏せる。
「……本来であれば、他自治区の揉め事にトリニティの武力を介入させるのは非常に難しい判断です。私も現在、エデン条約……の件で目が回るほど忙しい身ですから」
そこまで言って、ナギサはスッと鋭い視線を私に向けた。
「ですが。……相手が『カイザー』となれば、話は別です」
”カイザーと、何かあったの?”
先生の問いにナギサはこめかみを指で揉みながら、忌々しげに口を開いた。
「先生ならば、すでに耳にしているかもしれません。……現在、ブラックマーケットにおいて『トリニティの生徒がファウストを騙って銀行強盗を行った』という噂が流布されているのです」
”!?”
その言葉に、先生の心臓は跳ね上がった。
どこかで聞いた話どころではない。
その銀行強盗の現場には、先生もいたのである。
「その噂のせいで、ファウストがトップを務める『ゲーテ』から、我がトリニティに対して定期的に『ニセモノは見つかったのか』『早く引き渡せ』という強烈な催促と圧力がかけられているのです。おかげで、連日その対応と調査に追われておりまして……」
(”それでこんなに疲れているのか……”)
先生は思わず、隣に座っているヒフミへとそっと視線を向けた。
ヒフミは、居心地が悪そうに視線を泳がせながら、「あはは……」と引き攣った笑みを先生に向ける。
先生は背中の冷や汗を感じながら、元凶が取次してる……とツッコミを入れたくなる気持ちをグッと抑えた。
気まずい空気が流れていると、ナギサはふっと表情を和らげた。
「ですが、幸いなことに……先ほど我が校が放っていた調査部隊から、『その噂はカイザーPMCによる自演、あるいは情報操作である』という証拠が見つかったと報告が上がってきたのです」
”……えっと、つまり?”
「つまり、トリニティを陥れ、ゲーテとの対立を煽っていた首謀者はカイザーだったということです。他にも色々と、違法行為が判明してますし……。
……ですので、先生の提案は我々にとっても『ちょうどよかった』ということになりますね」
ナギサは立ち上がると、優雅に一礼した。
「『先生』は、権限によってある程度法律を無視できると聞きました。であれば、先生の要請ということで政治的配慮も考える必要がなくなります。
私兵……そうですね、砲兵隊も動かしましょうか」
こうして先生は、思いがけずトリニティからも兵力を貸してもらうことに成功したのだった。
ナギサに感謝を伝え、ティーパーティーの建物を後にした先生とヒフミ。
「よかったですね、先生! これでホシノさんを助けに行けます!」
先生に向けて、ヒフミが嬉しそうに声を掛けた。
”ヒフミが取り次いでくれたおかげだよ。ありがとう”
「いえいえ、そんな!」
”……”
――出来すぎていないか?
先生はお礼を口にしながらも、妙な『違和感』を感じていた。
脳内で、これまでの出来事がズラリと並んでいく。
自分が戦力を求めてトリニティを訪れた、まさにこの完璧なタイミングで『カイザーとトリニティが対立する理由(証拠)』が都合よく発見されるなどということが、あり得るのだろうか。
(”おかしいことはまだある”)
銀行強盗の時、なぜマーケットガードは諦めたのだろう。
ヒフミが語っていた点から考えるとマーケットガードはインフラであり、管理はゲーテがしているはずである。
そんな彼らが、自組織のトップを騙る存在を包囲するわけでもなくマーケットを出た途端に追わなくなったのはなぜだろう。
アビドスに侵攻してきたカイザーPMC理事は言った。
「ゲーテの襲撃を警戒して、あれだけの軍隊を用意した」と。
つまり、カイザーは即座に襲撃されかねない状況にあったということだ。
あれは銀行強盗の件からカイザーに不利益が生じ、動かざるを得なくなった証明ではないのか。
――これがもし。
もし、あの時彼女が被った紙袋がただの『変装』ではなく。
彼女自身が、本当にそうだったのなら――。
(”いや、考えすぎかな。まさか、この優しい子がそんなはず……”)
そう、反論はいくらでもできるのだ。
ヒフミが捕まっていないのはファウストが策として利用しているからだとか。
それにカイザーPMC理事の発言の裏側など、もはや妄想に近い産物だろう。
先生は小さく頭を振り、その途方もない仮説を打ち消そうとした。
だが。
学園の敷地外へ続く正門が近づいてきた時、先生の脳裏にはホシノの諦観に満ちた顔が蘇る。
『私が、何とかするから!どんな手段を使ってでも、絶対に!! 』
あの時彼女に、そう約束したのだ。
どんなことでもしなければ。
相手は、巨大な軍事企業だ。
あの物量を考えたら、基地にはあれ以上の軍隊が待ち構えていることは間違いない。
そう考えると、ヒナたちやナギサの貸してくれる兵力であっても油断はできなかった。
まだ、できることがある。
(”――言葉の責任は、取らないとね”)
先生は覚悟を目に宿し、立ち止まった。
「先生、どうかしましたか?」
立ち止まったことに気が付いたヒフミが数歩先で立ち止まる。
ふと、逆風が吹いた。
先生は唾を飲み込み、口を開く。
”ヒフミ”
”――いえ、『ファウスト』さん”
”どうか、私に力を貸してほしい”
その言葉にヒフミは、わずかに口角を吊り上げた。
ナギサ様「ファウストの策かもとかどうでもいいので、はやく終わらせてください……」
先生が60人近い人数を指揮する光景が全く浮かばなくて、戦闘描写断念したんだよね。
できるんやろか、実際。