【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

14 / 14
理事死すッッ

【カイザーPMC理事視点】

 

 砂にまみれたコンクリートの上に降り立った少女。

 スーツに紙袋を被った奇妙な出で立ちはまさしく――。

 

「ファウスト……ッ!!」

 

 ただそこに在るだけで意識せざるを得ない威圧感。

 カイザーPMC理事は呻くように、その名前を口にした。

 

「……ファウスト様。どういたしますか?」

 

 ファウストの側に控えていた部下が彼女に声を掛けてくる。

 

「……私だけで大丈夫ですよ」

 

 手出しは無用。

 その意思を即座に把握した部下は、音もなく後ろに下がっていく。

 

 その光景を見下ろしていた理事は、ゴリアテのコックピットの中でギチリと拳を握りしめた。

 

 裏社会の支配者が、なぜ表の世界であるこのアビドスの戦場に堂々と姿を現したのか――。

 

 理事の疑問への答えは、彼女の口からあっさりと明かされた。

 

「なぜここに、でしたか?……先生の超法規的権限ですよ」

 

 ポツリと、ただそれだけを。

 しかし。

 その一言を聞いた瞬間、理事は合点がいったとばかりに声を上げる。

 

「そういう、ことか……!」

 

 その声には恐れ、怒り、様々な感情が入り混じっていた。

 

 連邦生徒会長の代理人であるシャーレの先生。

 その『超法規的権限』による正式な協力要請。

 

 それこそが裏社会に縛られていたはずのゲーテの武力が表舞台に姿を現せる『大義名分』だったのだ。

 

(ファウスト……貴様、やはりすべて計算の内というわけか!!)

 

 沈黙が戦場を包む。

 誰もが、その行方を見守っていた。

 

 やがて。

 

「……フ、フフ……フハハハハハハハッ!!」

 

 ゴリアテのスピーカーから、理性の糸が切れたような狂気を感じさせる高笑いが響き渡る。

 

「――いいだろう、ファウスト!!好都合ではないか!いずれは貴様を倒す必要があったッ!!

 ならば今ここで、消えてもらおうッ!!」

 

 理事が叫ぶと同時。

 ゴリアテの右肩に搭載された戦車砲がファウストに向けて火を噴いた。

 

 一瞬の閃光に続き、轟音が響く。

 誰かが止める暇も警告を発する暇もなかった。

 あれは間違いなく直撃だろう――。

 

 ファウストが立っていた場所は凄まじい爆炎と砂埃に包まれ、コンクリートの破片があたりに降り注ぐ。

 

「ああっ!?」

 

 誰かが悲鳴のような声を上げ、全員が思わず息を呑んだ。

 

 戦車砲の威力はその場にいる人間すべてが知っていた。

 ヘイローがあるとはいえ生身の人間が、あれを受けて無事とは思えない。

 

 結果は火を見るよりも明らかだろう。

 

「呆気ないなファウスト!檻に閉じ込められて牙を抜かれたか!?」

 

 勝利を確信した理事は、高らかに声を上げた。

 

 だが。

 

「――ゴリアテ、でしたか?すごい威力ですね……」

 

 立ち込める黒煙を澄んだ声が切り裂く。

 

 そうだ。

 その程度で勝てるような存在が、ブラックマーケットに君臨できるわけがない。

 

 煙が風に流され晴れていくその場所には、先ほどと全く変わらぬ姿勢で立つ紙袋の少女の姿があった。

 

 当然血など流していない。

 それどころか彼女が身に纏うスーツはおろか、紙袋にすら損傷は見受けられなかったのである。

 

「な、なんっ……無傷だと……!?」

 

 コックピットに表示されたものを前に、理事は思わず目を剥いた。

 

 カメラの不具合ではないか。

 それを疑うもエラーはどこにも見受けられず、ゆえにそれが現実であることを理事に突き付ける。

 

 もちろん理事とて本気で倒せたなどとは思っていない。

 

(だが服にすら傷一つ無いとはどういうカラクリだ!!これもファウストの罠か!?)

 

 当然そんなわけはないのだが、思わずそう考えてしまうくらいに理事にとってこの結果は想定外のものであった。

 

 呆然とする先生たちを視界の端に捉えたファウストは、静かに声を掛ける。

 

「先生、ここは私に任せてください。彼に少しばかり用事があるので……」

 

”……ファウストさん”

 

 先生が何かを言いかけ、その名を呼んだと同時。

 地響きのようなエンジン音とともに、基地の四方八方から漆黒の重装甲車が次々となだれ込んできた。

 

 車列から溢れ出たのは一糸乱れぬ動きを見せる武装した兵士たち。

 

 見覚えのあるロゴ。

 理事は瞬時に、それがゲーテの私兵であることを理解した。

 

「――まさか、時間稼ぎか!?」

 

 また、ファウストの策に嵌まっていたというのか!

 奴がわざわざ正面で会話を投げかけたのは、自軍の到着を待つためであったのだ!!

 

 しかし思い至れど理事が指示を出す暇もなく。

 彼らゲーテの兵士は瞬く間に展開し、残存していたカイザーの傭兵やオートマタたちを圧倒的な武力で制圧し始める。

 

 そしてその光景をみて納得したのか、先生は頷きを返していた。

 

”わかった。ありがとう”

 

 先生は踵を返し、セリカやシロコたち対策委員会の面々に指示を飛ばす。

 

”みんな、今のうちに!!”

 

「はいっ!」

「ん」

「ええ!」

 

 先生とアビドスの生徒たちが、基地の奥へと駆け出していく。

 残されたアルたち便利屋68にも、ファウストは顔を向けた。

 

「便利屋の皆さんも、少し離れていてくださいね?」

 

「わ、わかったわ……!」

 

 アルはコクコクと頷き、ムツキたちの腕を引っ張って慌てて安全圏へと後退していった。

 

 彼女たちの目にも、目の前の少女がヒナと同類の『バケモノ』であることが理解できたのだろう。

 

 広大な基地の中心部。

 残されたのは鋼鉄の怪物『ゴリアテ』と、裏社会の支配者『ファウスト』のみ。

 

 ファウストは理事の乗るゴリアテに向かってゆっくりと、それこそ散歩でもしているかのような速度で歩みを進める。

 

「まずは……そうですね。『カイザーローン』には消えてもらうことになりました」

 

 ザッ、ザッ、とファウストの履く革靴が音を立てる。

 

「もし、あなたたちが表で取引を行っていれば『こう』はならなかったのですが……」

 

「ふざけるな!貴様の命令一つで『表』にあるカイザーローンが消えるものか!!」

 

 理事が怒鳴るが、ファウストの歩みは止まらない。

 

「あと、このPMCですけど……。こちらも今日で終わりですね?」

 

 ファウストは紙袋をわずかに傾け、まるで世間話でもするような口調で付け加えた。

 

「『先生』の、指示ですから」

 

「白々しいッ!!貴様が!全て貴様が仕組んだことだろうが!!」

 

 理事が血を吐くような声で叫んだ。

 

「偶然です」

 

 ファウストは、クスリと冷たく笑う。

 

「まさか『超人』が選んだ存在である『先生』を、私のような『普通の生徒』が都合よく動かせるわけないじゃないですか」

 

「このッ、化け物がぁぁぁぁっ!!」

 

 馬鹿にされている。

 恐怖と屈辱で完全に我を忘れた理事は、ゴリアテの全火器のトリガーを引いた。

 

 両腕のガトリング砲が毎秒数百発の弾丸を吐き出し、背部のミサイルポッドからは無数の小型ミサイルがすべてを消し去らんと降り注ぐ。

 

 戦場は、再び轟音と爆炎の地獄と化した。

 

 だがその豪雨をファウストは全くペースを崩すことなく、ただ真っ直ぐに歩き続けていた。

 

 ミサイルの爆発が彼女の足元を抉っても、徹甲弾が彼女の身体を掠めても、まるで当たっていないかのように一切のダメージが通らない。

 

 彼女からすれば、まさに雨程度の刺激でしかないのだろう。

 

 どれほどの火力を叩き込んでも、彼女の歩みを止めることはできない。

 ゴリアテの巨大な体積が遠近感を狂わせるが、それでも両者の距離はもう数メートルまで迫っていた。

 

「チィィィィッ!! 弾が効かぬのなら!!」

 

 カイザー理事は舌打ちをし、ゴリアテのシステムを操作した。

 

 ガシャンッ!と重たい金属音を立て、弾薬を撃ち尽くした両腕の巨大な銃身と肩の戦車砲のパージ機構が作動し、重武装が次々とその場に捨てられていく。

 

 理事は効果がない遠距離兵器を捨て、己の巨大な質量と出力を活かした『肉弾戦』に出ることを選択したのだ。

 

 重装甲と火器を切り離し、劇的に軽くなったゴリアテ。

 理事は背面に取り付けられたブースターを全力で吹かした。

 

 ――ゴアァァッッッッッ!!

 

 鋼の巨体が、残された数メートルの距離を一瞬で踏破する。

 

「死ねぇぇぇっ、ファウストォォォ!!」

 

 理事が操縦桿を力任せに押し込んだ。

 巨大な鋼鉄の拳が、質量という不変の破壊力をもってファウストの頭上へと振り下ろされる。

 

 ――ドゴンッ!!!

 

 瞬間、地殻を砕くような凄まじい轟音が辺りに響き渡った。

 

 周囲の砂塵が吹き飛び、クレーターのような窪みが形成され――。

 

 ――ゴトン、と。

 何かが、コンクリートの上に重々しく落ちる音が続いた。

 

「……は?」

 

 理事が、間抜けな声を漏らす。

 同時にゴリアテの巨体は大きくバランスを崩しよろめいた。

 

 理事が慌てて操縦桿を引き、無理やり機体の姿勢を立て直す。

 

 砂煙が晴れた先。

 そこにはゴリアテ渾身の一撃を正面から受けたはずのファウストは、やはり無傷のまま立っていた。

 

 彼女の右手には武骨な拳銃が一丁握られており、その銃口からは細い硝煙がゆらゆらと立ち昇っている。

 

「な、なにが……!?」

 

 理事がモニター越しに自分の機体の状態を確認した瞬間、その心臓が鷲掴みにされたような錯覚を覚える。

 

 ゴリアテの右腕が、ない。

 

 先ほどファウストを粉砕しようと振り下ろしたはずの鉄槌は肩の関節部分から消滅し、抉られたような跡だけが残っていた。

 

 目線を下に向けると、肘から先のひしゃげた残骸が転がっている。

 

(あれでやったというのか!?拳銃だぞ!?それも、見たところ9㎜程度しかない……!)

 

 それはつまり、カイザーの決戦兵器はファウストの拳銃に劣るという現実であった。

 

 物理法則も兵器のスペックも、彼女の前では何の役にも立たない。

 驚愕と恐怖で完全に硬直した理事をよそに、ファウストは銃口を向けたまま語りだした。

 

「……『神秘』、というそうです」

 

「は……?」

 

「なんでも、キヴォトスにはそういうエネルギーがあるんだとか。ヘイローもこれに由来するのだと、『ある方』から聞きました」

 

「しんぴ……。神秘だと!?まさか、黒服の言っていたッ!」

 

 理事が、パニックに陥りながらある男の名を叫んだ。

 その名を聞いた瞬間、ファウストの紙袋の奥の目がスッと細められた。

 

「……ゲマトリアの方とも認識が?……いえ、小鳥遊ホシノさんをわざわざ監禁するくらいですから、おかしくはないのでしょうか?」

 

 理事から見て、黒服という存在は不気味な存在である。

 

 研究だなんだと言い協力を申し出てきた頭のひび割れた男。

 その素性はカイザーという大企業ですら洗い出すことができない、不可解な存在であったのだ。

 

(――いや、まさか奴が突然身を引くと言い出したのもファウストが関与したからか――!?)

 

 理事の中で、自身を取り巻く全てがファウストに収束していく。

 

 「私個人としては、黒服さんは気に入っています。

 ……あなた方とは違い、決まりは守りますから」

 

 続いた言葉が、ファウストと黒服には繋がりがあると確信させる。

 

 やはり、すべてが手の平の上だったのだ!!

 ……いやまぁ間違いなのだが、今の理事にはすべてがファウストの仕業に映っているのである。

 

「……と、これくらいにして……」

 

 そう彼女が呟いた瞬間、理事は銃口に光が集まるのを知覚することとなる。

 それが『神秘』という名が出たからなのか、それとも恐怖が見せている幻覚なのか。

 

「まっ、待て!私が悪かった!我々は話し合える!私がゲーテに入ってもいい!」

 

 少なくとも、それが救いの光ではないことは間違いのない事実であった。

 

「――罪には罰が与えられる。当たり前です」

 

 ファウストは命乞いをする理事の制止を完全に無視し、引き金を引いた。

 

 ――パンッ、パンッ、パンッ!

 

 軽い銃声とは裏腹に、着弾と同時にゴリアテの強固な装甲は紙のようにいとも簡単に弾け飛んでいく。

 

 左腕が根元からへし折れ吹き飛び。

 右脚のシリンダーが砕け散り巨体が膝を突き。

 左脚の装甲が剥がれ落ち、完全にバランスを失って前のめりに倒れ込む。

 

 ファウストが拳銃のマガジンを撃ち切る頃には、ゴリアテは四肢をもがれた無惨な鉄屑と化していた。

 

 捥げ、ひしゃげたコックピットの装甲の隙間から、部品に押しつぶされた理事が姿を現す。

 

『ピ、ピガッ……ガガ……』

 

 言語モジュールが完全に破壊されたのか、あるいは理事自身が恐怖で言葉を失っているだけなのか。

 

 ただ虚しい電子のノイズ音を上げるしかない理事を一瞥し、ファウストは冷ややかに言い放った。

 

「……檻から出る理由を作ったのはあなたたちです。カイザー」

 

 ファウストは踵を返し、少し離れた場所にいた部下に声を掛ける。

 

「ふぅ……。『お仕置き』をお願いします」

 

 周囲で警戒していたゲーテの兵士たちが即座に駆け寄り、ひしゃげたコックピットから理事を引きずり出して拘束した。

 

(――――)

 

 手足の反応はなく、CPUの異常か思考能力も怪しい。

 カメラにはノイズが走り、視界の半分はすでにブラックアウトしている。

 

 

 カイザーPMC理事が最後に見たのは、茜色に染まる砂漠の空だけであった。

 

 

 




「ただいま」(幻聴)


ファウストさんがなんでもかんでも裏で操ってるわけないだろ!!!


オートマタって死はどういう扱いなんや……?
とりあえず寝るか……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

あなたがトリニティでやってはいけない事リスト(作者:装甲アッサム春雨)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトス最大規模の学園の一つにして、キヴォトス屈指のお嬢様学園であるトリニティ総合学園。▼そこは日々を麗しく華やかに過ごすお嬢様の楽園。▼しかし、そこの片隅では今日もなにやら必死なお説教とそれから逃げ回る声が?


総合評価:3542/評価:8.88/短編:15話/更新日時:2026年07月01日(水) 00:32 小説情報

【青学三次】(自称)モブの日常掲示板(作者:掲示板物好き)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトス転生者たちが好きなことして、少しやらかす話集です。▼本作はどくいも様の『青資秘密学園奮闘ログ』の三次創作となります。▼https://syosetu.org/novel/322798/


総合評価:3856/評価:8.57/短編:33話/更新日時:2026年07月02日(木) 20:00 小説情報

憑依者しかいないゲマトリアがキヴォトスの破滅を回避しようとする話(作者:シャンタン)(原作:ブルーアーカイブ)

人の心を理解するがために、咄嗟に出る提案が原作より悪辣な黒服▼生徒を護りたい意志が強いが、製作できるのは怪物関連なマエストロ▼生徒を護るために崇高に至ろうとする、生徒第一なベアトリーチェ▼テクストが解釈ができず、原作兵器が作成できないゴルコンダ▼何事にもいち早く気付くが、そういうこった!!なデカルコマニー▼事態を把握しているが、ゴルコンダがいるため、表舞台に…


総合評価:5470/評価:8.59/連載:22話/更新日時:2026年06月29日(月) 17:31 小説情報

センセイモドキは先生を辞めたい(作者:ブルアカやったことない民)(原作:ブルーアーカイブ)

センセイモドキ……センセイオンナタラシに擬態することでキヴォトスに生息する数多の生物から危険を逃れている。センセイオンナタラシとの違いは▼・未成年である事(17歳)▼・ブルアカの知識を前もって持っている事▼・思春期をキヴォトスに生息する数多の生物に破壊されたことによる積極的なセクハラ言動


総合評価:4079/評価:7.98/連載:6話/更新日時:2026年07月04日(土) 07:00 小説情報

シロコに姉認定されるシロコ(転生者)(作者:フドル)(原作:ブルーアーカイブ)

 シロコに憑依転生しちゃったオリ主が原作知識で悲劇を回避しようとするけど失敗してしまい、捻れて歪んだ世界線でシロコ*テラーとしてなんやかんやあってからあまねく奇跡の始発点の世界線へ合流。▼ 体験したからわかる捻れて歪んだ世界線での苦しみを他の世界線のシロコに味わって欲しくない……。そうだ、向こうのシロコを強くしよう‼︎▼ そんな思いつきでオリ主はシロコのもと…


総合評価:9731/評価:8.83/短編:2話/更新日時:2026年02月09日(月) 18:09 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>