【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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おお、勉強してたんだね!

 補習授業部、合宿決定!!

 

「え、合宿なんてあるんですか!?」

 

 先生からそれを聞かされたヒフミは思わず素っ頓狂な声を上げて立ち上がった。

 

 先ほど行われた、補習授業部の第一回特別試験。

 

 ここ数週間カオスな面々を相手にヒフミは部長として、なんとか真面目に勉強を教えてきたつもりだった。

 彼女たちも真面目に机に向かい、カリカリとペンを走らせていたように思う。

 

 だからこそ、ヒフミは「これなら意外とあっさり全員合格して、すぐに部活は解散になるのでは?」と淡い期待を抱いていたのだ。

 

 しかし教卓に立つ先生の表情はとてもいいものではなく、返却されたテスト用紙には無慈悲な赤ペンによる採点結果が記されていた。

 

 白洲アズサ、32点。

 下江コハル、11点。

 浦和ハナコ、2点。

 

「…………?」

 

 ヒフミは自分の手元にある『80点』と書かれた答案用紙と、他の三人の答案用紙を交互に見比べ完全に言葉を失った。

 

 隣の芝は青く見えるというが、どう見てもそこは焼け野原だったのである。

 

「コハルちゃん、私たち同じ赤点仲間ですね♡」

 

「一緒にしないで!あんたより9点高いから!!」

 

 ハナコがにこやかにすり寄り、コハルが顔を真っ赤にして怒鳴り返す。

 

 このテスト、100点満点なんですよ。

 

「……むぅ。一歩及ばなかったか……」

 

”あの、アズサ。倍必要なんだけど……”

 

 このテスト、100点満点なんですよ!!

 

 それに合格点は60点だ。

 ハナコに至っては30倍の点数が必要である。

 

(どうして……どうしてみんなそんなに低いんですか!?)

 

 ヒフミは頭を抱え、出かかった深いため息を強引に飲み込んだ。

 ヒフミ自身は定期試験こそすっぽかしたが試験勉強が功を奏し、唯一の合格判定だった。

 

 だが、この補習授業部には『一蓮托生』という最悪のルールが設けられている。

 

 ――四人のうち一人でも赤点を取れば、連帯責任で全員が不合格。

 つまり全員が同時に合格点を叩き出さない限り、この部活が終わることは絶対にないのだ。

 

(この連帯責任という条件……私の予想が正しければ、ナギサ様が補習授業部を『檻』として機能させるために設けたもの、ですよね……)

 

 嘆きはひとまず置いておき、ヒフミは冷静に現状を分析することにした。

 

 ヒフミの推測では、ナギサの目的はこの部活に潜む裏切り者を監視し、最終的に退学させること。

 裏切り者が一人試験に受かって部活から抜け出されては困るのだろう。

 

 ヒフミは恨めしそうに自分の答案を見つめた。

 

 今回の特別試験、テスト自体の難易度は拍子抜けするほど低かったのだ。

 それこそ、普段の授業中に行う小テストと大差ないレベル。

 

 ヒフミ自身、記述系の問題で少し躓いたり多少のケアレスミスはあったが、あのレベルなら何度受けても不合格になることはない。

 

 他の三人の答案を見せてもらったが、コハルは一年生だから試験範囲が別だったため除外して、ハナコやアズサの試験内容はヒフミと同じものだった。

 

(今のところ、ナギサ様はまだ『試験問題自体を改竄して、絶対に受からないようにする』などといった強硬策を取るほどには、追い詰められていないということではありますが……)

 

  試験を正当な難易度で実施しているということはナギサにはまだ『余裕』がある、と考えるべきだろう。

 

 本当に裏切り者の尻尾を掴むまでは、あからさまな不正はしないつもりなのか。

 

 もしくは、誰かの点数が足りなくなると踏んでこの難易度にし、「あの時のテストで合格できなかったあなたたちが悪いですよね?」と各方面への言い訳を作る算段だったという線もなくはない。

 

(その誰かはこの場合だとコハルちゃん……。いえ、成績が急激に下がったらしいハナコちゃんでも……)

 

 しかし、そうなると次回の試験は難易度が上がったりしてもおかしくない。

 顧問に先生がいるとしても、トリニティの部活である以上ティーパーティーが試験に口を出す程度容易だろう。

 

(……もし退学になったらナギサ様には悪いですけど、恩を仇で返すことに……)

 

 こわ。

 ナギサの胃に穴開きますよ。

 

「はぁ……」

 

 ヒフミは今度こそ小さくため息をつき、膝の上のペロロ様のリュックを撫でた。

 

 実はここ数日、ヒフミには非常に重大なストレスが溜まっていた。

 というのも以前話した、ゲーテ本部に置かれているペロロ様コレクションのお手入れがこの補習授業部のせいで全くできていないからである。

 

 合宿なんて始まろうものなら追加で数週間はペロロ様グッズと触れ合えないだろう。

 

 それはもう死刑宣告となんら変わらない。

 

(それもこれもすべては……このエデン条約の裏で暗躍して火種を撒き散らしている元凶のせいです!)

 

 ヒフミの心の中で、どす黒い怒りが燃え上がる。

 

 アズサの出身であろう『アリウス』。

 その裏で糸を引いている可能性が高いゲマトリアの女、『ベアトリーチェ』。

 

(私からペロロ様を遠ざけるなんて、許せません……!どうにかして直接手を下す理由を……)

 

 突然ヒフミから滲み出る殺気。

 教室にいた全員が身を竦ませる程度にはどす黒かったことをここに記しておこう。

 

 

【先生視点】

 

 赤点三人で補習授業部の合宿が決定した。

 

『え、合宿なんてあるんですか!?』

 

 という発言以降言葉を発さず、最終的に瘴気みたいなものを放ち始めたヒフミ。

 その結果コハルを弄っていたハナコが真剣な表情で謝るという事件が発生したが、それはひとまず置いておくとしよう。

 

(”威圧感とは違ったけど、やっぱりファウストではあるんだなぁ”)

 

 と現実逃避気味な感想を浮かべつつ、先生はある場所に向かっていた。

 

 そう、ナギサの執務室である。

 

 この時間帯ならば空いています、と指定されたのはまさに試験後だった。

 図ったようなタイミングであり、実際もそうなのだろうが。

 

 そうして先生がナギサと対面し、エデン条約の概要、そして補習授業部の合宿に関する報告を終えた後。

 

「補習授業部は、退学させるために設立した部活です」

 

 ナギサは紅茶のカップを置き、ひどく重苦しい様子で補習授業部の目的について語り始めた。

 

 エデン条約を妨害しようとするトリニティの『裏切り者』が、あの四人の中に潜んでいるのではないか、ということ。

 

 補習授業部とは成績不振者の救済などではなく、その裏切り者を隔離し、監視し、最終的に退学という形で排除するための『檻』であるということ。

 

 そして、それを実行するために『先生の権限』が必要だったこと。

 

 ナギサの語る陰謀と疑心暗鬼の連鎖を、先生はただ黙って聞いていた。

 

(”……なるほど。これがヒフミが言葉を濁していた理由か”)

 

 先生は内心深く納得していた。

 

 たしかにこれは心象が悪くなると懸念するのもわからなくはない。

 残念なことに当たってしまったわけだが、事前にそういう可能性があるものとして聞いたことが良かったのだろう。

 

 実際先生の心は今、凪いだ水面のように落ち着いていた。

 

 ナギサが全てを語り終え、重苦しい沈黙が執務室に降りる。

 

「……驚かれないのですね、先生」

 

 自身の告白に対して先生があまりにも冷静であることに、ナギサは不思議そうに目を細めた。

 

”……そうだね。ただの補習授業だけでわざわざティーパーティーのトップが直々にシャーレに顧問要請するかな、とは思っていたんだ”

 

 先生が静かに返すとナギサは何かを言いかけ、すぐに口を噤んだ。

 自嘲気味な笑みが彼女の唇に浮かぶ。

 

「……上がってきた報告では、『シャーレの先生は、生徒のためならどんな依頼でも引き受けてくれる』とのことだったのですが……。

 どうやら私は、先生のことを侮りすぎていたようです」

 

 ナギサは居住まいを正し、改めて先生を真っ直ぐに見据えた。

 

「では先生、改めてお願いがあります。

 ……補習授業部の中から、トリニティを脅かす『裏切り者』を探し出してくれませんか?」

 

 それは、生徒を切り捨てるための処刑人になってくれという要求であった。

 

”……断るよ”

 

 当然先生は、一切の躊躇なく、はっきりと拒絶の意を示す。

 

”私はすべての生徒たちの味方だ。少なくとも、そうあろうと努めている。

 私は彼女たちを退学させるためではなく、彼女たちを元の生活に戻すために顧問を引き受けたんだ。

 誰かを犠牲にするような真似をするつもりはないよ”

 

 その毅然とした態度にナギサは少しだけ悲しそうに目を伏せたが、それ以上追及してくることはなく。

 

 互いのスタンスを確認したことで、自然とこの会談はお開きになった。

 

 

 ――すっかり日の落ちた、シャーレの執務室。

 自席に戻った先生は手元のタブレットに補習授業部の四人の顔写真を表示させながら、得ている情報を一つ一つ整理していた。

 

 ナギサはおそらく、その『裏切者』にあたりを付けているはずだ。

 次は合宿という密閉空間に閉じ込めようとしていることから、尾を出すのを待っている可能性もある。

 

 だが、先生が本当に警戒しているのは『裏切者』ではない。

 

「ゲマトリア……」

 

 その裏にいるかもしれない、『ゲマトリア』の存在である。

 

 アビドスの一件にて存在を明らかにした黒服。

 ホシノを実験台に利用しようとしたことを考えれば、その危険性など図るべくもない。

 

 黒服か、はたまた別の人間か。

 もしそんな組織の人間がエデン条約によって生まれる軍事力を手に入れるとすれば、それこそキヴォトスの危機だろう。

 

 ちなみに先の電話の翌日、ヒフミにゲマトリアについて聞いたがはぐらかされた。

 

 それがなにか契約的なものなのか、はたまた彼女の策略の一部なのか。

 詳細は分からないがヒフミが嘘をわざわざ流す理由も思い浮かばないので、ひとまずゲマトリアが背後にいることは信じていいだろう。

 

 そうなれば今先生ができるのは。

 

”……誰がその裏切者なのか、あたりをつけておくこと”

 

 浦和ハナコ。

 下江コハル。

 白洲アズサ。

 阿慈谷ヒフミ。

 

(”……とりあえずヒフミは無いか”)

 

 先生はヒフミの写真をスワイプして真っ先に除外した。

 

 かわいそう。

 普通の生徒だったらまだ裏切者の確立残ってるのに。

 

 先生はどうしてもヒフミがゲマトリアに一方的に利用されている姿が想像できなかったのである。

 

 となると、残る三人のうちの誰かだ。

 先生は何気なく窓の外に広がるキヴォトスの夜景を見つめた。

 

 楽園の裏に隠されたそれは、未だその姿を現さない。

 

 




裏切者の正体見たり!
もしかして、浦和ハナコなんじゃないか!?
ここまで点数低いのはもしかして、退部させないためのナギサ様の送り込んだスパイ……!?

みたいな話の予定だったんだけど話がややこしくなりそうというか、ヒフミと友達になるルートが消えそうだったのでやめました


あと、

ブラックマーケットの檻の次は補習授業部って名前の檻に入るんですか!?
檻好きね

っていうのを補習授業部開始前くらいに入れるの忘れてた

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