【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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第22話

【先生視点】

 

 補習授業部による勉強の合宿初日、その夜。

 先生に割り当てられた個室に、コンコンと控えめなノック音が響く。

 

”誰かな?”

 

「私です、先生」

 

”ヒフミ?今開けるね”

 

 扉の前に立っていたのは、ジャージを身に着けたヒフミであった。

 手には謎の黒いアタッシュケースを持っており、それに疑問を持ちつつも室内に通す。

 

「し、失礼します」

 

 一礼して部屋に入った彼女は、椅子に座るように勧める先生の言葉に「ありがとうございます」と返答しつつ、手元のケースを開いた。

 

”なにを――”

 

 そう口にしかけるも、ヒフミが人差し指を口に当てて静止を求めたことで先生は言葉を飲み込んだ。

 

 ケースから取り出されたのは先端にアンテナらしきものが付いた、棒状の『何か』であった。

 ヒフミはそれを手にすると、ベッドの下、窓枠の隙間、換気扇、そしてコンセントの周りなどを、慣れた手つきで念入りに調べ始めた。

 

(”……まさか、盗聴対策!?映画みたいだ……”)

 

 呑気なものである。

 先生はフィクションでしか見ないような作業に若干興奮しつつも、椅子に腰かけ黙って様子を見守っていた。

 

 数分後。

 部屋の隅々まで確認を終えたらしいヒフミは、安堵した様子でその『探知機』的なものをケースに収納し、先生の方へ向き直った。

 

「お待たせしました……。監視はなさそうでよかったです。ナギサ様も、さすがにそこまでは踏み込まなかったみたいですね」

 

”何事かと思ったよ”

 

「ごめんなさい……。万が一盗聴器があったら、それを探っていると勘づかれるわけにはいかないので……」

 

 ヒフミは改めて指定された椅子に座り、先生と正面から向き合る。

 ここから交わされる会話の内容は当然、現状のすり合わせと情報共有であった。

 

”――ナギサの目的は、補習授業部にいる裏切り者を退学させることみたいだ”

 

「そう、ですか……」

 

 先生の報告に、ヒフミは小さく頷いた。

 

”ヒフミの予想通り、ということでいいのかな?”

 

「当たってほしくはなかったんですけど……」

 

 ヒフミの瞳に、冷たい光が宿る。

 

「……となると、次の試験では問題を異常な難易度に改ざんするか、あるいは試験のルール自体を突然変更するなど、ある程度強引な手段を取ってでも私たちを不合格にさせる可能性がありますね」

 

”……さすがに、ナギサもそこまではしないんじゃ……”

 

 先生は、いつも優雅に紅茶を啜っているあのナギサが、そんなあからさまな不正にまで手を染めるだろうかと反論しかけた。

 

 しかしヒフミは即座にそれを否定し、こう語った。

 

「ここで私たちを合格させる理由がないんです。

 補習授業部が『裏切り者を隔離し、監視しておくための檻』である以上、ナギサ様は多少強引な手を使ってでも、エデン条約の調印式まではこの部を存続させると思いますよ」

 

 そして、先生はその意見に対する反論を持っていなかった。

 確かにナギサの目的を考えれば、今『裏切り者』をわざわざ試験に合格させて野放しにする理由はどこにもなかったからである。

 

「……あの。それで、先生?」

 

 ヒフミが、少しだけ声を潜めた。

 

「聞きにくい質問ですが……先生の考えでは、その『裏切り者』は誰だと思いますか?」

 

 その問いに先生は少しだけ言い淀んだ。

 与えられた情報は、ナギサからもらった生徒名簿の経歴程度しかなかったからである。

 それに、いまだ生徒を裏切り者扱いするのにはどうにも抵抗があったからだ。

 

 それでも、消去法と不自然さから導き出された答えは、一人を指していた。

 

”……アズサ、かな”

 

 先生がそう答えると、ヒフミは「……そうですよね」と、当然と言わんばかりの反応を見せた。

 

 少しの間、ヒフミは俯いて何かを思案するような様子を見せていたが、やがて何かを決心したように顔を上げ、先生を真っ直ぐに見つめた。

 

「アズサちゃんが最近トリニティに転入してきたことは、先生も把握していると思います。……では、彼女が『どこから』転校してきたと思いますか?」

 

”どこから、か……”

 

 先生は顎に手を当てた。

 そこでアズサが以前、「授業の進行度が違う」と口にしていたことを思い出す。

 

 同じキヴォトスに存在する各校であるが、カリキュラムにはだいぶ差があると言っていい。

 トリニティでは哲学や神学といった、いわゆる文系に近い授業が多く組まれており、そう考えると……。

 

”……ミレニアムとか?”

 

 ミレニアムサイエンススクールといえば、理数系や技術関係の授業が多く組まれていた記憶がある。

 

 進行度が違うということを考えれば、真反対の系統の学校なのではないか。

 そう考え導き出した推測は、あまり的外れではないように思えた。

 

 だが、ヒフミは小さく首を横に振って否定する。

 

「……『アリウス』という学校をご存じですか?」

 

”……アリウス?”

 

 初めて聞く名称に、先生は思わずオウム返しした。

 主要な学園の中にそのような名前はなかったように思えるが、どこか辺境の学園だったりするのだろうか。

 

 そう考察する先生をよそに、ヒフミは言葉を続ける。

 

「これは先生が聞きたかったであろう内容に繋がる話なのですが……」

 

 ヒフミは、一言一言を噛み締めるように、重々しく告げた。

 

「その『アリウス』の裏に……『ゲマトリア』がいます」

 

”……っ!”

 

 その言葉に思わず、バネで弾かれたように立ち上がる。

 黒服を名乗る男が所属しているという、生徒を非人道的な実験に利用する『悪い大人』の組織。

 

”なら、アズサが危険なんじゃ……!”

 

 先生が危機感を露わにした、その時。

 

「――だめです」

 

 ヒフミから、冷静で、妙に色の無い制止の声が飛んできた。

 それはファウストのそれとも違う、なんというか、何かを必死に堪えているかのような、そんな声だった。

 

”……ヒフミ?”

 

「先生のお気持ちはわかります。ですが、今はだめです」

 

 ヒフミは至極穏やかな表情で、先生を見据える。

 

「……私が電話で『ゲマトリアが背後にいるかもしれない』という事実以上の情報を伝えなかったのは、先生がすぐに動いた結果、ゲマトリアの方々に察知されてしまう可能性があったからです。

 たとえ止めたとしても、先生は居ても立っても居られなくなって、助けに動くんじゃないかと思いまして」

 

”それは……そうかもしれない”

 

 先生は『生徒の味方』であろうとしており、たとえ相手が裏切り者であろうと、目の前の裏社会のトップであろうと見捨てるつもりはない。

 

 ゆえに、「動かない」と絶対の確約をすることはできなかった。

 

「それに……」

 

ヒフミは言葉を区切り、さらに重い事実を口にした。

 

「裏切り者が、一人とも限らない。そうは思いませんか?」

 

”……っ!?”

 

「アズサちゃんが転校してきたということは、トリニティの最高権力であるティーパーティーの誰かが、それを許可したということになるんです」

 

”つまり……?”

 

「つまり、ティーパーティーの他のお二人……ミカ様かセイア様のどちらかが、アリウスと内通している可能性が非常に高いということです」

 

 その事実に、先生は絶句した。

 もしそれが本当なら、エデン条約を巡る陰謀は単なる一生徒の裏切りというレベルを超え、トリニティ中枢部を真っ二つに引き裂くような事態に発展する。

 

「ゲマトリアの件に関しては、伏せておくのもどうかと思ったので……」

 

 ヒフミは少しだけ気まずそうに目を伏せた。

 

「それに、先にナギサ様に対する印象を悪くしてしまった可能性もありましたから、先に明かしておいたほうがいいかなと」

 

”……え?”

 

 意外にも、ナギサを思っての発言であったのか。

 と、先生は思わずあっけに取られてしまった。

 

 失礼だよね。

 

「……お話は戻るのですが、問題はその『アリウス』という学校の実態がよくわからない、ということなんです」

 

 ヒフミが再び真剣なトーンに戻り、話を本筋へと引き戻す。

 

”よくわからない?”

 

「はい。ゲーテが保有する膨大な情報網をもってしても、『アリウス』という名前以上の情報は得られませんでした。」

 

 その事実に、先生は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。

 先生からしてみれば、ゲマトリアはブラックマーケットなどの裏社会を拠点に暗躍している集団だという認識が強い。

 

 だが、その裏社会の絶対的トップであるファウストの監視網から完全に身を隠し、痕跡を消し去れるレベルの存在ということになる。

 

 トリニティを相手取るつもりの組織ということはある程度規模があって然るべきだが、一体どこに隠れ潜むことができるのだろうか。

 

 自然と、アリウスに対する警戒心が跳ね上がった。

 

”……とても、いい状況とはいえないね”

 

「ええ。ナギサ様はあくまで『トリニティ内部の裏切り者』を探しているだけですが、もしアリウスが以前に話した「エデン条約の締結によって生まれる武力」を手に入れるようなことがあれば……」

 

 その先をヒフミが口にすることはなかったが、聞かずともわかることだった。

 彼女は膝の上で両手を組み、息を吐いた。

 

「……そこで、先生に一つの提案なんですけど」

 

”……提案?”

 

 真っ直ぐに先生の目を見据え、ヒフミはゆるりと、そのセリフを口にする。

 

「――このエデン条約に、『ゲーテ』を介入させませんか?」

 

”なっ……!?”

 

 突然放たれたそれに、先生は言葉を失うこととなった。

 




もしかして、裏切り者の正体って……!


短いか?
まさか休みの方が時間取れないとは思うまいね。

こういう話書いてると性格改変とかタグにつけた方がいいのかな、とは思いつつ、でも原作のヒフミの行動考えると改変レベルでもない気がするし難しい。
そもそも原作沿いにするのも難しい。
エデン条約って考えること多すぎるんだよ~。


もしかして、ヒフミってアウトローなんじゃないか!?

銀行強盗で得たお金は悪いお金って言って手放すのがアビドス。
銀行強盗で得たお金でも理由があれば使いそうなのがヒフミ。

七囚人最後一人ヒフミ説。
さすがにないけど、支持したい。

あ、書き忘れてたんですけど
紙袋を被ると立ち絵が正面向く感じの妄想で書いてます。
表情はわからないですが、目が光ったりしてね。

「原作」とか「ゲーム」とか第四の壁を超えるような表現は避けてるので描写できないんだ
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