【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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ドジっ子属性はありまぁす!

(いくら何でも多くないですか!?)

 

 アビドス近郊のブラックマーケット。

 その入り組んだ路地裏を駆け抜けながら、ヒフミは心の中で悲鳴を上げていた。

 

 背後から迫るヘルメット団の怒声と足音。

 驚くべきは、その執拗さと規模だった。

 

 最初は数人の不良に絡まれただけのはずだった。

 しかし、路地を曲がるたびに「あそこだ!」「あの女を捕まえろ!」と、声が増殖していくのである。

 

(今日ってヘルメット団の会合でもあったんですか!?)

 

 そんなくだらない疑念が脳裏をよぎるが、考察している余裕は一秒たりともない。

 

 チラリと後ろを見やる。

 最初は三人程度であったはずの彼女らは、いつの間にか十人規模になっていた。

 

(どうして……)

 

 致命的なのは、ヒフミがこのアビドス周辺のブラックマーケットの地理に全く詳しくないことだった。

 

 自分の支配下にある中央区画やトリニティ方面であれば、どの路地がどこに繋がり、どこに逃げれば安全かなどは完全に把握している。

 

 だが、ここは砂漠の場末のマーケットだ。

 

 右も左もわからない路地を走り続けた結果。

 距離を引き離すどころか、別ルートから回り込んできたグループにたびたび挟撃されそうになり、稼いだ距離を失う羽目になっていた。

 

 それでも未だマーケットガードがこの騒動に参加していないのは、ヒフミが常に、射線上に入らないことを意識しているからである。

 

 実際今のところ、銃撃は発生していなかった。

 

 謎の身体捌きによって狙いを付けられないトリニティ生に、ヘルメット団員たちはずいぶんイライラさせられていることだろう。

 

(でも、あなたたちのためなんです!!

……って、また増えてませんか!?)

 

「あいつ逃げるの上手すぎるだろ!!」「今更逃がしてたまるか!」

 

「ずっとあのキモイ鳥のリュックが揺れてて腹立ってきたな……」「……は?てめぇ、ペロロ様かわいいだろうが!!」「なんっ、おいやめろ!!」

 

 ……二人脱落した。

 

(あの子とは同志になれそうですね……。

……ではなくて、一刻も早く撒いてペロロ様探しに戻りたいですけど……)

 

 二人減ったとはいえ、見たところまだ十数はいる。

 このままではジリ貧であった。

 

 そろそろキレて乱射してくることも有り得るし、さすがにこの規模感になってくると、巡回ルートを外れてマーケットガードたちも来かねない……。

 

 そこでヒフミは閃いた。

 

(……いっそマーケットの外に出て、お話しすることにしましょう!)

 

 思いつくと同時にヒフミは走る速度を上げ、進路を強引に変更した。

 

 入り組んだ遮蔽物の多い路地を抜けると、目の前に視界の開けた、割と広い直線の大通りが飛び出してきた。

 

 障害物がないため、敵から視線を通されやすいのは間違いない。

 だが、事前に見ていた地図では、この直線を突っ切るのがいちばん早かったはずである。

 

 外に出れさえすれば、マーケットガードも気にする必要は無いのだ。

 

「よし、このまま一気に――って、ええええっ!?」

 

 前方を見据えたヒフミは、瞳を大きく見開いた。

 

 その直線の先。

 薄暗い大通りの奥に、妙に見覚えのある人物が立っていたのである。

 

 キヴォトスではおよそ見かけることのない『大人の男性』。

 防弾ベストもヘルメットも身につけていない、しかしどこか毅然とした佇まいの男――。

 

(あの人は……まさか『シャーレの先生』!?)

 

 間違いない。

 今朝のニュースでも出ていた、最近のキヴォトスで一番ホットな人物であった。

 

 そういえばさっきの定時報告で、アビドスに向かったという話を部下から聞いたばかりだった、と思い至るヒフミ。

 

(……それと、あれはアビドスの生徒さんでしょうか?)

 

 そんな彼の周囲には、四人の生徒の姿があった。

 ヒフミはその制服についた校章等から、そう分析する。

 

(え、な、なんでこんなタイミングで、こんな場所にいるんですか!?)

 

 ここブラックマーケットなんですけど!!

 

 挨拶をしている暇など当然ない。

 そもそもヒフミにとっては完全な初対面であり、こんな逃走劇の最中に「はじめまして!」などと言うのもおかしな話だろう。

 

 ともかく、巻き込むわけにはいかない。

 

「よけてくださいぃぃぃ!!」

 

 ヒフミは走りながら、喉がちぎれんばかりの声で叫んだ。

 

 しかし、前方の先生たちは避けるどころか、こちらを見て武器を構え始めた。

 

 まあ、先生たちからすれば、トリニティの制服を着た女生徒が、大勢のヘルメット団に追われて困り果てているようにしか見えないだろう。

 

 アビドスの面々は分からないが、生徒の味方を公言していた先生が見て見ぬふりをするはずもなかったのである。

 

(困っているのは間違いないですけど、そっちじゃないんです!迎撃されたら騒ぎが大きくなって、私が一番困るんですぅぅぅ!!)

 

 ヒフミの制止も虚しく、アビドスの生徒たちはヘルメット団の先頭に向けて一斉に射撃を開始した。

 

 乾いた銃声が響き渡り、大通りは一瞬にして戦場へと変貌する。

 

「ど、どうしてこうなっちゃうんですかぁ……っ!」

 

 だが嘆いている暇はない。

 腐ってもブラックマーケットを纏め上げる支配者たる彼女。

 これまでの経験が、ヒフミの思考停止を阻止した。

 

 こうなってしまった以上最速で敵を撃破し、マーケットガードが駆けつける前にこの場から撤収するしかない!

 

「わ、私も戦います!」

 

 ヒフミはリュックから『マイネセシティ』を引き抜き、ヘルメット団の側面へと回り込んだ。

 

 そこからの戦闘は、まさに驚異的と言えた。

 

”ホシノ、そのまま前を抑えて!シロコはスナイパーに向けてドローン使って、セリカは左の――”

 

 大通りに先生の声が響く。

 

 口頭であるにも関わらず、まるでラグがない。

 敵味方の位置を完全に把握しているような指示に加え、こちらの残弾数すら把握しているのか、「下がってリロードして」なんて言ってくるのだ。

 

 さらに初対面であるはずのアビドスの面々とも、まるで何年も共に戦ってきた歴戦のチームであるかのような連携が、自然と成立している。

 

(な、なんですか、この指揮能力……!?全部先読みされているような……!)

 

 それだけではない。

 

 アビドスの前衛に立つ、小柄なピンク色の髪の少女の戦闘力も規格外だった。

 

 巨大な盾を構えヘイト管理をしつつ、隙をみて高火力の散弾を叩き込む。

 積極的に攻撃に参加はしていないが、その技術力はヒフミからしても驚愕に値するものであった。

 

(『ホシノ』。アビドス所属という点から考えれば、あれが『小鳥遊ホシノ』さんですか。

 ……以前見た写真とは明らかに雰囲気が違いますが、あの身のこなしです。同一人物であると考えた方がよさそうですね)

 

 小鳥遊ホシノ、という人物の存在はゲーテも把握していた。

 

 なぜなら、各学園の特記戦力としてマークされていた人物であったからだ。

 年齢を考えれば彼女は今三年生なのだが、一昨年――つまり一年のころからマークされていたようなので、下手すればゲヘナの空崎ヒナに匹敵する可能性が高い存在である。

 

(……カイザーがアビドスの買収に時間がかかっているのは、ホシノさんの存在があるから、という線も考えられますね)

 

 そうこう考え事をしている間に戦闘は終了していた。

 

 時間にしておよそ数分。

 大通りには、戦闘不能になったヘルメット団たちの山が築かれていた。

 

「す、すごい……」

 

 ヒフミは先生の特異性と、ホシノという存在に警戒を強める。

 

(……とはいえ、ホシノさんは剣先ツルギ先輩や空崎ヒナさんレベルで警戒する必要はないですね。アビドスが財政状況的にブラックマーケットにメスを入れる余裕はないはずです。

 先生の方は一応、情報だけ入れておきましょう……っと違う急がないと!)

 

 ふと、遠くから警戒を促すサイレンが流れてくる。

 

「皆さん、のんびりしている暇はありません! すぐにここから離れないと!」

 

 ヒフミは尋常ではない素早さで先生の腕を引っ張ると、アビドスの面々を促し、大通りを外れて複雑な路地裏へと滑り込んだ。

 

 

【先生視点】

 

「ふぅ……ここまで来れば、ひとまずは安心ですね」

 

 トリニティの制服を着た少女――阿慈谷ヒフミに連れられて路地を曲がり、少し落ち着いた区画に出たところで、先生たちは一息ついた。

 

 襲われていると思って助けた彼女だったが、話を聞いてみると事はそう単純ではなかったらしい。

 

 彼女が必死に逃げていたのは怯えていたからではなく、「ここでの戦闘はまずい」という冷静な状況判断からだったようだ。

 

「へぇ、なるほどね〜。ヒフミちゃんは強いもんね?」

 

 先生の隣で、盾を片付けたホシノがのんびりとした口調で言った。

 先ほどの戦闘でのヒフミの動きを見て、ホシノは何かを感じ取ったらしい。

 

(”確かに、ヒフミはだいぶ余裕を持ってた気がする”)

 

 先生の持つタブレット『シッテムの箱』は、生徒たちの情報をステータスとして可視化する能力を持つ。

 ゆえに、ヒフミが手を抜いていることはなんとなく察していた。

 

「えっ!?い、いえいえいえ!そんなことないです!!私なんて、本当に普通の、どこにでもいる平凡な生徒ですから!」

 

 ヒフミはあからさまに動揺し、両手を激しく振って否定した。

 

(”淑女としての教育とか、そんな理由だったりするのかな?”)

 

 先生からしても、トリニティはお嬢様学校という認識が強かった。

 なのでお嬢様特有の、何かしらの事情があるのだろう。

 

 先生はヒフミの否定をそう解釈した。

 

”それはいいとして、さっきの続きだけど……”

 

 先生が話を戻すと、ヒフミはホッとしたように説明を続けた。

 

「はい。このブラックマーケットには、独自で警察的な役割を果たしている『マーケットガード』と呼ばれるオートマタたちが配備されているんです。彼らはとても優秀で、街の中で騒ぎを起こすとすぐに飛んできて事態の鎮圧に当たるんです」

 

「大変ですね~♠」

 

 ノノミがニコニコと、気の抜けた声で相槌を打った。

 絶対思ってなさそうである。

 

「……でも、ヒフミさん悪いことしてないし、別にいいんじゃないの?」

 

 暴れ損だったことに少し不満らしいセリカが、疑問を口にした。

 

「ん、それはそう」

 

「え、えーと。あはは……それは、そうなんですけど……」

 

 追手が無いかと少し辺りを警戒していたらしいシロコが会話に参加してくる。

 セリカの発言に同調者が現れたことで視線が強まり、ヒフミの視線は泳ぎまくっていた。

 

「……あれじゃない?お嬢様だから、ブラックマーケットに入るとマズいとかさ~」

 

 しかし言葉に詰まっているヒフミに、ホシノが助け舟を出す。

 

「そ、そうです!!」

 

 ものすごい速度でその発言に飛びついた。

 

 絶対嘘じゃん。

 そう言いたげな空気が流れるものの、ジト目が向けられるだけでそれ以上の追及がされることはなかった。

 

 だが、失敗したと言わんばかりにヒフミはペロロ様のリュックを抱きしめるようにして、ガックリと肩を落とした。

 

”ちなみに、ヒフミはなぜブラックマーケットにいるのか聞いていい?”

 

 先生が尋ねると、それまで落ち込んでいたヒフミの顔は突如として太陽の如き輝きを得る。

 

「よく!!聞いてくれました!!!!

 実は、ペロロ様の初期ロットエラー品がこの近くのジャンク屋さんに流れてきたっていう情報がネットにあって……!この型は激レアも激レア!私もグッズは多く集めていますが、もともと製造数が少なく、即廃盤になってしまったのでこの型自体一つしか持っていないんです!なのに、そのエラー品ですよ!?マニアとして、コレクターとして、ファンとして!!

 これはもう、自分で直接お迎えに行くしかないと思ったんです!!」

 

「ぺ、ペロロさま……?」

 

 先生たちの頭上に、特大のはてなマークが浮き上がる。

 先ほどの空気からは想像もつかない熱量に、皆思わず気圧されてしまった。

 

「それモモフレンズですよね~?」

 

「!!わかりますかノノミさん!!」

 

 なんと、ノノミだけは理解があったらしく、二人は手を取り合って一気に盛り上がり始めた。

 女子高生のネットワーク、なのだろうか。

 

 なお先生、セリカ、シロコ、ホシノはいまだはてなマークを浮かべたままである。

 

「若い子にはついていけん……」

 

「ホシノ先輩同年代ですよね!?」

 

「ん、でもセリカもついていけてない」

 

「……そうですけど!!」

 

 話についていけない三人がコントを始めてしまった。

 

「あ、そうだ。遅くなりましたが、助けていただいてありがとうございました、先生。アビドスの皆さんも」

 

 ひとしきりノノミと盛り上がった後、ヒフミは上品にお辞儀をした。

 

”いやいや、こちらこそ邪魔してしまったみたいで、なんか申し訳ないな……”

 

 先生が苦笑いしながら言うと、ヒフミは困ったように笑い返した。

 

「あ、そういえば……先生たちこそ、どうしてブラックマーケットに?」

 

「そうよ!本来の目的を忘れるところだった!」

 

 セリカが声を上げる。

 

「実はね、おじさんたちはとある戦車について調べててね~?」

 

 ホシノが髪をいじりながら、何気なく尋ねた。

 

 先生たちの目的。

 それは先日、セリカが襲撃を受けたところまで遡る。

 

 内容について詳しくは触れないが、セリカがバイト終わりに誘拐されたのだ。

 その際、彼らは救出のために足取りを追いヘルメット団と戦闘。

 そしてその時使用されていた兵器から、裏に居る存在の特定を試みたのである。

 

 結果としてその回収した戦車の破片から読み取れたのは、「廃盤となった戦車である」ということであった。

 

 廃盤が出回るのはブラックマーケットしかない――。

 

 この場にはいないオペレーター、奥空アヤネの発言によって、彼らはここにたどり着いたというわけだ。

 

「戦車、ですか……」

 

 ヒフミは顎に手を当てて、うーん、と真剣に悩み始めた。

 

 その表情は、先ほどまでの困惑していた様子やオタク全開の顔とは程遠い、冷たさを感じさせる。

 変わりように先生は少し不気味さを覚えたものの、それを口にすることはなかった。

 

「兵器を取り扱っているところは多いですからね……」

 

「そんなにあるんですか~?」

 

「はい、個人から組織的なところまであります。

 銃の改造品からミサイル、ヘリコプターなんてものも売ってますし……。

 そもそもブラックマーケットは学園数個分に匹敵する規模がありますから、あらゆるものがそろってます。

 外と変わらずインフラもありますね。マーケットガードはそのまま警察ですし、病院や銀行なんかも……」

 

「……探すの大変だ」

 

 思わず漏れたシロコのコメントに、全員がコクコクとうなずきを返した。

 

 思った以上にスケールが大きい。

 その点では、ブラックマーケットに詳しいヒフミと出会えたことは幸運だったと言えるだろう。

 

 ……というか、詳しすぎないか?

 

 口には出さなかったが、先生はやはり怪しさを覚えていた。

 グッズ集めで頻繁に来ているとしても、兵器事情について知っているのはさすがにおかしい気がする。

 

 だが先生はブラックマーケットに詳しいわけではない。

 もしかすると、一般常識レベルの知識である可能性もあった。

 

(”生徒を疑うのもよくないしね”)

 

「……ひとまず、聞き込みから始めるのはどうですか?」

 

 数秒の思案の末、ヒフミはそう提案してきた。

 

「戦車ほどの大きさのものなら、誰かしら取引を目撃していると思います。

 情報屋で聞くのも手ですが、お金がかかっちゃいますし……」

 

「まぁ一番詳しいヒフミちゃんが言うんだし、そうしよっか」

 

「ようやく前進ね!」

 

 ホシノが同意し、セリカが拳を握りしめる。

 

「助けてもらいましたし、私もお手伝いします!」

 

 ヒフミが協力を申し出、先生たちはブラックマーケット捜索を再開したのであった。

 




口調合ってる?アヤネ入れれんかったでな。ごめんなさい

原作はアイス口に突っ込まれてるペロロ様だったけど、その程度ならすでに手に入れてそうなので変更。

あと絡んでくるのがチンピラじゃなくてヘルメット団になってるのは、チンピラはゲーテが吸収してるからです。
ついでに傭兵も大半はゲーテが管理下においてます。

入れられなかったけど、アルちゃんが雇ったのもヘルメット団だったという想定。
カイザーはゲーテのせいでまったくブラマのチンピラだったり傭兵だったりを利用することができないので、金を積んでアビドスにヘルメット団を呼び寄せてました。その繋がりでアルちゃんはヘルメット団から人員を雇った、みたいな?

で、ヒフミが追われた原因もそれのせいって感じです。
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