【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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ドジっ子属性こそが、最高の隠れ蓑であった

 先生との邂逅の後、同行を申し出たヒフミ。

 無論、これはヒフミの純粋な優しさだけからくる行動ではなく、明確な打算があった。

 

 一つは、これほどの人数での移動であれば、目を付けられる可能性が低いこと。

 

 戦いにおいて、数は力である。

 キヴォトスには一人ですべてを覆せる力を持つ人間が複数いるものの、それでも数とはそれだけで偉大なのだ。

 加えて、その『すべてを覆せる人間』の一人がいるとなれば、とても心強い。

 

 そしてもう一つは、キヴォトスの治安を劇的に変えつつある特異点、『先生』という存在を間近で観察できる絶好の機会だと判断したからだ。

 

 先ほどの指揮能力だけでも十分な収穫であったが、もう少し掘り下げておくとしよう。

 そういう狙いである。

 

(それに、これならただサボりだとは思われないかもしれません!)

 

 ついでにもし部下に見つかった際の保身も完璧。

 

 これがファウスト。

 裏社会の『超人』か。

 

「それにしてもごちゃごちゃしてる」

 

 先ほども、道行く人に聞き込みをしていたシロコがそうつぶやいた。

 

「そうですね……。店自体は誰でも始められますから、思いつきで始める人も多いですし……」

 

「……ん、ん?そう、なんだ……?」

 

 果たして、正体を隠す気はあるのだろうか。

 

 なぜか管理者側のような発言をするヒフミに、シロコは困惑を隠せないでいた。

 

 兵器の流通経路を探るのであれば、ゲーテが抱える情報屋を締め上げれば五分で答えは出る。しかし、一介のトリニティの生徒である自分がそんな真似をすれば、当然ながら先生たちに怪しまれてしまう。

 

 ゆえに、ヒフミの提案により、一行は地道な聞き込み調査を行うことになったのだった。

 

 しかし、聞き込みの最中。

 大通りの近くを通りかかった時のことである。

 

「あっ、皆さん!ちょっとだけ、本当にちょっとだけ待っててください!」

 

 ヒフミは何かを発見するや否や、弾かれたように路地裏のジャンク屋へと飛び込んでいった。

 

 数分後。

 

「ふっふふ……ふふふふっ……!お待たせしました……ペロロ様……!」

 

 ほくほく顔で戻ってきたヒフミの腕の中には少しばかり顔周りのパーツの縫い合わせがズレた、不気味さが際立つペロロ様がいた。

 

「突然いなくならないでよ……。で、それ、いくらだったの?」

 

 セリカが呆れたように尋ねると、ヒフミは何の気なしに答えた。

 

「すみません、いてもたってもいられず……。あ、価格は2000万クレジットでした!」

 

「…………はっ?」

 

 セリカの動きがピタリと止まった。

 シロコはまばたきを繰り返し、ホシノは「うへぇ」と変な声を漏らした。

 

「……に、にせんまん? 今、2000万って言った?」

 

「はい。一括で払うのは少し躊躇いましたけど、カードが使えたのでよかったです」

 

 ヒフミは財布から、艶やかな漆黒の輝きを放つクレジットカード――正真正銘のブラックカードをスッとなんでもないように取り出した。

 

 ……ヒフミの金銭感覚は、間違いなく壊れていた。

 そもそも、みかじめ料で数億、数十億が企業からゲーテに入ってきているのである。

 それに加えて傭兵ビジネスや土地管理など、ゲーテの手は幅広い。

 

 ゲーテの運営費や予算、構成員の給料を抜いても、ヒフミに入ってくる金額は莫大であった。

 

「く、黒いカード……!?実在してたんだ……」

 

 セリカが震える指でカードを指差す。

 

「ふふっ私もゴールドカードなら持っていますけど、ヒフミちゃん、すっごいお嬢様説ありますね〜☆」

 

 ノノミが感心したように手を叩くが、他のメンバーは完全に絶句していた。

 借金に苦しむアビドスの生徒たちにとって、2000万という金額はあまりにも重すぎる。

 

 借金に苦しむ人間の目の前でこの行動。

 人の心がない。

 

 まぁヒフミはアビドスの借金については知らないので、仕方のないことなのかもしれないが。

 なお、土地を売買するほどに財政がひっ迫している状況であることは知っているはずだが、そちらは当初の目的であるペロロ様グッズを入手したことで頭から吹き飛んでいた。

 

「トリニティって、ほんとにお嬢様学校なんだね〜……。おじさん、びっくりしちゃった」

 

 トリニティでもそういないぞ、というツッコミができる人間は残念ながらここにはいない。

 ホシノの中では、「トリニティってノノミちゃん以上のお金持ちばっかりなんだね」と、誤った印象が刻まれてしまった。

 

「というか、その変な鳥?のぬいぐるみ、そんなにするの!?ぼったくられてない!?」

 

「変じゃありません、ペロロ様です!」

 

 セリカのツッコミに、ヒフミはムッとして反論した。

 

「そもそも、この初期ロットのエラー品が特別に高いだけです。一般的なグッズなら2000クレジットくらいですよ」

 

「ゼロが四つ増えてることに気が付いてる???」

 

「そういえば」と、ノノミが思い出したように付け加えた。

 

「以前オークションに出品されたらしい『黄金のペロロ様』は、落札価格が2億クレジットだったっていう噂を聞いたことがありますよ?」

 

「におく……」

 

 セリカが遠い目をして天を仰ぐ。

 さすがの先生もこれには苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 だが、その話題を出されたヒフミはピクリと眉を動かし、妙に訳知り顔で頷いてみせた。

 

「あ、あれは24金で作られたレプリカでしたからね。金自体の地金価格と、名のある細工技師の方の手製。そしてペロロ様という付加価値があったので、妥当な金額だったと思います。いえ、おつりが来ますね!作りが本当に良くて、あの重みも……」

 

「……ねえ。なんでヒフミちゃん、そんなに詳しいのかな?」

 

 ホシノがジト目でヒフミを見つめる。

 

 ヒフミはハッとした。

 まるで現物を持っているかのような発言をしていることに。

 

 ちなみに、その『黄金のペロロ様』とはヒフミの執務机の上の『あれ』である。

 

(……というか、アビドス高校って財政状況が悪いんでしたよね!?もしかして私、とても嫌味な人に見えませんか!?)

 

 思い出したらしい。

 

 しかし、先生らはヒフミがアビドスの内情を知っているとは思っていないので、ただの世間知らずの、自称普通のお嬢様としか認識していないだろう。

 ……今のところは。

 

「えーとっ!? ……と、いう風にニュースで見たんです、ニュースで!!」

 

 どう考えても無理がある言い訳である。

 だが、先生たちもこのお嬢様のバックに得体のしれないものを感じ取ったのか、これ以上のものが出てきてもこまるのか。

 誰もそれ以上追及することはなかった。

 

 そんなドタバタもありつつ、ブラックマーケットでの聞き込み調査を再開した一行。

 

「うーん、なかなか出てきませんね~……」

 

『そうですね……。先ほどの情報も、戦車ではなくヘリでしたし……』

 

 情報を解析していたアヤネが、ノノミの落ち込んだ声に反応する。

 

 そう。

 かれこれ数十分、武器屋や雑貨屋、道行く人などに聞き込みをするも、いまだ例の戦車の情報は見つかっていないのであった。

 

(……おかしいです。ここまで情報が出てこないなんて……)

 

 ――ブラックマーケットとは、そもそも非合法の集まりである。

 盗品、横流し品、違法兵器など、あらゆるものが金でやり取りされる場所だ。

 

 ゆえに、商売人たちは基本的に隠蔽したりはしない。

 

 それに、ゲーテこそが法であるブラックマーケットにおいて、ゲーテが何も言わないならそれは合法である。

 ゲーテが定めたブラックマーケットの規則においても、治安を維持するための発砲禁止や人身売買禁止などはあるが、兵器の流通そのものに厳しい制限は設けていなかった。

 

 だというのに、そのヘルメット団が使用していたという『戦車』の廃盤モデルに関する情報だけが、綺麗に抜け落ちている。

 

 彼らの口が堅いのではない。

 実際他の情報は持っていたからだ。

 

 つまり街の商人たちは、本当に『何も知らなかった』のである。

 

(……意図的な情報統制が行われていると考えた方がよさそうですね。この徹底ぶりですと、ゲーテの監視網も期待薄ですか)

 

 もともとアビドス方面は警戒対象ではないこともあって監視が薄い、ということも起因している。

 その判断が足を引っ張るとは夢にも思わなかったが。

 

 ヒフミは思考を巡らせる。

 

 巨大な兵器をどこかから運び入れ、それをヘルメット団のような不良組織に横流しし、さらにその痕跡をブラックマーケットのネットワークから完全に消し去る……。

 そんな大規模な隠蔽工作が可能なのは、圧倒的な資金力とコネクションを持つ『大企業』レベルの組織だけだろう。

 

(アビドスの置かれた状況を考えればカイザーですが……)

 

「ヒフミ、何か思いついた?」

 

 深く思案に入り黙り込んだヒフミに、シロコが声を掛けた。

 

「……あ、いえ……」

 

 なんでもありません、と返そうとしたが口を噤む。

 代わりに、思い至った可能性を話すことにした。

 

 このままでは埒が明かないことは間違いなかったからだ。

 

「皆さん、少しよろしいですか?」

 

 ヒフミは歩みを止め、先生たちに声をかけた。

 

「正直なところ、ここまで見つからないのは普通、あり得ないんです」

 

”ありえない?”

 

「はい。例えばあそこ――」

 

 ヒフミが指差した先には、周囲のネオン輝く店舗とは違い、ガラス張りで周囲を警備員が守るビルがあった。

 

「あれは、ブラックマーケットでも各地に展開している大きい銀行なのですが――」

 

 皆が視線を向け、ヒフミがその言葉を口にした瞬間。

 

「……あれは、カイザーローンの……?」

 

 ノノミが、まるで幽霊でも見たかのように驚愕の声を上げた。

 

「え? ……カイザーローン?」

 

 ヒフミは思わず聞き返した。

 

(アビドス高等学校は、カイザーグループから借金でもしているのでしょうか……?)

 

 アビドス自治区の広大な土地をカイザーPMCが買い漁っているという報告は受けているが、借金となれば話はまた別だ。

 

 ゲーテは生徒を守るために、未成年者を対象に借金制度にある程度の制限を設けていた。

 その規則は基本守られているわけだが、やはり時折、破る企業がいるのであるのである。

 

 そして、今回の容疑者。

 ブラックマーケットの問題児筆頭、『カイザーグループ』。

 

 ヒフミはとても嫌な予感がしていた。

 

 しかし、先生やアビドスの生徒たちはヒフミの疑問に答えることなく、銀行の入り口付近に立つ『カイザーローンの行員』の姿に釘付けになっていた。

 

 彼女たちの瞳には、明らかな敵意と焦燥が浮かんでいる。

 

(……なるほど。アビドスの背後にあるトラブル……戦車の隠蔽工作も含め、裏で糸を引いているのはカイザーグループである可能性が極めて高くなりましたね)

 

 ヒフミは脳内で素早く状況を整理し、今後の『やることリスト』に追加していく。

 

 一度、完全に洗いなおす必要があるだろう。

 なんせ、カイザーローンはブラックマーケット内で取引をしているのだ。

 

 もし規則を破っているのなら、相応の『お仕置き』が必要になる。

 

 そういう意味では、彼らと出会ったのも何かの縁だったのかもしれない。

 

 そんな管理者としての思考を巡らせていたヒフミは、隣から聞こえてきた布の擦れる音にふと、我に返った。

 

「え」

 

 無意識に、間抜けな声が漏れる。

 

 ヒフミが視線を向けると、そこには、先ほどまで普通に会話をしていたはずの先生とアビドスの生徒たちが立っていた。

 

 ただし、その顔には。

 全員、なぜか『番号と色の違う目出し帽』をすっぽりと被っていたのである。

 

 シロコの犬耳が貫通した覆面、セリカの猫耳型の覆面、ノノミやホシノ、この場に居ないのにアヤネも、そして引率の大人であるはずの先生に至るまで、全員が当然のように覆面姿になっていた。

 

 まるで、銀行強盗を計画していたかのような用意周到さである。

 

「……あの。皆さん、何をしているんですか……?」

 

 ヒフミの困惑する声を受け、覆面姿のシロコがアサルトライフルをガチャリ、と天に突き上げ興奮気味に言った。

 

「ん、銀行を襲う!!」

 

「――は?」

 

 白昼堂々。

 連邦生徒会直轄の教師と学園の生徒たちによる、犯行予告。

 

 それを目の前で聞かされた胴元的存在は、思わず頭を抱えることとなった。

 

 




部下「あの、先生に監視つけるって言いましたよね?」

これ銀行強盗面白くなるのかしら。
銀行強盗ごっこにならない?

そしてアヤネ入れるの難しくない?
今回一言やで一言。
セリカがツッコミ役として優秀すぎるから入れすぎちゃうし。
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