【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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ファウスト様怖すぎワロタwww

【悲報】アビドス、アウトローの集まりだった。

 

 学校の借金にカイザーローンが関わっていること。

 その集金役の行員が今、銀行の前に居たこと。

 

 そして、アビドスが払った金が銀行に運び込まれたこと。

 

 それを端的に説明されたわけだが。

 

「銀行を、襲う!!」

 

 二度も聞かされたあまりにも想定外すぎる犯行予告に、ヒフミは完全に思考を停止させていた。

 

「銀行強盗……って、え……? あの、先生……?」

 

 助けを求めるように視線を向けた大人はしかし、生徒たちと同じように目出し帽を深く被り、なぜか親指を立てている。

 

 止める気など毛頭ないらしい。

 それでいいのか先生。

 

(ど、どうしてそんな結論に!?)

 

 キヴォトス最悪の治安を誇るブラックマーケットの支配者であるヒフミですら、この場当たり的で破天荒な犯行宣言には絶句するほかなかった。

 

 その時である。

 

『――♪』

 

 ヒフミのポケットの中で、スマートフォンが軽快な着信音を鳴らした。

 

「あ、あの……ごめんなさい、ちょっと電話が」

 

 ヒフミは逃げるようにその場を離れ、路地裏の影に身を隠して通話ボタンを押した。

 

 相手は、ヒフミの直属の部下――巨大自治組織『ゲーテ』の幹部であった。

 

「……はい」

 

『ファウスト様。申し訳ありません、緊急の報告です。現在、アビドス自治区に向かったとされるシャーレの先生一行ですが、アビドス方面のブラックマーケットにて銀行強盗を企てているのでは、との情報が上がってきてまして……』

 

「あっ」

 

 ヒフミは思わず間抜けな声を漏らしそうになり、慌てて口を塞いだ。

 

 そうだった。

 先生の周囲には、ゲーテの監視役を配置していたのだった。

 

 彼らが突然に覆面を被り始めたとなれば、当然緊急事態だろう。

 

(というか、監視継続の指示、私が出しましたよね!?どうしましょう、私が一緒にいることもバレているのでは!?)

 

 焦りが脳裏をよぎるが、ここで動揺を見せれば、絶対的なボスとしての『ファウスト』の威厳が崩れてしまう。

 

 しかしヒフミ、思い至る。

 

(……いえ、監視役の方は私の姿を知らないはずです!となると上がった情報は、「アビドスの生徒と、トリニティの制服を着た生徒を連れている」程度ではないでしょうか!?)

 

 そこに、一筋の光明を見た。

 

『あの、ファウスト様。先生がトリニティ生を連れているという情報もあるのですが……。勘違いであれば申し訳ないのですが、ファウスト様ですよね?』

 

 なお、光明は幻覚である。

 

 言葉自体は疑問形であったが、その声には確信に近いものがあった。

 

 ……まぁ、バレないわけがないのだ。

 

 そもそもペロロ様のリュックを背負い、白いアサルトライフルを使い、ブラックカードで買い物する……。

 監視役から断片的に上がってきた情報だけでも、ヒフミの普段着を知る幹部からすれば「これファウスト様では?」となるのは間違いない。

 

 下手すればペロロ様のリュックで「ん?」となるだろう。

 

 ゲーテ内においても、ファウストのペロロ様好きは周知の事実である。

 それに幹部は、二億の例の『黄金のペロロ様』を落札したことも知っている。

 なぜならヒフミがその日は異常なほどニコニコし、自慢していたからだ。

 

 そうして普通にバレていたことを理解したヒフミだが、まだ諦める気はなかった。

 

 咄嗟に威厳のある声を作り、話を進める。

 

「……そうですね、私です。少し、こちらからも共有しておきたいことがあります」

 

『……はっ』

 

 部下は雰囲気が変わったことを察して口を閉じ、言葉を待つ。

 

「……カイザーグループが我々の定めた規則を破り、違法な取引を行っている疑いがあります」

 

『――!カイザーですか』

 

 そうしてヒフミは、アビドスの置かれている状況などを交え、先ほどの考察を語った。

 

 ここでこの話題を切り出すことでサボった事実から目を逸らさせ、ついでに――。

 

「そこで私は、シャーレの先生たちを利用することにしました。彼らは銀行強盗によってカイザーローンの目録を回収しようとしているようです。

 なので、我々は漏れ出たその書類を入手したことにして、強制調査に入りましょう。強盗による被害であれば、カイザーからの追及も知らぬ存ぜぬで躱せるはずです」

 

『なるほど……!確かに外部の犯行であれば、「ゲーテが権力を振りかざした」などと他企業に言われる心配もありません!さすがはファウスト様です!!』

 

 部下の声が、畏敬の念に震えているのがわかる。

 

 さすがファウスト様、頭の回転が速い。

 先ほどまでのポンコツはどこにいったのか。

 

「マーケットガードには逃走したのち、追いつけない程度の速度で形だけ追いかけるように手配してください。捕まえる必要はありません」

 

『御意。直ちにガードにその旨を指示します。

 ……ところで、ファウスト様ご自身はいかがなされるおつもりですか?』

 

 当然の疑問だろう。

 ヒフミは、これから自分が取るべき行動を考え、そして答えた。

 

「私は、『ファウスト』として彼らと同行します」

 

『…………はっ?』

 

 電話の向こうで、部下が素っ頓狂な声を上げた。

 

『ふぁ、ファウスト様が、自ら銀行強盗に……!?なん、え、なぜ――』

 

「これは決定事項です。……では、よろしくお願いします」

 

 それだけ言い残し、ヒフミは一方的に通話を切った。

 部下の困惑など気にしている場合ではないのである。

 

 小さく息を吐き、ヒフミは元の場所へと戻った。

 

 そこにはすっかり臨戦態勢を整えた覆面姿の強盗団が待機していた。

 

「遅かったわね。誰からだったの?」

 

 セリカが尋ねる。

 ヒフミは少し目を逸らしながら答えた。

 

「ええと、お友達というか……なんというか……。私がここに来ているのが、バレちゃったみたいで……」

 

「うへぇ、そりゃあ大変だねぇ」

 

 ホシノがにへらと笑う。

 

「でも、ヒフミちゃん?ここまで来ちゃったら今更逃がさないよ〜。共犯者になってもらうね~?」

 

 冗談めかした口調だが、その実本気で言っているのだろう。

 

 しかし、ヒフミの態度は先ほどまでの戸惑った様子から一転していた。

 

「はい、大丈夫です!私も参加しますよ」

 

「おおっ、ヒフミちゃんもやる気満々ですね〜☆ でも、ヒフミちゃんが被るものがありませんね。どうしましょう?」

 

 ノノミが首を傾げる。

 シロコが何かないかとカバンを漁ろうとした、その時だった。

 

「いえ、問題ないです!私も持ってますから」

 

 ヒフミはそう言うと、リュックから無造作に『それ』を取り出した。

 目の部分に二つの穴が開けられただけの、しわくちゃな紙袋。

 

 それを、ヒフミは迷うことなく頭からすっぽりと被った。

 

 ――瞬間。

 路地裏の空気が凍りつく。

 

「えっ……?」

 

 ホシノから、微かな声が漏れる。

  

 先ほどまでそこにいた、少しおどおどとした気弱なトリニティの女生徒は完全に消え去っていた。

 

 ――ヒフミにとって、紙袋とはスイッチである。

 

 その場を支配するのは、息が詰まるような底知れぬ威圧感。

 紙袋の奥から覗く眼光は、一切の感情を排した殺し屋の如き鋭さを持っていた。

 

 ただの紙袋を被っただけだというのにその異様な出立ちと雰囲気は、見る者の本能的な恐怖を掻き立てるような不気味さを放っている。

 

 それこそ、あのホシノが思わずショットガンに手を添えるほどに。

 

 その姿に先生を含めた全員が、背筋に冷たい物が流れるのを感じていた。

 

 だが彼らの反応など無視して、紙袋を被った少女はぽつりと、しかし妙によく通る声で静かに告げる。

 

「……私のことは、『ファウスト』と呼んでください」

 

 その声には、一切の反論を許さない絶対的な響きがあった。

 

「さぁ、行きましょう」

 

 促すファウストの言葉に、アビドスの面々と先生は、ただ無言で頷くことしかできなかった。

 

 

 銀行への突入は、拍子抜けするほどあっけなかった。

 

(……驚きましたね。素晴らしい手際です)

 

 ファウストことヒフミは、銀行のロビーに立ちながら、アビドスの生徒たちの動きを冷静に観察していた。

 

 シロコが立案した強盗計画は、突発的な不測の事態への対応や、撤退時の優先順位などに多少改善点はあるものの、人員の配置や制圧の速度という点においては、非の打ち所がないほど洗練されていた。

 

(一体なぜ普通に学校生活を送っていて、これほどの強盗計画が立てられるのでしょうか……)

 

 当然のようにその粗を見つけている自分を棚に上げ、ヒフミはシロコについて疑問を浮かべていた。

 

 それに、先生の動きも見事だった。

 タブレット端末を操作し、瞬く間に銀行のセキュリティシステムをハッキングしてしまったのだ。

 おかげで警報は一切鳴らず、外部への通信も完全に遮断されている。

 

(先生のこの能力を把握できたのは大きいです。もし敵対する際には、オートマタは使わない方がいいかもしれませんね。……敵対しないのが一番なのですが)

 

 先生は進んで敵対するような人物ではないだろうが、連邦生徒会所属であることは間違いない。

 

(『超人』のいない今、連邦生徒会は一枚岩ではないはずです。この機に、とブラックマーケットに干渉する役員がいないとも限りません。何かしら理由をつけ、私たちと先生が対決……なんてことも、あり得ない話ではありません)

 

 彼らの強盗風景を観察しつつ、ヒフミは先生という存在の警戒レベルを修正した。

 

 ……と、彼らの手際がいいのは間違いなかったが、この強盗が恐るべき速度で進行した最大の理由はそこではない。

 

「ふぁ、ふぁっ、ファウスト様!?ど、どう、なん、なぜこのような場所に!?」

 

 窓口にいた支店長と思しき行員がファウストの姿を見るなり、泡を吹いて腰を抜かしたのである。

 オートマタなので、エラーを吐いて、だろうか。

 

「み、みかじめ料の支払いに何か不備が!?そっ、それとも今月の収支報告に!?」

 

 支店長は土下座をしながら聞かれてもいないのに金庫のパスワードを叫び、自ら進んで裏帳簿から機密書類、そしてアビドスから回収したと見られる現金をすべて近場にあった大きなバッグに次々詰め込んでカウンターに差し出した。

 

 そのあまりの狼狽えぶりと怯えように、シロコやセリカは銃を構えたままぽかんとしている。

 

(ええと……これは、どういうことでしょう?)

 

 紙袋の中で、ヒフミもまた首を傾げていた。

 

(紙袋を被っているだけでファウスト本人だと信じている、ということですか?

 ……これだと私の成りすましが訪れただけで、強盗が成立することになりますが……。これはセキュリティ的に問題ですね……)

 

 ヒフミは本気で、そんな心配をしていた。

 

 そしてそれは杞憂である。

 

 彼女はわかっていないのだ。

 ブラックマーケットにおいて、『ファウスト』を騙るなどという行動がどれだけ命知らずなのか。

 結果訪れるゲーテの報復行動の恐ろしさと、その執念を。

 

 実際のところ行員たちからすれば、「ファウスト自ら武装集団を率いて監査しに来た」という、この世の終わりのような光景に映っているのである。

 

 その事実に思い至らないのは、張本人であるヒフミだけであった。

 

「あ、あの~ファウスト、さん……?この方たち、全部渡してきてます……」

 

 突入前は「クリスティーナだお♤」なんて言っていたキャラが消え去り、ただただ困惑しているノノミ。

 

「……素直で助かります。必要なものが入っているか、確認してください」

 

 ファウストはあくまで威厳を保ったまま、短く指示を出した。

 

 作業は迅速に進む。

 

 ふと、ヒフミはロビーの隅のATMの陰に、身を寄せ合った四人組の集団がいることに気が付いた。

 

 この辺りでは見ない、ゲヘナ生の制服に角や羽……。

 

(あれはたしか……『便利屋68』でしたか。戦闘力はあるが、依頼の達成率が低い……と、いつかの報告で聞きましたね。なぜアビドスに居るのでしょう……?)

 

 大きな角とコートを身に纏った少女――陸八魔アルと目が合う。

 

 それに気が付いた彼女は、とても目を輝かせていた。

 涙目になっている行員とは大違いである。

 

「回収終わったよ!」

 

 ”よし、撤収!!”

 

 先生の合図と共に、強盗団は踵を返す。

 

 突入から撤収まで、わずか数分。

 警報一つ鳴らさず、一発の銃弾も消費しない。

 

 まさに完璧な強盗であった。

 

「ん、なんか違う」

 

 なおこの結果に、砂狼シロコはリベンジを誓う。

 

 




先生たち「ヒフミさん……?」

アルちゃん視点入れたかったけど、なんか違和感出そうで消したのだ……。

なんかランキングにいて草
みんな好きなんすね〜ファウスト様
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