【悲報】ヒフミさん普通じゃなかったwww   作:車検のコダック

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ファウスト様は策略に長けてるんだ!!

 完璧な銀行強盗(ん、不服)を終え、帰路についた一行。

 

 マーケットガードが指示に沿って、「追いかけたが追いつけなかった」風な演技をしていたのを尻目に、ヒフミたちはブラックマーケットを脱出した。

 

 アビドス校舎への道すがら、必要な書類がちゃんとあるか、改めてバッグを開けて確認することになる。

 

 だが、そこには書類だけでなく現金も入っていたのであった。

 

「どうりで重かったわけね……」

 

 バッグを背負っていたセリカは、合点がいったとばかりにうなずく。

 

 そしてセリカが「これは私たちの稼いだお金だ」と言い、ホシノが「それは汚いお金だよ」と返す感動シーンが流れる。

 

(うぐっ……!)

 

 それを横目に、その汚いお金でペロロ様を買い漁っているヒフミは磔にされているような気分を味わっていた。

 

「……というかヒフミさん、一体何者なわけ?ファウストって何なの?」

 

 拷問の次は尋問であったか。

 心にダメージを負っていたヒフミに、セリカが追撃を放つ。

 

 ――先ほどの筋書きとしては、ファウストは偽物であった。

 いや、ファウストはヒフミなのだが、先ほどのファウストは偽物という設定である。

 ……とてもややこしい。

 

 まず、ヒフミはファウストを名乗り、成りすましの偽物として強盗するつもりであった。

 それは銀行やマーケットガード側が「相手がファウストを名乗っていたので対応が遅れた」という、カイザーへの言い訳として機能することを期待してのものである。

 のだが、ヒフミが思っている以上にファウストの名は大きかった。

 

 まさか行員が疑うことすらせず、すべて差し出してくるとは思うまい。

 

「私は普通の生徒です。ファウストというのは――」

 

 そんな理由ともかくとして、アビドスの面々はファウストの存在自体知らないのだ。

 

 私は『ファウスト』という人物に成りすましたんですよ、と、説明さえすればいい。

 そう思い口を開いたその時であった。

 

『ふぁ、ファウスト様ですよね!?本物ですか!? ずっと前からファンでした!!』

 

 先ほど銀行に居た『便利屋68』の面々が、突撃してきたのである。

 

 特に先ほど目があった際、ヒフミに熱視線を浴びせていた少女――アルの熱量はすさまじいものがあった。

 それこそまるで、ペロロ様グッズに巡り合った時のヒフミのようである。

 

 なんでも、アウトローにあこがれているらしい彼女。

 

「どうやったらあなたみたいなアウトローになれますか!?」などと聞かれたが、勝手にブラックマーケットの王になっていたヒフミが知るわけもなく。

 

 出たのは「進んでいれば、なれますよ……」などという、あまりにも中身のない答えであった。

 そして、そんな答えにすらキャーキャー騒ぐアル。

 

 恋は盲目。

 いや、違うか。

 

 ヒフミが声を発すごとに高まっていくアルの熱量に気圧された強盗団は、逃げるようにその場を離れたのであった。

 

 現金が詰め込まれた、バッグを残して。

 

 

 ――そうしてアビドス校舎に何とか帰還できたヒフミたちは、ようやく一息つくことができていた。

 

「ふぅ……。なんとか、無事に帰ってこられましたね!」

 

 ヒフミも貸してもらったパイプ椅子に腰を下ろし紙袋を外す。

 

 それを脱いだ今の彼女は先ほどまでの底知れぬ威圧感を放っていた『なんかやばい人』ではなく、少しおどおどとしたトリニティ生に戻っていた。

 

 その空気感の変わりように、他の面々はまたも困惑している。

 そしてその場に直接いたわけではないアヤネは逆に、困惑する先輩たちを見て困惑していた。

 

「ヒフミちゃんの正体……すっごく気にはなるけど。今はそれどころじゃないよね~」

 

  ホシノが部室の長机に、銀行から回収した分厚いファイルや書類の束をドサリと広げる。

 

 ヒフミは追及から逃れることに成功したようだ。

 だが、誰も道中の『普通の生徒』発言は真に受けていないだろう。

 

「……何よこれ!?」

 

 書類をめくっていたセリカが、バン、と机に手を叩きつける。

 

 その書類群に記されていたのは『矛盾』であった。

 

 カイザーはアビドスに金を貸していながらも、ヘルメット団に資金提供していたのである。

 それもその資金の出所は、アビドスが支払った利息であった。

 

 回収した金で債務者を襲うというのは、商売としては不可解な行動である。

 なぜなら、金を回収できなくなるから。

 

 それが意味するのは、カイザーには何か明らかになっていない目的がある、ということであった。

 

 セリカが怒りを滲ませるのも無理はないだろう。

 

「何が目的なのでしょうか……」

 

 ノノミも悲しげに目を伏せる。

 

 そんな会話を聞き流しながら、ヒフミはある契約書の写しをじっと眺めていた。

 

”ヒフミ?なにかあったの?”

 

 その様子に先生が声を掛けると、ハッとして顔を上げた。

 

「あっ、いえ! その……すごい利息だなって、思いまして……」

 

 ヒフミが指差した書類。

 それは現在のアビドスが背負っている莫大な借金の、大元となる融資契約書だった。

 

「あー、それね」

 

 ホシノが後頭部を掻きながら、面倒くさそうに息を吐く。

 

「おじさんも詳しいことは知らないんだよね〜。三年以上前、まだおじさんが入学するよりずっと前に結ばれた契約みたいだからさ。先輩たちも、特に何も言わずに卒業しちゃったし」

 

「……そうなんですね」

 

(過去の契約とはいえ、現在もこの暴利で取引が継続されているなら、立派な追及材料になりますね。この利息率はゲーテがブラックマーケットの金融機関に定めている上限を超えています)

 

 カイザーグループはブラックマーケットの恩恵を受けながらも、その実、管理者であるゲーテを舐め腐っている。

 それは先日のダミー会社の件しかり、これまで様々な違反を起こしていたことで証明されていた。

 

 リスクヘッジとトカゲの尻尾切りが得意なカイザーであるが、いつまでも見逃しておくほどヒフミは甘くない。

 

 ヒフミにとって、これはチャンスであった。

 

(この証拠があれば、『強制調査』に正当性を持たせられますね。踏み込みさえすれば、カイザーのことですからいくらでも問題が出てくるはずです。

 上手くいけば、PMCの件も牽制できそうですし)

 

 結論を出したヒフミは、先生たちに向けてスマートフォンを取り出した。

 

「あの、皆さん。この書類、写真撮ってもいいですか? その……お友達に詳しい子がいて、何かわかるかもしれないので」

 

「え? うん、いいけど……」

 

 ホシノが不思議そうに頷く。

 

「ありがとうございます!」

 

 ヒフミは手早く書類の写真を数枚撮影すると、そのままメッセージアプリを開き部下へと画像を送信した。

 

 判明した事実の重さや、今後の対策についての話し合いが白熱した影響もあり、結局ヒフミの正体について深く触れられることはなかった。

 

「今日はありがとね~」

 

「いえいえ、私もペロロ様をお迎えできましたし……!皆さんも頑張ってくださいね!」

 

 最後に連絡先を交換し、ヒフミは先生とアビドスの面々に見送られながら、学校を後にした。

 

 ちなみに、部下や仕事関係の人間以外では初の交換である。

 

 ファウストは友達が少ない。

 

 

 その日の夜。

 ヒフミの姿はブラックマーケットではなく、自身が入寮している自室にあった。

 

 あちこちにペロロ様グッズが飾られており、白を基調にした家具が並んだ、いかにも女の子らしい部屋。

 

 ここだけ見れば普通。

 しかし、その中央に座る紙袋がすべてを壊していた。

 

「……送った写真の確認は取れましたか?」

 

『はい、ファウスト様』

 

 電話の向こうから、部下の緊張した声が響く。

 

『確認いたしました。ご推察の通り、カイザーローンの融資契約において明確な規則違反が認められました。程度としては正直言って低レベルな違反ではありますが、ゲーテの定めた利息上限を僅かに上回っております』

 

「やはり、そうですか」

 

 ヒフミは手元の巨大なペロロ様のぬいぐるみを撫でながら呟く。

 

「これで、大義名分は立ちましたね。今からでも強制調査は入れますが……」

 

『いかがなさいますか?指示さえいただければ、すぐにでも向かわせますが』

 

「……いいえ、少し待つことにしましょう」

 

 ヒフミは紙袋の奥から、トリニティの美しい夜景を見つめた。

 

「カイザーグループは、ここのところ我々を軽く見ている節があります。今回の強制調査で打撃を与えることは可能ですが、単なる子会社程度ではトカゲの尻尾切りに遭って終わるでしょう」

 

 アビドスの広大な土地に軍事基地を建設していると噂されるカイザーPMC。

 

 規模を考えれば、彼らにダメージを与えるには少々得物が小さい。

 

(なにかしら、別口で切り込む手段が必要ですね……)

 

 できれば、表の世界の権力。

 それも、カイザーすら及び腰になるような、圧倒的な法と政治の力を持つ存在がいい……。

 

「……閃きました」

 

 ヒフミの唇の端が、微かに吊り上がる。

 

「――ティーパーティーを利用します」

 

『……ティーパーティー、ですか? トリニティの生徒会である、あの?』

 

「そうです。我々の情報網を使って、ティーパーティーの耳に入るように噂を流してください。

 内容は二つ。

 一つは、カイザーグループが関与している、ブラックマーケットでは問題にならないが『連邦法には明確に抵触する』程度の犯罪記録。

 

 そしてもう一つは、最近ブラックマーケットにて『トリニティの制服を着た生徒』が頻繁に確認されている、という情報です」

 

 部下は思わず息を呑んだ。

 

『お言葉ですがファウスト様!後者の情報を流せば、ティーパーティーの調査の手が、いずれファウスト様ご自身にたどり着く危険性があります。それはあまりにもリスキーでは……!』

 

「問題ありません。例の『条約』の影響か日に日に監視は強くなっていますから、いずれ私がブラックマーケットに出入りしていることもバレます。

 それなら効果がある内に、手札として使いましょう」

 

 豪胆にもヒフミは自らの危機すら、手札として利用しようとしていた。

 

「まず、下準備から始めましょう。

 ゲーテの公式な声明として、ブラックマーケットの市場内に『アビドスで銀行強盗を働いたファウストは偽物である。トリニティの生徒が騙っている可能性がある』という偽情報を流布してください。その上で、ゲーテ側からティーパーティーに対して、『御校の生徒がファウストの名を騙っているようだが、何か知らないか』と問い合わせを行うのです」

 

『な、なるほど……!』

 

 部下の声が、驚愕と称賛に震える。

 

『ファウスト様の制服姿での行動には、このような意図が含まれていたのですね!?

 ティーパーティーといえど、ゲーテほどの組織が相手となれば動かざるを得ません!彼らも保身と面子がありますから調査するしかなく、その過程で『カイザーの連邦法違反の証拠』に辿り着けば……!』

 

「その通りです。それに『条約』もありますから、ゲヘナに対して落ち度となりうる事案を放置もしないでしょうし。

 ……では、お願いします」

 

『御意!!では、おやすみなさいませ』

 

『はい、おやすみなさい』

 

 通話を切り、月明かりの差し込む窓辺へと歩み寄る。

 

 紙袋を取ったその顔には、すさまじい量の汗が流れていた。

 

「……はふぅぅぅ!!」

 

 そう。

 今までの会話は全て、思いつきと演技で構成されていた。

 

 帰り着くまでの間、ヒフミは延々と頭を捻っていたのだ。

 誤魔化す内容はズバリ、『トリニティの制服について』。

 

 頭の回転が速い、ポンコツはどこに行った、などと書いたのに、あの時点でポンコツの伏線を張っているとは思わなかった。

 

 今こうして全部の話がつながったことで、ヒフミは安堵の息を漏らしたのである。

 

 これで威厳は守られた。

 

 ――だが。

 ならばヒフミはカイザーに対して怒りを覚えていないのかと言われれば、そうではない。

 

 カイザーは、ヒフミがゲーテと共にようやく作り上げたブラックマーケットの平穏を度々脅かしていた。

 

 そもそもの話、基本的に心優しいヒフミが「お仕置きが必要」などと口にすることは、そうない。

 見せしめで犠牲となった例のダミー会社ではあるが、時折同程度の規則違反を犯す企業は当然いるのだ。

 

 いくら生徒たちを守るためとはいえ、厳罰化しすぎるとそれはそれで問題が出てくる。

 ゆえに基本、規則違反が出てもヒフミは「処罰お願いします」と言うだけだ。

 

 まぁつまり、思わず口を出す程度にはヒフミはカイザーに対して怒りを抱いていたのである。

 

 そして部下はいつもと違う言葉に強い怒りを感じ取った。

 その結果、彼らを「キヴォトスから追放」なんてことになったのだ。

 

(恨むなら、自社を恨んでほしいですね)

 

 ため息を吐きながら、ベッドに横になる。

 

 最近、カイザーの話題ばかりで嫌になるヒフミはポツリと。

 

「許しません、カイザー」

 

 思わず、そんな言葉を漏らすのだった。

 

 




ダバー

てか説明難しいわね!
だいぶ読み直したけどまだ違和感感じるわよ!

前回のここすき、最後の行に集中してて笑っちゃった。

感想もニチャニチャしながら読んでるよ!!
要らんこと書きそうで怖いから返信はしてないけどね!
ごめんなさい!
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