堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします 作:Revak
──どこだろうか、ここは。
少年の意識が戻った時、最初に思考したのはそれだった。
そして次に思ったのは、体が軽いという事。
はてなんだろうかと腕を動かす。
短い腕が動いた。
「あぶ?」
は、と言ったつもりが妙な声が出た。
なんだ、と混乱する。
体が妙に軽く、右手も左手も右足も左足も短い。
それどころか胴体そのものが小さく思える。
仰向きなのか天井が見えるが、天井は白い。
つまり、この光景と最後の記憶から推測するに──
(転生でもしたのか……?!)
ラノベをこよなく愛する元少年は現状を把握した。
田中太一。十八歳の少年。
通信制の高校に通っているが、いじめなどにあったわけではなく、本人の心の問題だ。
暇な時間でネットサイトに掲載されている小説をよく読んでいた。金がかからないからだ。
そんな少年はある日事故にあう。
青信号を渡っていたところ信号無視したプリウスによって引かれ、地面を数度転がった。
もし救急車を呼ばれていたら助かったかもしれないが、引いたプリウスはそのままどっかにいき、通行人は見て見ぬふりをしたためそのまま死んだ。
そして、死んだはずの少年は赤子になっていたのだ。
四年の月日が経った。
幼女となった元少年太一、現在名ルシフェルは己のまたぐらを覗いた。
何度覗いてもそこに男の象徴はなくスジがあるだけである。
(実戦する前に亡くなるとか、神はこの世に居ない!)
そうルシフェルは神に唾吐いた。
(しかし……)
ルシフェルは己に与えられた部屋を見た。
結構な広さを持つ部屋だ。幼女向けの部屋ではなく成人男性の一人部屋と同等の広さを持つ。
ただ特徴的なのは壁も床も天井も汚れを知らないかのように真っ白なのだ。
床にはおもちゃが綺麗に置かれている。
型ハメようの玩具、塗り絵、よくわからないやつ。
ルシフェルはそれらに興味を持たず絵本を読んでいた。
ルシフェルが転生したのは異世界、しかも天界だ。
ルシフェルの母はヴァヴ、父はサタンだ。
ルシフェルは己が神話のような世界に転生したことに驚愕しつつまぁなるようになれだと日々を適当に生きている。
「やっほールシフェル、元気?」
そこに男が声をかけてきた。
「見ての通り元気だよ、ガブリエル」
ルシフェルはそう軽く返した。
男は長身だ。
身長は二百センチにも上り、ガタイも非常によく鍛え上げた筋肉を持っている。
白いトーガを着ているのは様になっており天使のように見える。
白に近い銀髪碧眼の男でどこかちゃらんぽらんな雰囲気の顔つきをしている。
「しかしおもちゃには目もくれずまた絵本か。それ面白いの?」
ガブリエルはルシフェルの前に胡坐をかいて座った。
「面白いよ。おもちゃで遊ぶよりはよっぽどね」
絵本の内容はこうだ。
悪い悪い人たちは悪魔に連れ去られ魔界……地獄に追放され、良い人たちは天使によって天界、つまり天国に連れていかれるという話だ。
桃太郎や浦島太郎などはない。
「そろそろ歴史書とかほしいんだけど」
ルシフェルはそう口をとがらせながら言った。
ルシフェルはまだ四歳の幼女だ。
身長も百センチしかない。
肌は白く綺麗で銀髪碧眼の容姿をしている。どこか中世的に見えなくもない程度の容姿だ。
「いやー、四歳にそれは早いでしょ」
ガブリエルが笑いながら言った。
「もう四歳なんだからいいと思うけどな」
ルシフェルはそう不満をあらわにする。
「いやー、歴史とかは物事の善悪の区別がつくようになってからじゃないと、まだ早いかなー」
「ちぇ。それじゃあ今日も魔法に付き合ってよ」
魔法。
ルシフェルが転生したこの場所には魔法があった。
ルシフェルは二歳ぐらいから魔力を感じ取り魔法を行使する事が可能になっていた。
「ま、それならいいよ。庭に出ようか」
ガブリエルがそう言うと二人して庭に出た。
庭は広い。
一般家庭の庭ではなく豪邸の庭レベルであり、もはや家が四軒ぐらい建てれるレベルの広さを持っている。
庭でガブリエルとルシフェルは対峙する。
「じゃあいっくよー、
ルシフェルが魔法を唱える事で魔法の矢が二つ浮かぶ。
ガブリエルは腕でガードし腕に命中するも大したダメージにはならない。
ガブリエルはレベル九十の戦士系クラスを収めている。
そのためレベル八程度のルシフェルの魔法は痛くもかゆくもない。
この世界にはレベルがある。
レベル百が限界値であり、レベルを上げるには種族としてのレベルを上げる、もしくはクラス……職業のレベルを上げる必要がある。
クラスや種族には下位や中位、上位などがある。もっと細かい分類があるがそれはまた今度にしよう。
そう言ったクラスの最大のレベルは十五でどうやっても幾つかのクラスをまたぐことでレベルを上げることが出来る。
戦闘職感でレベル差が十もあれば戦いが成り立たないぐらいには差が生まれる。
その世界においてレベル九十というのは圧倒的強者の証であり、その気になれば単独で人類壊滅ぐらいは出来る超越者の証だ。
勿論それをするには同格が居ないという前提条件が必須だが、同格が居ない場合はそれが出来るのである。
だからルシフェルのレベル八程度ではガブリエルは赤子がなんかしてんなぁ程度にしか思えない。
「うーん……
ルシフェルは今度は第二環魔法を唱えた。
この世界の魔法は環魔法と言い、第一環から第十環魔法まである。
約七レベル刻みで使える魔法の環も上がり、より強力な魔法を使えるようになっていく。
ルシフェルは魔法でガブリエルの体を持ち上げようとする。
念動力の魔法だが、相手にかける事でレジスト……抵抗され無効化される。
状態異常系の魔法はレベル差やステータス差で抵抗されやすい。
「ざんねん、効きませーん」
「ちっ」
ルシフェルがガブリエルにこの魔法を使うのは四度目になるが毎回レジストされている。
「じゃあこれだ。
使ったのは第二環魔法だ。
魔力の弾丸を作り放つという魔法で当たると鋼鉄程度ならへこませる威力を持つ。
「えい」
その弾丸をガブリエルは蚊でも払うかのようにぺちっと叩いて無効化した。
「やっぱレベル差って残酷なんだよね」
たはーとガブリエルは笑った。
「くそが。じゃあ今日もレベリングするぞ」
「okok。じゃあ天使用意するね」
ガブリエルが種族
レベル割る五分同時に発動可能で、
ガブリエルが使ったのは天使の種族的
天使創造の枠が例えるなら百あり、百の数値を割り振ることで下位の天使から上位の天使まで創造できる。
その枠は使用から二十四時間経たないと回復しない。
ガブリエルは下位の天使を創造する。
創造されたのは最も弱い天使の
レベルも五と低くステータスも当然低い。
外見はどこか機械的な形で白く顔は四角い。
天使の証として背中から白い天使の翼が生え、頭上には白い輪が浮いている。
「じゃあ
魔力の弾丸が
だが一発では倒しきれずもう二発当てる事で倒せた。
その後もルシフェルはガブリエルが創造した天使を攻撃し倒していく。
この世界にはレベルがあり、レベルを上げる方法は二つある。
一つは敵対者、モンスターなどを倒すこと。これにより肉体がパワーアップする。
もう一つは就きたいクラスに合わせた行動をとること。
(うーん、末恐ろしいね、暁の子は)
ガブリエルは己が創造した天使を一方的に攻撃しているルシフェルを見てそう思考する。
今ルシフェルとガブリエルが居るのは天界だ。
天界、つまり天使が居る世界だ。
ルシフェルが転生した世界は幾つかの異界に別れている。
現世。人間や鬼、アンデッドやドワーフにエルフなどの多数の種族が住まう世界。
魔界。悪魔の住まう世界であり日々悪魔たちが殺し合いをしている。
天界。天使の住まう世界であり楽園。英雄などは死後この世界で祭られ英霊として暮らすことも出来る。
神界。神々が住まう世界。悪しき神も善き神も住んでいる。
これら四つの世界に分けられている。
天界はここ最近は暇だった。
何せ悪しき神々は別のゲームに夢中で神々とラグナロクなんてしないし、天使たちは平均レベル七十を超えるのでよほどのことがないと問題があってもすぐ鎮火する。
さらに言えば天界に来れるのは英雄と神々なのでよほどの事はまず起こらない。
天界は平和だ。
争いもなく、地上へは殆ど干渉しない。
神話の時代は終わり、今は人の……定命の時代だ。
いつまでも上位者が干渉し続ければそれは神の管理した箱庭となり、自立とはまた遠くなってしまう。
だから神々も天使も地上は観察するに留め基本干渉はしない。
まぁ別世界から魔王が来たり一般誕生のやべー奴が生まれたりしたら流石に世界が滅んだりするので干渉するが。
そんな平和な世界に生まれたのが暁の子、ルシフェルだ。
本来ルシフェルは生まれるはずのない存在だ。
母親のヴァヴは天界のトップである女神。父親のサタンは魔界の魔神だ。
この世界では異種族間では子供は基本作れない。
例外は二つある。
一つはアマゾネスという女しかいない種族。彼女たちはどんな種族でも──精を放つことが出来る相手となら子供を作れる。
だが出来た場合の子は全てアマゾネスにしかならないが。
もう一つは第十環魔法
宝石が欲しい、寿命を延ばしたい、程度ならば叶う。不老不死は叶わないが。
その魔法を使う事でヴァヴは魔神の子を孕む能力を得て、ルシフェルが生まれたのだ。
ただこの場合は女側の種族の子しか生まれないが。
天界のトップと魔界のトップの子という事でルシフェルは扱いにこまわれている。
ヴァヴもサタンも異形種……寿命の無い種族だ。
さらに言えば神々や天使、悪魔は死んでも復活できる不死性を持っている。
故にルシフェルを後継者にするという事はないが、じゃあルシフェルをどの地位にするんだ、という問題があった。
今はまだ子供だからいいが、大人になって仕事を割り振ることになった場合、何をさせるのかという問題もある。
まぁ天界は平和過ぎて仕事という概念がほとんどないが。
ルシフェルが二十体ほど
「おつかれー、またレベル上がったんじゃない?」
「……少しは上がった気がする。けどまだまだ先は遠いな」
そうルシフェルは空を見上げるのだった。
偽りの空が映る空を。