堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします 作:Revak
自分が校長の時代にこんなことになるとは、人生何があるかわからないものだ、とグランツは興奮しながら学園を歩き校長室へ向かう。
グランツは貴族の出身だが、一時期冒険者をしていた時期がある。
旅に出たころは第二環魔法しか使えなかったが徐々に成長していき三十代後半のころには第四環魔法まで使えるようになっていた。
魔法に関しては人一倍詳しい自信がある。グランツはこの国一番の魔法の使い手なのだ。
だからこそ、自身より明確に格上であるルシフェルには興味津々だ。
見たことない光線の魔法を駆使しレヴィアタンと共にかつての帝国を滅ぼしたという大悪魔。その魔法は一体どの環位なのか気になってしょうがない。
だが下手に刺激して機嫌を損ね、殺されては元も子もない。だから慎重に行かねばと思いつつグランツはステップでもしそうな気軽さで校長室に入った。
校長室のソファに座りルシフェルとエストは校長グランツと相対する。
グランツもまたレベル二十七という人の中では強者の中だ。
この学園がある王国、ロ・ペルギウスの英雄がレベル三十なのでレベル差が三程度しかない。グランツは圧倒的強者の分類なのだ。
「それでは、ルシフェル殿。貴女はどういった扱いを望む?」
グランツは真剣な瞳で問いかけた。
「ん-、まぁ生徒と同列でいいかな。こいつ……エストの同級生的な扱いでいいよ」
ルシフェルは軽い口調でそういった。
そこに裏の意思はなさそうに見える。
「わかった。では住まいは……エスト君と同室でいいかね?」
この学園は全寮制の学園だ。二人で一部屋使っている。
エストも同室のクラスメイトが居るが事情が事情だ。別れても問題はないだろうとグランツは考える。
「いやあの俺男でルシフェルさん女なんですが」
そこにエストがそれは駄目だろと指摘する。
男女同じ部屋など万が一間違いが起こっては困る。いやまぁ相手は堕天使なので間違いが起こりようがないかもしれないが、思春期の少年には毒である。
「僕は別にいーよ。人間程度に何見られても気にしないし」
ルシフェルにとっては部屋で着替える時裸を蚊に見られるのを意識する奴が居るわけない、程度の認識だ。
それに元は男なのだから男と同室でも気にはしない。まぁ自慰行為するときは前もって言って貰わないと微妙な雰囲気になりそうだな程度には思っているが。
「まぁ、本人もこう言ってるしいいじゃろ」
グランツはそうあっけからんと言った。
グランツとしては要注意対象二人が別れていられるよりも同じ場所に居て貰った方がいいのでありがたいことだ。
「えぇ、でも……」
まだ抵抗の声を上げるエストに対しルシフェルが「男なら覚悟を決めろ」と言ったことで渋々承諾した。
「では授業はエスト君と同じように受けるでいいかね?」
「ん、いいよ。魔法の授業とか面白そうだし」
ルシフェルは感覚派の天才だ。
だから魔法は物心ついたころからなんとなくで使えたし、魔導書を一回読めば習得できた。
魔法の習得は幾つか方法がある。
最も簡単なのはレベルアップによる習得だ。
一レベル上がることに三つの魔法の内一つを選んで習得できる。
完全な魔法職なら百の魔法を覚えることになる。
もう一つが魔導書という先人が残した魔法を習得するための本を読むことだ。
魔法の理論や効果などが詳しく書かれた本であり、読みこむことで魔法を習得できる。
後は自力での魔法開発だ。既存の魔法から幾つか要素を抜き出し組み替える事でオリジナルの魔法を作り出せる。難易度は高いが。
他にも精霊との契約だったり
だからルシフェルは魔法の授業というファンタジー全開のイベントに興味津々だった。
余談だがこの学園は
エストもルシフェルが授業を受けることに文句はないようで頷いた。
「それでは……そうだな。エスト君。部屋を新しく用意するまでの間ルシフェル殿にこの学園を案内してやってくれ。終わったら寮に戻ると良い」
「……わかりました」
エストは不満そうにしながらも了承した。
「じゃあ行こ」
ルシフェルはそういうとエストの手を取って立ち上がった。
エストはしどろもどろになりながらもルシフェルに着いて行くのだった。
「さて、どうなるかのぉ」
大悪魔の襲来にグランツは少年のように心躍らされるのだった。
■
「じゃあまず、ここが校門な」
最初に案内されたのは校門だ。
「んであっこにあるのが寮だ」
エストは指先を校門の外に示す。
そこには無骨な作りの大きな寮が六つあった。
全て四階建ての建物で結構な大きさがある。
「見た感じ六つしかないけど」
「あぁ、男女ともに寮は同じだからな。生徒も多くて一学年三十人程度だからこれだけで足りるんだ」
「そりゃ楽なこって」
「あぁ。じゃあ次行くぞ」
エストの案内の元ルシフェルは学園内を歩く。
玄関で靴を変える事はない。
廊下を少し歩くと一年生の教室に着く。
「ここが一年の教室だ」
「おー、学校ぽい」
「学校ぽいもなにもここ学校だが……」
一年の教室は学校の教室その物だ。
ただ机と椅子が白く使いやすさを優先した物になっている。
ルシフェルが前世ぶりの学校の風景を見て謎の感動をしているとエストは冷静に「次行くぞ」とルシフェルの肩を叩いた。
一階の奥に着いた。
「ここが食堂だ。昼飯はここで買える」
「おー、食堂だ。人間どもも何人かいるね」
ルシフェルが言う通り生徒が何人か早い晩飯かあるいはおやつを食していた。
じゃあ次、と二人は二階に上がる。
着いた先は図書室だ。
「ひろ」
図書館は非常に広かった。
「この図書室は
「へー。解除魔法はなったらどうなるんだろ」
「頼むからそれはやめてくれ」
ルシフェルが冗談交じりに言うとエストはやめろと強く言った。
他にも中庭だったり屋上なども案内された。
そうして案内するところが無くなり、寮へ行く。
寮の入り口にはロイスが居た。
「来たか、えぇっと……ルシフェル、殿とエストの部屋を案内する」
「敬語使わなくていいよー、僕も使わないし」
「……わかった。これが部屋の鍵だ。無くしたらいうように。探知魔法で探せるからな」
「わかった」
ルシフェルは軽い調子で返した。教師相手に敬語を使う気はなかった。
所詮は自分の十分の一も生きていない人間程度に敬語を使う気になれないのだ。
人間だったころは年下相手でも敬語を使ったが人外になったことでそういった感覚が消えている。
「家具は必要最低限あるが……服はないから後で自分で用意してくれ」
「服はまぁこれあるからいいよ。
「いや服はいるんじゃないか? 汚れないとは言え気分的に嫌じゃないか?」
「僕そういうの気にしないけど……」
「……まぁ、本人が良いならいいけどよ……」
エストはなんだかなぁ、という顔をしながら新しい鍵を貰った。
■
夕方の六時頃。
ルシフェルとエストは新しい部屋に入った。
エストは若干緊張している。エストも年頃の男子だ。女子と同じ部屋で寝泊まりするなど緊張するに決まっている。
「意外と広いね」
ルシフェルがエストの緊張に気づく事はなくのんきに言う。
部屋はそこそこの広さを持っている。
ベッドが二つに勉強机と椅子が二つ。
トイレや風呂はない。各階にトイレは男女別である。風呂は一階に勿論男女別にある。
「そういやご飯はあるの?」
ルシフェルが尋ねる。
「あ、あぁ。一階に食堂がある。朝の六時から午後六時までやってて無料で食べれるが、メニューは二つだけだ」
「人間の世界のご飯か、楽しみだ」
ルシフェルはるんるん気分になる。
魔界の飯など悪魔の腕を焼いた物やら魔獣のステーキなど雑な料理しかない。
パンなんてものはないし塩や砂糖は超が付く貴重品だ。
魔界に海はないし、塩鉱山なんてものもあるのかわからない。探せばあるのかもしれないが。まぁ海が無いので期待するだけ無駄な気もするが。
砂糖の原料であるサトウキビは生えてるが加工が難しく下手に加工すると麻薬になってしまう。
「じゃ、飯食いに行くか」
「おっけー」
二人は部屋を出て食堂に向かう。
エレベーターなんてものは無いので階段で降りる。
一階には複数の場所がある。
風呂、食堂、男女共有の談話スペースなどだ。
食堂に入ると中には晩飯を食べている何人かの生徒が居た。
生徒たちはルシフェルを見るとそっと目を反らした。
ルシフェルはそれに気づき「殺そうかな」とつぶやくとエストが「それはやめてくれ」と言ったので辞めておくことにした。
食堂には寮母が居り、彼女が料理を作ってくれる。
コックのクラスを持っているので大量の料理も難なく作れる。
ルシフェルはA定食のハンバーグとサラダとパン、エストはB定食のチキンカツとサラダとパンを選んだ。
キッチンに行きメニューを注文するとすぐに出てくる。
受け取って近くの席に二人は座る。
ルシフェルが食べ始めると感動で涙を流した。
「ど、どうした?!」
エストが慌てふためく。
「いや、数百年ぶりの食事に感動して……」
魔界で暮らし始めて約八百年。魔界では碌に良い物を食べられなかった。
だからこそ数百年ぶりのまともな食事に感動する。
エストは変な奴だな、と思いつつ食べ進め、十分も経てば二人とも食べ終える。
トレーを持って返却口に返す。
「じゃあ次風呂行こうかな」
「おう、案内するわ」
そうして二人が風呂場に向かおうとしたところ、立ちふさがる者がいた。
金髪碧眼の男だ。ガタイもよく鍛えているとわかる筋肉を持っている。
つらは非常によく逆ナンでもされそうな顔である。
この学園の制服を着ている男であり、名をミヒャエル・フォン・ウーリクという。
「ウーリク、何の用?」
エストが少しめんどくさそうに対応する。
「何、堕天使を召喚したと聞いてな。調子はどうかと思ってな」
聞いたというが嘘だ。
ルシフェルが召喚された場にミヒャエルも居たし腰を抜かしていた。
ミヒャエルは良い男だ。
堕天使なんて言う劇物を召喚してしまったエストを気にかけているのだ。
「まぁ、ボチボチだよ」
エストはなんてことないかのように言う。
ミヒャエルはその瞳を注意深く見つめる。
(……まだ現実を受け止めきれてない、と言ったところか)
ミヒャエルはそう判断する。
かつて国を滅ぼした堕天使という存在をエストはまだ受け止めきれてないのだ。
実際ルシフェルは存在感と威圧こそ凄いが力を実際に振るった訳ではない。だから現実を直視できなくてもしょうがないだろう。
「なにかあれば俺に言うと良い。微弱ながら力になるぞ!」
そうミヒャエルは力こぶを見せた。