堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします 作:Revak
五百年の時が経った。
ルシフェルは一人魔界の荒野を飛ぶ。
向かう先は特に決めていない。
暇なのでこうして空を飛んでいるのだ。
ルシフェルは空を飛ぶのが好きだ。前世では決してできなかった単独での飛行という現実離れしたこの飛行が好きなのだ。
そうして飛んでいるとまたも村を見つける。
こうして飛んでいるとたまに村を見つけ、見つけるたびにルシフェルは襲撃をする。
ルシフェルはたまにはアインソフで殺すか、と地上に降りる。
「お、来たな」
村の適当な広場に降りると、そこには武装した悪魔たちが居た。
そして中央近くには若い悪魔が一人。
純粋な人型の悪魔だ。髪は黒いが先端が赤くなっている。
両目は縫い付けられ閉じられており、額にも縫い目がある。
額からは黒い結晶にも似た角が一本伸びている。
それを見てルシフェルは眉を潜める。
まるで自分が来るのをわかっていたかのような待ち受けだ。
(未来視? いや探知系には対策を積んでいる。それはないはず)
と言っても完璧な対策ではない。より上位の探知魔法や情報系魔法を使われれば突破される程度の物だ。
だがこんな辺鄙な村にそういった高度な魔法を使える者がいるとは到底思えなかった。
「まぁいいや、殺せば済む話だし」
ルシフェルはそういうと異空間から愛用の蛇腹剣アインソフを取り出した。
「待ってくれ、取引をしないか?」
そう代表者らしき悪魔がルシフェルに話しかける。
「取引? 僕と何を?」
「俺たちを殺さないでくれたら、面白い物を見せてやることが出来る。ルシフェル、あんたの退屈を紛らわせることが出来るはずだ」
「……へぇ。それは大それたことを言うね、けどまだプレゼンが足りないかな」
「勿論あんたにとって俺は初見のなんてことない悪魔だ。だから……今からこれで勝負しないか?」
そういうと悪魔──名をバァル・ゼブルは手に持つ王酌で地面をつついた。
「今からこの王酌であんたに一撃入れる。俺が勝ったら、ルシフェル、あんたを俺の仲間にする。俺が負けたら……この村を好きにしてくれ」
「こっちにあんまりメリット無いけど、本気?」
「なんだ? 最強の堕天使様はこんな小僧に負けるのが怖いのか?」
見え見えの挑発。あからさまな煽り。
それに対しルシフェルも頭に来た。
「いいよ、何なら僕は魔法を使わず剣だけでお前を殺してやるよ」
「勝負を受けるって事でいいんだな……じゃあ、行くぞ!」
瞬間バァル・ゼブルは駆け出した。
(弱いな)
ルシフェルはその速度を見て判断する。
戦士職にしては低レベルにしても遅すぎる。魔法職にしても遅い。
どう高く見積もっても三十レベルも無い雑兵だ。
ルシフェルはアインソフで王酌を受け止める。
硬い金属同士がぶつかる嫌な音がした。
連続でバァル・ゼブルは攻撃をするもルシフェルは全てアインソフで受け止める。
上下左右全方位からの攻撃をルシフェルは難なく防ぐ。
バァル・ゼブルは一旦距離を取る。
ルシフェルは距離を詰めてもいいが甚振って殺そうと決めたのであえて詰めない。
「行くぞ!」
堂々と宣言しバァル・ゼブルは魔法を行使する。
「
唱えたのはバァル・ゼブルオリジナルの魔法だ。
その場から爆破を使い高速で移動をする魔法である。
急激な高速移動にルシフェルは驚きつつも対応する。
正面から来る。そう予測したがそれは間違いだった。
ルシフェルの寸前で地面を踏みしめ跳躍したのだ。
恐らくは何かしらの
バァル・ゼブルがルシフェルの背後に着地する。
当然ルシフェルはそれを察知しくるりと振り返りながらアインソフを振るう。
バァル・ゼブルは王酌で防御するも、そのまま吹っ飛ばされた。
ガードの上から響く斬撃だ。
「お前程度の下級悪魔が僕にかなう訳ないだろ」
ルシフェルはそうため息を吐きつつバァル・ゼブルを見下す。
それに対しバァル・ゼブルはにやりと笑みを見せる。
「どうかな……単純な殺し合いなら確かに勝てない。だけど勝負なら話は別だ!」
そう叫びつつ無詠唱化した火炎の魔法をバァル・ゼブルは放つ。
ルシフェルは<魔素干渉>の
この
飛んでくる火球をルシフェルは斬り裂く。
その陰に隠れるように突進してくるバァル・ゼブルを蹴り飛ばした。
バァル・ゼブルは苦悶の声を上げ、後方に転がっていった。
「はは! 無様に転がってやんの!」
ルシフェルはそれを見て嘲笑する。
ルシフェルは更にアインソフを伸ばす。
鞭のようにしならせながらバァル・ゼブルに向かって攻撃する。
あえて動作を遅くしわかりやすく攻撃すれば転がってバァル・ゼブルは回避する。
数度攻撃をする。
地面が斬られ深いクレーターが残り、その度に余波でバァル・ゼブルにダメージが蓄積する。
「ほらほらどうした?! 逃げるだけか?!」
そうルシフェルは煽るとバァル・ゼブルはにやりと笑みを見せた。
それが気に入らなかったルシフェルは本気で殺そうと攻撃をし──
背後に転移したバァル・ゼブルが王酌でルシフェルの頭を叩いた。
「はっ?!」
即座に後ろに振り返りつつバァル・ゼブルの腹を殴って飛ばした。
アインソフを元に戻す。
「……転移魔法か。詠唱が無いのは……無詠唱化の
正確には王酌が持つ能力だ。
転移魔法は第三環魔法からある。
バァル・ゼブルはその魔法を使いルシフェルの背後に転移したのだ。
「俺の勝ち、だな」
バァル・ゼブルは腹を痛そうに抑えながら立ち上がった。
「……確かに負けだね。で、何が欲しいの?」
ルシフェルはやる気なさそうに話しかける。
その気分を一瞬で変える言葉をバァル・ゼブルは紡いだ。
「俺と一緒に、魔界を征服しようぜ、ルシフェル」
その言葉にルシフェルは眼を見開き驚愕した。
奥に居る幼女体系の悪魔がこいつは、と天を仰いだ。
「魔界を、征服? ……生まれてから戦乱しか起きていないこの魔界を統一できるとでも?」
「出来るさ。俺じゃなくて、誰だってその力はあった。これまで統一されてないのはやり方が間違ってたんだ。俺は違う。本気でこの魔界を、正しい方法で統一する」
そうバァル・ゼブルは閉じられた目を見開き強くルシフェルを見つめた。
赤い目がルシフェルを見つめ、ルシフェルはその瞳に力を感じ思わず後ずさった。
レベルでは己のが圧倒的に上。装備でだって己が上だし生きた年数で言えば自分の十分の一にすら満たない相手だ。
それを相手に己が気圧されたのだ。
ルシフェルはそれを悟り、ニヤリと笑みを浮かべた。
「いいね。お前のその夢物語に付き合ってやる」
ルシフェルは異空間にアインソフをしまい、バァル・ゼブルの元まで歩く。
「お前、名は?」
「バァル・ゼブル。親からもらった大切な名だ」
「そうか、バァル・ゼブル。お前の仲間となって魔界統一に手を貸してやる」
「ああ、これからよろしく頼むぜ、ルシフェル」
そうバァル・ゼブルは手を差し出し──ルシフェルもその手を強く握るのだった。