堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします 作:Revak
「俺の勝ちだ。仲間になってもらうぜ」
バァル・ゼブルはそうニッと笑みを見せながら言った。
それに対しアインベルは「はぁ~~~~~」とでかく長いため息を吐いた。
よっこらせ、と姿勢を直し立ち上がる。
「それで、だ。俺を仲間にするからには魔界統一のための戦略はあるんだろうな?」
「ある。次は、ティカを仲間にする」
「……俺と同じ賭けをするのか? それは無駄だ。あいつはそんなことじゃ動かない」
「そうだろうな。だから、まずは俺が強くなる。強くなって一騎打ちで打ち負かし、無理矢理仲間にする」
「まぁ、それが妥当か……いいだろう。最高の特訓相手を見繕ってやろうじゃねぇか」
■
百年後。
クリスタルパレスの庭にて。
バァル・ゼブルは二人の悪魔と模擬戦をしていた。
戦う相手はヴーヴェとシュテフィの二人だ。
二人は双子の悪魔だ。
赤い髪に赤い瞳の悪魔だ。二人とも身なりは整っており容姿も優れている。
魔法使いの格好とモンクの格好をした二人組だ。
「ぜりゃぁ!」
双子の弟の方、ヴーヴェが殴り掛かった。
ヴーヴェはアインベルと同じモンク、拳による近接戦闘特化のクラス構成をしている。
ヴーヴェの猛攻をバァル・ゼブルは難なく避け、王酌で攻撃も入れる。
一撃一撃は大したことないダメージだ。それでも純魔法職であるバァル・ゼブルの物理攻撃が入っているという事はそれだけレベル差があるという事。
シュテフィが背後から魔法を幾つか飛ばす。
火球、氷の槍、木の槍などが飛んで行く。
バァル・ゼブルはそれらを最小の動きで回避するとバックジャンプでヴーヴェから距離を取り魔法を唱える。
「
唱えたのは第九環魔法の爆発魔法だ。
シュテフィの眼前で大爆発が起こる。
余波でヴーヴェも吹っ飛び、訓練場の半分以上がクレーターで埋まった。
直撃を喰らったシュテフィはダウンし倒れた。
「この野郎!」
ヴーヴェが姉がやられたことに怒り突撃する。
ノックバックで二人は相当な距離がある。
バァル・ゼブルは魔法を無詠唱化して唱える。
無詠唱化には利点が二つある。
一つは
もう一つは詠唱には時間がかかるが無詠唱化した場合は即座に魔法を撃てる点だ。
溶岩で出来た巨大な右腕が出現しヴーヴェを殴り飛ばした。
この腕は第八環魔法の
溶岩で出来た腕を生成し術者の意のままに操る魔法だ。
物理系魔法に分類される魔法である。
魔法には属性があり、中には無属性や物理属性などがある。
その先を予測しバァル・ゼブルは爆破の火球を放った。
ヴーヴェは回避も防御も出来ず受けてしまい、体を爆炎で焼かれた。
「がっ……」
そのままヴーヴェは倒れ、気絶した。
「いやーだいぶ強くなったね」
そこにルシフェルが拍手をする。
「あぁ。これでティカを仲間にする最低限の準備は整った」
「けどあの女ほんとに仲間になるの? 作戦は?」
「ある。が、秘密だ」
「またそれか。まぁ翔さんあるならいいけどさ」
そうしてバァル・ゼブルは倒れたヴーヴェに駆け寄り背負って医務室へと連れて行くのだった。
■
バァル・ゼブルの作戦はこうだ。
『既にアインベルも俺の仲間になり、他の魔公も勧誘済みだ。遅れたくなければお前も俺の仲間になれ』と、そう脅すつもりなのだ。
ティカ本体の戦闘力は魔公の中では低い方だが、軍勢は別だ。
数百年前にルシフェルにそのほとんどを壊されたが再編したアンデッド軍はレベル六十を超えるアンデッドも複数居る。
更にその数も以前の倍、つまり二百万のアンデッドがティカの配下になっているのだ。
いかにルシフェルが居るとは言え正面切って戦えば敗北する確率は高いだろう。
無論ルシフェルが全てを殺してしまいにするというやり方ならまだ勝ち筋はあるが、それだと本来の目的から外れるのでどっちにしろ負けだ。
「圧巻だな」
バァル・ゼブルの眼下には以前の倍、二十万の悪魔の軍勢が居た。
これはヘルに残した最低限の住民を覗いたアインベルの最大軍勢である。
悪魔の軍は進軍を始めた。
進軍して五日目。
二十万の悪魔軍がティカの領地に辿り着いた。
軍の先頭にはブラントに騎乗したバァル・ゼブルが居た。
「攻城戦を選んだか」
攻城戦というのは本来不利な側面を持つ。
味方側の援軍がない場合は消耗するだけであり、いずれリソースが尽きて終わる。
だがこの魔界でなら違う。悪魔は死んでも復活できるし、食事も睡眠も呼吸も不要、二十四時間休まず防衛出来る。
だがそれでも城壁は自動修復されたりはしないので若干不利だが、それでも強い側面を持つ。
しかしそれも、特級の戦力が居なければの話だ。
バァル・ゼブルは既にブラントを仲間にしている。
ルシフェルやアインベルの力を借りず、単独でブラントに挑み仲間にしたのだ。
ブラントが前線に出て口を開ける。
竜の十八番、ドラゴンブレスだ。
紫色の炎が口に溜まり。放出される──その寸前。
空から白いレーザーが降ってきてブラントの頭を焼き焦がした。
ブレスは暴発しブラントの口内を焼く。炎の竜なので大したダメージにはならない。
バァル・ゼブルが空を見上げる。そこには方舟に乗ったティカが居た。
銀髪銀眼の美女。短髪。
右のこめかみからは銀色の角が生えており、耳はハイエルフのように長く尖っている。
黒い恥部だけ隠せばいいだろ見たいな服を着ており、手には大剣アストラを持っている。
ティカ目掛けてバァル・ゼブルは跳躍した。
バァル・ゼブルの現在のレベルは七十八。ティカより多少は上だ。
そのためにティカのいる上空数百メートルまで一息で飛べる。
ティカの眼前まで跳んだバァル・ゼブルはティカの顔面を蹴り飛ばした。
そのまま方舟に着地、したかと思えば蹴ってティカの着弾地点まで移動する。
ドン、と轟音と共にバァル・ゼブルは着地する。
「……私をシモベ共から離せば勝てるとでも思ったか?」
ティカが不機嫌そうな顔をしながら言った。
「いいや、思っていない」
バァル・ゼブルはそう返した。それに対しティカは怪訝な表情を浮かべる。
「なぁ、ティカ。お前に夢はあるか?」
「……いきなりなによ。あったとして、お前のような悪漢に言う訳ないでしょ」
「俺にはある。魔界を統一し、戦乱の世を終わらせるという夢が」
「寝言は寝て言うものよ」
「なぁ、見たくはないか? 一人の王の力によって統一され、繁栄する魔界を」
「戯言を聞く気はない!」
そう叫びティカは魔法を放つ。
龍の形をした雷がバァル・ゼブル目掛け飛んでくる。
バァル・ゼブルは溶岩の壁を生成し防いだ。
壁は数度他の魔法を受け砕かれた。
「だから決闘をしよう、ティカ。勝者が全てを手にし、敗者は勝者のいう事を聞く」
「私がそれを受ける理由はない!」
「なんだ、負けるのが怖いのか?」
ティカは頭にカチンときた。
この魔界では力こそが正義であり、弱いことは悪しきこととされる。
だから格下からの挑戦を避けるのは弱者のすることだと揶揄されるのだ。
「いいわ。貴方が勝てたのなら好きにしなさい!」
「言質は取ったぞ──いくぞ」
バァル・ゼブルは地面を王酌でトン、と叩いた。
瞬間ティカの足元が火山の噴火口に変化する。
何が起こるか察したティカは咄嗟に無詠唱化した転移魔法で回避する。
遅れて噴火が起こりマグマが噴出した。
そして噴出したマグマは燃え盛る岩となり空から降り注いでいく。
ランダムに降ってくる岩全てを避けるのは難しいだろう。
ティカは回避ではなく防御を選択した。
自身を中心にした防御結界を張り防いだのだ。
「
左右の巨大な溶岩で出来た手が創造された。
手が殴り掛かるもティカはアンデッド創造の
「<上位アンデッド創造>」
ティカのレベルならばレベル七十までのアンデッドを一日二体まで創造することが出来る。
創造されたのは
三メートルの巨体。左手には己の全身を隠す程のタワーシールドを持っている。
右手には長剣を持っている。
骸の相貌に棘の付いた全身鎧を纏う姿は死の騎士と言ったところだろう。
能力として巨大な盾に相応しく攻撃能力よりも防御に重きを置いた能力をしており
今更だがこの世界にはHPの概念がある。
と言っても生物ならば首を跳ね飛ばされたり脳みそを潰されれば普通に死ぬが、逆に言えば生物以外──アンデッドや悪魔や天使などの異形種は頭を潰されてもHPがある限りは死にはしないのである。
「私の盾となりなさい」
「オオォォオォオオオ!」
バァル・ゼブルは
ならば、とバァル・ゼブルはティカ本体を狙おうとするもティカは更に魔法を唱えた。
「
ティカの背後から無数の骨で出来た槍が出現する。
幾千と言いながら実質その数は万に届きそうな、あるいは超えるほどにあった。
「ッ!」
流石に千を優に超える骨の槍を全て受けるわけにはいかない。
悪魔の種族
空に飛びあがり回避しようとするも骨の槍の弾幕は正確にバァル・ゼブルに向かって飛んで行く。
バァル・ゼブルの体に骨の槍が貫通する。
何とか飛んで行くも背中の羽も左腕も貫かれ飛ばされた。
どうにか地上に不時着するとようやく骨の槍の弾幕は消えた。
「死になさい──
ティカが魔法を唱えると三メートルほどの巨大な骨の手が創造された。
骨の手には青白い幽霊の体のような物で覆われている。
ただの物理ダメージ以外に
吹き飛ばされながらバァル・ゼブルは自身に起こった異常を感知する。
能力は二つ。一つは触れた相手に対する即死。これはバァル・ゼブルの方がレベルが上だったのでレジスト出来たので意味はない。
残る一つは精気吸収だ。
正確には
そして吸収系の
例えば最大HPが百の者がHPを十吸収する魔法を使った場合その者のHPが百十になる。
これは時間経過で減るなどはなく、攻撃されて減らない限りそのままだ。勿論スタミナも同じ。
「チッ……」
バァル・ゼブルは舌打ちをしながら体勢を整え着地する。
ティカは死霊系の魔法使い。得た精気など悍ましい使い道が幾らでもある。
ティカは
ティカは死霊系の能力に特化している。ティカが創造、召喚するアンデッドは通常の個体よりも強力だ。
それがさらに強くなったのだ。
「
バァル・ゼブルは召喚魔法を唱えた。
召喚するのは精霊系モンスターの中でも最上位の炎の精霊、
炎の化身そのもの。燃え盛る溶岩が人の女性の形をしている。二メートルほどの大きさを持つ。
ステータスは前衛軽戦士系統だ。右手には燃え盛る剣を持っているがこれは体の一部判定を受ける。
炎のダメージを与える
ティカも<炎のオーラ>の範囲内に居るので体が燃え始めたが炎耐性を得る魔法を唱えたことで大幅に軽減された。これで殺すことは無理だろう。
「行くぞ、ティカ!」
「来なさい小童。惨たらしく殺してその屍を私の物にしてくれるわ!」
そうして再度、両者衝突した。