堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします   作:Revak

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第6話

 

 ルシフェルはアインベルと共に城の会議室に通された。

 黒曜石で出来た会議用の長机に長時間座っても疲れないようクッションが敷いてある椅子。

 

 ルシフェルは適当な席に座り、アインベルが簡易的な玉座に座る。

 

 部屋にはもう一人いる。

 

 眼帯を付けた男だ。壮年の男であり白い髭が生えている。

 戦国武将のような鎧を纏っており、腰には刀を下げている。

 

「それじゃあ今からティカのところに攻め入る。そのための作戦を考えようじゃねぇか」

 

 アインベルがそうニヤリといった。

 

「ティカ……確か魔公の一人か」

 

 ルシフェルが記憶を引っ張り出し思い出す。

 

 

 この魔界には七人の魔公が居る。

 会わせて七大魔公とも呼ばれる。

 アインベルはその魔公の一人であり、ティカも魔公に名を連ねる大悪魔だ。

 全員最低でもレベル七十を超える超越者たちであり、一人でも現世に出現すれば国が滅び大陸は半壊するだろう。

 

 レベル上ではアインベルの方が五レベルほど上だが、勢力は別だ。

 

 ティカはネクロマンサーであり、大量のアンデッドの悪魔を従えているのだ。

 その数は百万に上る。

 一体一体はレベル十から二十で強いのがたまに紛れてる程度だとしても、この数は脅威だ。

 自爆特攻を繰り返されれば多少は消耗し、それが幾千幾万と重なれば面倒なことになる。中にはレベル六十以上のアインベルと戦闘が成り立つレベルのアンデッドもいるだろうから。

 勿論ただの百万のアンデッド程度ならば問題ない。アインベル一人で殺し尽くせるだろう。

 だが問題は百万のアンデッドに加えティカ本人が戦場に来る事だ。合わせ技はきついのである。

 

「そうだ。ルシフェルにはティカの使役するアンデッド共をぶっ潰してほしい。俺がティカ本人を殺す」

「雑魚討伐か、良いよ、やってあげる」

「はは、よし、一週間後には軍を作っていくぞ。この街の最低限の防備を残して進軍だ!」

 

(それじゃあ、試したいこともあるし丁度いいな)

 ルシフェルはそう考え、ひそかに準備を始めた。

 

 

 

 アインベルがこの攻勢を仕掛けられるのには理由がある。

 ティカの領地近くにあるブラントが死んだからだ。

 下手に軍を指揮し進軍するとブラントが察知し攻撃してくる可能性が高かった。

 魔公同士の仲は基本悪くブラントとアインベルが戦って消耗すれば進軍に気づいたティカ側が攻めてくる可能性がある。だからこれまでは攻めなかった。

 だが今はルシフェルが居る上ブラントも死んだ。だから攻めれる。

 

 尚攻める理由は特にない。アインベルは勝ち戦が好きなので攻め入るだけだ。負け戦は嫌いなので負ける戦いをしてこなかっただけである。

 

 悪魔の復活にはレベルかける二分の日数がかかる。故に今しかなかった。

 

 

 

 

 ■

 

 一週間後。

 

「うーん。圧巻」

 

 ルシフェルは空からアインベルの軍勢を見下ろした。

 そこには街の戦力の殆どが出払っていた。

 総数十万を超える悪魔の軍勢である。

 

 ルシフェルは下降し自分の定位置に戻る。

 そこには魔獣系モンスターであるギガント・バジリスクが居た。

 四メートルほどの巨大な蜥蜴の魔獣であり、足が六本ある。

 種族特殊能力(スキル)として<石化の魔眼>を有している。

 これは目が合った対象を石にするという特殊能力(スキル)で一定時間内に解除の魔法を受けないとそのまま死亡判定になる。

 更には石化後は蘇生魔法なども通じないし、即死攻撃とはまた別の判定なので即死無効などの装備は意味を成さない。ただレベル差によるレジストは出来る。

 レベル二十八の強力なモンスターだ。

 

 ルシフェルはギガント・バジリスクの鞍に乗る。

 

「行くぞ、野郎ども! あのくそったれの魔女をぶち殺すぞ!」

 

 アインベルが手を突き上げ鼓舞をする。

 それに合わせ部下の悪魔たちが雄たけびを上げる。

 

 異形の軍が進軍を始めた。

 

 

 

 ティカの領地までは徒歩で四日ほどかかる。

 勿論悪魔は高ステータスの者も多いので走ったり飛んだりすればもっと早く着くが、今回はアインベルは徒歩を選んだ。

 理由は単純であえて徒歩で行くことでアンデッド軍を引き出すのが狙いだ。

 

 いかなアインベルと言えど百万のアンデッドとティカを同時に相手にすれば負ける。レベルが五も差があるとはいえアンデッドの中には六十レベルを超える者も居るからだ。

 だからこそ軍を指揮し軍対軍にしてアンデッドの軍勢を引き出す。

 ティカ本人の戦闘力は魔公の中では低い方だ。最弱ではないが。

 さらに言えば死霊術師、つまり呪文詠唱者(スペル・キャスター)なので呪文詠唱者(スペル・キャスター)の魔法を吸収できるアインベルとの相性はティカにとっては最悪と言えるほどに悪い。

 

 ただアインベルとルシフェルの二人がかりでティカを襲えばもっと確実に勝てるだろうが、戦士としてそれはしたくないとアインベルは選択肢に入れなかった。

 

 悪魔は疲労も無効化するし飲食不要なので休憩は最低限だ。

 肉体的疲労とは無縁でも精神的な疲労はするのである。だから休憩はいる。

 

 

 そして進軍していくとティカ側もアインベルの軍に気づき、軍を出してきた。

 有利な籠城戦を選ばず平地での戦いだ。

 出した軍勢驚異の五十万。アインベルの十万の軍勢の五倍だ、容易くひねりつぶされそうだ。

 だが今はルシフェルが居る。

 

 進軍して三日と半日。敵軍が見えてきた。

 

「圧巻だねぇ」

 

 ルシフェルはギガント・バジリスクの上からそう呟いた。

 

 敵軍五十万のアンデッド軍だ。

 悪魔も死ねば死体が残るのでアンデッドに出来る。

 その場合種族レベルにゾンビやスケルトンがプラス一され多少ステータスが伸びる。

 高レベルの死体なら死体を元により強いアンデッドを創造することが可能だ。

 

 ルシフェルの隣にいるアインベルが笑みと共に告げた。

 

「んじゃあルシフェル、アンデッド共は任せた。俺はティカをやる」

「おっけー、任せてよ」

 

 そう言うとアインベルは跳躍し元の姿に戻り、空へと飛んで行った。

 

 敵軍の上空には船が浮かんでいる。

 前方に巨大な砲台が付いた金色の船、ティカが持つ神器方舟だ。

 移動型の拠点であり有する能力は多岐に渡るというが、その詳細を知るのはティカ本人だけだ。

 

「じゃ、僕も行くか」

 

 そう呟くとルシフェルは翼を広げ空を飛ぶ。

 

 悪魔同士の戦いに戦争開始を告げる使者なんてものはいない。

 

 ルシフェルはアンデッド軍の空に位置する。

 

「じゃあ──リリース」

 

 行使するのは<上位魔法封印>(スペリア・マジックシール)という魔法だ。

 この魔法は使用することで他の魔法を封印し、任意のタイミングで解放することが出来る。

 使用時にこそ魔力を消費するが解放時には魔力を消費しない。

 効果時間も無限なので奥の手として隠し持つことが出来る魔法だ。

 

 ルシフェルはこの魔法を悪用した。

 

 特殊技術(スキル)で四重化し、それらの別々の魔法を込めた。

 熱線、爆破の光線、切断の光線など。

 そして四つ目に四重化した<上位魔法封印>(スペリア・マジックシール)を込めた。

 それを何十と繰り返し、MPの許す限り魔法を込め続けた。

 

 そしてその何百という魔法が一斉に解放されたのだ。

 

 

 レーザーが地面を斬り裂きアンデッドを斬り裂く。

 光線が着弾し大爆発を起こしアンデッドが爆散する。

 

 何百というレーザーがアンデッドを貫き蒸発させる。

 

 ルシフェルはひっくり返って笑いながらその光景を見ていた。

 

「なにこれすっごい快感!」

 

 あははははは! とルシフェルは笑う、嗤う、哂う。

 

 アンデッド化には二種類ある。自我を有し成長するアンデッドと自我がなく成長しないアンデッドだ。

 作りやすさやコストの面で言えば後者の方が圧倒的に優れており、前者はこの魔界では殆ど作られない。

 前者の場合は術者と繋がりがある故に術者以上の力を持つアンデッドには成れないからだ。

 故に強力な手ごまが欲しいなら勧誘なり拉致なりで事足りる。

 

 魔法の雨は止まない。

 

 

 アンデッド軍に降り注ぎ、爆発が相次いで起こり続ける。

 

 そしてアンデッド軍の九割が壊滅したころ──ルシフェルの首筋に剣が来た。

 ルシフェルは咄嗟に回避することに成功するも首筋が斬られ血がにじんだ。

 

「うわ、なんだお前」

 

 そこに居たのは一人の男だった。

 

 騎士の格好をした男だ。背中には蝙蝠の翼が生えている。

 顔は兜によって隠されている為わからない。黒い大剣を片手で持っている。

 

「俺はルドガーだ」

「あー、聞いた覚えあるな、なんだっけ」

「……ティカの夫だ」

「あぁ、そうそう、そうだった。なるほど、僕を殺しに来たのか」

「そうだ。一瞬でアンデッド軍を壊滅させたお前を甘く見るつもりはない。殺せずとも、妻がアインベルを殺すまでの時間は稼いで見せる」

「は、ほざくなよ雑魚が。その首をお前の妻の前に持って行ってやる!」

「こい、堕天使。我が妻の名に懸けてお前を殺そう!」

 

 ルシフェルは<小空間>(ポケットスペース)からアインソフを取り出し、ルドガーと衝突した。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

「よぉ、ティカ。何百年ぶりだ?」

 

 空の上で。ティカとアインベルは相対していた。

 

 ティカは魔女のような容姿をしている。

 銀髪銀眼。更には額から銀の結晶にも似た角が出ている。

 肌は白く穢れがない。

 

 胸と股間だけ隠せばいいだろ見たいな黒い服をしている。

 容姿は非常に優れており、美女と言えるだろう。

 耳がエルフのようにとがっているが、これはまさしくティカの元の種族がエルフである証明だ。

 靴は履いておらず黒い布を足に巻いているだけだ。

 

「そうね、二百年以上は前かしらね」

 

 そう優雅に笑いながらティカは大剣を構えた。

 銀色に輝く結晶を削って出来た剣だ。

 

 ティカの後ろには方舟が浮いており、方舟内にはアンデッドが蠢いている。

 

「てめぇをぶち殺してお前の物を俺の物してやる」

「やってみなさい、クソ悪魔」

 

 そう言うと両者飛翔し──空中で衝突した。

 

 

(やはり最初から<魔闘転生>(ウォーリア・リバース)を使ってるか!)

 

 ティカとアインベルの相性は最悪だ。

 真っ向からぶつかればティカが負ける。

 レベル差があるとはいえ己の本領である呪文詠唱者(スペル・キャスター)としての能力を使えなくするアインベルとは相性が悪いのだ。

 

 だからこそ初手から戦士化の魔法を使い、呪文詠唱者(スペル・キャスター)としての戦いを捨てた。

 戦士としてのクラス補正も特殊能力(スキル)得られないがこの方がマシだと判断したのだ。

 

 空中でアインベルの爪とティカの大剣が衝突する。

 押し勝つのはアインベルだ。

 

「ちっ」

 

 ティカは舌打ちしつつ後ろに下がる。

 それを許すアインベルではない。ずいっと前に出て追撃する。

 ティカは大剣でガードするも防御の上からダメージが通る。

 

 純戦士と呪文詠唱者(スペル・キャスター)、近接能力ではどうしても呪文詠唱者(スペル・キャスター)の方が劣る。

 

 近距離でのバトルだ。

 ティカは事前にバフ魔法をありったけかけているが、それでも不利なのは変わらない。

 ダメージ量ではティカの方が受ける量は多い。

 

 ティカは舌打ちしつつ後ろに飛行する。

 

「さぁ、私の手ごまたち。このクソ悪魔をぶち殺しなさい」

 

 そう指示を出すと方舟からアンデッド共が飛び出してくる。

 

 そのすべてが最低でもレベル四十を超えるアンデッドであり、中には六十レベルを超える者も居る。七十レベルは居ない。

 

「まだこんだけの戦力があるか!」

 

 アインベルは内心舌打ちした。

 戦力の殆どを出してきたと思ったが、それでもこの近衛兵とでもいうべき存在は脅威だ。

 戦場では一瞬の隙が命取りだ。その隙を生み出せる雑兵は厄介極まりない。

 更にアンデッドなので使い捨て可能だ。

 

 ティカはアンデッドと元にアインベルに斬りかかる。

 

「なめんなゴラァ!」

 

 アインベルはそう叫びつつ近くに居たアンデッドを掴み握りつぶし、かと思ったらそれを投擲する。

 ティカは飛翔で回避し、奥に居た別のアンデッドにぶつかった。

 

 近距離でティカの大剣とアインベルの爪が交差する。

 

 十数合の剣のぶつかり合いののち、ティカは<魔闘転生>(ウォーリア・リバース)を解除した。

 

<内部爆発>(インブロージョン)

 

 ティカは魔法を唱えた。

 

「しまっ」

 

 最後まで言い切ることなく、アインベルは内側から爆発した。

 

 アインベルの吸収能力は飛んでくる魔法を吸収できるが内側から発生する魔法や弱体化魔法までは吸収出来ない。

 

「止めよ!」

 

 ティカは笑みと共にそう叫び、アインベルの首を跳ね飛ばした。

 

 ティカの愛剣、名はアストラという。

 悪魔は戦士系種族なのでティカも装備可能で行使できる。

 ただティカは職業に戦士系を取っていないので戦士系特殊能力(スキル)を持っていない。

 それでも油断した相手の首を跳ね飛ばすぐらいならば可能だった。

 

 アインベルの体が落下していく。

 

「終りね」

 

 ティカはそう笑みを浮かべた。

 

「まだだ!」

 

 アインベルの頭はそう叫び、体を再生させていく。

 頭部の首から下が徐々に生成されていく。

 

「ふん、これで終わりよ! <内部(インブ──ー)

 

 その詠唱は最後までさせられなかった。

 

 喉を熱線が貫いたのだ。

 魔法の発動には特殊能力(スキル)で無詠唱化しない限り詠唱が必要だ。

 

 喉を焼かれたことで詠唱不可となり、発動途中の魔法は暴発しティカ自身を爆発させた。

 

「あれ、結構ピンチ?」

 

 そこにルシフェルがやってきた。

 右手にはティカの夫、ルドガーの首を持っている。

 分かりやすいように兜は外させた状態だ。

 

「……!」

 

 ティカはそれを見て絶望した表情を浮かべる。

 

 

「よくも私の夫を!」

 

 喉は魔界の瘴気で癒されていた。

 叫び剣先をルシフェルに向ける。

 

<空間斬>(スペーススラッシュ)!」

 

 ティカが剣を振るうと見えない刃が飛んで行く。

 

 第十環魔法の中でも最高位の威力を持つ魔法だ。

 空間を斬り裂く魔法でありその特性上相手の魔法、物理耐性両方を貫通してダメージを与える。

 

「うわ、あぶな」

 

 ルシフェルは見えない故に大幅に横に動く事で回避した。

 

「おいルシフェル、手ぇだすな。これは俺の戦いだ」

「えー、僕が来なけりゃ負けてたくせに?」

 

 ルシフェルは煽る様に言う。

 それに対しアインベルは怒りをにじませる。

 

「それでもだ。これは戦士の戦いだ」

「いや相手呪文詠唱者(スペル・キャスター)でしょ」

「少し黙れ。俺の戦いだ。邪魔すんじゃねぇ。邪魔するならお前から殺すぞ」

 

 アインベルは怒気を込めて言った。

 

「……はいはい、わかりましたよ、じゃあ僕街の方行ってくるわ」

 

 そう言うとルシフェルは飛び去って行った。

 

「邪魔させて悪いな、続きと行こうや」

「……ふん。あの小娘の力を借りなかったこと、後悔させてやる」

「安心しろ、既に若干後悔してるぜ!」

 

 そう叫ぶとアインベルは突撃した。

 ティカは<魔闘転生>(ウォーリア・リバース)を使い戦士化。アストラで迎撃する。

 

 近距離での削り合いだ。

 

 アインベルの爪がティカの体を抉り、ティカのアストラがアインベルの体を斬り裂く。

 

 やはり近距離戦ではアインベルの方に分がある。純戦士との差だ。

 

 そこにアンデッドたちがアインベルに突撃する。

 

「なめんなぁ!」

 

 アインベルはアンデッドを使われたことに怒ることはなく、爪で斬り裂き足でけり飛ばす。

 

 ティカは背後に回り斬ろうとするもアインベルがぐるっと一回転しながら蹴りを放つことでアインベルは飛ばされた。

 

「ちっ……!」

 

 ティカは焦る。

 方舟のアンデッドたちをぶつけるも、倒されるのは時間の問題だ。

 

 今使える手駒は方舟のアンデッドたちで終わりだ。

 地上のアンデッドは掃討されたし、城のアンデッドを呼び出すには時間がかかりすぎる。

 

「……舐めるな、私は魔公の一人だ!」

 

 ティカはそう叫び、アインベルに突撃した。

 

 結果は──

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