堕天使になったので魔界行ったりなんやかんやします   作:Revak

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現世召喚編
第9話


 

 王立リディア魔法学園。

 そこは、呪文詠唱者(スペル・キャスター)を養成する学園だ。

 全六年生であり、一般的な入学は十二歳からだが魔法が使えるならそれより若くても入学が許される。

 

 エストは満十二歳で入学をした少年であり、まだ第一環魔法しか使えない者だった。

 

「では次、アモンド!」

 

 昼過ぎの魔法学園の庭で。召喚の儀が行われていた。

 一年生合計十六人と教師一人が庭に集まっている。

 

 アモンドと呼ばれた金髪金目の美少女は地面に置かれた魔法陣を杖でつつきながら魔力を込める。

 アモンドのフルネームはサラ・アン・アモンド、伯爵のアモンド家の第三子女だ。

 

 魔法陣が白く光りだし、魔法陣から赤く燃え盛る蜥蜴が出て来た。

 赤い蜥蜴、火の精霊の一種サラマンダーだ。

 

 ちろちろと舌を出すさまは少し可愛く見える。二メートルもあるのでやはり恐怖が勝るが。

 

 サラはサラマンダーに近づくとサラマンダーの頬に触れる。

 

「私と契約してくれないかしら」

 

 サラがそういうとサラマンダーは頷いた。

 それにより契約はなり、サラマンダーの右手に契約の証の紋章が浮かんだ。

 サラマンダーは手のひらサイズに小さくなり、サラの肩に乗った。

 

 サラが移動すると教師の黒髪の教師、名をロイス・ドーン・ネヴィンが声を上げる。

 

「では最後、エスト!」

 

 そんな彼、エストはこの学園の伝統である従者召喚の儀の真っ最中だった。

 

 使われるのは伝説級の魔法道具(マジックアイテム)従者召喚の魔法陣(サモン・サーヴァント)だ。

 これを使用することで使用者と相性の良い相手を召喚し仲間にすることが出来る。

 ただあくまで召喚と仲間になるのは別で、相手と契約できるかは自分次第だ。過去には召喚した者に殺された事例もある。

 百年前には召喚された魔神によってあわや国が亡ぶ寸前にまでいったという話すらあるのだ。

 それでも使われるのは伝統であるのと、従者の性能が良いからだ。捨てるには惜しかったのである。

 そもそも既に三百年以上使われてきて問題が一度しか起きていないのでほぼ起こらないようなものであると上の者たちは考えた。

 

 召喚できる対象は様々だ。

 何かしらの精霊。アンデッド。天使。悪魔。魔獣などなど。

 

 だからこそ、この召喚の儀は重要だ。

 召喚したサーヴァント次第ではこの学園の中の地位を向上することも可能だろう。だからエストは気合を入れる。

 

 エストは平民の出だ。

 とある開拓村の出で、村にいる呪文詠唱者(スペル・キャスター)から魔法という物に憧れを持ち師事した。

 結果エストは十歳という幼さで第一環魔法を習得した。

 

 魔法には才能が必要だ。ある種世界と接続するような才能が居る。

 

 第一環魔法が使えれば一人前。第二環魔法で天才。第三環は一握りの天才で、第四環は準英雄級、第五は英雄の領域だ。

 この学園には一人の第四環魔法の使い手と二人の第三環魔法の使い手。そして教師は全員第二環魔法の使い手である。

 更に魔法の習得できる数も個々人で変わる為魔法というのはどこまで行っても才能がものを言う。まぁ戦士も同じだが。

 

 エストは四月にこの学園に入学し、一ヵ月が過ぎだ。その間で二つの魔法を習得した。

 もうじき第二環魔法にも到達するだろう。平民の出身では才能がある方と言っていいだろう。

 魔法や戦士の才は遺伝する。強者の子は強者になるのだ。まぁごくまれに鳶が鷹を生むこともあるが、確率は低い。

 

 そう、つまりこの学園に居るのは殆どが才あるものの子であり、つまりは貴族などの子だ。

 貴族の中にも魔法の才能を持つ者が居る。

 政治とは極論武力であり、個の武力が数を上回るこのファンタジー世界では貴族も強力な個という武力を求める。

 故に優秀な戦士や呪文詠唱者(スペル・キャスター)を嫁や婿に入れる貴族も多く、そういった者の子がこの学園に通っている。

 そんな中エストは少数派だ。だから虐められる、という事は無いがひそひそ話されたり露骨に距離を取られることはある。

 だからそういうのが嫌で強力なサーヴァントを求めているのだ。

 

 エストは地面に置かれた黒い魔法陣に向かって杖をさした。

 どうか強いサーヴァントを、と思い魔力を込める。

 

 魔法陣が黒く光りだす。他と変わった現象だ。本来は白く光る。

 

 そして魔法陣から──少女が出て来た。

 身長は百五十二センチ。紫色の髪と瞳をしている小柄な少女だ。

 左目が隠れるような髪型をしており、どこか中世的にも見える。

 黒い竜の皮をなめしたコートを着ている。

 コートにはベルトがついており、内側に四つのポケットが、外側の左右の下にポケットが一つずつある。

 鱗を使ったブーツを履き、指先が空いている黒い手袋をつけている。

 

 少女はふわふわと魔法陣の上を浮遊しながら口を開く。

 

「ん、なにここ」

 

 少女、ルシフェルは周囲を見ながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 ルシフェルがグレッチャーを殺してから二百年後。ルシフェルは暇をしていた。

 街の襲撃も村を焼き払うのも魔公を殺すのも飽きてきたのだ。流石に同じことを何百年と繰り返してたら飽きもする。

 食事も酔えればいいだろ見たいな酒と酒のつまみになればいいだろという塩気の強い物しかない。

 そんな生活に飽きて、適当に空を漂っているところ、異変が起こった。

 

「んあ?」

 

 目の前に黒い魔法陣が現れたのだ。

 一部の魔法は使用時に魔法陣が出現する。すわ攻撃かと身構えるも何も起こらない。

 ならいいやと無視して適当に飛んでいると再び魔法陣が出現する。同じのだ。

 それを三回繰り返しなんやねんと魔法陣に殴り掛かった結果──現在に至る。

 

「なにこれ……」

 

 ルシフェルは己と目の前の少年──エストと魔法的な繋がりを感じた。

 それが訴えるのは己はサーヴァントとして召喚されたという魔法道具(マジックアイテム)からくる知識だ。

 勿論この魔法道具(マジックアイテム)にルシフェルを従者として強制する能力なんてものはない。その気になれば召喚主を殺すことも魔法道具(マジックアイテム)を破壊するのも可能だ。

 だが数百年ぶりの現世にルシフェルは心躍った。

 青く澄み渡る空に白い雲。焦げていなく緑豊かな大地。

 

 そして地を這う人間(ムシケラ)共。

 

「さて、どうしよっかなー」

 

 ルシフェルがるんるんでそう呟くと周囲の人間たち──一人の教師と十六人の生徒は怯え腰を抜かす。

 ルシフェルのレベルは百。超越者の頂のレベルだ。その気になれば大陸から人類を殲滅することも容易だ。

 そして千年以上生きたことによる風格。

 ようはルシフェルに威圧されてるのだ。たった一人を除いて。

 

「あの、あなたが俺のサーヴァントになる人、ですか?」

 

 やめろ、よせ。そんな声が倒れている者たちから漏れ出た。

 

 エストはただ一人杖を支えに立っていた。

 

「それはお前と、条件次第かなー。久方ぶりの現世、すぐ帰っちゃつまらないし」

「そう、ですか……まず、条件を整えましょう」

 

 そう息を整えながらエストは言う。

 

「条件?」

「はい。俺は、貴女に従者になってほしい。貴女は、俺に何を望みますか?」

「……」

 

 ルシフェルは考える。

 ルシフェルにとってこの人間、エストは必要だ。

 何故己を召喚出来たかはわからない。だがエストが召喚主な以上死亡した場合はルシフェルは魔界に送還される。勿論この従者召喚の魔法陣(サモン・サーヴァント)が壊された場合も同様だ。

 だがそれは丁重に扱うという事ではない。

 適当に両手両足を千切って地下牢にでも監禁し、飯だけ与えて召喚主として生存だけさせればいいだろう。

 

 だがそれだとつまらないともルシフェルは思った。

 

 まるでラノベのワンシーンのようだとルシフェルは感じたのだ。

 少年が超常存在を召喚し、共に歩む。王道物語の一種だ、と。

 昔アニメをチラ見した作品に少女が少年を召喚し共に歩むという作品がある。

 今この状況は男女逆だがまさにそれに近い。

 

「そうだなー、退屈させないことかなー。食べ物とか、娯楽とかで僕を飽きさせないでよ」

「……退屈、させない」

 

 ごくり、とエストは唾をのんだ。

 

「もしも、退屈したら?」

「その時は幾つか国を滅ぼしちゃおうか。あぁ、お前は殺さずに生かしておまえが僕を召喚したせいで国が滅んだって見せつけてやろうか」

 

 ニヤリ、とルシフェルは笑みを見せた。

 本気だ。ルシフェルにとってみれば片手間で国の一つや二つ滅ぼせる。

 悪魔以外の種族を甚振り殺すのはどれだけ楽しいかと空想する。

 

「それをするなら、俺は自殺します」

 

 そう気合の籠った目でエストは言った。

 それに対しルシフェルは「ちっ」と舌打ちで返した。

 

「だから、俺と──仲間になりませんか。仲間として、俺と共に歩む。それでどうですか!」

 

 そうエストは精一杯叫んだ。

 

「ん、いいよ。それで契約成立だ」

 

 ルシフェルがそういうとルシフェルの右手に契約の証が浮かぶ。

 ルシフェルは地上に降り、背中の翼を消す。堕天使の翼は出し入れ自在だ。

 

「それでは、先生……どうしますか?」

 

 エストはロイスに話しかけた。

 ロイスはなんとか立ち上がり、ルシフェルとエストを見る。

 

「ま、まず……貴女は、何者でしょうか」

 

 ロイスは戦々恐々としながら訪ねた。

 

「僕ルシフェル、堕天使でーす」

 

 いえーい、とルシフェルは両手でピースをした。

 

 

 堕天使ルシフェルの名は人間の世界にも広く知れ渡っている。

 かつて栄華を誇った帝国を一夜で滅ぼした大悪魔の片割れとして。

 そしてその伝承通りの姿にロイスは一瞬倒れそうになるも気合で耐えた。

 

 この召喚の儀で悪魔が召喚されること自体はそう珍しいわけではない。

 だがせいぜいが小悪魔程度であり、上位の悪魔は召喚なんてされない。

 だからこそ伝説級の大悪魔の登場にロイスは胃の痛みを感じたのだ。

 

 ロイスは生徒たちに向かって口を開く。

 

「きょ、今日の授業はここまで。解散!」

 

 そういうと生徒たちはどうにか立ち上がると蜘蛛の子を散らすように走って去っていった。サラを除いて。

 

 さてどうしよう。ロイスがどうするか悩んでいると空から老人が降りてくる。

 

「ふむ。どうやら大変な者が来たようじゃな」

 

 そう言いながら高価な、されど見せびらかすような物ではない灰色のローブを纏った六十代程の老人は地上に降りた。

 

「校長先生!」

 

 ロイスがそう叫んだ。

 

 老人の名はグランツ・ロード・アガルズという。

 第四環魔法まで使える英雄に準ずる領域の老人だ。

 

「ふむ。そちらの少女はその容姿から見て悪魔ルシフェルとみるが、あってるかね?」

 

 この世界には様々な髪色の者がいるが、大半は染めたり固有(ユニーク)特殊能力(スキル)の影響だったりする。

 そのため基本的な髪色は地球と左程変わらなく、紫色という人間ではありえない髪色の者は殆ど居ない。

 

「あってるけど、お前なに?」

「ふむ。ワシはグランツ・ロード・アガルズ。この学園の校長じゃ。少しこちらで話したいことがあるんじゃが、いいかの?」

 

 グランツはあまり緊張せずルシフェルと話す。

 その気になれば国を滅ぼせる存在と話すにしてはあまりにも気楽だ。だが理由はある。

 もう自分は歳とってるのでいつ死んでもいいやという老人特有のなげやり感で動いていた。この老人に付き合わされる者は苦労するだろう。

 

「んー、僕はいいけど……お前はどう?」

 

 ルシフェルはエストに話しかける。

 

「俺もいい、と思います」

「ならいいよ。あ、その前に自己紹介まだだから先にやらせて。僕ルシフェル、お前は?」

「俺はエスト、呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ」

「ん、よろしく。エスト。じゃあ行こうか」

 

「ではワシについてきてくれ。徒歩で行こう。ロイス君は後片付けを頼む」

「わ、わかりました」

 

 そうして三人は校長室に向かって歩き出した。

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