無感情強化兵士にTS転生したけど、父親面される件 作:疾風迅雷.net
作者はあります。そういう感じの話です。
『――――ガガッ、ピピーッ――ガガガッ――――』
『通信の状態が良くないな。仕方あるまい。我らだけで行動しよう』
濃霧の中、僕はバイクを走らせていた。
もちろんこの濃霧でも問題ないようにセンサー用ゴーグルをはめている。
ようやっと目的地へとたどり着いた。
廃都アルビオン――西エリア――。
廃都と言っても、そうであったのは五年以上も前のこと。
現在は復興が進んでいるだけに、今回の緊急事態には多くの犠牲が予想される。
突然、無数の
……というのが、僕の中にあるデータ。
実際に経験したことはない。ただ、そうなのだという脳内のデータだった。
『IDEAー333、目覚めて早速で悪いな。キミの任務は、濃霧内の人々の救助――もとい、この事態の収集をつけることだ』
僕に機械的な音声でそう指示しているのは、プロペラで浮いているドローン……。
赤いカメラにプロペラと、二本のロボットアームが付いている簡素なものだ。
たしか、九十九課長と言っていたっけ。
IDEAー333とは、もちろん僕の名前である。
僕はどこにでもいるサラリーマンだったはずだが……なぜこのようなことを。
ああ、上司が無理やりビールを何杯も飲ませるから、あんな事故につながったのだ。
ブラック企業、というやつだよ、まったく。
ちょうど窓ガラスがあったので、僕の現状を垣間見る。
中年サラリーマンの姿はそこになく、黒いレインコートを羽織った――。
金髪ロングの美少女が映っていた。
ええと、つまり、はい。Web小説に詳しい者ならばご存知だろうが……TS転生というやつだ。
冴えないブラック企業の中年サラリーマンは、謎の美少女に転生したのである。
「転生するなら男がよかったんだけど」
『ああ、IDEAー333。インプットした記憶データが合ってないようだな』
「いや……これ、TS転生でしょ?」
『キミの混乱はわかるが……急ぎの仕事だ。カウンセリングは後にしよう』
まるで話の通じていない九十九課長とやら。
まぁ、突然僕はTS転生してしまった■■です、と叫んでもこの程度の扱いかもしれない。
それに、どうやら今の僕は改造された
混乱、と言われたが情動のたぐいはまるで湧いてこない。
ふわふわとした夢の中にいるような感覚。いや実際、夢なのかもしれない。
まぁ、いいや。なんか視界にはUIが映っていてなんとなくゲームっぽいし。
言われた通り、作戦とやらを遂行するとしよう。ゲームとかでも、いまいち説明不足だったりしても、コントローラーの指示が出たら動かしちゃうでしょ?
「きゃああああああああああああ!!」
叫び声がした。どうやら女性が何者かに追われているようだ。
僕は、すぐさまそちらへと駆け出した。元から正義感の強い方なのだ。
たしかに、一人の女性がいた。OLっぽいスーツ姿で、黒い影のような怪物に追われている。
シルエットのような怪物は、頭部に赤い球体状の光を灯していた。
「あれは……」
『キミのデータ内にもあるだろう。
「…………どうやって」
『バイクの中に
僕がさきほど降りたバイクからガシャン、と長い刀が排出される。
僕は宙に投げ飛ばされたそれをキャッチした。
「でもこんなの扱ったことないよ」
『キミの脳内データに柳原一心流という古武術がインストールされている。扱えるはずだ』
ほんとかよ、と思ったが体が殆ど勝手に動き、居合の体制に入る。
そうして、
赤い球体が割れ、霧へと霧散していく。
『うむ。記憶データと違い、戦闘データはしっかりダウンロードされているようだな』
「体が勝手に動いた……」
『そういうものだ。時期に慣れてくるさ』
なるほど、このTS転生、なかなかハードな世界なのかもしれない。
たしか似たような世界観で言うと――”サイドライブ”って言うゲームがそれっぽかったかな。なるほど、僕はゲームに酷似した世界に転生してしまったようだ。
”サイドライブ”は愚直な不良が主人公だったな……。
これはもしかして開発中だった2の世界なのかも。だとしたら僕はヒロインか?
『…………何をボーっとしている』
「え、ああ、原作転生なのかと思ってさ」
『まったく、カズのやつ……質の悪い記憶データを持ってきたようだ』
ふむ、僕の転生は記憶データとして処理されているようだ。
まぁ、説明の手間が減って助かる。
『ところで大丈夫か、キミ』
九十九課長が、襲われていたOLに飛んでいく。
OLは頭を抱えてうずくまっていたが、別段怪我はしていなさそうだ。
「ええ、はい……貴方がたは中央自治会の方ですか?」
『ああ、先導して救助を行っているところだ。もうすぐここにも一般兵が来る』
「と、ということはそこの子は異能者ですか……?」
怯えた表情で、僕を見るOL。ふむ、異能者といったかな。
”サイドライブ”の世界でも異能者ってのがいて、そいつらは怪物に成り果てるから恐れられていたな。そういうことなのかもしれない。いや、きっとそうだ。
「気にしないで。暴れないから」
「え、ええ……」
『ふむ、では我々は行く。この周辺にはもう
「は、はい……!!」
そう言って、九十九課長が先へと飛んでいく。
僕は再びバイクに跨ると、それを追っていった。
『IDEAー333、気にしなくて良い。我々の扱いなどあんなものだ』
「気にしてないよ。むしろゲームみたいでワクワクしてる」
『…………カズのやつ、どういう記憶データを持ち込んできたんだ?』
どんどんと濃霧が広がっていくと同時に、瓦礫も増えてきた。
ここから先は、バイクでは無理そうだ。
『ふむ、この奥の商店街に、
「わかった」
バイクを降りて、
そのまま濃霧漂う商店街へと入っていった。
さきほど倒したような
あいつら、人がいない時はぼーっとしているみたいだな。
『奴らのカテゴリ名はスケルトンという。細い骸骨のようなシルエットだろう?』
「……? うん、僕の記録にもあるよ」
言われた通りの情報が、僕の頭の中に浮かんできた。
ご丁寧にゴーグルにも表示される。どうやら一番弱いカテゴリらしい。
『知っている。さっきから索引が上手く行ってないようだからな。逐一、こうして確認するぞ』
九十九課長、どうやらお節介な人らしい。
まぁ、たしかに僕も
こういう気遣いは助かるかもしれない。
ともあれ、戦ってみるか。
ぐっ、と刀を構え、居合の姿勢を取る。
近づいてきたスケルトンの頭部を、引き抜いた刀で切り砕く。
一匹は倒したが、もう一匹は腕で防御された。
その腕も切り飛ばされたけれど――すぐさまに再生する。
なるほど、赤い球体を破壊しないと意味がないわけだ。
データとしては知っていたけれど、実際に見て納得した。
さらに数体がその手を茨のように伸ばして、攻撃してきた。
「――――っ」
僕の脳内の引き金が、勝手に落ちた音がした。瞬間、無数の茨が非常にゆっくりとした挙動になる。何だ、この現象は――と思い、脳内の情報を索引するが……ふぅむ…………?
『
僕の脳内検索よりも早く、九十九課長が答えを言う。ふむ、けっこう強いんじゃないか……?
ともあれ、そのまま僕はゆっくりになった茨を回避し、スケルトンたちの頭部を砕いていく。
いや、やっぱり強いよな。この異能。
だがズキン、と脳が痛み、回りのゆっくりとした空気がもとに戻った。
次の瞬間、頭につけているヘッドギアから何かが頭の中に注入される。
『気をつけろ。あまり使いすぎると、キミも
「なるほど……今のは?」
『抑制剤だ。しかし短期間に打ちすぎると、効きが悪くなるからな。体にも良くない』
「わかったよ」
つまるところ
しかし今しがた戦った感じ、相当追い込まれなきゃスケルトン相手には使う必要がなさそう。
「よし、じゃあ先に進もう。この奥にボスが居るのかな?」
『ああ、強力な反応がある。気をつけて進め』
そのまま走っていく。ただ走るだけでも、前世とは比べ物にならない速度が出るね。
さすがは
あれか? 慰安用とか……さすがにそういうことはごめんこうむるぞ。
ばり、ぼり、ぐちゃ、ぐちょっ。
奥に行くと、僕より二倍は大きい
さながら二足歩行で歩く豚。いや、怪獣である。データを索引すると……。
『こいつは”トロール”だ。気をつけろ。無数の手を出してくるぞ。だが弱点は同じだ』
――今回も先に言われてしまった。
言われた通り、膨らんだ腹から無数の手が伸びてくる。
それはさながら、食われた人々が助けを求める手のようだ。
『IDEAー333!! 余計な感傷にひたるんじゃない!!』
うおっ、つい油断して捕まってしまった。感情なんてないはずなのに。
トロールの腕が僕の四肢を掴み、別方向へ引っ張ってくる。このままではバラバラになってしまう。しかし、刀を振り抜く腕も捕まっており、もうどうしようもない。
トロールの股間から槍状のものが出てきて、僕に照準を合わせている。
うん、これ普通にヤバいんじゃないか……。
『仕方ない……!!』
ぴちゅんっ、と九十九課長から情けない光線が撃ち出される。
しかしそれによって、トロールの手がちぎれて、僕の手が解放された。
「おっと、ありがとう」
刀を引き抜き、四肢を拘束していた腕を切り捨てる。
そのまま落下しつつ、僕はトロールの頭部へと刀を振り下ろした。
「GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
消滅していくトロール。同時に周囲の濃霧も徐々に晴れていく。
ふむ、どうやらあのトロールがスケルトンや濃霧を生成していたようだ。
『まったく……やはり起動して間もない時期は、人格が安定していないな』
「ちょっと油断したんだけだよ。本当さ」
僕が、そう言うとじぃ……とドローンのカメラアイがこちらを睨んでくる。
たしかにトロールの目の前でぼーっとしてたのは悪かったけどさ……。
『……まぁいい。初めてにしては上出来だ』
「ふふん」
『
「名前」
『…………なに?』
「IDEAー333じゃ分かりづらいし、言いにくいよ」
『生意気な奴め……』
むぅ、とドローン越しに唸る声が聞こえる。
どうしようかな。前世の名前でも呼んでもらおうか。
いやしかし……忘れたな……思い出せない……。
『では、イデアでどうだ?』
「それ型番じゃないの? もっとオリジナリティが欲しいな」
『…………では333番だからミミ子でいいだろう』
「まぁ、いいけど」
名前にこだわるような情動が、今の僕にはないようだった。
ミミ子、それに可愛いじゃないか、うん。
『それでは帰還しろ、ミミ子』
「どこに?」
『……………はぁ、帰還ポイントを示す』
言われてゴーグル上に光る矢印が現れた。
とりあえず、これを追っていけばいいみたいだ。
商店街を出て、バイクの元まで戻っていく。
さっき助けたOLの子が、パワードスーツを着た一般兵に囲まれていた。
付近にあるのは大量の救急車。ようやく救助がやってきたのだろう。
「あ、あの、貴方……」
「なにかな」
「助けてくれて、その、ありがとう……貴方、名前は?」
「僕? 僕は……」
僕はさきほどつけてもらった名を名乗る。
前世の名に思い入れはない。そんな情動も浮かばない。
つまるところ僕は無感情な
しかし、そんな僕にもさっそく名前ができた。
誇るべき名前が。
「僕はミミ子だよ、よろしくね」
僕はミミ子――中央自治会の飼い犬。
無感情な異能者であり、
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【IDEAー333】
ミミ子――中央自治会の飼い犬。無感情な異能者であり、
【九十九課長】
赤いドローンを操作している。中央自治会とやらの人間らしい。
ミミ子の上司でありパートナー。
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こんな感じのサイバーパンク異能バトルになる予定です。
よろしくお願いします!!