無感情強化兵士にTS転生したけど、父親面される件 作:疾風迅雷.net
身体年齢は中学生ぐらいです。
『――――ガガ――――ピピピ――――ガガガガガ――ガガ――――』
改めて自分の現状を回想する。
廃都アルビオン中央自治会の飼い犬。無感情な異能者であり、
クローン技術や培養技術が使われているようには思えない。おそらくは放逐され、今なお無秩序に住人が暮らしている地下エリアにいた異能者を捕らえ、改造し、記憶データを上書きしたのだろう。この転生したという意識も、おそらくは脳死状態の人間から得た人格記憶を持ってきただけ。
『――IDEAー333の自己認識は――自己人格の矛盾を止めるため――――』
まぁ、それがオカルトを考える余地に入れない場合の、僕の現状だ。
しかしTS転生した、と考えることにする。夢のない話よりそっちのほうが楽しいし、実際自意識としては『TS転生したら
『――――ロックされています――ロックされています――ロックされています――』
……なんてことを考えながら、今僕は脳をいじられています。
正確には脳に繋がれているヘッドセットを、だけど。
「けっ、やっぱり安物の記憶データはダメだね」
『そんなものを買ってくるな』
なんか配線がつながってて、パラパラとした細かい文章のデータを見られている!!
それを見ているのは九十九課長――のドローンと、課長がカズと呼んでいる男。
九十九課長の姿は見当たらないんだよな。ここは安全地帯だって言うのに。
カズと呼ばれた男は中肉中背、スカスカの前髪、青いシャツに社員票を首からぶら下げた、何ともやる気のなさそうな男だった。こういう人、企業に一人はいるよね。
『どうするんだ、カズ。戦闘中ボーッとしたり、トンチンカンなことを言い出したり困ってるんだ』
「そうは言っても、ほぼ人格のないガキが一応戦闘ができるようになったんだからいいだろ」
『うちは人権的で先進的な職務環境をだな……』
「そんなもんある職場は、ガキを
もっともな事を仰る。今だって僕、布一枚で機械に繋がれてるんだからね。
しかし一応終わったようで、手術室らしき場所の扉が開いた。
「おい、もう出てきていいぞガキ」
「あいあい」
ヘッドセットの配線を外し、外に出る。
外はなんだか研究室のようないろんな機材がある場所だ。
ここが中央自治会特殊捜査課らしい。
「ガキが布一枚でうろついてんじゃねえ。服を着ろ」
そう言って、カズがカゴに入ってあった僕用の服を投げてきた。
ユニセックスと言ったら良いのか、パーカーにシャツと半ズボンである。
シャツにはイカのお寿司と”I♥以下”と適当なフォントで描かれている。
以下Tシャツである。すごくダサい。
「このヘッドセット外せないの?」
「脳に直結してるから外せねぇよ」
「怖いなぁ……頭洗う時どうすればいいの?」
「防水加工だから大丈夫」
周りの皮膚が大丈夫じゃないだろう、と。
まぁ、定期的に整備されるんだろうけど。
カズははぁ、と溜息をつき冷蔵庫から缶コーヒーを出してきた。
僕には適当にオレンジジュースのペットボトルを投げてくる。あんパンもだ。
これを食え、ということだろうか。
「課長がこんな事になってなきゃ、人手不足になんないで済んだんだがな」
『ふん、この稼業だ。肉体を失うなど、よくあることだろう』
「氷川のやつは帰ってこねぇしよ。あいつが連れてきたんだろ、このガキ」
「氷川……?」
残念ながら全く思い出せない。脳内データを索引してみる。
銀髪のイケメンみたい。ただそれ以上の情報はロックが掛かっていた。
カズもだけれども、特捜課の情報は一定以上調べられないようになっているみたいだね。
「人手不足なの?」
「大抵の異能者はもっと出世するか野垂れ死ぬか、犯罪組織でもやってるかだからな」
『我々のような刑事の真似事をしている異能者は稀なのだ』
「まぁ、別の課にはそこそこいるが……連中、トロ臭いんだよなぁ」
『先日、三週間ぶりの休日と言って出勤してこなかったキミに言われたくないね。おかげでミミ子くんを想定より早く稼働させることになったんだから』
ぶんぶん、くるくる、感情的に回転したり、つけてある画面の顔が切り替わるドローン。
九十九課長、なんだか見ていて楽しい。
一方のカズはどっせいと座り込みなにやらパソコンを弄っていた。事務仕事のようだ。
「しかし九十九課長、先日の一件……偶然発生したとは思えねぇんだが」
『異能者の仕業だろうか。レベル3以上あることになるが』
「であれば、また起きるぞ。あんなテロが」
レベルだの異能者だのなんだのと言って、僕の索引が間に合わない。
小難しい単語で話さないでほしい。
仕方がないので、ソファに座ってあんパンを貪ることにした。美味い。
しかし小さいあんパン四個では僕の腹は膨れないようだ。
仕方ない。冷蔵庫を漁るか……。
「もっとこいつみてぇなガキ地下からさらってこいよ」
『人倫にもとる。ただでさえ地下エリアの人間は反抗的なのだ。それに我々の管轄ではないからな』
「復興課の連中、とろくさいんだよ……何してんだ、ガキ」
うっ、見つかった。冷凍庫から餅アイスをとったことがバレる。
餅アイス、好きなんだよね。前世からの好物。二個あったって一個も分けたくない。
「俺の餅アイス食ってんじゃねぇよ、ガキ!!」
『よしなさい。アイスぐらいで大の大人がみっともない。また買ってくればいいだろう』
「面倒クセェ……おい、ガキ。課長と一緒に餅アイス買ってこい。散歩だ」
「ええ~~」
「ええ~~じゃない。ほら、1000ヘクスやるから」
そう言って、なにやらカードを渡された。1000ヘクス……どれぐらいなんだろうか。
少なくとも餅アイスを買える程度の金だとわかる。
僕はそれを受け取り、懐のポケットに突っ込んでおいた。餅アイスを貪りながら。
『え? 私も行くの?』
「課長飛んでるだけでしょ、散歩ぐらい連れて行けよ」
『しょうがないな……』
そう言うと、課長が飛び回ったあと、僕の視界に矢印が現れる。
ヘッドセットが稼働してゴーグルが飛び出てきたのだ。これ、どうなってるんだろ。
まぁ着けていてお洒落だけどさ……。
矢印の方に進んでいくと、自動扉がある。
さっき触れてもロックされていますって言われたんだけど、今回は……。
おっ、開いた。僕が勝手に出ないための処理だったみたいだね。
外に出ると、真っ白い廊下のようだ。
ここはどこかの研究所っぽいよなぁ……窓とかない。
僕が先に進んでいくと、ロッカールームがあった。
矢印はここを一旦示しているみたいだね。
開けてみると……拳銃とナイフ、そしてレインコートが。
しかし先日使った
「あの刀は?」
『あれは今回の外出には必要なかろう』
「拳銃とナイフはいるのに?」
『うむ。アルビオンは治安がそこそこに悪いからな』
そう言われちゃあ仕方ない。
通り魔に刺されてまた転生しても困るし……。
僕は拳銃とナイフが入ったホルスターをつけ、レインコートを羽織る。
先の矢印に向かっていくと、市役所のようなエントランスに出た。
それなりに人が出入りしていて、パワードスーツの警備員などもいる。
ここが中央自治会ってことか。
『上に食堂と購買があるのだが……ちょっとばかり散歩するか』
「ああ、いいね」
言われて外に出る。外には近未来的なビル――もっとも半分は倒壊していたり廃墟なのだけれども――が立ち並び、中央には一番デカい突撃槍のようなタワーが立っている。
廃都アルビオンの象徴的な建築物だと思われるけど……。
『気になるかね。宇宙エレベーターだ。もっとも、既に使われていないが……』
「そりゃあまたなんで?」
ドローンから聞こえる九十九課長の落ち着いた声。
なんか声優さんとか、逆に実況者とかしてそうな声だ、うん。
どちらにせよめちゃくちゃ儲かると思う。
『ああいう宇宙エレベーターが各国に出来て以降
「宇宙エレベーターが異能者の原因に?」
『バベルの塔を建ててはいけなかったのだよ。私はそう判断したね』
それはなんとも宗教的な見解だな、と思った。
だけれどももし神なんてモノがいるのなら、やはり僕は転生してきたのかもしれない。
TS転生を……。
さて、自動扉を出ると、どうやらこの施設は市民会館……というか……。
なんか……独特な形をしている。逆階段というか、三段キノコというか。
デザイナーがめちゃくちゃ頑張って作ったって感じの施設だなぁ。
さて、階段を降りるとすぐ先の横断歩道を渡ったところに、コンビニがあった。
早い。早すぎないか? 僕の散歩はここで終わるのか?
『あそこのコンビニでなにか買っていこう』
「近すぎるよ、もっと散歩したい……」
『馬鹿言うんじゃない』
こんなに近いならわざわざ装備をする必要もなかっただろうに……。
と思いながらも、コンビニに入店。
おお、漫画とか雑誌も置いてある。でも600ヘクスを超えるな。
餅アイスが280ヘクスだから、う~~ん、でも僕もお菓子買いたいし……。
『ふふふ、迷っているようだね』
そう言うと九十九課長がどこからともなくカードを取り出して渡してきた。
このドローンのどこに入っていたのか……。
『2000ヘクス入っている。合わせて3000ヘクス。好きなものを買うと良い』
「わーい!!」
成人男性だった前世など忘れて僕はカゴいっぱいにお菓子と雑誌を放り込んだ。
うん、やっぱり帰るべきは童心だね。そのままレジの列に並んでいると――。
目の前のヘルメット男が店員にショットガンを向けた。
コンビニ強盗である。まさか僕の目の前で起きるなんて。
「おい、金を出せ」
……治安、良くないね。ここ。
僕と課長は目とデジタル画面を見合わせた。
とっさに
「なぁっ!?」
一瞬で解体されたショットガンに気づいた男。
しかし次の瞬間には、僕の回し蹴りによって吹き飛んでいた。
いやぁ、便利だね
あんまりずっとは使ってられないし、インターバルが必要そうだ。
でないとまた抑制剤を注入することになってしまう。
「大丈夫だったかい?」
「は、はいぃいいいいいい……」
怯えた表情のコンビニ店員。まだ女子高生ぐらいだから多分バイトかな?
栗色の髪と、ピカピカのおでこがまた何とも可愛らしい。可哀想に……。
『でかした、ミミ子』
「えへへ」
課長がぴょこぴょこ宙を飛び回って、僕を褒める。
この人、ドローンなのに感情表現豊かだなぁ……実の肉体はどこにやったんだろうか。
人格だけ、ドローンに乗せているってことなのかなぁ……。
しかしそんなことより、僕は気になることがあった。
「なんだって市民会館の近くにあるコンビニなんて襲ったんだろう?」
『というと?』
僕が疑問を投げかけると、課長が【?△?】とわかりやすい表情をした。
そのデジタル画面いいね、表情がわかりやすい。
「あそこは僕らみたいなエージェントの拠点なんだよね?」
『ああ、そうだが……』
「わざわざ捕まりに来るようなものじゃないかな」
『ふぅむ』
僕がそう言うと、課長が回線を出して、ヘルメット男の首筋に突き刺した。
……いや、どうやら首元にチョーカー型のギアがあるみたいだね。
それをハッキングしているのだ。
しばらくするとピロピロピロピロ鳴り始めた。
ハッキング成功の音なのだろうか。
『……なるほど、どうやらこの男は大いなる作戦の陽動を買って出たようだ』
「というと?」
『連中の目的は、端から市民会館の方にあったのさ』
……と話していたときのことだった。
リィイイイイイイン、リィイイイイイン、と非常ベルが鳴り響く。
どうやら市民会館の方からだ。シャッターが閉まりだしている。
「あれ、僕らこのままだと帰れなくない?」
『非常時の出入り口ぐらい知っている。加勢に行くぞ!!』
そう言って、僕らはコンビニを後にした。
まだレジを通していない商品をおいて。
ああ、僕のお菓子、雑誌、餅アイス……。
だけど、しかしそんなことよりもカズがピンチだ。
見るからに戦えなさそうなカズ。弱いカズ。負け犬。
そんなカズでも仲間なのだから、守ってやらなければなるまい。
僕が行くまで待っていろよ……!!
そして助けられた暁には一生、僕に餅アイスを贈呈しろ!!
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【カズ】
中肉中背前髪スカスカ♥
特捜課の人間だが常にちょっとイライラしている。やめてほしい。
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そんなわけでまた次回。ちょっとメスガキ感が出てきたミミ子さん。
無感情とは――?
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