どう考えてもR18ではないだろう……
「第一位の奴、空気を集めてプラズマを作り出してる!」
「相変わらずバカげた能力です、とミサカは痛みに耐えて軽口を叩きます」
美琴がミサカに肩を貸しながら、戦闘地域から外れた高台で、二人を眺めていた。
「そうだ、風力発電用のモーターに逆に電気を流し込めば気流を乱せるかも!」
美琴は、手近にあった風力発電機に電気を流し込む。始めはゆっくりであったが、だんだんとスピードを増していく。
しかし、一方通行に変化はない。
「一機や二機じゃダメか……」
美琴は眉間に皺を寄せる。と、気配。大量な気配。それはどんどんと集まってくる。そして、その顔は全て同じであった。
「ミサカに、ミサカ達に任せて下さい、とミサカは立ち上がります」
「それが……私の妹達?」
自身と同じ顔が大量にある状況。美琴は思わず、気持ち悪、と呟いたが、誰にも聞こえなかったらしい。
ミサカ達は、一斉に電気を流し込む。一機、二機、三機。唸るプロペラが増える。と、同時に空気の流れがあっちこっちと変わり始める。
「くそが! プラズマがうまく出来ねェと思ったら! 先にあいつら始末してやらァ!」
突然複雑に動き出した気流。違和感の原因を見つけた一方通行は、集めていた空気を霧散させる。目線の先には、姉妹達。
踏み出そうとする一方通行に、アルが突っかかる。
「あ! 待て、お前の相手は……」
「お前殺すなンてなァ! すぐに出来るんだよ、三下ァァ!!」
一方通行は向かってくるアルに向かって石を蹴り出す。初速が音速を超えたそれはアルの左腕にぶち当たり、肉を引き裂く。アルは、千切れかけた左腕を抱え叫ぶ。
「クケケケ。待ってろ三下ァ! お前は必ず俺が新技で跡形もなく消してやるからよォ!!」
「くっ…… 待てぇ!! 第一位ぁぁあ!!」
ーーーー
美琴は、それを見た。怒りに色があるなら赤くないのだと思った。
「第一位ね……」
「見つかったようです、とミサカは冷や汗たっぷりになります」
「よう、糞人形にオリジナル」
無表情。穏やかな口調。それとは裏腹に声の端々に漏れる怒り。ミサカ達はさながら睨まれたカエル。それを庇うかのように美琴が前に出る。
「なによ、糞ガキ」
「オマエ、マジでそンな人形のために死ぬンか?」
怒りと哀れみを孕んだ声。
ミサカは覚悟を決めると、その傷ついた脚を引きずり歩き出す。人間だと言ってくれたあの男のためではない。ましてや、死ぬためでもない。
ミサカは、ただただ意地を通したいと思った。一矢報いたいと思った。
そう思い美琴の前に立った。
「美琴さん、逃げて下さい、とミサカは」
ミサカの意地は最後まで通せなかった。ミサカを押しのけ、美琴は一方通行の前に立つ。
「バカ言ってんじゃないわよ! 妹を見捨てて逃げるわけないでしょう!!」
「え?」
一方通行を睨みつける。指を差す。そして、宣言。
「第一位!! はっきり言ってあげる。もう、これ以上誰一人殺させない!」
「お、お姉さま……」
「モルモット? クローン? 関係ない! 妹のたったの一人や一万人くらい受け入れてやる!」
一方通行は軽く笑う。喜でも怒でも哀楽でもなく、ただ呆れていた。渇いた笑い。
そして、それが収まると忘れていた怒りの感情が湧き上がる。
「なら実験動物共々消し飛ばしてやるよォ!!」
満面の、そして狂った笑み。美琴は、歯を食いしばる。そうしないと、笑った膝では立てなかった。ミサカもそうだった。ミサカの脚は、そのケガも含めてどす黒くなっていた。そして、ケガ以外の理由で膝が震えていた。
「覚悟はいいよな? 糞人形、オリジナル」
一方通行はゆっくりと距離をつめる。美琴は顔を見ることができなかった。だが、笑っていることだけは理解していた。
足音が近づいてくるのが聞こえる。ミサカは動くことができなかった。このまま殺されることは理解していた。
一方通行との距離が縮まる。美琴は必死に考えていた。助かる方法を。逃走、否定。反撃、否定。命乞い、否定。
一方通行の足が止まる。ミサカは覚悟した。せめて美琴には助かって欲しいと思った。逃走、不可能。反撃、不可能。命乞い、無意味。
そして、次の声。それは二人の予想もしていなかった声。
「もう、誰も不幸にしない。錬金術で守る、そう決めたんだ。絶対にやらせない!」
「アル! そのケガ!!」
アルはゆっくりと一方通行に近づく。握り締める左手は血まみれ。ギリギリ動く程度に筋や筋肉、骨が継がれ、そして、必要最低限に神経が繋がれている。
「三下かァ。何しに来た? まぁ、一人殺すのも二人殺すのも大してかわンねェからよォ」
一方通行は、右手を突き出す。挑発。
それと同時にアルは、両手を合わせる。そして、地面の土を極微細な粒子に錬成。細かい粒子が、一方通行の足を飲み込もうとする。一方通行のバランスが崩れる、が一瞬。すぐさま立て直す。不安定な足場でも、ベクトルを操作することで難なく姿勢を保持する。
「無駄だ。そンなンじゃ、アリも死なねェよ」
しかし、そんなのはお構いなしにアルは走り回る。手近の石に手を当てると、錬金術を応用し粉砕する。飛び散る破片。しかし、一方通行には目潰しにもならない。
それでもアルは続ける。今度は、ガードレールを爆砕。次々と破壊し続ける。
辺り一面、真っ平ら。美琴とミサカ達は、声をあげることすら叶わず、ただただ自身の身を守ることしかできない。
そして、一方通行は、何かあるのではと待つがそれも限界にきていた。そして、アルもそうであった。左腕は、血液を微量ながら流し続けており、また、一方通行の反射により、新たな傷ができていく。アルにもまた限界が近付く。
「終わりにしようやァ、三下ァ」
と、それが合図であったかの様にアルが走り出す。それに対し一方通行は、地面の瓦礫を巻き上げる。
「てめェでやったンだ。後始末はしっかりしてけやァ」
降り注ぐ瓦礫、砂煙、鉄片。それらを一切無視。飛びそうになる意識を、ぶつかる落石に叩き起こさせ、走る。一方通行の眼前まで走り抜ける。
「もう誰も死なせやしない!」
左腕を引き絞る。アルには撃ち抜いてからのことは一切頭になかった。
「バカか、テメエはァ! 次は確実にテメエに向かってベクトルを打ち込ンでやらァ!!」
アルの左拳が反射膜に侵入する。反射膜はベクトル計算を正確に行い全てを拳に叩きつける。アルの拳が軋み、指が潰れる。
それを待ってたかの様に、アルの腕が光る。錬成反応。
巻き上がる石片、鉄くず、砂塵。それらを、自身の左腕に強引に癒着。
アルの左腕は、一方通行の右頬に到達。そのまま、アルは撃ち抜いた。