ーーーーファミレス前
「ジャッジメントですの!!」
「ち、厄介なのが出て来やがった! 野郎共かかれ!」
黒子は、男の前に立ちはだかる。人数は十人。黒子は、位置関係を瞬時に把握する。そして、能力ーー
「遅いんですの」
男を蹴り倒し太ももに手を伸ばす。
「大人しくしててくださ……」
「く、黒子?」
そのままピタリと止まった黒子に、追いついた美琴が声をかける。
「……矢が切れましたわ」
涙目で振り向く黒子。男は立ち上がりざまに黒子の腹部を殴りつける。グウと唸りながら黒子は弾き飛ばされる。
「何やってんのよ、バカ!」
「行かせるか!」
走り出した美琴の前に男の一人が立ちはだかる。が、しかし、美琴に蹴り倒される。再度走りだそうとひた美琴であったが、それより早く一人の男が黒子のそばに立つ。
「動くんじゃねぇ!」
怒号。しかし、美琴は腕を前に伸ばす。
「邪魔よ! 黒子から離れなさい!!」
直後その指先から閃光が走る。黒子を盾にとった男は、美琴の能力により崩れ落ちる。
「くそ! 逃げ……」
リーダー格の男は、後ろを振り返り言葉が詰まる。
「君たち全員、もう少し鍛えた方がいいよ」
そこには、金髪の男が一人立っていた。その足元には、沈んだ仲間が三人。うめき声を挙げている。
アルは手をはたくと肩を回す。
「怪我人もいるみたいだし。出るとこ出てもらう!」
そういうと、一足飛びにリーダー格の男の胸元に飛び込み肘を打ち込む。
虚脱感、それから嘔吐感。リーダー格の男は倒れはしなかったもののたたらを踏む。
「鎧の時と違って体重が軽いからなぁ」
「なめやがってぇ!!」
リーダー格の男は、咳き込みながら、距離を開けるとナイフを取り出す。
「このナイフはなぁ、俺の能力で超振動を起こしてる。もし触れようもんならすっぱりとイくぜぇ」
そういい、アルに向かって突き出す。振り下ろす。振り上げる。突き出す。
「危ないなぁ。武器なんてやめなよね」
「ちょこまか避けるんじゃねぇよ!!」
アルは、余裕を我慢するような表情で、それら全てを紙一重で避ける。
「嫌だよ、あたったら痛そうだ。それに」
そこで、一旦言葉を止める。
「こんなのに当ったら師匠に殺されちゃうよ」
美琴には一瞬笑っているように見えた。
「というわけで。腕、もらうよ」
振り下ろした手首を掴み肘に手を当てる。そして、そのままひねりながら横に倒す。
黒子は、きちんと頭部を死なない程度に蹴りつけるアルに驚く。
「スゴい…… 武器持ってる人を能力も使わないで取り押さえちゃった……」
隠れていた初春と涙子。
「あいつ、何者なの」
「あの方、何者ですの」
美琴と、黒子は同時に驚嘆の声をあげる。
「く、クソ餓鬼どもが!! ナメるなぁ!!」
倒れていた男が、よろめきながら立ち上がる。右腕を黒子に向ける。その右腕が揺らぐ。高熱による揺らめき。
「し、白井さん! 発火能力者です! 避けて!!」
パンッ
美琴は聞いた。両手を合わせる音を。そして、次の瞬間黒子の前に石壁が出来ていた。
豪と衝突音が響き炎弾は壁にぶつかり消え去る。
意識を戻すと、アルはいつの間にか、その男の首を締め上げていた。
「大佐ほどじゃなくて助かったよ。あ、もう大佐じゃないか」
アルは、気絶した男を下ろす。錬成はできるみたいだな、と両手を握っては開いて確認した。
ーーーー
「わたくし達は、報告に行きますのでこれで」
そういうと、黒子と初春は治安部隊とともに去って行く。
「私も帰ろうかな。またね、アルさん!」
涙子もまた、両手を高くあげながら立ち去る。と、美琴に視線を戻し、その眼力に目を剥く。
「……まだ、用事終わってないわ。あんた何者? あんたみたいな能力者聞いたことないわ」
「能力って…… 美琴が相手を焼いたり、黒子が瞬間移動してたやつ?」
「あんたバカにしてんの?」
美琴の周りの空気が変わる。火花が弾ける音。
「知らないふりをするつもりなら教えてあげる。私は電気使い。強度はレベル5。超電磁砲の御坂美琴よ!!」
空気が膨れ上がったかと思うと収束。そして、美琴の右手から放電される。
「これでも、まだ隠し通せるかしらぁぁぁ!!」
パンッ
アルは両手を地面につく。アルの周りにアスファルトから細い槍が何本もつきあがる。
そして、美琴の放電はそこに吸収される。
「避雷針!?」
「電気を使うと教えてもらったからね」
もう一度、両手を合わせその槍全てを戻す。
「それにしても、神経系統の異常かなにかかな? それでも指向性があるのが不思議だ」
「あんた、詳しいわね」
「一応科学者でもあるからね」
「あっそう。まぁ、今のが能力なんだけど…… とぼけてる感じはないのよね。言ってる事はまっとうだけど知らない事が多すぎるというか……」
美琴は、目を細める。値踏み。
「いや、実はどうもこの世界の人間じゃないみたいなんだ、僕……」
「はぁぁぁぁ?」
値踏みに値しない返答。詐欺師かどうかを考慮に入れる。
「話すと長くなっちゃうから省略するけど、さっきのは僕の世界では錬金術って呼ばれてて、その…… 実験に失敗してこの世界に飛ばされちゃったみたいなんだ」
美琴、宗教か何かかと考えながらそれに返答する。
「じゃあ、これからどうするの?」
「とりあえず、元の世界に戻る方法を探すよ」
アルの、気持ちの良い返答。さながら、春先の薫風のようだ。が、美琴の問いはそこではない。
「いや、例えば今日の宿とか」
「あ……」
滝の様な汗。
「はぁ。今の話を信じる、信じないは別にして、あんた悪いやつじゃないみたいだし、助けてあげたいんだけど…… 寮に連れて帰る訳にもいかないしなぁ、かと言って誰か紹介できる人もいないし」
値踏みの結果、助けるには値する、と、考えたものの美琴が助ける手段は多くない。頭を抱える二人のもとに、二足歩行の哺乳類風両生類フェイスの白衣の男が現れる。
「困ってるのかな?」
「おじさん…… 誰?」
「医者なんだね? アルフォンス・エルリック君」
アルは、息を飲む。
「お嬢さんは帰るかな? なんせ、夜も更けてくるからね?」
そんなアルを知ってか知らずか、医者らしき白衣の男は美琴に問う。
「え? でも……」
美琴はアルの顔を見る。
「大丈夫だ、美琴。どうもこの人…… 僕のこと知ってるみたいだ」
「心配ないよ、僕は病院に勤めていてね? 空いたベッドならたくさんあるんだよ? それと、少し昔話をしようと思ってね」
白衣の男からやっと目を離すと、アルは美琴を見る。何とか笑顔を浮かべながら。
「美琴、送ってあげられなくてゴメンね。少し、この人と話さなきゃならないみたいだ」
白衣の男に促されついていこうとするアルを美琴が呼び止める。
「あ……アル!!」
「ん? 何??」
「ま、また会えるよね?」
アルは、一度下を向く。そして、顔をあげる。
「当然!!」
と、勢いの良かったアルが突然停止。ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように振り向く。
「……お金払ってないんじゃ」
美琴は頭を抱える。
「もう払ってるわよ、安心して行ってきなさい」