とある次元の錬金術師   作:nor_phesor

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第四話

ーーーー病院

 医者と名乗った男について病院の門をくぐった時、外は薄らと暗くなっていた。

 アルは通された部屋をぐるりと見渡す。病院といわれたものの、むしろ研究室、それも大規模なそれだとアルは思った。

 

「僕は冥土帰しとかよばれる医者でね? あ、ところでコーヒーでいいかな?」

「は、はぁ…… すごい名前ですね…… あ、カフェ・オ・レ、コーヒー抜きで」

 

 コーヒーと大量のミルクを持って冥土帰しが戻ってくる。

 

「君も真理の扉を抜けて来たのかい? アルフォンス・エルリック君」

「どうして、真理の扉を? どうして、僕の名前を?」

 

 問いには答えず。コーヒー片手にアルは問い返す。

 

「昔、君と同じく真理の扉を抜けて来た人間を知ってる。その名前が、エドワード・エルリック。君にそっくりだった」

 

 そういうと、冥土帰しはコーヒーを一口飲む。

 

「兄さんが!?」

 

 飲みかけのコーヒーが少しこぼれる。

 

「やはり、君の血縁か。そっくりだったからね。その金髪金瞳が」

 

 冥土帰しは、思い出に目を細める。

 

「何でニーサンが! もう錬金術は使えないはずなのに!!」

「ふむ、彼曰く、賢者の石になってしまった弟を助けるために、と言っていたな」

「僕が…… 賢者の石に??」

 

 アルの疑問。過去をいくら攫ってもそれに類する話すら出てこない。

 

「その反応からみると、彼は別人かねぇ。あるいは、別次元の人間」

「別次元だって?」

 

 アルは、完全にコーヒーから手を離していた。

 

「例えば、僕達の世界は三次元だ。しかし、実際は10以上の次元が存在している。もし、我々が理解の容易い三次元のうち一つの変数を完璧に置き換えることができれば、あるいはそこに平行世界が生まれるのかもしれない」

「その…… エドワード・エルリックは…… ニーサンは?」

 

 アルは、テーブルに身体を乗り出す。

 

「来てそうそうは、ロケットの研究をしていたようだ。宇宙の先に真理の扉に近いものがあると考えたらしい。それ以降も、原子力なんかも調べていたようだね。後で論文を持ってきてあげよう。なかなか優れた研究者だったよ」

 

 過去形。アルは外が真っ暗になっていることに気がついた。

 

「彼はもういない。この日本で、死んだ」

 

 沈黙。

 

「安心してくれ、というのは間違っているかもしれんが、彼は一人じゃなかった。最後はたくさんの孫に囲まれて逝ったよ」

「そう…… ですか」

 

 アルは、状況、情報を噛み砕くように何度も頷く。

 

「ふむ、少し暗い話になってしまったね。君から何か聞きたいことはあるかい?」

 

 自然と湧き上がる疑問を取捨。必要な質問、知るべき情報を選択。

 

「ニーさんのこと。あと」

 

 目線をもう一度冥土帰しに合わせる。

 

「能力。能力ってなんですか」

「能力ねぇ。なぜ?」

 

 冥土帰しも、質問に質問で返す。

 

「美琴の発電能力。黒子の移動能力。どれも、世界が違う。そんな言葉では納得出来ないものでした。もしかすると、元の世界に戻る手がかりになるかもしれない」

 

 その回答に、冥土帰しは一瞬止まり、そして何かを思い出し微笑む。

 

「お兄さんと似てるね。決して諦めない。君のお兄さんには多くの人が憧れた。少し長くなるが、説明してあげようかな? まずは自分だけの現実ってのがね……」

 

 アルと冥土帰しの講義は夜遅くまで続いた。

 

「つまり、妄想が強い人間ほど能力が強くなると?」

「その言い方では語弊が出るね? 御坂君が可哀想だ……」

 

ーーーー翌日 病院

 アルが冥土帰しから与えられた部屋、清潔感満点。そして、それ以外は売り切れた部屋ーー病室故に仕方ないがーーに、来訪者が二人。

 

「眠いんだけど……」

 

 そういいながら、アルは美琴と黒子に備え付けの椅子を差し出す。

 

「夜遅くまで何やってたのよ」

「殿方が夜にナニをヤるかなんて想像するのも汚らわしいですわ」

「言われなき中傷だ……」

「それに、お姉さまも最近うろうろしてるじゃありませんか」

「なんのことかしら?」

「はぁ、お姉さまもお姉さまですわ」

 

 黒子の矛先は、あっちこっちと忙しい。

 

「ところで何しに来たの?」

 

 話が見えないアルは、黒子に問う。

 

「あなたのことを上に報告しましたら、ほっぽっておけとのことでした」

 

 黒子はやれやれとポーズ。そして、ポケットに手を突っ込むと一つの機械を取り出す。

 

「代わりにこれを渡すように言われましたの」

「これは?」

 

 手渡されたのは、黒い板。表面はガラスがはめこまれている。アルは、回して見たり、ボタンを慎重に押してみたり。

 

「携帯電話ですの。外のしょっぱいものしか使ったことのない近世代的生活を送ってた殿方にはわからないかもしれませんが」

「あはは、何かわかんないけどありがとう」

 

 黒子はバカにしたのだが、アルはあまり気にしてはいない。

 

「とりあえず、蛙顔のお医者様があなたの保護役になっておりますから、迷惑かけませんように! あと、外出時は必ずこれを持ち歩いて何かあったらすぐにアンチスキルに連絡するんですの!」

 

 黒子は、アルに指を突き出しながら立ち上がる。

 

「お姉さま、行きましょう」

「ちょっと待って。連絡先を教えなさい」

「う、うん?」

 

 連絡先、と言われアルは一瞬戸惑う。美琴は、アルの携帯を取り上げると操作する。

 

「あんたこの世界に知り合いいないんでしょ! なんかあったら助けたげるわよ!」

「うん、ありがとう! じゃあ、もし、美琴が困ったら必ず連絡してね!」

 

 美琴は口端を上げる。

 

「第五位をなめなさんな。異世界人の力なんて必要ないわよ」

 

ーーーー数日後 病院近く

「身体検査とか言ってなんかさせられたけど、あれなんだろ? 冥土帰しさんからお願いされたからやったけど大丈夫かな?」

 

 肩を回し、首を回す。

 

「そういや、この携帯電話? ってヤツ。とりあえず、掛け方と受け方だけ聞いたけど……」

 

 アルの世界でも電話はあった。がしかし、ここまで小さい個人専用のものはなかった。やはり、この世界のレベルの高さに感心する。と、先程から気になっていたことをついでに口にだす。

 

「……なんかついてきてる……」

「そいつぁ、警備ロボだ」

 

 誰もいないと思っていたが、回答が返ってくる。

 

「警備ロボ?」

「あぁ、お前さん警備されてるか、不審者扱いされてるか、どっちかだろうな」

「多分どっちも、だろうね」

「変わったヤツだ。ところで一つお願いがあるんだがいいか?」

 

 願い、アルは声を低くする。

 

「まぁ、僕に出来ることなら」

「『ばかぁ!もう知らない!!』と言ってもらえないか?」

 

 

 

「…… あなたも相当変わってますね」

「安心しろ。自覚はある」

 

ーーーーセブンスミスト近辺

「『真理の扉』を、この世界でいう『自分だけの現実』に置き換えると少しだけ理解が進むな」

 

 アルは歩きながら考える。似ている。しかし、そこまでだ。自分の能力が、『自分だけの現実』によるものなのか『真理の扉』の影響なのかがいまだにわからない。

 エドワード・エルリックーー研究書類の癖からニーサンなのは間違いないとアルは踏んでいたーーは、この力を研究していたのか、アルはそこが気になっていた。

 

「アルですか? と、ミサカは首をかしげながら問います」

 

 ぶつぶつと独り言ちていたアルは足を止める。声の方向には少女が一人。

 

「えぇっと、ミサカの方かな?」

「ミサカは覚えてもらえていて嬉しいです、とミサカは喜びを伝えます」

 

 ミサカは飛び跳ねる。

 

「あはは! あ、そうだ! 携帯電話持ってる?」

「持ってませんが、とミサカは不思議そうに答えます」

「そっかぁ、せっかく携帯電話を手に入れたんだけど」

「ば、番号が分かればかけられるかもしれません、とミサカは大慌てで答えます」

 

 残念そうなアルと、慌てるミサカ。

 

「うーん、よくわからないけど、教えておくから何かあったらかけてよ。あ、そういえば、あの後お姉さんに会ったよ」

 

 アルはケータイを取り出す。

 

「そう、ですか」

 

 声に違和感を感じ顔をあげる。

 

「どこかへ行くのですか?、と、ミサカは話を変えます」

 

 違和感。何の? と、自問するも自答を得ず。アルは、ミサカの問いに答える。

 

「だいぶ地理的にもなれたからね。美琴にこの近くに美味しいクレープがあるって聞いたから一人で行ってみようかと思ってるんだけど、ミサカも行くかい?」

「いえ、ミサカは今から用事がありますから、とミサカは残念そうに断ります」

「そっか。なら、今度行こうね」

「はい」

 

 違和感。先程と同じ違和感。先程はみえなかったが、表情も声も暗い。

 

「ん?」

「と、ミサカは元気よく答えます!!」

 

 違和感を吹き飛ばす笑顔。その笑顔に、アルは一番の違和感を感じた。満面の笑み。それなのに悲しく感じた。

 

「では、また、とミサカは……答えます」

 

 アルは、何も言えずただその小さな背中を見ていた。

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