とある次元の錬金術師   作:nor_phesor

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第六話

ーーーー病院

 その部屋の主は、少女三人に囲まれていた。

 

「まったくもう。一体なんだったんですの?」

「白井さん、いいかげんぐちぐち言うのやめて下さいよ」

 

 初春はそういうと、チョコレートでキノコを模したお菓子を口に運ぶ。

 

「そうですよ! 誰も怪我してなくてよかったじゃないですか!! ね?」

 

 そういうと、こちらはタケノコを模したチョコレートを口へ涙子も運ぶ。どちらもアルが買っていた奴だ。目ざとい涙子に見つかったが運の尽きであった。

 

「あぁ、そうだね。本当にゴメンね」

 

 アルには記憶障害がある。そして、たまに悪夢がフラッシュバックする。

 冥土帰しとアルの作ったカバーストーリー。

 ある意味嘘はない。

 

「全くもう、お姉さまも朝からいないし」

「御坂さんも、まさか自分が事件に巻き込まれてるなんて思ってないでしょうね」

 

 そういって、初春が笑う。

 

「いやぁ、でも、クローンがいるって噂があるからねぇ。あ、知ってる? 他にも脱ぎ女って露出狂が……」

 

ーーーー夜更け 病院

 深夜。アルは病室で兄の論文を読んでいた。だが、頭の中のドロドロとした何かが理解を妨げていた。思い出すのは少女の肢体。

 あれは本当に起きたことなのか。本当は、何もなかったんじゃないか。そんな

、希望。その希望は、目の前の無線機が否定する。

 実験で死んだあの子は、何のために生きていたんだろう。何のために死んだのだろうか。そんな疑問。益体もないものが頭の中で渦巻く。

 そして、アルは、やっと電話が鳴っていることに気がつく。

 

「黒子からだ」

 

 アルは、受話の手順をふむ。

 

「アル…… フォンスさんですか」

 

 暗い声。アルはできるだけ明るい声で応える。

 

「アルでいいよ。どうしたの? 元気がないけど……」

「アル…… アル! 助けて下さい! お姉さまが…… お姉さまが!!」

 

 脳みそが発火。

 

「今どこ? すぐに行く!!」

 

 アルはイスから飛び降りる。

 

「くそっ! もしあれが本当のクローンだったら、美琴に無関係なわけないじゃないか!」

 

 アルは自分の無能さを呪った。

 

ーーーー常盤台中学 女子寮

「アル、こちらですの」

 

 キョロキョロとしていたアルに、これまた、隠れていた黒子が声をかける。

 

「今からわたくし達の部屋に移動しますの」

 

 黒子が、アルの肩を掴むと、二人の姿は消えた。

 

ーーーー美琴と黒子の部屋

 アルは辺りを見回す。女の子の部屋と言うことを思い出し、それを止めると美琴のベッドを背に座り込む。

 

「お姉さまが、帰ってきませんの。今までも何度かありましたが、こんな時間まで、連絡もなかったのは初めてで……」

 

 そこまでいうと黒子は、分厚い書類をアルに手渡す。

 

「で、あまりに心配になって家の中調べてたら……」

「……心配したら家捜しするの?」

 

 引きつった笑顔、大量の汗。

 

「そ、そこはどうでもいいことですの! 問題はこっちですの!」

「絶対能力進化実験?」

 

 アルはそれを開く。幾多もの研究書を読んできたアルは、素早く研究書の読むべき場所、要点をかき集める。

 研究理由、研究方法、研究対象。

 

「絶対能力者、超能力者のさらに上、レベル6の事だと思うんですの。何のことかはわかりませんが」

 

 黒子の心配をよそに、アルはそれを読み進める。試行回数、試行内容。

 第一万飛んで三十一回の実験内容の場所で、指を止める。目を止める。思考も一瞬だが止まる。

 フラッシュバックする記憶、そして感情をもう一度思考の海に沈める。

 

「アルは言ってましたよね。ミサカが倒れていた、と。その中に書かれているクローンと、何か関係があるのではないのですか?」

 

 黒子の視線。確信とは言えない、すがるようなそれを、アルはちらりと見ただけで、また書類に落とす。

 

「アル…… どうしたんですの?」

 

 推測、判断、否定。それを何度か続ける。そして、おぼろげながら事実に近づく。

 アルは、顔をあげると陽気に話し始めた。

 

「あっはっは!! 美琴には悪いけどばらしちゃおうか」

「何のことですの?」

「美琴は今、蛙顔のあのお医者さんの所で特殊な実験をしてるんだよ。部外者には当然秘密。だから黒子にも秘密」

 

 アルは口に人差し指をあてるとウインク。

 

「それを何であなたが……」

「いやぁ、この前病院内をウロついてたら偶然」

「本当ですの?」

 

 先程のお返し、とばかりの黒子の視線。

 

「大丈夫! 今日が実験最終日だからね! だから、安心して。必ず、美琴は帰ってくる!」

 

 アルは黒子の肩を叩く。

 

「アル……」

「さ、寝るんだ。明日の朝、美琴をいつも通りに迎えてあげて。おかえりって」

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