とある次元の錬金術師   作:nor_phesor

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第八話

ーーーー川原

 ミサカの前には、頭髪も肌も真っ白な、モヤシと言えばむしろ聞こえのいい少年と青年の中間の男が立っている。

 

「…それにしてもやっぱテメェら、会話なンかできねェンだな。さすがに一万回もやりゃまともな会話の一つでも出きそうなもンだがなァ」

 

 白髪の男はつまらなそうに石をける。

 その石は、大量に積まれたコンテナの一つにあたり鈍い音を響かせる。

 

「実験開始時刻になりました、とミサカは第10032次絶対能力進化実験の開始を通告します」

 

 ミサカは、時計から目を離し、色白の男を見る。

 

「あァそうかい、やっと時間か、じゃあ始めるとするかァ」

 

 男は、おおあくび、そして、伸びをする。今から殺し合いをするとは思えないほどの余裕。それを目の端に捉えながら、ミサカは走り出す。男の右方向。風上に。

 

「何だァ? ヤル気あンのかテメェ」

「…今夜は風が少ないのですね、と悪臭に顔をしかめます」

 

 ミサカの両手間に青白い放電が発生している。放電による酸素原子への解離、そして。

 

「…… なるほどオゾンか、やるじゃねェか。だがなァ」

 

 第一位の退屈そうだった顔が、一瞬喜悦に歪む。と、足元が弾ける。

 能力を使い、一瞬で最高速度に到達。それを、ミサカは見止めるもそこまで。

 

「オメェが俺に捕まっちまえば作戦もクソもねェンじゃねェかァ」

 

 一瞬でミサカの横に到達。そして、右脚を刈るように掴み、そのまま持ち上げる。

 ミサカの作戦はここまで。ミサカの命もここまで。いつもの光景。いつもの結末。

 

「さて、どうするよォ。血液逆流はこの前したしなァ。この前ヤリ損ねたダルマでも作ってみるかァ?」

 

 一方通行は口端を上げる。左手で足の付け根を持つと、ーー一方通行からすればーー軽く力を入れる。手に伝わるのは、筋肉の千切れる振動。血液の温もり。骨のひしゃげる音。

 

「ぎゃゃぁぁぁぁ!!」

 

 痛み。その痛みを和らげようと、ミサカの脳内で様々な脳内物質が流れる。しかし、この痛みは和らげられない。

 ミサカは、口から泡を拭きながら叫び痛みに暴れる。しかし、一方通行からは逃れられない。

 

「おいおい、あンまり動くなァ。左足に両手を千切り終わる前に死ンじまうぞォ」

 

 一方通行は、過去ミサカを文字通り支えてきた両脚の片一方を振り、楽しそうに笑う。しかし、唐突にその笑みが消える。

 

「……? おィこの場合、実験はどォなるンだ?」

「……!?」

 

 ミサカが目の端に捉えるのは、金髪の男。前回の実験の後処理、その際出会った男。

 

「……今すぐその子から離れろ」

「おいおい困ったなァ、お前ら人形を何万体ぶっ壊そうとも何とも思わねェがよォ。さすがに一般人を口封じに殺すってのは気が引け……」

「それ以上口を開くな」

 

 アルは一方通行を睨めつける。一方通行は、片手で持ち上げていたミサカをポイと投げ捨てる。

 

「オマエ、何様? この学園都市第一位の超能力者に向かってなンて口きいてンですかァ?」

 

 苛立ち。一方通行が、そのような扱いを受けるのは久々であった。

 

「な、何をやっているんですか、とミサカは問い掛けます」

「君のお姉さんに頼まれた。君を、君たちを助ける」

 

 アルは安心させるように笑む。

 

「な、何をばかな! 作り物の体に借り物の心、単価18万円の人形のために、代わりのないその身を犠牲にするなど……」

 

 ミサカの叫び。その気持ちを、アルは少しだけ知っていた。似たような事で悩んでいたから。

 

「二束三文の骨董品の鎧に魂を宿らせた僕が言ってやる! 例え作り物の体に作り物の魂を宿らせてようが、君は人間だ! 君が僕の心配をしてくれるなら、君は人間だ!!」

 

 二人のやりとりに不服そうだった一方通行は、そこでアルに突っかかる。

 

「おいおい。勝手に話進めないでもらえませンかァ?」

「無視して悪いけど、話をしてる暇なんてなーい! まずはミサカを助ける!!」

 

 そういうと、アルは倒れているミサカに向かって走り出す。それを遮るように一方通行も走り出す。

 

「そいつは、俺の獲物ですよォ」

「邪魔をするなぁ!!」

 

 アルは、石をけりあげる。銃弾かくや、石は、一方通行に向かう。

 

「無駄だァ!」

 

 石が一方通行にぶち当たる。と、その寸前、石が進行方向を反転。速度は倍増。アルに向かう。

 

「石が戻ってきた!?」

 

 アルはとっさに倒れ込み避ける。折り返してきた石は、アルの頭上を、砲弾かくや通りすぎる。

 

『それが第一位の能力。ベクトル反射よ。第一位に向かうベクトルは全て自動で反射するわ』

 

 美琴に指示されてつけたイヤホンからありがたい解説が聞こえる。

 

ーーーーちょいと時間は戻って

「僕が行くって。美琴は帰ってなよ」

「ふざけないで。助けてくれるのは嬉しいけど、あんた一人に危険な目に合わせる訳にはいかないわ」

 

 美琴は、ズビシと言わんばかりにアルを指差す。

 

「はぁ、ホント、君はニーサンに似てるよ」

 

 アルは頭を抱える。

ーーーーそいで今

 

「もっと威力の高ェ兵器を使ってくれれば致命傷になったかも知れねぇのになァ。仕方ねェこちらから行くぜ!」

 

 そういうと、手近にあったコンテナを片手で持ち上げる。そして、それを手首の力だけで放り投げる。

 

「潰れちまいなァ!!」

「クソ! 美琴ぉ! 受け取れぇ!!」

 

 アルは、コンテナの下を駆け抜けると両手を地面につく。

 

「な! 急に地面が盛り上がって飛ばされた? と、ミサカは焦りながら状況把握に努めます!」

『急に言うんじゃないわよぉぉぉ!!』

 

 美琴が叫びながらミサカをキャッチする。一方通行は、それを一瞥するも、すぐさまアルに視線を戻す。

 

「オマエ、能力者ですかァ? 聞いた事ねェぞ。オマエみたいな能力者」

「つい最近目覚めたからね」

 

 アルは、少しでも二人から気をそらそうと軽く話す。

 

「分子の構造を、組み替えてンのか?」

「流石第一位。こんなことも出来るよ」

 

 両手をつくと金属人形が現れる。モデルは以前のアル。

 

「おもしれェ! おもしれェじゃねェか! ちょうど、クソ人形ぶっ壊すのにも飽きてたところだァ! 相手してくれよォ!!」

 

 一方通行が線路を踏む。踏んだ際に発生したエネルギーや、抗力など全てのベクトルが操作され、鉄製の蛇のように鎌首をもたげると、咆哮のような軋みをあげ、アルに襲いかかる。

 

「なんでもありかよ!」

 

 アルは鉄蛇の直撃を間一髪横跳びで避ける。

 

「逃げろ逃げろォ! じャねェと潰れちまうぞ!」

 

 ケラケラと笑う一方通行。鉄蛇は、それに呼応するように横薙ぎにアルを狙う。

 アルはその上を側面宙返りで飛び越えながら、両手を鉄蛇につく。発光したかと思うと、そのまま分解され鉄粉となる。

 

「やるじャねェの」

 

 ニヤリと口端を引き上げる。そして、手近のコンテナに触れる。コンテナは轟音をたてながら潰されていき、最後はボーリング大に圧縮された。その大質量のボーリング玉を軽々と目の高さまで持ち上げる。

 

「こいつがブチ当たった人間はどうなンだろうなァ」

 

 引き上げるられた口端は、さらに卑しく引き上げられる。

 直感。アルは反射的に土壁を目の前にせりあげる。と同時にそのボーリング弾は無動作、無音で放たれる。

 高速で飛来するそれに、アルは何かを感じた。そして、その何かを理解する前にそこから飛び退く。と、次の瞬間着弾。高重量弾は土壁を一瞬でただの土塊に戻してしまった。

 しかし、その土塊の傍からアルは飛び出すと、地面を錬成。次々と地面より一方通行に向かって土でできた拳がいくつも打ち出される。しかし、それら全ては一方通行に届くことなくやはり土塊に戻る。

 

「あんなのとやってられるか! とりあえず撤退!」

 

 アルはその潰された土拳と、こっそりと錬成した土煙に紛れると、二人の元へ移動した。




痛いのによく喋るなぁ……
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