「改めて、昨日はありがとう」
一晩母親と過ごしてメンタルが回復したのだろう。顔色の良いカレンがもじもじしながら、ルルーシュに話し掛けた。
現在、昨日の話の続きをする為に、ルルーシュとカレンの他、朱美とミレイも集まっていた。
「では、昨日の続きだ。カレン、君は何の為に戦う?」
昨日と違い、カレンは迷いなく答えた。
「お母さんと一緒に、日本人として笑い合って生きていけるようにするため」
「いい答えだ」
カレンの覚悟は決まった。もう、ブレないだろう。
「次は、あなたのことを教えて。どうしてあなたは、ゼロになったの?」
ルルーシュは、ルル山の失敗を知っている。話すべき者には、正体を明かすことにしていた。
「そうだな、まずは俺の本当の名前を教えようか。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。それが、俺の本当の名前だ」
カレンは、ポカンとしたアホ面を晒している。
「ブリタニアって、え? ええ? 前に皇族を調べた時に、ルルーシュなんて名前無かったのに」
カレンは真面目なので、レジスタンスを始めるにあたって、敵の首領ともいえる皇族をネットなど個人で調べられる範囲で調べていた。
「それは、俺たちが日本占領の折りに死んだことになっているからだ」
「たち? あ、ナナリー!」
「そもそも俺とナナリーは、日本に来る前に皇位継承権を放棄している。録に情報なんて、残っていないだろう」
既にうっすらと頭から湯気が出始めたカレンだったが、根本的な問題に辿り着いた。
「そもそも元とはいえ、なんで戦争している日本に皇族がいるのよ」
「人質さ。皇位継承権を放棄したのは、母さんが殺されて俺たちの後ろ楯が無くなったからだ。母さんは元ナイトオブラウンズだが、庶民の出だった。実家に力は無いし、母さんを援助していたアッシュフォードも力を失った。そんな状態で皇位継承権なんてあったら危険だから放棄したんだ。まあ、結局日本に捨てられたんだが」
カレンや朱美が絶句している。彼女ら庶民の想像を遥かに越えていたのだろう。
「戦争が始まるだいたい1年前くらいに送り込まれて、そのまま開戦だ」
「そんな……」
「使い道の無い元皇族なんて、いらなかったんだろう。なんとか生き延びて、戦後に来たアッシュフォードに匿われていた」
「そう、だからブリタニアを憎んで」
「それが無いとはいわない。だが、もっと根本的な問題だ。俺やナナリーには、戸籍が無い。つまり、この先まともな生活は送れないということだ。それに、生きていることがバレればまた命を狙われるかもしれない。俺やナナリーがこの先も安全に生きていくのに、今のままの世界じゃ不都合なんだ。だから変える、世界を」
「それが、ルルーシュがゼロになった理由……」
カレンは何と言えばいいかわからず、俯いた。
「カレン、ブリタニアの元皇子である俺を信じられるか?」
「信じられるよ。お母さんを助けてくれたし、皇子のことだって嘘ついて誤魔化すこともできた。それをちゃんと言ってくれた。だから信じられるよ」
カレンの返事を聞いて、ルルーシュが大きく息を吐いた。そのタイミングで、ミレイが声をあげた。
「じゃあ、無事に話は終わったことだし、カレンに改めて自己紹介するわね!」
空気が重くなりすぎないように、まるで生徒会活動中のような明るさだ。
「ミレイ・アッシュフォード。ルルーシュ様の最初の臣下よ! 当然ゼロになる前から手伝っているのよん♪」
ウインクまでされて、カレンは対応に困った。
「は、はぁ?」
「もちろん、カレンの知らないルルをたーくさん知ってるのよねー」
「……もしかして会長、喧嘩売ってます?」
ピキピキ蟀谷を怒らせるカレンに、ミレイが笑い掛けた。
「冗談よ。これから一緒にルルーシュ様を支えましょう?」
「言われなくても」
ペースを乱されまくってくたくたのカレンに、ミレイが最後とばかりに爆弾を落とした。
「ちなみにルルは、ハーレム目指してるからね♪」
「ハアッ!? ちょっと、ルルーシュ!!」
シリアスになりきらずに、こうやってドタバタしているのも悪くないかなとルルーシュは現実逃避した。
「会長煽ってますよね? 煽ってますよね!」
カレンは騒いでいるがなんだかんだ楽しそうだし、ミレイも本気でいびってるわけでもないし。もし、カレンが猫を被ってなければ生徒会でもあんな感じだったかもしれない。
「カレン、そろそろいいか? まだ、俺に聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「え? あ! あの女やお母さんにやった、変なやつって何?」
そう、出自は話したが、ギアスのことは話していない。
「ゼロの奇跡のタネだ。出番だぞ、C.C.!」
ルルーシュが声をあげると、扉が開きC.C.が現れた。
◆◆◆
「つまり、ギアスっていう魔法みたいな力があるってこと?」
「そうだ。発現するギアスは、個人によって違う」
説明を聞いても、カレンは眉を寄せている。
「信じられないか?」
「え、いやあの女が急に大人しくなったから信じはするけど……。なんか現実感が……」
カレンが胡散臭そうに、C.C.を見た。
「あんたがギアスを与えられるっていうなら、私にも与えられるの?」
「残念ながら、ギアスを発現するには素質がいる。素質が無いと与えても発現しない。そして、お前は素質が無い」
「そう……」
脱線しそうになったので、ルルーシュが手を叩いて視線を集める。
「ギアスのことは、ここにいる奴を除けば半蔵しか知らない。他の奴らには内緒だ。今のところは」
ギアス関連は取り扱い注意だ。なんなら、元皇族ということよりも破壊力があるからな。
「お前はギアスを知っても、ルルーシュを恐れないんだな」
C.C.の言葉に、カレンは首を傾げた。
「普通は、自分が操られるのではないか? もしかしたら、もう操られているのではないか? と不安がるだろう?」
「ああ、そういうこと」
カレンは、ハンッと鼻を鳴らした。
「ルルーシュがギアスをかける気なら、わざわざお母さんを助ける必要なんて無いでしょ。私に奴隷になれって言えばいいんだから」
カレンの言葉に、C.C.は意味ありげな笑みを浮かべた。お前そんなんだから魔女とか言われるんだぞ。
「話は終わりだ。今晩、リフレインの倉庫を狙う。準備しておけ」
「わかった。あんなもの絶対に許さない!」
ルルーシュの言葉に、カレンは獰猛な笑みを浮かべた。
◆◆◆
翌日、リフレインの倉庫が潰され、それに関わっていた売人や貴族や警察が晒され、まだ怪我が治っていないクロヴィスが奔走することになるのであった。
「姉上、早く帰ってきてください! うっ、傷口開きそう……」
タイトルのわりに、リフレイン摘発がダイジェストというね(笑)