「うっひょー! すっげえな! ここが黒の騎士団の拠点か!」
セリフだけで誰だかわかりそうな男、玉城が倉庫で歓声をあげていた。
現在黒の騎士団は絶賛増員キャンペーン中で、扇グループも入団していた。ただし、原作と違い一般団員だ。古参メンバーは新宿や埼玉でルルーシュが助けた者たちで、幹部が半蔵を始めとしたルルーシュに忠誠を誓っている者たちだ。
「キョウトからも支援があったんだろ? お、あれか! 【グラスゴー】だ!」
「玉城、あれは【グラスゴー】を改造した【無頼】ってやつらしいぞ」
玉城と杉山の会話に引かれたのか、新入団の団員が、ナイトメアのまわりに集まった。ちなみに新入りにはヤマト同盟もいる。
「凄い数だな。それに、奥には【グロースター】まである」
「つまりあの【グロースター】が、俺の機体か!」
「そんなわけないでしょ!」
バカなことを言っている玉城を、奥からやって来たカレンが嗜めた。
「カレンの機体か?」
玉城と比べたらまだまともな扇が、常識的に判断して聞いてきた。
「前までは、でも今度からはアレ」
カレンが指差す先には、巨体な腕を装備した紅いナイトメアがあった。
「【紅蓮弐式】! 純国産のナイトメア!」
扇を始め、みんな驚いている。そりゃ最新鋭機だけど、純国産は嘘だぞ。コアルミナスは国産だけど、他の設計開発はインド軍区だし。
「みんなは、このまま説明を受けてて。私はゼロに呼ばれてるから」
◆◆◆
ゼロに呼ばれたカレンが、奥の部屋へと入る。そこには、ルルーシュとC.C.とミレイがいて、そこにカレンが加わると、まるで美女を侍らせている悪徳貴族のように見える。
「カレン、これから面接だ。お前も見ていけ」
ルルーシュが合図をすると、半蔵が相手を呼びに行った。
「貴方がゼロか。初めまして、大和タケルだ」
呼ばれてきたのは、軍服を着た青年。タケルだ。
「日本解放戦線の大和タケル。黒の騎士団に入りたいそうだが?」
「ああ、是非黒の騎士団に入りたい」
ルルーシュとしては原作で見たことない奴だし、スパイかと疑っている。しかし、カレン、ミレイ、C.C.と明らかに日本人ではない者を側に置いているが嫌悪感は感じない。寧ろ何やらうんうんと頷いている。
「何故、黒の騎士団に? 日本解放戦線も大きなグループだ。奇跡の藤堂もいる」
この時点では、まだ日本解放戦線も捨てたものではない。まあ、斜陽は始まってるけど。
「日本解放戦線は、武力で目の前の敵を倒すことしか考えていない。大多数は、先のことを考えていない。例えばコーネリアを打ち倒し、一時的に日本からブリタニアを追い出してどうなる? 今の日本には、日本全体を守る力なんて無い。再侵略になんて、とても備えられない。それに産業もズタズタ、日本人が生きていくことも厳しい」
ルルーシュはタケルの話を聞いて、こいつ中々広い視野を持っているなと感心した。
「それに、戦う相手はブリタニアの上層部であって、一般市民では無いはずだ。それなのに、この間の草壁さんのように、民間人まで巻き込もうとする。俺はとてもついていけない」
「なるほど、確かに考え方は我々黒の騎士団に近い。入団を認めよう。早速だが、能力テストといこう。武力と知略どちらが得意だ?」
「どちらも必死に研いてきた。日本解放戦線でも、藤堂さん以外には負けるつもりは無い」
「では、知略からいこう。チェスと将棋は、どちらが得意かな?」
◆◆◆
(ば、馬鹿な)
ルルーシュは、仮面の裏で度肝を抜かれていた。
将棋はルルーシュの勝ちであったが、きちんとルルーシュと打ち合えるレベルであったし、その後のナイトメアのシミュレーターでもエースパイロットと言ってよい成績を叩き出していた。
(武力、知略ともに高水準。思想も理想的だ。こんな奴、どこから生えてきた?)
こんなの僕のデータに無いぞ!
「素晴らしい能力だ。是非とも黒の騎士団で活かして欲しい」
「ありがとう。俺の同士たちについても頼めるかな?」
「ああ、今度入団テストを行おう」
ゼロが他にやることがあると一旦下がったところで、タケルは大きく息を吐いた。かなり緊張していたのだ。
「あんた凄いね。私は紅月カレン。よろしく」
そこに、今まで見守っていたカレンたちが声を掛けた。
「タケルさんは」
「ああ、タケルでいいよ。歳はそんなに変わらないだろう?」
「なら、私もカレンで。それで、タケルはどうして戦ってるのかなって。聞いてもいい?」
カレンの質問に、タケルは胸を張った。
「俺の親父は軍人だった。家も代々軍人の家系でね、親父はけっこう偉かった。だから俺も将来は軍人になれって言われてたし、なりたいとも思ってた」
「親父は、軍人は国民を守る為に力を振るうべきで、憎しみで力を振るうなと言っていた。親父は死んだが、俺も親父みたいな軍人になりたい。憧れなんだ。だからテロリストみたいなことをするのに抵抗がある」
「戦争の時はまだ子供で、何の力も無かった。だから日本を取り戻して、今度こそ国民を守る。親父の代わりに。それが戦う理由だ」
「そう、立派ね」
「そうでもない。もっと個人的な理由もある」
タケルが頭を掻いた。
「昔、ブリタニア人の女の子と話したことがあって。その子は戦争で死んでしまったけど、その子は誰よりも平和を願っていた。だから、その子が望んでいた世界に少しでも近づけたくて」
恥ずかしそうにしたタケルが、誤魔化すように今度はカレンに質問した。
「カレンは、どうして黒の騎士団に?」
「私は──」
◆◆◆
「ねえ、ルルーシュ。黒の騎士団は、何がしたいんだろう?」
生徒会室で雑務中に、スザクがルルーシュに問い掛けた。
スザクは、アッシュフォード学園に入学し生徒会に入った。流れはだいたい原作通りだ。
「宣言通りなら、正義の味方だろ」
自分のことなのに、しれっと宣うルルーシュ。演技力が高い。
「それなら警察に入るべきだ。彼らの言う正義なんて、個人の判断でしかない。個人の主観で善悪を決めるなんて!」
スザクの言っていることも間違っているわけではない。
「だが、先日のリフレインの騒ぎは? 警察もグルだった」
「それは……。でも! 警察の中から変えていけば!」
「変わるまでに、どれだけの犠牲が出るやら。お前は、それを見過ごせるのか?」
「ッ! ……それでも、僕は!」
拳を握り締めて震えるスザク。黒の騎士団の振る舞いは、彼のトラウマを刺激するのだろう。
「スザク、お前の気持ちはわからなくもない。だが、俺たちは知ったはずだ。今のこの世界はとても残酷で、俺たちはとてもちっぽけだってことを。……あの夏の日に」
「ルルーシュ……。それでも僕は──」
スザクの言葉の途中で、生徒会室の扉が開いた。他のメンバーもやって来たので、話は終わりとなった。
「あれー、どうしたの二人で怖い顔して?」
シャーリーが自然にルルーシュとスザクの間に入り、重たい空気を断ち切っていく。
「なに、ちょっとスザクと女性の好みで対立してただけさ」
「じょ、女性の好み!?」
「ちょっ、ルルーシュ!」
スザクのもっと誤魔化し方あったろ! という視線を、ルルーシュは無視した。
「何々、好みの話?」
すぐにリヴァルが食いつき、ミレイはニヤニヤしている。ニーナは巻き込まれないようにパソコンに向かい。カレンは何かを思い出したのか顔を赤くしている。
あー、これぞ青春とばかりに、ルルーシュは笑みを浮かべた。