ナリタ攻防戦の翌日、拠点まで戻った黒の騎士団は勝利に沸いていた。
「見たかよ、ブリキ野郎め!」
「黒の騎士団万歳!」
その裏で、ルルーシュは次の準備を進めていた。
「想定よりも、ナイトメアの損耗率が低いな」
「敵がかなり及び腰だった。そのお陰で、側面の敵を釘付けにするだけなら簡単だった。突破の時は、【紅蓮弐式】がいたし」
優秀な指揮官は貴重だ。タケルは軍人としての教育も受けているので、指揮も上手い。
「あれだけの戦力を失えば、コーネリアと言えどすぐには動けまい。今の内に戦力の増強と、黒の騎士団の組織化を進める」
ルルーシュとタケルが中心となって、今後について議論していく。カレンはやる気はあるがこういうの不得手だし、C.C.はピザ食ってる。
C.C.については、ナリタでの洞窟イベントが無かったが、なにやら機嫌は良いようだ。
「タケルの仲間は、中々の能力だな。黒の騎士団の大半は、元が素人だから比べるのもどうかとは思うが」
「まあ俺たちは正規のものではないとはいえ、訓練もしたからな」
ここできちんと軍隊を学んだ者が纏まった数入るのは大きい。ノウハウが手に入るし、人を使える者は貴重なのだ。
「日本解放戦線だが、無事に逃走したようだな」
原作では、スザクに邪魔されて日本解放戦線を囮にして逃走した黒の騎士団だったが、今回は逆だ。
ルルーシュたちが包囲網を崩しまくった影響で、日本解放戦線が黒の騎士団に続く形で脱出した。
「だが、片瀬少将は藤堂さんや四聖剣とは合流できていないようだ」
「それではどちらにせよ詰みだな。拠点も無い、藤堂もいないでは話にならない。やはり、キョウトから本格的な接触が来るな」
日本解放戦線が崩壊したことで、もう国内のめぼしい反ブリタニア勢力は黒の騎士団だけだ。キョウトが頼れるのも黒の騎士団だけとなる。
「キョウトのことは、俺みたいな下っ端には大した情報はまわってこない」
「なに、大体の想像はつく」
◆◆◆
なんて話をしていたら、早速キョウトからラブレターが届いた。しかし、スムーズに話が進んだのでカットだ。原作と違って幹部がゼロに忠誠を誓っているので揉めないし。横領? 無いよ。原作通りに桐原に顔を見せて終わりだ。修羅の道? 無いよ。ルルーシュが行くのはハーレムロードだから。
「ルル! お父さんが!」
キョウトとの会合があったので、シャーリーとのコンサートは間に合わなかった。それでもと待ち合わせ場所に着くやいなや、シャーリーに抱きつかれた。
(バカな! 避難が間に合わなかったのか!?)
焦るルルーシュに、シャーリーは涙目で言った。
「お父さんが怪我したの!」
「ん!? け、怪我?」
「そう、足を骨折したの!」
ルルーシュが詳しい話を聞けば、どうやら避難中に転倒し骨折したらしい。
「ナリタでの戦いに巻き込まれて怪我したって聞いて、すっごく心配したんだから!」
「ま、まあ、凄い戦いみたいだったし、怪我で済んで幸運だったかも」
ルルーシュが宥めようとするが、シャーリーは興奮していた。
「お父さん、避難を急かされたからって転んだんだよ! もう! 運動不足だから!」
「そ、そうか」
「私とお母さんが、どれだけ心配したか!」
しばらく荒ぶるシャーリーに付き合うルルーシュ。まあ、ルルーシュのせいでもあるから。
「それでね、ルル。実はお父さんが本国に帰ることになって……」
「え」
「お父さんの会社が、エリア11が落ち着くまで本国に撤退するんだって」
「そうなのか……」
会社としては、妥当な判断だ。何なら利益に目が眩んでいない優良会社では?
なにやらシャーリーが、モジモジしている。
「お父さんは、家族みんなで戻ろうって言ってたんだけど……。私は残ることにしたから!」
顔を赤くしたシャーリーが叫ぶ。
「私、ルルのことが好き! だから、ルルのいるエリア11に残るから! ルルに、彼女がいるのはわかってるの。でも、私諦めないから! 絶対に私を好きになってもらうから!」
言うだけ言ったシャーリーは限界だったのか、顔を真っ赤にして走り去っていった。
「まあ、何にせよ、シャーリーのお父さんが生きていて良かった……」
桐原に会うより緊張したルルーシュは、思わずしゃがみこんだ。
「あとは、奴を始末すれば」
ルルーシュが原作のように、わるーい顔を浮かべた。
◆◆◆
「日本解放戦線が国外逃亡しただと?」
タケルの報告に、ルルーシュは驚いた。ルル山と違ってコーネリアに固執してないルルーシュは、片瀬捕縛に関与するつもりがなかったのだが。どうやら逃げ切ったらしい。
「ああ、タンカーで中華連邦に向かったようだ」
状況を確認すると、ルルーシュたちが頑張り過ぎてナリタで戦力を削りまくった結果、戦力の再編に時間が掛かり、その隙に逃げたようだ。どうも被害がありすぎて文官と揉めたり、クロヴィスが生きていたことで再び甘い汁を吸いたい輩がコーネリアを責めたりと、原作よりも纏まりが無いようだ。
「だが、藤堂は合流していないはずだが?」
「どうやら、待ち切れずに逃亡したみたいだ」
ただし、原作通りに藤堂と四聖剣は合流してないので、逃げたところで再起は無理だろう。
「まあいい、放っておけ。そんなことよりも団員に訓練を施して練度を上げる」
「そうだな、やっぱり一定以上の能力はないと」
行動の果てには、結果という答えが待っている。例外は無い。
ルルーシュの行動の結果、原作からの逸脱が大きくなっていく。うねりは、もう止まらない。
◆◆◆
「ああ、わかった」
通信機で通信していたルルーシュが、通信を終えた。
「なあ、C.C」
「ムグ? なんだ?」
ルルーシュの部屋でピザを食んでいたC.C.に、ルルーシュが声をかけた。
「マオって奴を知っているか?」
「ッ!!」
C.C.の肩が震えた。
「何故、お前がマオのことを……。お前は知るはずのないことを知っているな。マオがどうした?」
「俺が始末した」
「なッ!!」
C.C.が目を見開いた。
「苦労したよ。読心なんてギアスを持っているんだからな」
「ルルーシュッ!!」
C.C.が、ルルーシュに掴み掛かった。ピザが床に落ちる。
「どうしたC.C.? あいつを捨てたんじゃないのか?」
「ッ! そうだ。私は、マオを捨てた。ギアスに呑まれて、ギアスを制御できなくなったからな。だが、私が居なくなれば、あいつは人の中に戻れる可能性があった!」
「結局お前を追って、エリア11に来たようだが?」
「何も殺す必要は無かったはすだ! ルルーシュ、お前なら、生かしたままどうにかすることだってできただろう!?」
珍しくC.C.が感情を剥き出しにして、声を荒げている。
「あいつのギアスは、俺の天敵だ。どれだけ策謀を巡らせても看破される」
ルルーシュというか、転生者の天敵で、二次創作の天敵でもある。だから、劇場版で消されるんだよ。
「それでも! それでも……」
遂に泣き出してしまったC.C.。やはり、魔女だのなんだの言っても、彼女は心優しい女性なのだ。
「……私が悪いんだ。マオがギアスに耐えられないのはわかっていた。それでも、ギアスを与えた。それで、あいつは歪んでしまった……」
意気消沈するC.C.。まるで、萎れてしまったかのようだ。
「……ルルーシュ。マオの遺体は? せめて墓を……。弔ってやりたいんだ。……頼む」
懺悔するかのようなC.C.に、ルルーシュは何でもないように言った。
「ああ、遺体か。だが、始末したとは言ったが、殺したとは言ってない。マオは生きてるぞ」
「は?」
呆けたC.C.は、次の瞬間ニヤつくルルーシュにタックルした。
「ルルーシュ! ……本当か?」
「本当だ」
「嘘だったら、私はお前をどうするかわからんぞ」
「だから本当だ。……お前が気にしているのは、知っていたからな」
「……そうか」
抱きついてくるC.C.をギュッと抱き締めたルルーシュは、優しく声をかけた。
「これから会いにいく。お前も来い」
「ああ。けじめをつけなくてはならない」
◆◆◆
とある空港に着いたルルーシュは、厳重に警備された部屋へと通された。
「ッ! マオ……」
そこには椅子に拘束された、サングラスとヘッドフォンを着けた男がいた。
「今は眠らせている」
ルルーシュはマオと直接対峙するつもりは、さらさら無かった。心を読まれれば、原作よりもマズいことになる。それは、絶対に避けなければならない。
そこで考えた。原作でマオは、C.C.とオーストラリアに行こうとした。家も買ったと言っていた。つまり、少なくともオーストラリアには居たはず。マオの性格上、C.C.に会うのを我慢できるはずがない。なら、準備を整えたらすぐにエリア11に来る。
ということで来るなら時間のかかる船ではなく、飛行機と読み、オーストラリアからの便がある空港を重点的に、中華連邦からの可能性も考えてエリア11中の空港にトラップを張った。
それこそ、ギアスを手に入れてから一番時間をかけて対策したのがマオだ。ギアスも大盤振る舞いで使いまくった。
「よく、マオを捕らえられたな」
「空港の職員全員にギアスをかけた。ギアスで操っている最中は、読心されても問題ない。肉体的には大したことないんだ。空港じゃ武器も持ってない。楽に捕まえられる」
マオの名前、容姿をトリガーに捕まえて眠らせるようにギアスをかけた。マオは読心で人を操るが、すでに操られていたらどうしようもない。
「マオをどうするんだ?」
恐る恐る聞いてくるC.C.に、ルルーシュは苦笑いを浮かべた。
「お前が大切にしているのはわかっている。だから、俺のギアスで記憶を奪い。オーストラリアの田舎あたりで生きてもらう」
「そうか。それでいい。ギアスを忘れれば、マオも人の中で生きていけるだろう」
ルルーシュの言葉に安心したC.C.が、マオの頭を撫でた。
「マオ、済まないな。私がお前の人生を歪めてしまった。……これで、本当にお別れだ」
ルルーシュの左目が、赤く染まった。
◆◆◆
「ルルーシュ。マオは、大半のギアスユーザーの成れの果てだ」
空港から帰る途中の車内で、C.C.がルルーシュに話し掛けた。
「お前も、いつかああなるかもしれない」
ギアスユーザーは増大する力に呑まれると、ギアスのオンオフができなくなる。原作だと、それがユーフェミアとの悲劇に繋がるわけだが。
「そのリスクは承知の上だ」
実は、最近のルルーシュにはある癖ができた。会話の際に、命令系の言葉になる時に左目を瞑る癖だ。まあ、癖というか、ルルーシュが意識的にやってるんだが。
「そのことで、俺がお前を恨むことはない」
「……そうか。……ルルーシュ、ありがとう」
C.C.が、ルルーシュの肩に頭を預けた。
「C.C.、改めて契約だ。今度は、俺からお前への。俺がお前の本当の願いを叶えてみせる。それまで、俺の傍にいろ」
「いいだろう。結ぼう、その契約」
ルルーシュは、C.C.の肩を抱いた。
ルルーシュは、寝ているマオの瞼をこじ開けてギアスをかけました。
そして、マオのセリフはゼロ!