「ゼロ、四聖剣から救援要請が入っています」
ディートハルトからの報告に、ルルーシュは書類から顔を上げた。
ディートハルトは原作通りに黒の騎士団に入った。しかし、原作と違い組織が盤石なので、出世というか発言力を得られないでいた。ルルーシュがルル山よりも組織を重視してるからバリバリ運営に口出すし、それを半蔵が補助するしで隙がない。それでも優秀ではあるので、準幹部くらいまでにはなっているけど。
「藤堂鏡士朗の奪還に手を貸して欲しいと」
原作通りに藤堂は囚われたようだ。藤堂と四聖剣は欲しい駒なので、これは渡りに船だ。
「いいだろう。ただし、救出後は黒の騎士団に入ってもらう。これが、条件だ」
◆◆◆
「わかった。その条件、呑もう」
「おい、卜部!」
あまりにもあっさり条件を呑んだことに、千葉が噛みついた。
「まずは中佐を奪還する。これが最優先だと思うが?」
それに、仙波が卜部を擁護するように声をあげた。その通りで千葉も反論できない。
「……それは、そうだが」
「それに、ゼロからすればただ助けるだけでは何もメリットがない。条件は妥当だ」
「しかし、こちらの弱味につけこんで」
「中佐の奪還という大きな動きをする以上、少なからず組織に犠牲は出る。物資にしろ、人員にしろな。組織を率いるなら、それを上回る利益を得なければならない。それが組織のトップに必要なことだ。ゼロは間違っていない」
「……卜部」
千葉の瞳は、不安に揺れていた。藤堂は捕縛され、日本解放戦線は自分たちを見捨てて逃亡した。これでは、千葉が精神的に不安定になるのも仕方がない。卜部としても、あまり強く言えなかった。
卜部は、今まで発言の無い朝比奈を見た。
「君も随分出世したね」
その朝比奈の言葉に、タケルが苦笑いを浮かべた。四聖剣にとって、黒の騎士団への伝で一番適任だったのがタケルだった。
「だいぶゼロに信用されてるみたいじゃないか。いつから、ゼロについていたんだい?」
「おい、朝比奈」
朝比奈の嫌みっぽい言い方に、卜部が注意する。まあ、朝比奈はナチュラルでこんな感じだが。
「コンベンションセンターホテル事件の後ですよ」
「ああ、あれか。まあ正直、君たちを冷遇している人たちは多かったから不思議ではないけど」
「冷遇が原因ではなくて、民間人にも被害を出す日本解放戦線のやり方についていけなくなっただけですよ」
こんなやり取りでも朝比奈とタケルでは通常運転だ。タケルの訓練は朝比奈が見ることが多かったので、気安い間柄なのだ。朝比奈は皮肉屋だが、下への面倒見は良い。
「ウチと黒の騎士団じゃ、主義主張が異なるけど大丈夫かな?」
朝比奈から他の四聖剣への問いかけに、千葉が答えた。
「私たちは民族主義じゃない。わかってるくせに」
「さっきまで文句言ってたくせに」
「顔も見せないゼロに不満があるだけで、主義主張に文句があるわけじゃない」
若い2人のじゃれあいに、卜部は嘆息した。
「それくらいにしておけ。これはキョウトからの指示でもある。それに、新型も貸してもらえる」
「わかってますよ。藤堂さんのいるところが、僕の居場所ですから」
◆◆◆
「やはり、侮れん組織力だ」
あっという間に、段取りを立てて現地に集結した黒の騎士団を見て、卜部は唸った。
「【紅蓮弐式】は当然として、僕たちに【月下】を5機。それに、ゼロの【グロースター】。まさか、これだけで基地を叩くの?」
「確かにどれも最新鋭機ではあるが」
投入されるナイトメアの数に、顔をしかめる朝比奈と千葉。
「数を増やせば敵に察知され易くなる。そうなれば、ブリタニアは処刑の時間を無視して藤堂を殺すだろう」
いつの間にかやって来たゼロに、2人は体を強ばらせる。
「あんたがゼロか。結構雰囲気あるね」
「お前の言うことは理解できる。だが、戦力が足りなくて藤堂さんが処刑されては意味が無い」
警戒気味の2人に、ルルーシュは肩を竦めた。
「何も基地を全滅させる必要は無い。新型が4機も暴れ回れば、大半の戦力が迎撃に向かう。その隙に藤堂を助け出せば良い」
チョウフ基地には、特に優秀な人材はいない。普通にやれば圧勝だが、今のチョウフ基地にはイレギュラーがいる。
「後は、お前たち四聖剣の働き次第だ」
「ゼロ、今回のことは感謝する」
最初にお礼が言える社会人卜部が、ルルーシュに開口一番礼を言う。朝比奈と千葉は見習った方が良いぞ。
「なに、私にもメリットがあることだ」
「ああ、黒の騎士団入りの話は了解している。藤堂さんも説得する」
「なら、最終準備といこう。そろそろ来るはずだからな」
ルルーシュの言葉とともに、数人の技術者が到着した。
「お待たせ~。あんたがゼロだね?」
ルルーシュに声を掛けたのは、ヘソだし白衣の褐色美女だ。
「あなたがラクシャータか」
「色々話したいことはあるけど、取り敢えずお土産よ」
ラクシャータがケースを開けると、中にはパイロットスーツが入っていた。
「こんなので、連動性が上がるんですか?」
赤いパイロットスーツに着替えたカレンが不思議そうに言った。
「上がんないわよ」
「ハアッ!?」
「上がるのは、生、存、率」
困惑するカレンに、ルルーシュが口を出す。
「機械は壊れても直せば良いが、人間はそうもいかない。生存率は大切だ」
「そうそう。ゼロはその辺、よくわかってるねぇ」
意外と人を重視するラクシャータが、ルルーシュの言葉に頷いている。プリン伯爵は見習ってもろて。
「さて、役者は揃った。作戦開始といこう」
◆◆◆
爆発が起き、チョウフ基地の外壁の一部が破壊された。そこから、4機のナイトメアフレームが侵入する。
迎撃に向かったブリタニア軍は、驚愕した。
「何だ!? 見たこと無いナイトメアだ!」
【月下】。【紅蓮弐式】をベースに作られた高級量産機だ。性能は、【グロースター】以上【ランスロット】以下といったところか。大体第5世代だな。武器は廻転刃刀とハンドガン。ハンドガンは両手のアタッチメントに装着するので、別の武器に変更も可能だ。
「凄い! 【無頼】とは段違いだ!」
四聖剣が見事な連携で、敵を討ち取っていく。それに対応して、援軍が集まってきた。その隙に、ルルーシュとカレンは牢屋に直行する。
牢屋の壁を破壊し、藤堂の前に姿を見せた。
「どうやら間に合ったようだな」
「ゼロ……」
「藤堂鏡士朗。7年前の戦争で、唯一ブリタニアに土をつけた男」
「厳島の奇跡か。お前も私に奇跡を望むのか……」
藤堂の言葉には、深い諦念があった。厳島の奇跡、奇跡の藤堂は戦争に負けた日本にとって、唯一の希望だった。これで、藤堂の元に集いブリタニアと戦うとかなら良かったのだが。実際は、奇跡に縋った特攻が頻発。その悉くが失敗し、唯一成功している藤堂への評価や期待が上がるという負の連鎖。これは流石にミラクルが可哀想だ。
「私をあまり見くびってもらっては困るな。厳島の奇跡は、事前の情報収集を踏まえた戦術的勝利だ。だから、お前が欲しい」
「もういい。主君と定めた片瀬少将にも捨てられた。私は……」
「甘えるな!」
もう疲れたと続けようとした藤堂をルルーシュが叱責した。
「お前は、責任を取らなければならない。奇跡の責任を!」
ルルーシュの言葉に、藤堂の肩が震えた。
「私に、奇跡を起こす力など無い! 奇跡など……起こせない……」
「だが、日本人は奇跡という幻想に囚われている。だから、諦めきれない。日本の抵抗活動が、他よりも激しいのはその為だ」
藤堂が血を吐くように叫んだ。
「一戦場ならば、ブリタニア相手でも勝ってみせる! だが、私にその先を描く力など無い! 無いんだ!」
将軍と騎士の器を併せ持つ男。それが、藤堂へのブリタニアの評価だ。これは間違っていない。藤堂は卓越した指揮能力とエース級の戦闘能力を持っている。
しかし、藤堂が得意としているのは、戦術レベルでの話だ。一番能力を発揮できるのは、隊長として前線指揮を執ることだ。これならば、大隊だろうが師団だろうがお手のものだ。
だが、その上の戦略レベルになると話が違う。勿論藤堂は優秀だ。そんじょそこらの奴に比べれば戦略だって優秀だ。しかし、相手が世界の三分の一を有するブリタニアとなると対応できなくなる。しかも、敗戦国の状態でだ。完全にキャパオーバーである。
それなのに皆が奇跡の藤堂、奇跡の藤堂と縋ってくるのだ。なまじ、自分の能力を理解している藤堂にしてみれば地獄だろう。
「なら問題は無い。その先は、私が描く。お前は私の元で、力を発揮すれば良い」
ルルーシュが全体の指揮を執り、藤堂が前線の指揮を執る。盤石の組み合わせだ。
「だ、だが……」
迷い、揺れ動く藤堂。
「迷っていていいのか? お前の部下、四聖剣が命を懸けているんだぞ?」
外での爆発の音に、ハッとする藤堂。一度目を閉じ、開いた時には、もう迷いは無かった。
「ゼロ、お前に賭けよう」
藤堂が立ち上がった。
◆◆◆
チョウフ基地の外壁が爆発し、トラックが突入してきた。
トラックのコンテナが開き、中の積み荷が明らかになる。【月下指揮官機】。藤堂用にチューンアップされた専用機だ。
そこに、藤堂を乗せたルルーシュが滑り込んだ。
「藤堂さん!」
「中佐!」
集まる四聖剣たち。それを見回し感慨深げに藤堂が言った。
「みんな、手間を掛けさせた。ゼロに協力し、基地の残存戦力を叩く!」
「承知! 我ら四聖剣は、藤堂さんと共に!」
感動の再会に水を差すように、【ランスロット】が現れた。処刑執行人やるのに、【ランスロット】ごと来るなよ。え、移動手段が【ランスロット】のトレーラーしか無い? 予算配分もうちょい考えろよ。
「ゼロ!」
スザクがMVSで、ルルーシュに斬り掛かった。それを廻転刃刀で受け止めるルルーシュ。
「何も今まで私も遊んでいたわけじゃない。チューンアップした、この【グロースターゼロ】なら!」
ルルーシュは、廻転刃刀でMVSを払い距離を取った。操作難易度は上がったが、出力の上がった【グロースターゼロ】なら、【ランスロット】相手でも一方的にボコられるのは防げる。
「ゼロ、その機体のデータはあるのか?」
「もちろん。指示は出す」
「了解した」
一瞬で藤堂と打ち合わせを終えたルルーシュは、本気でスザクを倒しに掛かる。スザクは、それくらいで丁度良い。
「全機距離を取れ!」
「戦い慣れをしている!」
あくまでゼロを狙うスザクだったが、入れ替わり立ち替わりの牽制射撃を掻い潜って接近するのは至難の技だった。
「確かに、そのスピードとマニューバは驚異的だ。しかし、動きの癖は解析した。最初の攻撃は正面から! フェイントは絶対にしない!」
立ち塞がった【紅蓮弐式】に、スザクが斬り掛かるが躱された。
「躱された場合、追撃を避ける為にすぐ移動する。移動データを読み込め。S57!」
「本当に来たよ」
朝比奈の廻転刃刀が、ヴァリスを弾き飛ばした。
「その場合、次のアクションは後方へ距離を作る。座標はX23」
建物の陰から、スザクの背後を取るように藤堂が現れた。
「これで、チェックだ」
藤堂の三段突きが、スザクに迫る。
「これは!?」
「読んだのか! 三段突きを!」
2発は躱し、3発目がコックピットブロック上部に突き刺さった。
「まだだ!」
藤堂がそのまま切り裂き、コックピットブロック上部が切り落とされた。
「ま、不味い! まだ、脱出装置付けてないから!」
「まだ、付けてなかったんですか!?」
珍しく焦るロイド。だから、予算配分! そして、露になる【ランスロット】のパイロット。
「スザクくん!」
藤堂を筆頭に皆驚くが、ルルーシュは知っていた。まあ、ルル山は驚愕のあまり呆然自失するけど。
「スザクくん! 君はなんの為に、その道を選んだ!?」
「今の社会を否定しても意味はありません! 認められて、変えていける力を得ることが必要なんです!」
スザクの言葉に、藤堂は頷いた。
「なら、君はその道を行け!」
「え?」
「勝つにしろ、負けるにしろ、全力を出さなければ何も獲得できはしない! それは、国でも個人でも同じこと!」
「は、はい!」
「生き残ってみせろ!」
止まっていた時間が動き出し、四聖剣が陣形を組む。
「枢木准尉! ハーケンブースター解除! パスワードは僕の好物!」
放たれたスラッシュハーケンが、ブースターによって空中で軌道を変える。
「なに!?」
四方を囲んでいた四聖剣の武器を弾き飛ばした。
「ゼロ! スザクが! どうしますか!?」
教えてなかったので混乱しているカレンに、ルルーシュは落ち着いて返した。
「取り敢えず、これで目的は達した」
ルルーシュが、スザクが落としたヴァリスとMVSを回収する。ドロボーと言うどこぞの伯爵の声が聞こえた気がした。
「撤収する! ルートは3だ。全軍バックアップしろ!」
ルルーシュが、胸部、腕部、腰部のスラッシュハーケン計6個をぶっぱなし、スザクを牽制する。そっちがハーケン4個なら、こっちは6個だ。
藤堂が空を見上げれば、増援の部隊が間もなく到着するところだった。
「勝てない戦と負け戦は別物だ。心得ているようだな」
全機が、チャフスモークを展開して撤退した。
アニメ見返して思ったけど、ここのルルーシュけっこう可哀想だと思う。やり方はゲスだけど、ルルーシュの行動の理由って基本誰かの為だからね。ナナリーは当然として、スザクに関しても死刑から助ける為に準備できてないのにゼロとして動いたし。父親を殺して精神的に苦しんでいるのを知れば、ナナリーの騎士になってもらってナナリーを生きる意味にして立ち直ってもらおうと考えたりするからね。そりゃ呆然自失するわ。