でも結局ラグナレクの接続が無くても、ルルーシュたちが死んだら元に戻るから、結局意味ないのでは?
「ハァー!?」
千葉とカレンが絶叫した。
「ゼ、ゼロ! どういうつもりだ!?」
「そうよ! 諦めるの!?」
今にも飛び掛かりそうな2人を、まわりが必死に押さえつける。
「おい、ゼロ。どうせ、お前はニヤニヤ笑ってるんだろうが。仮面で見えてないからな」
C.C.の呆れたような言葉に、ルルーシュはパシッと仮面を押さえた。
「クククッ。そういえば、そうだったな」
「ゼロ、何か考えはあるんだろうけど、笑えないぞ」
タケルの言葉に、ルルーシュはもう少し真面目に話すことにした。
「まあ、真面目に話すと現在の日本に、我々ができることはない。下手に失敗の原因にされない為にも、国内に留まるのは危険だ」
「それに、前にも話した通り、日本を解放するには国外からのアプローチが必須だ。なので、この際拠点を海外に移す」
皆、ルルーシュの言葉に理解は示すも、どこか寂しそうだ。
「頭ではわかっているが、中々複雑だな」
千葉の言葉に、異論を唱える者はいなかった。
「特区は失敗する。これは絶対だ。その時日本人は、再び黒の騎士団を求めるだろう。それまでに、日本を解放できる準備を済ませるつもりでいろ」
ルルーシュの言葉に、全員が頷いた。
「ゼロ、海外の拠点はどこに?」
ディートハルトの質問に、ルルーシュが答えた。
「中華連邦だ。やっと、パイプができたのでな」
時間をかけた価値はあるのだ。あのきれいなロリコンには。
「桐原公にも話はつけてある。脱出時は、桐原公とかぐや様も帯同される」
「かぐや様も!?」
幼くともキョウト六家の盟主。ネームバリューは抜群で、藤堂ですら驚愕している。
「かぐや様は、独立後の日本でトップになる御方だ。残しておいてブリタニアに良いように使われるのは不味い」
桐原とかぐや以外の六家? あいつらはいらないから、ギアスで傀儡にして、特区に参加させるよ。
「かぐや様がいれば、いざという時の正当性も確保できる」
クククッ、これで国外から介入する大義名分も十分だ。
「というわけで、黒の騎士団は中華連邦に移るが、これは強制ではない。特区に参加したい団員もいるだろう。そういう者は、置いていく」
原作で黒の騎士団は、急激に人数を増やしていたが、ルルーシュはコントロールできない人員が嫌いなので、黒の騎士団の人員は選抜し、それ以外は下部組織としていた。信用できない連中は獅子身中の虫だからね。
「計画は練った。準備に掛かれ!」
ルルーシュの号令で、黒の騎士団が動き出した。
◆◆◆
私立アッシュフォード学園。世間が特区日本で揺れる中、ここは比較的に秩序が守られていた。それも当然だろう。ここは、ルーベンが作り上げたルルーシュとナナリーの為の箱庭なのだから。いつか来る終わりの日までは、せめて安らかにと願い作られた楽園。 その守り人たるルーベンのもとに、孫娘のミレイが訪れていた。
「お祖父様。準備は整いました」
「そうか……」
「寂しいですが、モラトリアムは終わりです」
わかっていた、終わりがいつか来ることは。それでも、少しでも長く安らかに過ごして欲しかった。
「後のことは、私に任せろ」
「お祖父様、お願いします」
ミレイは、ルルーシュと共に発つが、ルーベンは残る。特区ができても、アッシュフォード学園は変わらずあるからだ。
「ルーベン」
別れを済ませた2人のもとに、ルルーシュが現れた。
「ルルーシュ様!」
ルーベンが慌てて、ルルーシュの前に跪いた。
「ルーベン、今までありがとう。俺とナナリーが生きてこられたのも、お前のお陰だ」
ルルーシュの労りに、ルーベンは涙を流した。
「勿体なき御言葉。我が忠誠は永遠に、マリアンヌ様とその御子様であるルルーシュ様とナナリー様に」
「その忠誠、感謝する。待っていろ、お前の苦労が無駄ではなかったと、いつか必ず世界に示してみせる!」
去り行くルルーシュに、ルーベンが声を掛けた。
「ルルーシュ様、このアッシュフォード学園は、ずっと変わらずにここにありますゆえ、いつまでもお帰りをお待ちしております」
ルーベンの言葉を背に、ルルーシュとミレイは理事長室を出て生徒会室へ向かった。
◆◆◆
「おい、何だよルルーシュ。こんな時間に生徒会室に集合なんて」
ルルーシュとミレイが扉を開けると、リヴァルが軽口を叩いた。生徒会室には、生徒会メンバーが集合していた。他にもナナリーと咲世子がいる。
「珍しく会長も絶対に来いって言うんだもん。スザクくん大丈夫? 今、特区で忙しいんじゃ?」
心配そうなシャーリーに、スザクは苦笑いを浮かべた。
「忙しいは忙しいんだけど、僕は文官のようなことはできないから、時間は貰えたんだ」
しかし、スザクの表情には、どこか憂いが見えた。そんなスザクを、カレンが複雑そうな表情で見つめている。ちなみにニーナは嫉妬していた。
「みんなすまない。でも、どうしても大事な話があるんだ」
いつもと違う、真剣な様子なルルーシュに、みんなも居ずまいを正した。
「率直に言う、俺はエリア11を離れることになった」
ルルーシュの言葉に、生徒会室の時が止まった。
「え、マジ!?」
「う、嘘!?」
みんな驚いたが、中でも一番驚いたのは彼女だろう。
「お兄様!? どういうことですか……?」
明らかに初めて聞いた様子のナナリーに、シャーリーたちがギョッとした。
「え、ルル、ナナちゃんにも言ってなかったの!?」
「ああ、急に決まったから」
ルルーシュの固い雰囲気に茶化せないと気づいたシャーリーとリヴァルが目を合わせる。動いたのは、リヴァルだった。
「なあ、エリア11を離れるって、どこに行くんだ? ナナリーは?」
リヴァルは訝しんでいた。ルルーシュの言い方、まるでナナリーは置いていくみたいだ。いつもは、あんなに大事にしているのに。もしくは、大事にしているから?
「行き先は中華連邦。ナナリーは連れて行かない」
「え? ……嘘ですよね? お兄様?」
信じられないというようなナナリーの言葉に、ルルーシュは返事をしなかった。
「なあ、ルルーシュ。理由を聞いてもいいか? こんな急に、それもお前がナナリーを置いてくなんて」
リヴァルの言葉に、ルルーシュは頷いた。
「ああ、理由は行政特区日本だ」
「はあ!? なんで、特区が出てくるんだよ!?」
混乱するリヴァルに、ルルーシュは持っていた鞄から取り出した物を見せた。
「それは、俺がゼロだからだ」
ルルーシュの手には、世界で一番有名な仮面があった。
◆◆◆
「……何だよ、ルルーシュ。……悪い冗談はやめろよ……ゼロは賭けチェスとは違うんだぞ」
唖然としたリヴァルが、引き笑いをした。
「……ルルがゼロ? そんなの嘘よ……だって、ここには!」
シャーリーが、スザクを見た。スザクは、苦しそうな表情でルルーシュを見ていた。
「ルルーシュ。……当たって欲しくは……なかったよ」
スザクは、何かを呑み下すように呟いた。
「何だよ、スザク。お前、前からルルーシュを疑ってたのか?」
リヴァルの問いに、スザクは頷いた。
「僕は軍法廷に移送される時に、ゼロに直接会って話もしている。戦場でも会った。それに新宿事変の時も、ルルーシュに会っていた」
「あれだけの知略を持っていて、活動を始めたのが新宿事変。……ずっと、心の隅でそうなんじゃないかと思っていた。でも、違うって自分に言い聞かせていた」
「それに、キュウシュウの時も……」
肩を落とすスザクから、ルルーシュは視線を切った。
「すまない、スザク。ずっと騙していて」
「キュウシュウで、あんなにわかりやすい言葉を言ったのに? 僕に対しては、あんまり隠す気なかったろ。それに、僕も後方勤務だって、嘘ついたしね」
スザクの苦笑いに、ルルーシュも苦笑いを浮かべた。そして、視線をみんなに戻した。
「スザク以外にも薄々気がついていた者はいる。そうだろ、ナナリー」
「……」
ルルーシュが、先ほどから無言のナナリーを見た。
「ナナちゃんも気がついてたの?」
「ゼロが世に出てから、明らかに俺は忙しくなった。休日は出かけ、平日の学校もサボる。一緒に暮らしているナナリーは不審を覚えるはずだ」
ナナリーが震えた。
「それに、ナナリーは目が見えないからか、他の感覚は鋭い。いくら誤魔化しても、血と硝煙の臭いに気づいたはずだ」
「嘘です! お兄様がゼロなんて! そんなこと!」
いやいやするように、ナナリーが首を振った。それは、現実逃避する者のそれだった。
「……ルルーシュ、何でお前がゼロなんかに。理由はなんだよ!」
リヴァルの言葉に、ルルーシュは仮面を触りながら答えた。
「リヴァル、俺の本当の名前は、ルルーシュ・ランペルージじゃない。本当の名前は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」
「ブリタニア!? でも、それって」
「ああ、俺は元皇族だ」
ルルーシュの言葉に、リヴァルとシャーリーは度肝を抜かれ、ニーナは腰を抜かした。
「それって、ユーフェミア様と同じ……」
「そうだ、ユーフェミアは異母兄妹だ」
それならどうしてと言いたげなニーナだったが、言葉は出なかった。
「会長は知ってたんですね」
「そうよ」
驚いた様子がないミレイに、シャーリーが言った。
「それを言うなら、カレンもだ」
「私も黒の騎士団の一員だから」
スザクの問いに、カレンは正体を明かした。
「スザクとは何度も戦ったわ」
「そうか、あの紅いナイトメアの。……どうして君は、黒の騎士団に?」
「私は日本人だから」
「カレン、君はハーフだったのか……」
驚愕が一段落したところで、ルルーシュが続きを話す。
「俺の母の後見人がアッシュフォード家だった。だからミレイは、俺たちのことを知っている」
「まだ俺が幼い頃、母は暗殺された。それで、アッシュフォードは力を失い、危険だと思った俺とナナリーは、皇位継承権を放棄した」
「だが俺たちは、人質として日本に送り込まれた。スザクと会ったのもその時だ」
「そして、そのまま戦争が始まって、そのどさくさで俺たちは死んだことになった」
シャーリーが震える声で言った。
「そのまま戦争って、誰も迎えには来なかったってこと?」
「そうだ。他の皇族からすれば、ライバルは少ないほうが良いからな。皇帝は単純にどうでもよかったんだろう」
「そんな……」
ルルーシュが、ミレイを見た。
「戦後いち早くやって来たアッシュフォードに保護されて今に至る」
「ルルーシュが昔からエリア11に居たってのは」
リヴァルの言葉に、ルルーシュは苦笑いした。
「なんてことはない。エリア11になる前から居ただけのことだ」
「マジかよ……」
「俺たちは死んだことになっているから、戸籍も無い。生きていることがバレたら、暗殺されるか、政治の道具にされるか。ろくなことにはならない。だから変えることにした、自分を、世界を」
ルルーシュの言葉に、全員が沈黙した。あまりにも惨すぎる話だった。
「……私は、お兄様と一緒に居られれば、それで良かったのに!」
「ナナリー、変わらない明日など無い。もう、モラトリアムは終わったんだ」
ルルーシュがナナリーにかけた言葉に、シャーリーが反応した。
「会長がモラトリアム、モラトリアムって言って変な企画や祭りをやったのって」
「うん、そう。いつか来る終わりまでは、ルルーシュとナナリーに学園生活を楽しんで欲しくて……」
ミレイが泣き笑いのような表情を浮かべた。
「まさか、こんなに早くとは思ってなかったんだけどね」
原作でも、ミレイはずっとルルーシュたちのことを思っていたのだろう。だから変な企画で準備が大変でも、薄々気づいていたルル山は何だかんだ手伝った。
「今日集まってもらったのは、お別れとお願いをするためだ」
ルルーシュが、みんなを見て笑った。
「今までありがとう。いつか終わる日常だとわかっていても、俺はこの生徒会での日々が楽しかった」
「ルルーシュ!」
「ルル!」
リヴァルとシャーリーの目に、涙が浮かんだ
「だから、これは無茶なお願いだとわかってるけど、言わせてくれ」
ルルーシュが、仮面を握り締めた。
「俺は失いたくない! わがままだってこともわかってる! それでも、俺はお前たちと一緒に居たい! だから、俺と一緒に来てくれないか!? 頼む!」
自分や世界が変わる瞬間というものは、不意に訪れるものらしい。切っ掛けは、いつも人の思いだ。この瞬間、確かに原作から変わった。
ルルーシュの言葉に、リヴァルとシャーリーは拳を握り締めた。
原作でミレイのこともっと深掘りして欲しかったな。
そして、ナナリーに襲い掛かる試練。うちのルルーシュは、大切にはするけど甘やかしはしないので(当社比)