「ルルーシュ、僕は行けない。僕は、ユフィの騎士だから」
スザクの言葉に、止まっていた生徒会室の時間が動き出した。
「それに、正義の味方のように見えていても、黒の騎士団はテロリストだ。そんなものに、みんなを巻き込むのかい?」
「ああ、だがこれは俺のエゴだ。断ってもらってもかまわない」
スザクが悲しそうな瞳で、ルルーシュを見つめた。
「ルルーシュ、僕は間違った方法で得た結果に価値は無いと思ってる。……僕は、父さんを殺したんだ」
そろそろ我慢の限界で、スザクに噛みつこうとしていたカレンが固まった。
「父さんは自分のために徹底抗戦をしようとしていた。ブリタニアと交渉して爵位を得るためにね。……僕はそれが許せなくて、衝動的に刺したんだ」
「その結果、軍の指揮系統は崩れて、日本は早期降伏した。そして、軍には余力があったから、テロが横行することになった」
「僕がルールを破ったから……。だから、日本はこんな風になってしまった……」
俯くスザクに、ルルーシュは声をかけた。
「……俺たちのことは言わないんだな」
「え?」
「国を売ろうとした男が、皇族の俺たちを利用しないわけがない。交渉のカードとして使ったんだろう? 俺たちを」
「……」
スザクは無言で、目を逸らした。それが答えだった。
「俺たちを守ってくれたんだろう?」
「ルルーシュ……僕は……俺は……」
「なあ、スザク。間違った方法で得た結果に価値は無いと言ったが、俺とナナリーが生きていることに価値は無いのか?」
「違う! それは、違う! ……違うんだ」
泣き崩れたスザクの手を、ルルーシュが取った。
「あの日、俺たちは世界の残酷さと自分たちの無力さを知った。それでもお前は、俺たちを助けてくれたんだろう?」
幼いスザクに、全てを守れる選択肢などありはしなかった。それでも、ルルーシュとナナリーを守るという結果を選んだ。例え、それがどんな方法であったとしても。守りたかったんだ、2人を。
打ちひしがれていたナナリーも、スザクの手を取った。
「別れる前に気づかなくてすまなかった。スザク、ありがとう」
「スザクさん、ありがとうございます」
懺悔するかのようなルルーシュとナナリーに、スザクは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
◆◆◆
「なあ、ルルーシュ。ルルーシュは、最終的にはどうするつもりなわけ?」
スザクが泣き止んだ頃に、リヴァルがルルーシュに問い掛けた。
「リヴァル、どういう意味?」
シャーリーの言葉に、リヴァルは肩を竦めた。
「黒の騎士団は正義の味方だっていうけど、最終目的は何なのかなって。ルルーシュだって、何の意味も無しにそんなことするわけないし」
「それって、ルルやナナちゃんが、大手を振って生活できる世界ってことじゃないの?」
「で、その具体的な条件て何?」
意外と鋭いリヴァルの質問に、シャーリーは言葉が詰まった。
「良い質問だな、リヴァル。一緒に来てくれと言っておいて、説明しないのも不誠実だ。俺の最終目的は、現ブリタニアの上層部を駆逐し、俺が皇帝になることだ」
ルルーシュの言葉に、リヴァルたちは驚いた。ついでにカレンも驚いた。
「ええ!?」
「あ、カレンに言ってなかった」
ルルーシュ! とカレンが拗ねたような顔で、ルルーシュを睨み付けていた。だって、カレンは頭使うの嫌いだから、あんまり先のこと聞いてこないし。
「なあ、今のブリタニアをどう思う?」
「どうって……」
「侵略に次ぐ侵略。差別と腐敗。新たな富を求めて、他国を襲う。まるで、強盗団だ」
ルルーシュの言葉に、リヴァルたちは反論できなかった。
「例えブリタニアが世界を統一できたとしても、俺はそんな世界で生きていきたくはない。だから、俺が変える。シャルルを、皇族を、貴族を倒し、ブリタニアをぶっ壊す」
「そして、俺が皇帝になって変えるんだ。ブリタニアを」
それは、ある種スザクの中から変えていくの究極形だろう。国のトップとして、中から変えるのだから。皇位簒奪? 身内だから、ブリタニアの内ゲバじゃない?
「てっきり、ブリタニアを倒すのかと思ったぜ」
リヴァルの言葉に、ルルーシュは首を振った。
「いや、ブリタニアを倒せば、待っているのはブリタニアの領土を奪い合う、次の戦争だ。それに、世界の経済にもかなりの影響が出る。倒してブリタニアという国が無くなるのは悪手だ」
へーと天井を眺めたリヴァルが、うんと頷いた。
「じゃあ、俺は将来、皇帝のダチになるのか~」
いつも通りの様子のリヴァルに、みんなが驚いた。
「しょーがねえな~、ルルーシュがどうしてもって泣くから、俺も付いていってやるよ!」
「リ、リヴァル!?」
驚くスザクに、リヴァルは手を合わせた。
「わりぃなスザク。俺、こいつのことほっとけないからさ!」
馴れ馴れしく肩を組んでくるリヴァルに、仏頂面のルルーシュ。でも、嬉しそうですね。
「もー! なんで、リヴァルが先に言っちゃうの! ここは私が先に言って、ルルと良い感じになるところでしょ!」
「シャーリーまで……」
シャーリーは、スザクにはにかみながら言った。
「ごめんね、スザクくん。ルルがゼロだったとしても、今までのことが嘘になるわけじゃない。私がルルを好きだって気持ちは変わらないから!」
シャーリーがルルーシュと腕を組むと、ルルーシュは明後日の方を向いた。照れ屋め。ちなみにカレンはちょっとむくれてるぞ。お母さん助けてもらった時にキスでもしとけばよかったのに。
「ルルーシュが皇帝になるってことは、シャーリーはお妃様か。玉の輿じゃん」
「もー! リヴァルは、すぐそういうこと言う!」
あえていつも通りのやり取りをする2人に、スザクは苦笑いを浮かべた。
「敵わないな」
「そう? スザクも立派よ。私からも、ルルーシュとナナリーを助けてくれたこと、お礼を言うわ。ありがとう」
今まで黙っていたミレイは、スザクにお礼を言うと、わちゃわちゃしているシャーリーたちへと向かった。
「もう、いつまで騒いでるの? それと、シャーリー。ルルーシュのお妃は私もだからね」
「え!?」
「ええ!?」
ミレイの発言に、お約束のような驚きを見せた2人。
「そんな~会長~」
へなへなと崩れたリヴァルに、ミレイは笑顔で言った。
「ごめんね~。私は、ずっと前からルルーシュのことが好きなの」
「ま、負けませんよ、会長!」
フンスと気張るシャーリーに、ミレイはニヤッと笑った。
「安心しなさい。皇帝は複数のお妃を持つのが普通だから」
「ええ!?」
ロイヤルな話題に、庶民のシャーリーは大混乱だ。ついでにカレンも大混乱だ。
「ニーナ、怖がらせてすまない」
そんな中、まだ返事をしてないニーナにルルーシュが声をかけた。
「みんな、行っちゃうんだね……。でも、私は……」
昔イレブンに襲われたニーナは、黒の騎士団も怖いのだ。
「わかっている、無理強いはしない。スザク、ニーナをユフィに紹介してやれ。科学者としてなら役に立つはずだ」
「え!?」
驚くニーナ、スザクも戸惑った。
「ええ!? いや、でも」
「ロイド伯爵に頼めば何とかなるだろう」
「ロイドさんに? そう言えば2人は交流があるって」
まあ、流石にニーナだけ置いてくのは可哀想だしね。
「お兄様! 私も連れて行ってください! お願いします!」
みんなの去就が決まっていくことに焦ったナナリーが、ルルーシュに縋りついた。
「駄目だ」
「どうしてですか!? リヴァルさんやシャーリーさんは良くて、どうして私は駄目なんですか!?」
泣きじゃくるナナリーに、ルルーシュが答えた。
「ナナリー、俺たちは戦いに行くんだ。体が不自由なナナリーを連れては行けない」
「そんな……」
絶望するナナリーに、ルルーシュが言った。
「ナナリー。一緒に行きたいなら、目を開け」
「ルル!?」
シャーリーたちが、ルルーシュを止めようとしたが、逆にルルーシュに手で制された。
「ナナリーの足は、昔撃たれたのが原因だ。だが、目は違う。その時のショックが原因の精神的なものだ」
本当は、シャルルのギアスが原因だけどね。
「待ってください、お兄様! そんな急に!」
「今この場で目を開けないなら、ユフィに預けていく」
本気のルルーシュに、ナナリーは絶句した。今までとは違い、交渉も我が儘の余地も無い。
「くっ、ううっ!」
苦悶の表情を浮かべるナナリー。でも、目は開かない。
しばらく待ったが、ナナリーの目は開かなかった。
「ナナリー」
「待ってください! もう少し!」
「さよならだ、ナナリー。もう、会うことは無いだろう」
ルルーシュが、ナナリーに背を向けた。そのまま、生徒会室を出ようとする。
「お兄様!!」
今までよりも遥かに大きいナナリーの声に、ルルーシュの足が止まった。
「嘘、ナナちゃん……」
シャーリーが、手で口を覆った。
ルルーシュが振り返ると、爛々と輝く藤色の瞳があった。
「7年ぶりに、お兄様の顔を見ました」
「破ったのか、あいつのギアスを」
ナナリーが車椅子を動かして、ルルーシュの傍まで来た。視線は、ルルーシュの顔から外れない。
「それが女誑しの顔なのですね」
「兄に置いていかれるのが嫌で目を開くとは、……このブラコンめ」
2人の視線が交わる。
「逃がしませんよ、お兄様♡」
ナナリーは、満面の笑みを浮かべた。
ナナリー覚醒(笑)
ユフィがスザクのメンタルケアしてない分、ルルーシュがするぞ!