日本が特区で沸いている頃、黒の騎士団は絶賛逃亡中であった。
「外国への高飛びか。何だか、悪いことをしている気分だな」
「いや、まあ、ブリタニアの法に照らし合わせたら僕らは犯罪者なわけだし……」
ルルーシュのジョークに、朝比奈は反応に困った。
「でも、潜水艦が3隻もあるなんて、凄いですわね」
艦橋に現れたかぐやの言葉に、日本人たちは固まった。かぐやは雲の上の人だからね。
「1隻はキョウトが所有していた物だと聞きましたが?」
「その通り、いざという時に、お主を国外に逃がす為の最後の保険よ」
かぐやと共に現れた桐原が、かぐやの質問に答えた。
「インド軍区に潜水艦を追加でくれって言ったのって、この為?」
かぐやがいても関係無く寝そべっているラクシャータの質問に、ルルーシュは頷いた。
「潜水艦が複数あれば、日本で溜め込んだ物資を運び出せるからな」
現在、3隻に物資、人員を満載にして航行中だ。
「目的地の蓬莱島は、もう間も無くだ」
◆◆◆
中華連邦の潮力発電用の人工島である蓬莱島に到着した黒の騎士団は荷下ろししつつ、今回の件に骨を折ってくれた協力者に挨拶していた。
「助かったよ、シンクー」
黎星刻。原作ではルルーシュ並みの知略に、スザク並みの身体能力を持つと言われるスーパーマンである。ただし、病で余命が幾ばくもないというデバフも持っている。
「なに、こちらにも利益があることだ」
2人の目的は、中華連邦の改革ということで一致している。
「こちらの準備が整い次第、すぐに行動を起こす。そちらも手筈を整えておいて欲しい」
「勿論だ」
ルルーシュはシンクーと別れ、用意されていた建物に入ると幹部を召集した。
「さあ、幹部会議を始めるぞ。まずは、現在の状況から」
ルルーシュの合図に、タケルが書類を捲った。
「ナイトメアに関しては、主力の分は持ち出せた。だが、まだ日本に残っている物も多い。何度か潜水艦で往復する必要がある」
「それに関しては、私が事前にタンカーに偽装して送り出した物もある。中華連邦の港に届いているはずだ。今度回収する」
「いったいどれだけのナイトメアを保有していたのだ!?」
ルルーシュの言葉に、千葉が驚いた。
「ほとんどは【グラスゴー】だが、私のナイトメア貯金が火を吹くぞ」
ルルーシュが何年もかけてチマチマ集めていたのだ。パーツも含めれば、膨大な数になる。
「他にも予備パーツや武器弾薬も持ち出せたし、キョウトの潜水艦には流体サクラダイトもある」
流体サクラダイトはキョウトが隠し持っていた逃亡資金代わりだ。
「人員に関しては一般団員、下部組織の団員でかなり離脱者が出た」
「それも問題無い。言っては何だが下部組織は数合わせだし、一般団員も古参の者は残っている」
離脱者はおこぼれ目当てやネームバリューで入った者がほとんどで、日本を解放する熱意のある者たちは残っている。
「扇さんたち大丈夫かな……」
カレンは心配しているが、扇グループは日本に残った。理由は、扇が優柔不断なのに人当たりが良いから部下たちが多く残る状況で決断できずにいたので、ルルーシュが扇に離脱者の取り纏めを押し付けたのだ。扇グループの面々は、それに付き合って残った。
「中華連邦だが、黒の騎士団に協力的なのは一部だけ、これも要改善だ」
タケルからの説明が一段落したところで、ルルーシュが引き継いだ。
「まずは、この蓬莱島の拠点化を進める。設備を準備する者と、物資の回収に行く者に分けて行動する。その後は、中華連邦の改革をシンクーたちと行う」
「改革といっても、中華連邦の領土は広大だぞ?」
千葉の質問に、ルルーシュが答えた。
「その通り。だが、中華連邦の権力は大宦官たちが握っている。その大宦官たちが腐っているが為に、民が苦しんでいるのだ。大宦官さえ排除すれば、中華連邦の政治は回復し、中華連邦は黒の騎士団の味方になってくれる」
「日本を解放するのに、中華連邦の協力は必須か」
藤堂の言葉に、ルルーシュが頷いた。
「そうだ。キュウシュウの時のような傀儡ではなく、対等な協力関係が必要だ」
シンクーもブリタニアの脅威は理解している。天子さえ解放できれば、その後も協力できる。
「ゼロ、ちょっといいかな?」
話が一段落したところで、朝比奈が手を上げた。
「今回の移転に際して、人員を回収したけど。見たこと無い人もいたし、明らかな子供もいた。説明とか紹介はないの?」
朝比奈の言葉に、カレンが挙動不審になる。
「もちろん、紹介しよう。だが、その前に最重要機密を話さなければならない」
ルルーシュが、半蔵に合図した。半蔵の部下が部屋の外に陣取った。
あまりの物々しさに、朝比奈も驚いた。
「かなり厳重なんだね」
「それだけの情報だからな」
部屋にいるのは、かぐやと桐原、藤堂と四聖剣、タケルとタケルの側近、半蔵と半蔵の部下、カレンとミレイとラクシャータだ。
「私の正体、知りたいだろう?」
◆◆◆
「……いや、そりゃ、知りたいけど……」
室内がシンとした。
「頃合いだからな。いろいろと」
ルルーシュが、仮面に手を伸ばした。
「俺が、ゼロだ」
「なっ!?」
知らない奴は驚愕したが、よく考えたら知ってる奴そこそこいるじゃん。半分くらい驚いてねぇわ。
「わ、若いな」
年齢に驚く藤堂に、ルルーシュがニヤニヤしながら問いかけた。
「驚くのは、年齢だけか?」
「日本人ではなく、尚且つ人種を隠すのならばブリタニア人なのではないかとは思っていた」
藤堂の言葉に、何人かは目を逸らした。どうやら、何人かは予想外だったらしい。
「名乗ろうか、俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。歳は17だ」
ルルーシュの言葉に、知らない奴は目ん玉飛び出すくらい驚いた。もう、年齢なんてどうでもいい勢いだ。
「ブ、ブリタニアってことはあれか!? 皇族ってことか!?」
混乱する千葉。藤堂も驚きながら、桐原を見た。
「桐原公」
「フフフ、真実じゃ」
ルルーシュはニヤニヤしながら、藤堂に告げた。お前、その顔悪役っぽいからやめれ。
「藤堂、お前とは戦前に会っているのだがな」
「な、なに!?」
藤堂が慌てて記憶をひっくり返し始める。
「ちなみに卜部と仙波も会っているぞ」
ルルーシュの言葉に、卜部と仙波も考え始める。
「そうだ! ブリタニアからの人質の子供!」
藤堂が思い出した。それに続いて卜部と仙波も。
「確か交換留学の名目で、兄妹で来ていたな」
「我々が来日初日の警備を担当したのだったか」
桐原がルルーシュたちの話を肯定した。
「その通り、こやつは戦前に送られてきた人質よ。枢木の家で預かっておった」
それに、千葉が質問した。
「皇族がいたのに、ブリタニアは戦争を仕掛けたのですか?」
「左様じゃ、詳しくは本人から聞くといい」
ルルーシュが、桐原の話を引き継ぎ、いつも通りの説明をした。
「そんな……。自分の子供ごと……」
「そりゃ、ブリタニアを恨むわけだ」
千葉と朝比奈もここに至っては、ルルーシュを疑わなかった。
「俺がゼロになった理由はわかっただろう。次は俺の目的についてだ。俺はシャルルを倒し、他の皇族を倒し、腐った貴族を倒し、皇帝になる」
「待て! ゼロの正体が、元皇族だと知られれば、ブリタニアの皇位継承争いと捉えられて、民意を失う可能性が!」
藤堂の言葉に、千葉と朝比奈がハッとなった。
「そ、それは不味い」
「黒の騎士団も崩壊しちゃうよね」
黒の騎士団は、ゼロが正体不明で、正義の味方だから支持されているのだ。ブリタニアの内ゲバでは、冷められてしまう。
「問題は無い。ゼロとしてではなく、ルルーシュとして世に出ればいい」
「確かに、ゼロの正体は不明だからわからないが、黒の騎士団がブリタニアの皇位継承争いに加担して大丈夫か?」
戦略的には必要でも、民衆の理解を得られなければ、そこが隙となる。卜部の心配は妥当だ。
「まあ、再侵攻の心配が無くなるとか説明してもいいが、民衆にはもっとシンプルな方が良いだろう」
「シンプル?」
ルルーシュが、ポーズを取ってふんぞり返った。
「この俺、足長キングが、世界を平和にする為にブリタニアの皇帝になると!」
これには、かぐやと旧日本解放戦線の面々は度肝を抜かれた。
「ゼロ、君が足長キングだったのか!?」
以前お礼も言ったことがある藤堂が混乱した。
「左様、こやつは童と言ってよい年頃から、ずっと日本人を支援していたわけよ」
桐原の肯定に、タケルは頭を掻いた。
「元皇族で、足長キングで、ゼロとか属性過多だろ」
当のルルーシュは、タケルの言葉がツボで笑っている。
それに対して、大恩があった足長キングに今まで失礼な態度ばかり取っていたことに気づいた千葉の顔色が凄いことになっていた。
「そ、そんな……、ゼロが足長キング!?」
その隣で、朝比奈は千葉に合掌していた。チーン。
原作と違い、ゼロ以外にも支持されている身分があるルルーシュ。ゼロが記号なのも相まって、正体バレしても痛くも痒くも無い。
民衆が足長キングの正体を知っても、ルルーシュへの感謝は微塵も揺るがない。寧ろ、そんな身の上で自分たちを助けてくれたのかと、信頼にブーストがかかる。
ルル山は1年2年でブリタニアと戦える組織を作ったが、ルルーシュは原作知識持ちで、人間不信も拗らせていない状態で、5年かけて支援を続けたのだ。原作よりも支持があるのは当たり前だろう。
「これで、俺の身バレというリスクも回避できる。皇帝になる障害も、事前状況はクリアされた。さあ、会議を続けよう」
伊達に原作を知った上で、7年もかけてはいないというわけだ。
うちのルルーシュには、正体バレなんて効かねえ!
正体バレと説明回ばっかりだけど、やらないと話進まないしなー。