「流石です、ゼロ様!」
衝撃の事実の連発で疲弊したので、一旦休憩ということで全員で飲み物でも飲むかとなったところで、かぐやがゼロにお茶を差し出した。
「ゼロ様は、お茶よりも紅茶やコーヒーの方が良かったですか?」
キラキラした目で見つめてくるかぐやに、ルルーシュは苦笑いした。
「いえ、私は緑茶が好きですよ。麦茶も飲みますし」
「まあ、そうなんですね!」
かぐやからしたら、ブリタニア人のルルーシュの味覚に合わせようと思ったわけだが、転生前は日本人だったルルーシュは、日本食をバリバリ食べれるからね。納豆を食べれるゼロはアリですか?
あと何気に仮面外してるから、みんなの前で飲食できるというね。
「夫の好みは把握しておきませんと」
「夫!?」
かぐやの発言に、カレンが飛び上がった。
「桐原公、これは?」
藤堂の確認に、桐原はカッカッカと笑った。
「かぐやは、ゼロの大ファンでな。しかし、悪くない。ゼロだと正体不明で些か都合が悪いが、ルルーシュなら悪くない。一新されたブリタニアと国交を結ぶという意味もあるし、日本を長年援助していた足長キングを称えるという意味もある。国民から反対も出ないであろう」
寧ろ、変な男をかぐやの夫にすれば、それこそ反対されるだろう。最低でも日本の独立で大きく活躍した人物でなければならない。
「ちょっ、ルルーシュ!」
カレンがどういうことだとルルーシュを見るが、ルルーシュは顔を逸らした。
「さて、次の議題といくか。カモン、マイフレンズ」
ルルーシュが合図をすると、リヴァルたちが緊張しながら入室してきた。
その中で、車椅子で移動するナナリーを見たタケルが立ち上がった。
「き、君は!」
ルルーシュも不思議そうにしてる中、タケルはナナリーに近づくと声をかけた。
「君は、枢木の家の近くの森で会ったナナリーさんでは?」
「森? ……もしかして、タケルさんですか?」
「はい、あの時のタケルです」
まわりがポカンとなっているのに気づいたナナリーが、自己紹介をした。
「あ、すいません。私はナナリー・ヴィ・ブリタニア。お兄様の妹です。タケルさんとは、昔1度だけお会いしたことがあって」
ナナリーの言葉に、ルルーシュは首を捻る。はて、そんな話ナナリーから聞いたことないぞと。
「昔、親父に連れられて枢木の家に行ったことがあったんだ。俺はすぐに、家のまわりで遊んでろと言われて、森を散策してたら、車椅子の車輪が嵌まって困っていたナナリーさんを見つけたんだ」
タケルの言葉に、ナナリーが気まずそうにした。
「実は、お兄様とスザクさんが出掛けている間に、こっそり外出したことがあって……。怒られると思って内緒にしてたんです」
ルルーシュは、へーそんなことがと思いながらタケルを見た。
「まあ、ナナリーの知り合いが増えるのは良いことか。タケル、ナナリーも黒の騎士団に参加するから、気にかけてやってくれ」
「ああ、任せてくれ!」
ナナリーとタケルのお陰で、上手い流れができたので、リヴァルたちも順番に自己紹介をする。
「つまり、彼らはゼロや紅月くんの学校の仲間というわけか」
「俺が正体を明かしても、ついてきてくれた奴らだ。信用してもらっていい」
藤堂とルルーシュが会話している間も、リヴァルたちは緊張しっぱなしだ。
「ルルーシュ、いきなりじゃなくて段階を踏んでから」
リヴァルがもにょもにょ言っているが、ルルーシュは無視した。
「お前たちには、任せたい仕事がたくさんあるんだ。慣れろ」
「ゼロ、彼らは普通の学生のようだが、何を任せる?」
「裏方だな。生徒会を運営していたから、組織運営の書類仕事はできる。信頼ができて、俺の正体を知っている者が必要だ」
寧ろ、裏方こそルルーシュの意を汲める者たちで固めるべきだ。ディートハルトみたいなのが台頭してきたら面倒臭いからな。
「後もう一つ、大きな秘密を明かそう。俺の正体なみの秘密だ」
ルルーシュの言葉に、藤堂たちはまだあるのかと目を剥いた。もう、お腹一杯なのだ。
「ギアスについてだ」
◆◆◆
C.C.を交えたギアスの話に、知らない人間は眉間に皺を寄せた。
「それって、本気で言ってるわけ?」
困ったような朝比奈の反応こそ、みんなの心を代弁していた。原作よりもルルーシュのことを信頼はしているが、ギアスをはいそうですかで認められはしない。
「だが、辻褄が合うこともある」
桐原の言葉に、全員の視線が集まった。
「ワシとかぐや以外の六家の者たち。あ奴らは特区に協力する為に残ったが、普段ならば己の利益を最優先にしたはず。大人しく参加するわけもなし」
桐原がルルーシュを見た。それにルルーシュは頷いた。
「その通り。彼らは状況次第で裏切る可能性があった。だから、ギアスで大人しく特区に参加してもらった」
藤堂たちは驚き、驚いていない学生組に疑問を覚えた。
「君たちは驚かないのか?」
藤堂の言葉に、カレンが答えた。
「私たちは、正体を教えてもらった時に、ギアスのことも聞いたので。私はギアスで、お母さんも助けてもらいましたし」
カレンの母の話を聞いて、藤堂たちは頭を悩ます。それを見たかぐやが、声をあげた。
「なら、実際にギアスを使うところを見てみるというのは?」
「あの、かぐや様。誰にギアスをかけるんですか?」
カレンの質問に、かぐやは笑顔で自分を指差した。
「あら、もちろんわたくしですよ」
それに、藤堂たちが待ったをかけた。
「かぐや様、流石に危険では!?」
千葉が慌てて説得するが、かぐやは小首を傾げた。
「すぐに済む命令ならばわかりやすいですわ。それとも、この期に及んでゼロ様が、私に不埒な命令をするとでも?」
「いえ! その、あの」
かぐやの言葉にたじたじの千葉に、ルルーシュが助け船を出した。
「かぐや様、普通は誰にでも命令できる能力など、警戒するものです」
しかし、かぐやはニコニコ笑顔で引かない。
「あら、それは敵の場合ですわ。今までブリタニアと戦ってこられた大恩あるゼロ様にそのような態度、情けない限りです」
「うっ」
かぐやの言葉に、千葉が胸を押さえた。でかいな。
「それに、ゼロ様のご友人の方々は、まったく恐れていないご様子ですが?」
かぐやの言葉に、リヴァルが答えた。
「そりゃ、お人好しのルルーシュが、そんな能力を悪用するわけないし。……まあ、敵なら容赦しないと思うけど」
リヴァルの言葉を受けて、藤堂が考えを纏めた。
「私も今更ゼロが仲間にギアスで非道をするとは思ってはいない。しかし、実際に見てみないと現実感が無いのも本音だ」
藤堂の言葉に、朝比奈たちも頷いた。
「それはそうだが、何を命令する? 千葉にストリップさせたり、藤堂と朝比奈にディープキスさせたりでもするか?」
ルルーシュの発言に、藤堂はのけ反り、千葉は殴りかかった。
「千葉さん落ち着いてください!」
「離せ紅月! あいつを殴れない!」
「あれは冗談! ルルーシュの冗談ですから!」
カレンと千葉が揉み合っているのを、ルルーシュはニヤニヤ見ていた。お前さあ。
「ゼロ様、ですからわたくしに」
「絶対にやらなそうなことじゃないと証明できませんからね。かぐや様だと、スザクを許すとかですか?」
「ちょっと考えさせてくださいませ……」
わちゃわちゃしていると、リヴァルがボソッと呟いた。
「俺たちの時みたいにやればいいのに」
「それはどういうことだ?」
藤堂の言葉に、リヴァルが答えた。
「俺たちの時は、わかりやすい証拠を見せてくれたんで」
「ゼロ?」
藤堂がゼロを見た。ルルーシュは両手を上げた。
「すまない。雰囲気を和らげる為に、少しふざけた方が良いかと思ってな」
嘘である。この男、自分が面白いからやっただけである。それに気づいているC.C.は、溜め息を吐いた。
「C.C.彼女を連れてきてくれ」
◆◆◆
C.C.が連れてきたのは、褐色に銀髪の美女。ヴィレッタであった。
ヴィレッタは黒の騎士団の制服を着て、静かに立っていた。
「こいつ、よく見たら純血派の軍人じゃないか! 前にTVに映っていた」
ヴィレッタを眺めていた千葉が、正体に気がついた。
「その通り、彼女には新宿事変の時にギアスをかけた。今は大人しくしているように命令しているが。ヴィレッタ、命令解除」
ルルーシュの声で、ヴィレッタは辺りを見回し混乱した。
「え……。な!? どうして、黒の騎士団が!?」
ヴィレッタからすれば、気がついたら黒の騎士団に囲まれている状況だ。ホラーだろう。
「何を言っているんだ? ヴィレッタ、君も黒の騎士団じゃないか」
「ハッ!? 何を言っている!?」
ヴィレッタは自分を見下ろして、服装が黒の騎士団の制服であることに驚愕した。
「な、なぜ私は黒の騎士団の制服を……」
理解できない状況に、ヴィレッタは震えだした。それに追い打ちをかけるように、ルルーシュはとある映像を見せた。
「君は以前から黒の騎士団の為に、軍の情報を流していたじゃないか。こんな風に」
映像には、ヴィレッタが情報をリークしている様子が音声付きで映っていた。
「う、嘘だ。こんなの記憶に!」
「今頃、クロヴィスの親衛隊がこの映像をスパイの証拠として提出していることだろう」
これで裏切り者の正体がわかって、親衛隊は疑われない。
「そ、そんな……」
ヴィレッタがへたりこんだ。ヴィレッタの様子に、藤堂たちは演技ではなく本当なのだと理解した。
「お、お前、私に何をした!」
「なに、お前をギアスで操っただけだ」
ルルーシュの悪そうな顔に、ヴィレッタは小さく悲鳴をあげた。
「あ、あれ? 俺たちの時と違くない?」
「う、うん」
リヴァルとシャーリーが後ろでコソコソ話しているが、誰も気に留めない。
「お前はもう、軍に居場所はない」
「ま、待て! こんなことがバレたら、私の家族が!」
ヴィレッタの出世欲が強いのは家族の為だ。兄妹も多くいる。しかし、ブリタニアで敵に内通などしたら。
「フフフ、ハハハ!」
ルルーシュの魔王のような笑い声に、ヴィレッタは虚脱した。うわ言のように、ブツブツ呟いている。可哀想は可愛い。
いくら敵とはいえ、あまりの惨さに千葉が声をあげた。
「お、おい。いくらなんでもこれは……」
「安心しろ。ちゃんと対策はしている」
ルルーシュは、高笑いを引っ込めて真面目な顔をした。
「ヴィレッタが家族のことで脅されて協力せざるを得ないという証拠も残した。あとは便利なクロヴィスに家族を保護させれば大丈夫だ」
「……私の家族は大丈夫なのか?」
不安そうなヴィレッタに、ルルーシュは優しい笑顔を向けた。
「ああ、君の家族は大丈夫だ。全て、ゼロが悪いことになっている」
「……そうか、ありがとう……」
ヴィレッタが黒の騎士団に入れたのも、ヴィレッタの家族が無事なのも、全部ルル島さんのお陰じゃないか!
「ええ……。これ、わりと外道じゃないのか?」
千葉の言葉を、ルルーシュは聞こえないふりをした。
純血派指揮官代行消失編