「まさか、包囲前にサイタマゲットーに入るなんて」
驚くカレンに、ゼロが答えた。
「マジックと同じだ。タネは始まる前から仕込まれている。コーネリアも包囲して私を誘き出そうとしたのに、既に包囲の中にいたとは思うまい」
サイタマゲットーへと移動したルルーシュは、現地のレジスタンスと協力して迎撃準備を整えていた。まあ、協力というより、ぶっちゃけ支配下に近いが。
足長キングは一般市民にのみ援助していて、レジスタンスには援助しない。しかし間接的に、例えばキョウトが浮いた物資をレジスタンスに回すなどの恩恵を受けている。また、家族を助けてもらったというレジスタンスもいるので、余程大きなレジスタンスでなければ頭が上がらない。
そして、ゼロと足長キングは協力関係にあると、まことしやかに噂されている。これでは、サイタマゲットーのレジスタンスであるヤマト同盟は、ゼロに協力するしかない。下手に拒否すれば、一般人からは白い目で見られ、組織内でも意見対立が起きるだろう。
「ブリタニアが包囲を始めた!」
そこに、ヤマト同盟のリーダーである泉が駆け込んできた。
「落ち着け、避難状況は?」
ゼロの言葉に落ち着きを取り戻した泉が、呼吸を整えて話し始めた。
「あ、ああ、民間人の避難は完了している」
「トラップの準備は?」
「そっちは、あと30分もあれば」
「十分だ。ブリタニアの攻撃開始には、十分間に合う」
◆◆◆
「なに?」
コーネリアの不機嫌そうな声に、クロヴィスの高官たちが震え上がった。
「もう一度報告致します。サイタマゲットーの住民は、我々の呼び出しを拒否。というよりもぬけの殻です」
腹心であるダールトンの言葉に、コーネリアは眉を寄せる。
「解せんな。報道規制は解除したばかりだ。避難など間に合わんはずだが」
「偵察隊によるとレジスタンスらしき者たちが、何やらコソコソと動いているようですが……」
「レジスタンス……、確かサイタマゲットーのレジスタンスはヤマト同盟とか言ったか?」
「はい、取るに足らない弱小レジスタンスのはずです」
想定外の事態に、コーネリアとダールトンが頭を悩ます。この作戦は、ゼロを誘き出す為の者で、ゲットーの住民なんてどうでもいいが、理由がわからないのは見逃せない。
「動かなければ始まらんか。……時間だ、攻撃を開始しろ」
「イエス、ユア、ハイネス」
コーネリアの合図で、包囲していた部隊が攻撃を始めた。
「始まったか」
【グロースター】に搭乗していたルルーシュは、進軍を始めたブリタニア軍をレーダーで確認してほくそ笑んだ。
「一番オーソドックスな包囲殲滅の陣だな。仕込みがドンピシャだ」
ルルーシュは、通信機を手に取った。
「これより、反撃を開始する! まずは、迎撃システムからだ。ポイントαの仕掛けを使う。トラップα1から3作動」
ルルーシュの合図で、擬装されていた固定状態のKMF のライフルが火を吹いた。ライフルは引き金を引けば弾が出る。KMF が持たなくとも役に立つ。
「次はP1から4、ポイントβの敵を叩く。現在位置から3時の方向に撃ちまくれ」
このサイタマゲットーは、ルルーシュの指示で数年前から少しずつ改修を進めていた。トラップモリモリだし、地図にない抜け道も作った。現時点の空戦に対応していないKMF なら、十分に勝てる。
しかも、【グロースター】以外にも、少数だが【グラスゴー】を持ち込んでいる。貴族の横流し品だが、戦力としては優秀だ。
これに慌てたのはブリタニアのエリア11の駐在軍だ。コーネリアの前でボコボコに負けているのだ。彼らは寿命が縮む思いだ。
「フン、どうやらゼロは来たようだな。それとも模倣犯か? まあ、いい。トラップと少数の【グラスゴー】など恐れるに足らず! 本隊を出せ!」
コーネリアの腹心ギルフォードを中心に、先程よりも多い部隊が戦線に投入された。
「本隊か、なら」
ルルーシュがスイッチを押すと、建物の影からミサイルが打ち上がった。
「地対地ミサイル!?」
驚くギルフォードたちを他所に、ミサイルはコーネリアのいる【G-1ベース】へと向かう。
「迎撃しろ!」
ダールトンの指示で迎撃は間に合い、被害はなかった。しかし、本陣を攻撃されたという事実は兵の動揺を誘う。範囲網に乱れが生じた。
「引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ」
畳み掛けるように、トラップが連続で起動する。
橋が落ち、地面が崩れ、建物が倒れる。それに巻き込まれてブリタニア軍は多くの兵力を失った。
「包囲網なんぞ地形を見れば敵のいる場所など事前に予想できる。何せ、包囲に穴があってはいけないのが包囲網なんだからな」
地の利、それも数年単位の準備があるフィールドでルルーシュに勝つなど、シュナイゼルでも厳しい。いくらコーネリアといっても、まだルルーシュとの戦闘経験も無く、手口が予想できないので面白いように引っ掛かった。
包囲網は半壊、前線部隊は大混乱に陥った。
「クソ! 落ち着け!」
「ギルフォード卿!」
必死に部隊を建て直しているギルフォードに、部下が叫んだ。
「何だ、こんな時に!」
「あちらをご覧ください! ゼロです!」
「なにッ!?」
部下の指す方を見れば、建物の上に黒い【グロースター】が見えた。カメラの倍率を上げれば、コックピットから乗り出している仮面の男がいた。
「ッ! 姫様! ゼロです! ゼロを発見しました!」
「何だと!?」
慌ててコーネリアに通信を入れれば、コーネリアも驚いた様子だった。
「奴は黒い【グロースター】に乗っています!」
「我が騎士ギルフォードよ。ゼロを捕らえよ! 私も出る!」
「イエス、ユア、ハイネス!」
通信が終わるのを待っていたのかのように、ルルーシュがコックピットに戻り、建物の影に消えた。
「追うぞ!」
ギルフォードが、直属の部下を連れて追跡する。
「中々速い!」
差が縮まらず焦れたところ、横合いから銃撃が加えられた。ギルフォードたちは慌てて回避行動を取った。幸い損傷は無かったが、攻撃元を見れば、固定されたライフルで敵はいない。
「まんまと距離を取られたか。手強い!」
今もルルーシュは、ギルフォードがギリギリ追い掛けられる距離にいる。しかし、それ以上は離れない様子を見るに、明らかに誘いだった。
「とはいえ、このままというわけにも」
ギルフォードが再度距離を詰めようとした時、ルルーシュが建物の影から何かを取り出した。
「バズーカ!?」
「全て想定通りだ」
ルルーシュは、バズーカを連射する。
「散開!」
ギルフォードたちは即座に散開して躱すが、これも想定内。
「カレン、やれ!」
建物の屋上から急降下したカレンが、部下の【グロースター】を狙う。
「ハアァァッ!!」
振り下ろされたヒートソードが、【グロースター】の右腕を切断した。
「伏兵だと!? しかも、また【グロースター】か! いったいどこから調達したのだ!?」
ギルフォードがすぐに援護に向かおうとするが、ルルーシュが狙い撃ちにしているせいで向かえない。
そうこうしているうちに左腕も切り落とされ、部下は脱出機能でコックピットごと逃げた。部下の残りは、あと1人。
「こいつ!」
「凄い、これが【グロースター】! 【グラスゴー】と全然反応が違う! これなら、お前らなんかに!」
凄まじい動きを見せるカレンは、スラッシュハーケンを使った三次元的な運動で、敵を翻弄する。
「日本人を舐めるな! ブリタニア!」
一刀で上下に真っ二つにされて、同じく部下は脱出した。
「ギルフォード!」
コーネリアが、部下を引き連れてやって来た。
「姫様、お気をつけください! こやつら、かなりの腕前です!」
「ほう、面白い!」
コーネリアは部下を4人連れてきており、ルルーシュでも流石に不利だ。
「カレン、ポイントΩまで後退する」
「了解!」
ルルーシュがバズーカを捨て、身軽になって後退していく。
「追うぞ!」
コーネリアが先頭になって追うが、どちらも【グロースター】、差は中々縮まらない。
「逃げるな! ゼロ!」
「馬鹿が。逃げているのではない、誘い込んでいるんだよ」
「姫様! 奴は周到に罠を張っております、お下がりください!」
ギルフォードがコーネリアを諌めるが、少し遅い。
大きな十字路に出たところで、左右から待ち構えていた【グラスゴー】がミサイルランチャーで攻撃した。
更に道路沿いの建物を爆破。これで、コーネリアとギルフォードの2人と部下を一時的に隔離した。
「コーネリア覚悟!」
カレンが果敢に斬り掛かるも、ギルフォードが立ち塞がった。
「こいつは私が。姫様はゼロを!」
「すまんが、任せるぞギルフォード!」
コーネリアがランスで、ルルーシュに突き掛かる。
「流石に鋭いな!」
ルルーシュは、ヒートソードで切り払った。
「【グロースター】など、いったいどこで手に入れたのか。聞かねばならんことが増えたな!」
そのまま接近戦を行う両者だったが、互角の立ち回りだった。槍と剣で鍔迫り合いしている。
「ゼロ! 軟弱な策略家かと思えば、戦士としても一流か!」
予期せぬ強者にコーネリアのテンションは上がっていくが、ルルーシュは冷静にタイムスケジュールを確認していた。
「時間だな。カレン撤退するぞ!」
「は、はい!」
これ以上戦うと隔離した部下や、新手の増援が来かねないので、ルルーシュは今回の戦いを切り上げることにした。
ギルフォードと互角の戦いをしていたカレンが、自分の横まで後退してきたのを確認したルルーシュは通信機に声を掛けた。
「やれ、C.C」
指揮所にいたC.C.がボタンを押すと、戦場のあちこちで煙幕が上がった。
ルルーシュ自身もサイドスカートからスモークグレネードを取り出すと、地面に投げた。
「くっ、しまった!」
コーネリアはルルーシュを見失い、追おうにもこの視界では逆に奇襲に逢いかねず、断念した。
「おのれ、ゼロ!」
作戦通りに撤退したルルーシュたちは再合流し、東京方面に移動した。
「なんだやれるじゃないか。まだ、下っ端は借り物とはいえ、俺の軍はどうだったコーネリア?」
撤退中のルルーシュは、テンション上がって魔王のような高笑いをキメていた。
C.C.は戦闘中、指揮所でトラップの操作をしていた。ルルーシュが戦闘を始めてからは、状況別の指示書を読みながら操作していた。地味に大変だったので、ピザ食いてえって思ってる。
ちなみに出す予定は無いけど、もしこの世界線にロスストの主人公がいたら、新宿の人は大半が生存しているのでお世話してた女の子たちが生きてるので修羅の道に落ちない。