ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
魘夢との戦いは終わり、列車が激しく横転する凄惨な結末となったものの、炭治郎たちの命懸けの奮闘によって、乗客は一人として命を落とすことはなかった。
しかし、誰もが安堵の息をつく暇もなく、その男は現れた。
突如として響き渡る轟音とともに、地面に巨大なクレーターが穿たれる。もうもうと立ち込める土煙の中から姿を現したのは、上弦の参・猗窩座。その身体から放たれる圧倒的な圧力を前に、炭治郎はまともに息を吸うことすらできず、煉獄は即座に刀の柄へと手をかけた。
「……いい闘気だ。練り上げられている」
猗窩座の冷徹な瞳が射抜いたのは、純粋な強者──炎柱・煉獄杏寿郎だった。「鬼にならないか」という誘いを一蹴した煉獄と、ただ闘争のみを渇望する猗窩座。二人の激突は、常人の目では到底追いきれない速度の凄絶な乱打戦へと発展した。
ドォォォォンッ!!
空気を力任せに引き裂く衝撃波と、土砂が激しく舞い上がる戦闘音が夜の荒野に響き渡る。
激闘の果て、ついにその時は訪れた。煉獄の刃が猗窩座の頸を捉えようとし、猗窩座の拳が煉獄の胸を貫こうとする、決着の瞬間。死の匂いが濃厚に漂う中、煉獄の目が血走る。このまま行けば、互いに相討ちとなるか、煉獄が致命傷を負うのは必至という局面だった。
「……ッ!!」
その刹那、戦場の空気を切り裂くように、一発の銃声が響き渡った。
パァンッ!!
青白い光を纏った弾丸が、猗窩座が煉獄へ突き出そうとした拳の軌道を正確に弾き飛ばす。衝撃で猗窩座の身体がわずかに右へ逸れ、煉獄の刃は空を切ることなく、しかし確実に猗窩座の頸を深く刻んだ。
土煙を割りながら、ポケットに手を突っ込んだままの駆が悠然と姿を現す。
「神代……ッ!」
煉獄は、限界寸前の視界の中で駆の姿を認め、その表情に驚愕と、それ以上の信頼を浮かべた。
「……悪いね、遅くなった。リハビリにしては、随分とメニューが重いよ、あの鬼は」
駆は煉獄と猗窩座の間に割って入り、ガンプを器用にクルリと回して猗窩座へ向けた。先ほどまでの魘夢との掃除とは比べ物にならないほど、その瞳に宿る光が鋭く研ぎ澄まされている。
「いい闘気だねぇ、お前さん。でも、煉獄は今『俺』と大事な話の途中なんだ。……それ以上、俺の戦友(ダチ)に手出しするなら、代わりの相手をさせてもらうよ」
駆は不敵に笑い、ガンプのシリンダーを軽く弾いた。対する猗窩座は殺気を孕んだ瞳を細め、ニヤリと口角を吊り上げる。
「……ほう。邪魔が入ったか。だが、面白い。お前からも、素晴らしい闘気を感じるぞ」
煉獄の闘争心に、駆という新たな異質な力が加わる。夜明けを待たぬ戦場にて、上弦の参を相手取った、サマナーと炎柱の「一騎討ち」が幕を開けようとしていた。