ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜   作:ガチャガチャクツワムシ

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終局のデバッグ

 「メディラマ」の燐光が消え、絶望の淵から引きずり戻された宇髄と炭治郎。だが、駆の支援をもってしても、彼らの肉体に刻まれた「疲労」と「摩耗」までは消え去らない。

 「……動けるようになったが、……身体が鉛のように重ぇ。おい駆、これ以上のサービスはねぇのかよ!」

 「強欲だな、宇髄。命を繋いだだけで十分だ。後は自力でなんとかしろ」

 駆の突き放すような言葉に、宇髄は不敵な笑みを返し、再び二振りの大刀を振るう。傍らでは、伊之助が胸の深手を自力で押さえ込みながら「猪突猛進だァァ!」と雄叫びを上げ、瓦礫から這い出た善逸も、眠りの中で「雷の呼吸」の型を極限まで研ぎ澄ましていた。

 そこからは、まさに執念のぶつかり合いだった。宇髄が譜面を完成させ、伊之助と善逸が死線を突破して妓夫太郎の隙を突き、炭治郎が渾身の力でその刃を押し込む。ついに、二つの頸が同時に宙を舞った。

 吉原を支配していた上弦の六、その長い夜が終わったかに見えた瞬間、瓦礫の向こうから三つの影が必死の形相で駆け寄ってきた。

 「天元様──っ!!」

 雛鶴、まきを、須磨。無事救出された三人の嫁たちが、満身創痍の宇髄に泣きながら縋り付く。失われた左腕と潰れた左目を見て、須磨が悲鳴のような泣き声を上げた。

 「あああ、天元様! お腕が! お目がぁぁ!」

 宇髄は残った右手で彼女たちを引き寄せ、「派手に生き残ったんだ、気にするな」と笑ってみせる。だが、その光景に水を差すように、駆が冷淡な、しかし確かな希望を含んだ声を投げかけた。

 「……宇髄、そんな湿っぽい顔をするのはまだ早いぞ。今の俺の出力じゃこれが限界だが、後日、俺のMAGが全快した時、欠損した部位を再生させる最上位の回復スキルも使えるようになる。……腕だろうが目だろうが、元通りにしてやるから、今はその傷を勲章だと思っておきな」

 その言葉を聞いた瞬間、それまで泣き崩れていた三人の嫁たちが、一斉に駆へと視線を向けた。

 「……今の、本当なの!? 天元様のお体、本当に治せるの!?」

 「嘘じゃないでしょうね! 軽々しくそんなこと言って、もし治せなかったら……許しませんから!」

 「あんたのその変な銃……本当にそんな力があるの!? 嘘だったら承知しないわよ!」

 三人は鬼の形相で駆に詰め寄る。愛しい人を守るための、鬼よりも鋭い嫁たちの眼光。しかし、駆は肩をすくめて涼しい顔で受け流す。

 「……あぁん? テメェ、そんな出鱈目まで可能なのかよ……」

 宇髄が呆然と呟いた、その時だった。崩れゆく鬼たちの肉体から、ドロドロとした黒い泥のような魔力が溢れ出した。

 「……チッ、やはりか。不完全な融合元が、無理やり形を成しやがったな」

 駆の呟きと同時に、鬼の血を触媒に、この地に潜んでいた異界の「外道」が実体化する。肉塊が割れ、中から二体の異形が這い出した。

 巨大な鶏の頭を持ち、全てを石へと変える邪眼を光らせる『凶鳥 コカトリス』。

 女性の上半身と蜘蛛の下半身を持ち、死の糸を紡ぐ『地霊 アルケニー』。

 それらは人形師の術式によって不自然に縫い合わされ、絶叫を上げながら周囲を腐食させていく。

 「……なるほどな。ただの異変じゃない。人形師が噛んでやがったか。……ここからは俺の領域だ。炭治郎、宇髄。嫁さんたちを連れて下がってろ。お前たちの相手にできる『位』じゃない」

 駆は愛用のガンプを叩き、電子音を響かせる。

『DDS-NET CONNECTING. GO』

 「……召喚。その銀翼で、闇を裂け。ヤタガラス」

 白銀の翼を持つ聖獣が実体化し、威圧感を放つ。

 「……来い、ヨシツネ。その八艘飛びで、この紛い物を斬り刻め」

 紅の装束に身を装った伝説の戦士が、電子の粒子から組み上げられた。駆は不敵にガンプを構え直す。

 「……異世界の紛い物に、この地の鬼。まとめて引導を渡してやるよ」

 ヤタガラスが「真空波」で粘糸を切り裂き、その隙を縫ってヨシツネが跳ぶ。「八艘飛び」の神速の連撃が外道の肉体を寸断し、最後はヤタガラスの放つ清浄な光が、異世界の不浄を跡形もなく浄化した。

 吉原にようやく本当の静寂が訪れる。駆は、嫁たちに囲まれて安堵の表情を浮かべる宇髄を一瞥し、鼻で笑った。

 「……三流脚本のハッピーエンドかよ。お疲れさん、宇髄」

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