ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
呪いの連鎖を断ち切った直後。産屋敷の回復を喜びつつも、駆は次なる一手に着手した。
「産屋敷様、ここからは本当の意味で『無惨』を終わらせるための戦いを始めましょう。ですが、その前に……」
駆は一同を連れ、庭へと移動した。月明かりの下、異界のバッグから取り出したのは、修行時代に師匠から「いつか役に立つ」からと無理やり押し付けられ、その癖の強さから仕舞い込んでいた練具の数々だ。
「これらは自分の師匠から譲られたというか、押し付けられたというか……まぁ、失敗品みたいなものです。威力は保証しますが、とにかく使いづらくて」
並べられたのは、真空の刃を撒き散らすチャクラム、凍てつかせる白銀の槍、雷光を纏って不規則にのたうつ蛇腹剣、灼熱の炎が渦巻く鎖鎌、そして戦況を支配する不気味な楽器。
「宇髄、その蛇腹剣、興味ないか? あなたなら派手に使いこなせそうだけど」
「ほう、派手な輝きじゃねぇか。どれ、神代の師匠とやらの趣味を試させてもらうぜ」
宇髄が蛇腹剣を横一文字に振るった瞬間、轟音と共に『ジオダイン』の雷光が溢れ出した。制御を失った雷が龍のようにのたうち、庭の巨石を一撃で粉砕し、溶岩のように溶かしてみせる。
「うおっ!? なんだこの暴れ馬は! 筋力で抑え込むだけじゃ、刃がどっちに向くか分かったもんじゃねぇぞ! 派手すぎるだろ!」
「だろ? 押し付けられた当初は使いこなせなかったんだ。だから異界バッグの奥に仕舞い込んでたんだよ。でも、これから皆の日輪刀に施すのはこれの完成形だ。今の技術(わざ)のまま、この力を自分の手足として振るえるようになるはずだ」
煉獄は爛々と目を輝かせ、カナエや甘露寺は不気味な楽器を興味深そうに眺める。そんな中、しのぶが駆の顔色の悪さを鋭く指摘した。
「神代さん。おどけないでください、顔色が紙のように真っ白ですよ。即刻、ここで休みなさい。……いいですね?」
「……悪いけど、休んでる暇はないんだわ。この説明を終えたら修練の間に向かうから、そこでMAGを回復させて態勢を整えるよ」
駆は数個のチャクラドロップを飲み込み最低限の力を繋ぎ留め、さらに提案した。
「産屋敷様。鬼殺隊の武器を作成している場所へ、この練具たちを先に届けておいてもらえませんか? 刀鍛冶の方々に先に術理を研究しておいてほしいんです。自分は数日、修練の間でMAGを回復させてから、そこへ向かいます」
「わかった。責任を持って届けさせよう」
産屋敷が請け負う。しのぶはお目付け役として、駆が修練の間へ入るまで同行することを宣言した。
「……わかった、助かるよ。それじゃあ産屋敷様、皆。お先に失礼します」
駆は最後に一礼し、しのぶに連れられるようにして、借りている拠点の方角へと歩み出した。その足取りはふらついていたが、彼の瞳には、人形師を討ち果たし、この世界を救うという確固たる決意が灯っていた。残された柱たちは、駆が残した練具を前に、かつてない高揚と、迫り来る決戦への覚悟を胸に刻み込んでいた。