ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
刀鍛冶の里の裏山。縁壱零式との死闘に近い特訓を終え、ボロボロになりながらも達成感に浸る炭治郎と無一郎の前に、駆はひらひらと手を振りながら現れた。
「よっ、お疲れさん。小鉄くんのしごきに耐えるとは大したもんだ。……でも、ここからは俺の番だ。もう少し『実戦的』なのをやろうか」
駆の背後には、フレイミーズ、エアロス、アクアンズ、アーシーズの四精霊がぷかぷかと浮き、さらに筋骨隆々のオニが巨大な棍棒を肩に担いでニヤついていた。
「神代さん……これから何をやるんですか……?」
炭治郎が引きつった笑顔を見せる中、駆は岩に腰掛け、リンゴを齧りながら異界のバッグから数振りの刀を取り出した。それらは一見普通の刀だが、刀身には微かな魔力の脈動が宿っている。
「これ、俺が頼んで里の職人とイッポンダタラに打たせた試験作だ。初級の物理スキルを定着させてある。……炭治郎、無一郎、蜜璃ちゃん、それに玄弥もこっち来い」
駆はそれぞれに刀を投げ渡し、手ぶらだった玄弥には、予備で持っていた銃を放り投げた。
「玄弥、お前にはこれを貸してやる。使い方は簡単だ、引き金を引けばいい。ただし、込めるのは弾丸じゃなく『お前の意志』だ。……さあ、試し斬りといこうか」
駆が指を鳴らすと、四精霊がオニへと溶け込み、その巨大な棍棒に異質な「重み」と「鋭さ」を付与していく。
「いいか、オニが振るうのはただの棍棒じゃない。アーシーズの『重圧』と、エアロスの『真空』を纏わせた――回避不能の物理法則だ」
「へっへっへ……! 潰しがいがあるぜぇ!」
オニが吠える。その棍棒を振り下ろすだけで、周囲の地面が重圧で陥没し、風の刃が樹木を切り裂いた。
「神代さん……これ、刀が重く感じます!」
「それは『突貫』のスキルを定着させてある。突きの速度を倍化させ、硬い甲殻をも貫く物理の理だ。無一郎、あんたのは『切込み』。斬撃の軌道に真空を作り、リーチを伸ばす。……玄弥、その銃には『衝撃』を込めてある。弾丸の代わりに、空間を叩き潰す衝撃波を放て」
駆が指を鳴らすと、オニが爆発的な踏み込みで彼らに襲いかかった。
「ひるむな! オニの重圧を刀で受け流し、その反動を自分の得物のスキルへと変換しろ。……物理には物理をぶつけるんだ。……ほら、ぼーっとしてると、その自慢の首が物理的に飛ぶぞ!」
「うわぁっ!? 来たっ!」
炭治郎が、重力魔法のごとき圧を纏ったオニの棍棒を必死に受ける。その瞬間、試験刀に宿る『突貫』の理が、オニの力を吸収して鋭い反撃の推進力へと変わった。
「重い……! でも、押し返せる! この力を使えば……!」
「そう、それが身体操作の極意だ! 玄弥、お前もだ! 銃の反動を恐れず、衝撃波でオニの体勢を崩してみろ!」
駆は、地獄のような光景の中で目を輝かせる剣士たちを、どこか楽しげに見守る。
「いいか、悪魔というのは……俺が渡り歩いてきた世界に巣食う連中と同じだ。奴らは多彩な魔法や特殊スキルを使いこなし、常識外の戦い方をしてくる。対抗するには、俺たちも同じようにスキルを使いこなし、理(ことわり)で圧倒するしかない。どれだけトリッキーな能力を持っていようが、再生が追いつかないほどの『物理的破壊』を叩き込めば、必ず綻びは出る。……ま、あんたたちなら、なんとかなるでしょ?」
駆の飄々とした言葉とは裏腹に、山中には金属が激しくぶつかり合う轟音と、物理の法則を無視した破壊の跡が刻まれていった。