ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
無限城の各所では、本来なら一瞬で屠られるはずの一般隊士たちが、悪魔を宿した鬼の群れを食い止めていた。彼らを支えているのは、柱稽古という名の「地獄」を生き延びたという自負である。
「駆さんの特訓を思い出せ! あの物理地獄に比べれば、この程度の衝撃はかすり傷だ!」
隊士たちが手に持った錬具(デバイス)を起動させると、刀身から「アギ」や「ジオ」の理が迸り、鬼たちの再生を根絶やしにしていく。
激戦区の各所には、駆が事前配置していた『妖精メデューサ』や『天使プリンシパリティ』らの姿があった。
「あらあら、随分と無茶な体ね。……『ラクカジャ』、鎧を硬くしてあげるわ」
「皆さんの傷に……『メディア』。聖なる慈悲を授けましょう」
戦線の中枢で、悪魔たちが絶え間なく防御力の底上げ(バフ)を施し、致命傷を癒やし(回復)、鬼の動きを鈍らせる(デバフ)支援を展開する。隊士たちは息も絶え絶えになりながらも、決して死ぬことのない「鉄壁の戦列」を維持し続けていた。
迷宮の深部では、分断されたはずの柱たちが、駆の配下であるピクシーやポルターガイストら下位の悪魔たちの導きにより、最短距離で合流を果たしていく。それは、この戦場の「絶望のシナリオ」を力ずくで書き換える、神代駆による戦術的な侵食であった。
「……はは、いい顔してるねぇ。地獄を見てきた連中の眼だわ」
駆は、ガンプの一撃で立ち塞がる悪魔融合体を空間ごと消し飛ばしながら、その様子を遠目に見届けていた。
「……ピクシー、煉獄を実弥たちのところへ合流させろ。……ポルターガイスト、あいつに無茶させすぎるなよ」
小さな悪魔たちが「任せて!」「合流完了!」と賑やかに報告を上げる。駆はさらに深く、冷たい殺気が渦巻く方向へと視線を向けた。そこには、上弦の弐・童磨と対峙しているはずの、胡蝶しのぶの気配があった。
彼女が独りで背負おうとしている「結末」を変えるため、駆は迷宮の壁を物理的に「消去」して最短距離を穿った。
その光景を支配者の間から眺めていた人形師は、ワイングラスを片手に、ゆったりと椅子に深く腰掛けていた。
「素晴らしい。完璧だよ、神代駆。使い魔を情報の神経網として使い、一般隊士を掃討の歯車に変え、さらに空間そのものを消去してヒロインの元へ駆けつける。君の介入によって、この戦いはかつてないほど刺激的で『美しき蹂躙』へと昇華された」
人形師は愉悦に顔を歪ませ、画面の中で童磨の懐へと迫る駆の背中を見つめながら、まるで最高傑作の舞台を鑑賞する観客のように、優雅に拍手を送った。
「さあ、見せてくれ。君の強引な舞台荒らしが、結末をどう塗り替えるのか……この結末だけは、計算外であってほしいねぇ」