ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
東の空が白み始め、生存本能という名の醜い「恐怖」が、ついに鬼の始祖・鬼舞辻無惨を飲み込んだ。
「……陽の光が、来る……ッ!!」
無惨の喉から、ひび割れた悲鳴が上がる。フィン・マックールの炎の剣に貫かれ、ベリアルの炎に焼かれ、カマエルの裁きが肉を刻み、柱たちの連撃がその活力を削ぎ落とす。もはや人型の維持すら叶わぬ無惨は、ボコボコと不気味な音を立てて肉塊を膨張させ、凄まじい勢いで肥大化していった。
「逃がさない……絶対に、逃がさないぞッ!!」
炭治郎の叫びに応えるように、無惨は日光から逃れるため、高さ数メートルにも及ぶ「巨大な赤子」の姿へと変貌した。あまりにも醜悪で、しかしどこまでも執念深い「生の足掻き」だった。
「……オオミツヌ、行け! その体で奴を叩き潰せ!!」
一般隊員たちに支えられ、駆が裂帛の気合と共に命を下す。地響きと共に現れた国造りの巨神オオミツヌは、逃走を図る赤子の進路を完全に塞いだ。
「グオアアアアッ!!」
巨神の腕が赤子の頭部を大地へ叩きつける。衝撃で地面が爆ぜ、無惨が狂ったように暴れるが、オオミツヌは山が動くが如き不動の質量でその身を地中に縫い付けた。
「……離れるな! 全員で畳み込めェ!!」
不死川、伊黒、そして全ての剣士たちが、残された命の火を燃やして赤子の肉を削ぎ落とす。カマエルが光の檻で空を塞ぎ、アラハバキが物理的な足掻きを反射で封殺する。
「神代さん! ……陽の光がっ!!」
甘露寺の叫びが合図となった。建物の隙間から、一条の黄金の陽光が差し込む。
「……が、あ……あああああッ!!」
陽光に焼かれ、肉がジュウと音を立てて崩れ落ちる。土を掘り、巨神の腕を逃れようと足掻く無惨の背を、炭治郎の日輪刀が、そしてフィン・マックールの炎の剣とベリアルの槍が深々と貫き、大地に固定した。
駆は支えてくれていた隊員たちの腕を離し、ふらつく足で無惨の巨大な肉塊へと歩み寄る。残されたMAGの全てを右腕のガンプに込め、白熱するバレルを無惨の剥き出しになった心臓部へと突き付けた。
「……見ていたか、無惨。お前が踏みにじってきた人々の『一分一秒』の重みを。……これが、貴様が奪い続けた『夜明け』だ」
駆の放った零距離の一撃は、ヤドリギの毒と神罰の光を凝縮した最後にして至高の弾丸。それが無惨の核心を粉砕した瞬間、巨大な肉塊は内部から黄金と紅蓮の光に侵食されていく。
「――終わりだ、鬼舞辻無惨。お前の千年の物語は、ここで灰になる」
駆が静かにトリガーを引くと同時に、朝日が街を完全に照らし出した。巨大な赤子の姿をした無惨は、駆の弾丸が穿った風穴から最期の絶叫と共に崩壊を始める。
千年もの間、夜を支配し続けたその命は、駆の刻んだ「裁き」と陽光に焼かれ、一筋の灰となって風に消えていった。
戦場を包む静寂の中、東の空から注ぐ陽光だけが、長く過酷だった死闘の終わりを告げていた。