ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
「一月の猶予」が残り五日となった夜。産屋敷邸の広間では、戦い終えた者たちが集い、晴れやかな笑い声が響いていた。
不死川、宇髄と3人の嫁達、煉獄、冨岡、伊黒、甘露寺、無一郎。そして胡蝶姉妹。誰もが死線を越えた戦友であり、駆にとってはこの世界で得たかけがえのない仲間たちだ。
「悪いな、少し長引いた。……代わりに、とっておきを持ってきたぜ」
駆が取り出したのは、自らの世界にある最高級の銘酒や最高級の果汁ジュース。その気遣いに、座は一気に和やかな熱気に包まれる。
杯を傾けながら、冨岡がふと呟くように問いかけた。
「……神代。俺たちは、お前の師匠の仲魔たちから戦闘術や魔力の扱いを叩き込まれた。あの神域の技に触れたからこそ、気になる。……あの伝説の英傑を従える、お前の師匠とは一体どんな存在なんだ?」
柱たちがその話しに興味を持ったのか身を乗り出す。苦笑しながら駆は懐から端末を取り出し、二人の人物を映し出した。
「一言で言うなら『まともな見た目の奴が一人もいねえ』かな。……まず、この胡散臭い紳士が久遠寺 鴉。俺のサマナーとしての師匠だ。見ての通り犯罪組織の首領にしか見えねえだろ? スカサハやトートを仲魔にしてるのが、このジジイだ」
写真の中、悪知恵の働きそうな笑みを浮かべる久遠寺の姿に、柱たちは絶句した。彼らを圧倒した神々を束ねる主が、これほど飄々とした初老の男性だという事実に。
「そしてこっちが、格闘術の師匠……鬼龍院 蓮。俺が拠点にしている街の表と裏の顔の姐さんだよ」
画面には、筋骨隆々でバッチリと派手なメイクを決めた人物が映る。
「……え、ええと……女性、なのですか?」
「いや、男だ。心は乙女らしいがな。普段は慈悲深い人が、一度怒ると素手でコンクリートを砕く。ハイヒールのまま回し蹴りしてくるんだぜ」
「カカカ! 派手だな! 派手すぎて笑えてくるぜ!」
宇髄の爆笑に合わせ、宴はさらに盛り上がる。駆は端末をしまい、賑わう戦友たちを眺めながら、どこか遠い未来を見るような表情で微笑んだ。
「まあ、あの人たちに比べりゃ、無惨なんてまだ可愛げがあった方だよ。……待たせてるからな、そろそろ帰って顔を見せてやらねえと。なに言われるか分かったもんじゃねぇ」
何気ない言葉。元の世界へ帰るという事実を、彼は初めて誰にも悟られぬように口にした。
器が触れ合う軽やかな音、消えない笑い声。
駆は、自分がこの世界に確かに存在し、共に生きたという証を、その心地よい喧騒の中に刻み込んでいた。