ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 〜大正の刃と現代の悪魔召喚師〜 作:ガチャガチャクツワムシ
依頼を受けた2人は、早速調査を開始した。事前に聞いていた静凛の直近の行動をなぞることにする。
「何でも、夕方まで射撃訓練をしてからシマの店を見回っていたそうだから、そこは俺が行くしかないな」
「羽目を外して、余計なトラブルを起こしたりしないでくださいね?」
しのぶのお小言を、駆は軽く受け流す。
「峠館さんと一緒に行くから大丈夫だよ」
そう言って情報収集へと向かった駆は、翌日になり集めた情報をしっかりと纏め上げた。
「店の人から聞いたら、どうやら先日に天神組が潰した半グレがアジトにしていたらしいんだ。静さんは舎弟の連中と一緒に残党がいないか廃ビルに見に行ったそうだから、そこにもしかしたら悪魔が発生したのか、あるいは呪具があるのかもしれない」
件の廃ビルに向かった二人は、早速内部の探索を開始する。
「そんなにMAGの異常を感知出来ないな……」
そうガンプを使用して探査している駆に、しのぶが声をかける。
「なら呪具の可能性がありますね」
しのぶ用に調整したC.O.M.P.を使い探査してくれたが反応が見つからないため、彼女はそう結論付けると、原因となる呪具を直接探すことにした。
くまなく捜索を続けること数十分。ようやくわずかなMAGの異常を探知し向かうと、床に古い箱が落ちていた。
「これみたいだな……」
「そうみたいですね……」
何が起こるかわからないため厳しい表情で慎重に箱に近づくと、MAGが異常な数値を出しはじめ、箱の周りにサキュバスやインキュバス等の淫魔が複数現れるのだった。淫魔たちのその妖しげな気配が廃ビルの空気をねっとりと歪ませる中、駆としのぶは一歩も引かず、それぞれの端末を構えた。
「──来ますよ、駆さん!」
しのぶが手元のC.O.M.P.を鮮やかに操作し、力強く掲げる。
空間が激しく明滅し、奔流のようなMAGが解き放たれた。
「応えなさい──クシナダヒメ、ティターニア!」
彼女の号令に応じ、戦場へ降臨したのは二柱の仲魔だ。
気高くも母性的な神気と気品を纏う地母神『クシナダヒメ』と、美しい羽を煌めかせながら妖しくも圧倒的な魔力を湛える妖精の女王『ティターニア』。彼女たちが放つ神聖なオーラが、淫魔たちの撒き散らす邪悪な魅惑を瞬く間に打ち払っていく。
「そっちは任せた! こっちはこっちで片付ける!」
隣に立つ駆もまた、愛用のガンプを構えて素早くトリガーを引き、迫り来る淫魔の群れを牽制した。さらに、自身のガンプから召喚プログラムを展開する。
「来い! アザゼル! サンダルフォン!」
駆の号令とともに空間を引き裂いて顕現したのは、圧倒的な威圧感を放つ巨大な2つの影だった。それは魔王アザゼルと神聖な天使の姿を模しながらも、全身が重厚な装甲と精巧なパーツで構成された大天使サンダルフォンであった。
機械仕掛けの神々が放つ重々しい駆動音が、廃ビルのコンクリートを震わせる。
クシナダヒメとティターニアが魔法の奔流で敵の動きを縛り、アザゼルとサンダルフォンが圧倒的な神威の重圧で淫魔たちを追い詰めていく。しのぶもまた、その隙を逃さず愛用のレイピアを閃かせ、肉薄してきたインキュバスの懐へ踏み込んで一閃、その肉体を正確に両断した。駆もガンプを使用し的確に核を撃ち抜いた。
仲間たちの連係攻撃の前に、淫魔たちの群れはなすすべもなく浄化され、廃ビルには再び静けさが戻る。
息を整えた駆としのぶは、仲魔たちを控えに戻しつつ、すべての元凶である「古い箱」へと慎重に歩み寄るのだった。
後日、元通りとなった美月と若頭の秋津が、揃って事務所を訪れていた。
「駆! 解決してくれてサンキュー!」
「俺からも礼を言うぞ」
嬉しそうに、すっかり元の男性の姿に戻った美月が爽やかな笑みを浮かべて礼を言う。
「どうやら、呪具とは知らずに半グレ連中がどこかから盗んできたみたいですね。で、天神組に壊滅させられた時の激しい怨念を浴びてしまい呪具が起動してしまったようです」
駆が調査結果を報告すると、秋津は険しい顔を引き締めながら頷いた。
「取り敢えず、こちらでも元の持ち主を調べてみよう」
「多分、持ち主もそれが呪具だとは気づかずに購入した可能性がありますね。一見ただの綺麗な装飾品のように見えましたから」
しのぶの冷静な分析に、秋津たちは納得したように息をつく。
「何か分かったらまた連絡する。今回は本当に助かった」
そう言い残し、二人は満足そうな、しかしどこか警戒を孕んだ足取りで事務所を後にしていったのだった。