TCGアニメの主人公を育てて後方師匠面したい転生系カードゲーマ―   作:衝動のファンチメン

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1ドロー目 主人公にカードゲームを教えるポジションです。

 子供の頃からカードゲームに没頭していた。

 40枚から50枚の山札と、5枚の手札。

 幾度となくボクはカードをめくり続けた。

 

 小学生から中学生になり、高校、大学と進んで社会人になっても。ボクの人生にはカードゲームが存在していた。

 

 そんな人生だったのだろうか。ボクは目覚めたら、カードゲームが全ての世界に転生していた。

 

 ボク──五色メグミは今日もカードをプレイする。

 

 ***

 

 

「ねえ、私にこれ教えてくんない?」

 

 赤髪でギターケースを背負ったJKが、ボクの目の前にデッキを置いてくる。

 

『デュエル・ヒーローズ』というカードゲームがある。ボクが前世で没頭したカードゲームであり、この世界では()()()()()()()()()()()()

 JKが置いたのはそのデッキだ。こんなライブハウスでバンドやってそうな女の子が、デッキを持ってくるなんて前世じゃ信じられねえ。

 

「ま、まあそれも仕事の一環だからいいけど……。どうしてボクに? 灰音リオンさん」

 

 かくいうボクもJKだ。女の子に転生した時はさすがにびっくりしたが、これはこれで一興。

 

「え~~っと。確か五色さんだっけ? 友達が言ってたのよ。ヒーローズ教えてもらうなら五色さんがいいって」

 

「そりゃあどうも。というか、名前覚えてくれていたんだ」

 

 目の前のJK、灰音リオンとはクラスメイトだ。もっともこっちは生粋のカードゲーマ―で、かたやカードゲームに興味無さそうなJK。話す機会なんてほとんどないんだけど。

 

 この世界では前世と違い、カードゲームは一種類しか存在しない。

 デュエル・ヒーローズ。世界で爆発的なヒットを起こし、この世界で唯一存在するカードゲーム。これの強さによって社会的な地位がある程度確立される。

 

 そう、ここはカードゲームの販促アニメの世界だ。カードゲーマ―としてこんな世界に転生できて至極恐悦! 

 なのでボクは前世の知識を活かして公認ジャッジの資格を取った。この世界ではジャッジの資格なんて国家資格に匹敵するほどの価値と難易度を誇る。

 

「初心者の手引きもジャッジの勤めという奴だ。いいよ。今暇だしやろっか」

 

「そういや、ここってそんなに客がいるわけじゃないんだね」

 

「…………ここのお客さんって癖強いから」

 

 後、前世とは比にならないくらいカードショップがあるからね! 意外と客層って分散してるんだよ!! 

 

 それにしてもうちはちょっと暇なんだけど。

 

「そういや、このデッキ以外に持ってきてるものないの?」

 

「え? これだけじゃできんの?」

 

「これだけってことね。ちょっとだけ、デッキの中身見せて」

 

「ん」

 

 ボクは灰音さんからデッキを受け取る。

 

 デュエル・ヒーローズはメインデッキ、マナデッキ、そしてヒーローカードの三種が必要になる。

 

 メインデッキだけではデュエルはできない。幸いにもうちには貸し出し用のデッキなんて大量にあるから、なんとかできそうだけど。

 

「ヒーローカードもついているんだ。メインデッキの枚数も問題なし。マナデッキはこれを使って」

 

「こんなのも必要なんだね。それで? どうやってやんの」

 

「先ずはそこの台に、デッキとかをセットしてみて」

 

「こう?」

 

 この世界では前世ではなかったような色んなアイテムがある。

 

 その中でも目を惹くのが、デュエルボードだ。ここにデッキを置くと、ホログラフィックが投影されて、よりリアルで没入感のあるデュエル体験ができる。

 

 ボクと灰音さんが指定された場所にデッキを置くと、自動でシャッフルを行なってくれる。

 

「ルール説明もかねてやってあげるけど、大体はそのデュエル・ボードが灰音さんをサポートしてくれるよ」

 

「へえ~~そんな便利なもんなんだねこれ」

 

「さて、灰音さんイメージしてみて」

 

「え……?」

 

 デュエル・ボードからホログラムが投影される。ホログラムはドーム状に展開して、まるでボクらが別の世界に迷い込んだかのような世界が広がる。

 

「ボクらがいるのはテラという異世界。ここでボクらがやれるのは、相棒であり、自分の分身でもあるヒーローを勝利に導くこと」

 

 これはデュエル・ヒーローズの公式設定だ。背景ストーリーとも呼び、語りだすと止まらないくらい長くなってしまう。

 この導入はアニメ1話っぽくてわくわくするでしょ? 一度やってみたかったんだ~~。

 

「ふうん。意外と凝ってるじゃん。いいね、そういうの。嫌いじゃないよ」

 

「ノってきたね。さて、デュエル開始と共にお互いのヒーローカードを公開するよ。ヒーローを出す時の掛け声は『ウェイクアップヒーロー!』だ!」

 

「う、『ウェイクアップヒーロー』……。こんな感じでいいの?」

 

「上出来さ!」

 

 ボクらの掛け声に応じて、ボードの中央に置かれたヒーローカードが裏返る。

 目の前にそれぞれのヒーローカードがホログラムで投影される。

 

「さあ、ヒーローカードの名を呼んであげて! ボクのヒーローは『異世界の案内人ホワイトラビット』!」

 

「え、え〜〜と『Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ』っ!」

 

 お互いのヒーローカードを開示してからデュエルスタートだ。

 

「先行はボクから! マナゾーンに白のマナをチャージ! ヒーロースキル発動っ!!」

 

 ターンの流れはドローして、マナデッキからマナカードをチャージして、カードを使うっていう感じだ。ただし先行はドローできない。

 

「ふぅん。なんだか景気が良さそうだね」

 

「まあ解説するためにはお手本を見せたほうがいいと思ってね。ヒーロースキルはヒーローカードだけにある専用の能力だよ」

 

 ボクは『異世界の案内人のホワイトラビット』の効果で一枚ドローして、手札を一枚山札の下に送る。

 

「これでターンエンドだよ。さあ、灰音さんのターンだ」

 

「なるほど。そうやって進めるのね。アタシのターン」

 

 灰音さんが山札からカードを引く。

 

「アタシは赤のマナをマナゾーンに置く。コストを支払ってもヒーロースキル発動っ!」

 

 灰音さんの掛け声と共にホログラムで投影された『Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ』がギターをかき鳴らす。

 

「アタシのライフにダメージを与えて、2枚ドローする!」

 

 灰音さんは初心者にしては、堂々としたプレイングだ。初心者特有のたどたどしさも見当たらない。

 

「これでターンエンド。こんな感じ?」

 

「うん、いいね。じゃあボクのターン!」

 

 初心者であっても卓についたら真剣勝負。灰音さんのプレイだけで少し熱くなってきた。

 

「ボクはトランプ兵招集のカードを使うよ! 場にトランプ兵を二枚呼び出す!」

 

 ホログラムで童話で出てくるようなトランプ兵が現れる。

 

「おぉ〜〜。すっご、めっちゃリアル」

 

「そんな反応してもらえると嬉しいね。基本的にフォロワーは出たターンに攻撃できない。ボクはこれでターンエンドだ」

 

「ふぅん、そうなんだ。じゃ、アタシのターン!」

 

 灰音さんは迷うことなく手札にあるカードをプレイする。プレイスピードが速いというか、カードのテキストを覚えるのが早いな。

 

 効果を覚えるのって結構難しいと思うんだけど。もしかして、この子、シンプルに頭がいいのか? 

 

「アタシは『Darpf(ダルフ)ソング・ブラッドフレイム』を発動っ! 相手の場にあるフォロワーにダメージを与えて、その後相手プレイヤーにもダメージを与える!!」

 

 ルシエラがギターを弾く。刹那、赤い炎がトランプ兵2体を焼き尽くして、ボクにもダメージを与える。

 

「いいねっ! 楽しくなってきたじゃないか!!」

 

「ちょっとだけど、熱くなってきた。さあ、次は何を教えてくれるの?」

 

 灰音さんがニヤリと笑う。カードゲームが少しずつ楽しくなってくるような感覚。

 

 ああ、懐かしい。かつての自分もこんなふうに楽しくなってきたんだった。

 

「いいよ。それじゃあ見せてあげよう。このゲームの奥深さを!! ボクのターンっ!」

 

 数ターンに及ぶ攻防で、マナゾーンに必要な分だけのマナが溜まった。

 

 デュエル・ヒーローズ。その真価を発揮する時が来た! 

 

「ボクは白のマナを4マナ支払い、ホワイトラビットのヒーロースキル発動! 顕現(アウェイク)!!」

 

 ボクの掛け声と共にボクのヒーローゾーンにあるホワイトラビットが、自分のフィールドに出現する。

 

「どーやら、今まではリハってわけね。いいじゃん。熱くなってきた」

 

「その通りっ! 顕現(アウェイク)は自分のヒーローカードをフォロワーとして召喚する効果だ!」

 

『異世界の案内人ホワイトラビット』は4マナ支払うことで、攻撃力3、体力3のフォロワーとして召喚することができる。

 

 まだまだホワイトラビットの効果は終わらない。

 

「さらにホワイトラビットが自身の効果で出た時に使える効果がある!」

 

 ボクはホワイトラビット、そのフレーバーテキストに書かれている言葉を高らかに歌い上げる。

 

「ようこそ、不思議で不可思議な異世界へ。オーバースキル発動!!」

 

 ホワイトラビットがステッキを掲げるとトランプ兵が3体召喚される。トランプ兵はそれぞれレイピア、大盾、鎌を装備していた。

 

「へえ。なにやら楽しそうじゃん。アタシに何を見せてくれんの?」

 

「各ヒーローには強力なスキルがある。ホワイトラビットのオーバースキルはトランプ兵を3体召喚して、速攻を与える!」

 

 速攻とは召喚されてすぐ攻撃可能な能力を指す。召喚酔いしないというのは、このデュエル・ヒーローズで強力な効果だ。

 

「そして顕現(アウェイク)によって場に出たホワイトラビットは召喚酔いしない! ボクのフォロワー全てで総攻撃!!」

 

「グッ……! 大人しい顔立ちの癖して随分と激しいじゃん! もしかしてそういうのが好みなの?」

 

「気に入ってくれたら嬉しいよ。これでボクはターンエンド」

 

 総攻撃で灰音さんのライフはかなり削った。次のターンには勝利できるだろう。

 

 けれど、それでも、灰音さんの目は死んでいない。むしろ闘志に燃えている。

 

「行くよッ! アタシのターンッッ!!」

 

 ああ、これだ。全身が震える。なんとなく分かるんだ。相手がボクに勝てると予感した時が。

 

 目に宿る闘志、あるいは声の勢い、プレイするときの手つき。

 

 さあ、灰音さんはどんな勝ち筋を見出したのかな? 

 

「アタシはマナを支払って、アタシのヒーローを呼び出す! 顕現(アウェイク)!!!」

 

 ギターがこのデュエルの中で一番の音を鳴らす。スクールガールズ系のガールズバンドの衣装を着た堕天使。ルシエラが場に召喚される。

 

 登場の合図かのような見事なギターさばきだ。

 

「アタシの歌声に神すら堕ちる! 顕現(アウェイク)Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ】!!!」

 

「随分と派手な登場じゃないか! さて、キミの切り札はどんな効果なんだい?」

 

「今すぐ聞かせてやんよ! Darpf(ダルフ)オンステージ! オーバースキル発動!!」

 

 Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラが赤と紫のオーラを纏う。ピリピリと危険な匂いがする。いいね、いい心地だ。

 

「手札を全て捨てて、ライフを1にして効果発動っ! 山札の一番上をめくって、それが【Darpf(ダルフ)・Song】なら、そのコスト分ルシエラを強化する!!」

 

「けど、それだけじゃボクのライフには届かないよ。さて、これからどうするつもりだい?」

 

「まだ終わってねえっ!! アタシはこの効果を三回行なう!!」

 

「なにッ!?」

 

 灰音さんは合計三枚のカードをめくる。めくれたカードは全て、【Darpf(ダルフ)・Song】。

 

 ルシエラの拳にオーラが集まり、ルシエラが大地を蹴る。赤と紫の光芒が迸り、ルシエラがホワイトラビットへ肉薄する!! 

 

「ルシエラであんたを攻撃ッッ!!!」

 

 この攻撃を受けたらボクのライフはゼロになって敗北する。ボクは手札に視線を落とす。

 

 ふっ、初心者の門出は勝利で飾るべきだろう。ボクは何もすることなく、その攻撃を受け入れた。

 

「アタシの勝ちだね! なんだ、めちゃめちゃ熱くなれるじゃないか!」

 

「気に入ってくれたようで何より。そのマナデッキはあげるよ。これからもうちをご贔屓にね」

 

 さて、デュエルに熱中しすぎた。軽く初心者に教えるつもりだったのに、中々いい筋だから。

 

 仕事めちゃめちゃサボったから、急いでやらないと怒られてしまう。

 

「じゃ、ボクは仕事に戻るから」

 

「その前に、アンタに一つ聞いてもいい?」

 

 灰音さんはデッキを鞄にしまいながら、ボクにそう聞いてくる。ボクは振り返ることなく、それに答える。

 

「いいよ。勝者の特権だ。なんでも一つどうぞ」

 

「アンタ、本気じゃなかったでしょ。熱くなれたけど、不完全燃焼気味でさ。もしかして手加減した?」

 

 灰音さん、流石にいい勘してるな。

 

 ボクの中である欲求が芽生えてきた。灰音さんの師匠になってみたい。さっきのデュエルはまるで販促アニメ第一話のような熱さだった。

 

 才能がある初心者。それを育てて、後方腕組み師匠面をする。こんなことが出来るのはこの世界ならではだろう。

 

 ボクは腰にかけている自分のメインデッキのケースを空ける。その中から一枚のヒーローカードを取り出して、振り返ると同時に、そのカードを灰音さんに見せる。

 

「もし、ボクと本気でやりたいならここに通いなよ。灰音さんを強くしてあげる。ボクの本気と戦えるくらいまで」

 

「ふうん。アタシに火ぃつけたこと、感謝するよ。本気のアンタと戦えることを楽しみにしてるよ!!」

 

 ふっ、決まったぜ。まるで販促アニメ1話かのような引き。ボクの楽しみが増えたぜ。ふふっ、どんな風に育ててやろうか……!!! 

 

 

 

 




【今日のエースカード!】
Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ
ヒーロー/フォロワー種族:Darpf(ダルフ)/堕天使/ダークストリート
ヒーロースキル
LV1(赤または黒の1マナ)
自分プレイヤーに2点のダメージを与え2枚ドローする。

LV2(赤と黒の合計3マナ)
山札の上4枚をめくり、その中から合計コスト3になるようにDarpf(ダルフ)・Songをプレイする

LV3(赤と黒の合計5マナ)
顕現(アウェイク)》!! このカードをコスト5、攻撃力5/体力5のフォロワーとして場に出す。このフォロワーは《オーバースキル》を持つ。
《オーバースキル》!!:自分の手札を全て捨てて、ライフを1にする。デッキの上を1枚めくり、それがDarpf(ダルフ)・Songなら、そのコスト分このフォロワーの攻撃力を上げる。その後カードを山札の下に戻す。これを3回行なう。

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