TCGアニメの主人公を育てて後方師匠面したい転生系カードゲーマ― 作:衝動のファンチメン
「異世界の案内人ホワイトラビットで攻撃っ!」
「くっ……! また負けた!!」
学校の昼休み。ボクと灰音さんは体育館の裏側でデュエルしていた。灰音さんはあれからというものの、すっかりデュエル・ヒーローズにご執心だ。
ふふっ、なんというカードゲームの主人公力だ。ボクは感動しているよ!
「やっぱりあの日は手加減してたんだね。アンタ、大人しい顔をしておきながら実は腹黒?」
「そんな風じゃないよ。ただ初体験は思い出に残るような、楽しい思い出にしてあげたいだけだよ」
「ふん! その余裕の面、今度こそはがさせてやるから。もう一回やるよ!」
いいね! いいね! 灰音さん、アニメの主人公力高いよ!
負けず嫌いで、果敢に挑戦を仕掛けてくる。しかし、それゆえにプレイイングは分かりやすい。
それに……。
「くっ! また負け……! アタシの何がダメなんだ……?」
「まだ灰音さんは自分のデッキについての理解が浅いよ。そのデッキの肝はどうやってヒーローカードの攻撃で勝ち切るか、だ」
「どういう意味?」
デュエル・ヒーローズのヒーローカードはそれぞれデッキの切り札になるような、強力な効果が備わっている。そもそもデフォルトで召喚酔いをしないしね。
「【
「ん。それは知ってる。けど、アンタにはさっきから上手いこと躱されて、次のターンにやられちゃうんだよね」
「そう。これはただ出せばいいってものじゃない。切り札を最大限強く使うために、他のカードでバックアップをする。メインのボーカルっていうのは他のメンバーがいて、初めて輝くものさ」
「他のメンバー……」
ああ、これだよこれこれ! 今ボク、最大限に師匠をやっている感じがするよ! ついぞ、カードゲームオタク特有の早口解説スタイルが火を噴きそうだぜ!
「それにね! そのデッキは元々ランアンドガンって言って~~」
キーンコーン、カーンコーン。
と語り始めたところで学校のチャイムが鳴る。くそっ! せっかくいいところだったのに!
「まあまた放課後に教えてあげるよ。来るだろ? 今日も」
「とーぜん! 負けっぱなしは癪だから!」
ふふっ、いや~~楽しいな。若くて有望なカードゲーマ―を育てるっていうのはさ! まるで夢みたいだ!
そんなこんなで放課後のデュエルを楽しみにしていたわけなんだけど……。
「カード狩りにあった!?」
「う、うん。デュエルに勝って取り戻せって」
放課後。気弱そうな女子生徒にそう言われる。よりによってなんでボクと灰音さんに言うんだ……?
「あ、あの! もしよかったら私の、ううん。みんなのカードを取り戻してほしいの!」
「なんでそれをアタシに頼むのさ。こっちはともかく、アタシは初心者だよ」
「人のことをこっちって言うのやめてくれる?」
そういや灰音さんに師匠とでも呼ばせてやるべきか。そんな風に考えていると。
「聞いたよ。五色さんは一流のデュエリストって聞くし、灰音さんはそれに勝ったって。だから二人ならもしかしたら取り返してくれるかな……って。ダメ?」
「だ、ダメじゃないけどさ。はあ……。分かったやるよ。アンタもそれでいい?」
「もちろん。実戦回数は鍛える上で大切だからね。さて、相手はどこにいるの?」
「中庭でやってるよ」
ボクと灰音さんは窓から中庭の方を見る。そこでは絶賛、ギャラリーを囲んで生徒達がデュエルをしている。そのギャラリーの中には悔しそうな顔をしていたり、泣いている生徒がちらほらといる。
「よし、行くよっ!」
「随分とやる気じゃないか!」
ボクと灰音さんは駆け足で中庭に向かう。
しかしカード狩りっていう言葉、きょうび販促アニメでも聞かねえ単語だな。販促アニメっぽいんだけど。
「ふははは!! みんな弱いなあ!」
中庭につくと新しい犠牲者もとい、追加の敗北者が現れたようだ。この学校の制服だけど、他の生徒とは少し違う制服を着ている。
この学校の制服は基本的には白を基調としたものだ。しかし、黒色を基調とした制服には別の意味が込められている。
【デュエリスト特進科】――将来有望なデュエリストを生み出すために設立された学科だ。
なるほど。デュエリスト特進科なら普通の生徒くらいなら蹴散らせるだろう。
「さて、次の挑戦者はいないのか!? 誰か僕に勝てる奴はいないのかよ!!」
「ここにいるよッッ!!」
ボクの隣にいた灰音さんが声を上げる。呼ばれた男子生徒は気持ち悪い角度で振り向く。こう、身体を反らせるような。
っていうか、あいつ見たことあるなと思ったらやっぱり。
「おやぁ……? おやおや、そこにいるのは五色さんじゃないかあ。その隣の女は誰だ?」
「アンタ、あいつと知り合いだったの?」
「まあね。あいつは海堂マモル。一時期ボクに突っかかってきたデュエリストっていうところかな」
ボクの実家はこの学校のまあまあ近所だ。当然、カードショップなのだから、時折ここの生徒も利用する。
海堂マモルもその一人だった。過去形なのは大会やフリプで常連やボクにコテンパンにされて、最近は来なくなったから。
「いい機会だ! 僕の新しいデッキでお前の舞姫デッキをコテンパンにしてやる! さあ、次はお前が来い!! 五色メグミ!!」
ふむ、ご指名だからボクがいってあげてもいいんだけど、それじゃ芸がないな。
後方腕組み師匠面をするためにはやはり……!
「いや、ボクではなくて先ずはボクの弟子である灰音さんとやってもらおうか」
「は、はあ!? なんでアタシが!? アンタが指名されてたじゃん!!」
灰音さんの背中を押して前に出させる。灰音さんは驚いているようで、珍しく声を荒げている。
そんな灰音さんにボクは耳打ちする。
「もし勝てたら本気のデッキで相手してあげるよ」
「む……。本当に?」
「師匠に二言はないよ」
「アンタの弟子になったつもりはないけど、じゃあそれで」
灰音さんは納得したようでデッキを取り出す。
よし、これでボクは後方師匠面ができるぞ!!
「まさかここまでコケにされるとは心外だ。君の師匠かなんだか知らないが、この僕が叩き潰してやろう!!」
おお〜〜ブチ切れてるブチ切れてる。そうそうこれだよこれ! こうやって敵からヘイト買われてる感じ!
ここで弟子が負けたらカッコよく登場する。これこそ後方腕組み師匠というやつだ。
もっとも、ボクは自分の弟子である灰音さんが負けるなんて微塵も思っていない。
「いいかい? 相手はかなりの上手だけど、灰音さんなら勝てる。手札全部使うつもりで相手の顔面焼き尽くせ」
「ふぅん。初めてそれっぽい言葉を貰ったかも。俄然やる気が出てきた。カード狩りなんて外道なことをしている奴はアタシが叩き潰してやんよ!!」
「特進科でもない奴がベラベラと!! 僕に勝てるなんて思い上がったこと後悔させてやる! さあ卓につけ!!」
こうして灰音さんと海堂のマッチアップが成立する。
さて、ボクは灰音さんの後ろで腕組みしながら観戦でも洒落込むかな!