TCGアニメの主人公を育てて後方師匠面したい転生系カードゲーマ―   作:衝動のファンチメン

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3ドロー目 主人公が不利デッキに勝つとき、後方師匠面が捗るってわけ

「「ウェイクアップヒーロー!!」」

 

 二人の掛け声でデュエルが開始する。

 

「【Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ】!!」

 

「【深淵の異貌アビサル・クラーケン】!!」

 

 ホログラムで投影されたのはお馴染みのガールズバンド系堕天使のルシエラと、巨大なイカのような怪物であるアビサル・クラーケン。

 

「アタシの先行っ! 先ずは挨拶代わりに取っておきな!! 【ファイアボール】をプレイ!!」

 

 火の玉が海堂へと降り注いでダメージを与える!

 

 先行1ターン目ファイアボールは赤系のデッキ使いにとって、挨拶のようなものだ! 

 

 わずか数日でここまでのコミニュケーション能力を会得しているなんて、なんていう子!!!

 

「まるで自分がバーン使いと言っているかのようなプレイだな。僕のターンっ!!」

 

 海堂の手番が回ってくる。

 

 海堂のデッキはわかる。海堂のデッキはある意味じゃ、灰音さんの天敵だ。

 

「僕はマナゾーンに青のマナを置いてそのままターンエンドだ」

 

「何もしないんだ。舐めているの?」

 

「くくっ、そうだなぁ。凄く舐めているんだよ」

 

 ぶちぃ! と灰音さんから何かブチ切れたかのような音がした。

 

「じゃあ後悔するんだねっ! アタシのターン!!」

 

 さて、このターンからだ。海堂の嫌らしいところは。

 

「そのまま燃やしてやるよ! 【大炎波】をプレイ!!」

 

 次は巨大な炎の波が襲いかかる。その炎の波を前にして、海堂はニヤリと口角を上げた。

 

「僕は【深淵呪文】をプレイする! 僕は手札を一枚捨てて、大炎波の発動を無効化する!!」

 

「なにっ!?」

 

 クラーケンが大波を呼び起こして、大炎波をかき消す。

 

 これが海堂のデッキ。

 

「さらにアビサル・クラーケンのヒーロースキルが発動する! クラーケンの触手が場に呼び出される!」

 

 ちぎれたクラーケンの触手が、自らの意志を持ったかのようにうねり、フォロワーへと変化する。いつ見てもキッモ~~~~! 本当にいい趣味していると思うわ!

 

「続いて僕のターン! 僕は【深海の神殿】を発動する!!」

 

 ゴゴゴゴという音を立てて、海堂側に巨大な神殿が形成される。

 

「随分と派手だね。見掛け倒しじゃないといいけど」

 

「ははっ! そんな強がり言えるのも今のうちだ! 特別にこれの効果を教えてやろう! これは建造カードといって場に存在する限り効果を発動するものだ! その効果は僕の深海フォロワーは呪文の対象にならないというものだ!」

 

「……なるほどね」

 

 海堂が灰音さんの天敵たる所以。それはバーン系の呪文が効きにくいというところだ。

 

 灰音さんのデッキタイプ上、どうしてもデッキの中身はバーン系の呪文が多く搭載される。本来ならそれらを駆使して、敵のフォロワーや相手プレイヤーにダメージを与えて、ゲームを進めていく。

 

 海堂のデッキはその強みを打ち消してしまう。自分へのバーンは先ほどのように無効化し、自分へのフォロワーへのバーンはそもそも使えなくさせてしまう。

 

 それを解決する手段がそのデッキに入っているんだけど、灰音さんがそれに辿り着けるかは運と彼女次第だろう。

 

「さらにアビサル・クラーケンの効果を発動! クラーケンの触手をさらに増やす! クラーケンの触手で攻撃!!」

 

 クラーケンの触手がルシエラと灰音さんに襲い掛かる。しょ、触手プレイ!!! なるほど、己の癖により拍車をかけてきたね。中々いい趣味しているじゃんか!

 

「うわっ! キモ!!!! 何これ!?」

 

「さあどうにかしないと触手達に蹂躙されるだけだぞ! 僕はこれでターンエンド!!」

 

「くっ……! 絶対に許さない! アタシのターン!!」

 

 悔しそうな顔をするが、それで戦況が変わることはない。数ターンに及ぶ攻防が繰り広げられるが、灰音さんが不利なままだ。どんどんと海堂が有利になっていく。

 

 ボクはただそれを静観していた。ここで手や口出ししては師匠とは言えないだろう。弟子のことを信じて待つ。そのためには少しでも信頼性と余裕を見せつけなくてはならない。

 

 ボクは腕組みをしたまま不動!!! これで海堂に圧をかける!!!

 

 いや、マジで負けないでくれ灰音さん。ボクは灰音さんのことを信じているから。

 

「な、なんだ……!? 五色メグミのあの余裕は!? まだ何か秘策があるというのか!?」

 

「アンタ、こんな状況でも……」

 

 ボクのことに気付いた二人がそれぞれ別の反応を示す。

 

 次の瞬間、灰音さんから熱い闘志を感じた。

 

「そうだよね。ここで諦めてたまるかっての! カード狩りするような人間にアタシが負けるわけには行かないんだよ! アタシのターン!!!」

 

 信じればデッキが応えてくれる。そんなロマンチストなことを言うつもりはない。

 

 ただ、灰音さんは気付いているはずだ。ボクが教えたそのデッキの勝ち筋。灰音さんは数ターンかけて、少しずつその準備をしてきたはずだ。

 

「アタシはコストを支払い、自分のヒーローを呼び出す!」

 

「へえ……! 散々触手に身体をいじられたその惨めなヒーローで何をするつもりなんだ?」

 

「うっさい! 絶対に後悔させてやるから! アタシの歌声に神すら堕ちる! 顕現(アウェイク)【Darpf(ダルフ)ボーカル・ルシエラ】!!!」

 

 き、き、きたーー!! 灰音さんの切り札、ルシエラ!! ルシエラがギターソロの激しい音楽を奏でている! まるで勝利BGMかのようだ!!

 

「アタシは【Darpf(ダルフ)・スカウト】をプレイ! このカードはルシエラがフォロワーになっている時に使える! デッキからルシエラの仲間を呼び出す!」

 

「なにぃ!? そんな強力な効果は見逃せんな! 【深淵呪文】でそれを無効化して」

 

「ガールズバンドの勧誘に割って入ろうなんて、無粋な真似はさせないよ! この呪文カードはルシエラが場に出たターン中は無効化されない!!」

 

「な、なんだとぉ!? そんなインチキな効果があるのか!?」

 

 細い勝ち筋! それを見つけたか!!!

 

 さて、ここからどう畳みかける!?

 

「アタシは呼び出すのは熱いビートを奏でるドラム! 神すら戦慄する旋律を轟かせろ! 【Darpf(ダルフ)ドラム・ウル】!!!」

 

 オレンジ髪のパンクに制服の魔改造した堕天使が現れる。彼女は禍々しさすら感じるドラムを勢いよく叩く!

 

「ウルの効果! これが呪文カードの効果によって出た時、相手のフォロワー全てにダメージを与える!!」

 

「な、なにぃ!?」

 

「対象をとらない全体ダメージ! これなら相手の触手も破壊できる……! やるね灰音さん!」

 

 クラーケンの触手は効果で選べないだけ。しかしウルの前ではそんなの関係ない。

 

 全体に等しくダメージを与える。正しく激しいドラム!!

 

 このダメージにより、相手のフォロワー全滅!!!

 

「そ、そんな……! 僕のフォロワー達が!」

 

「まだまだ終わらない! ウルのもう一つの効果! ウルはデッキの上5枚をみて、好きな順で置き換えることができる!!」

 

 灰音さんは5枚のカードをめくり、ニヤリと微笑む。そしてその後、5枚のカードを山札の上に置き直した。

 

「Darpf(ダルフ)オンステージ! オーバースキル発動!!」

 

 ルシエラのオーバースキル! 正しく必殺の一撃!

 

「アタシは山札の上をめくって、それが【Darpf(ダルフ)・Song】なら、ルシエラを強化する!!」

 

「ふ、ふん! それでも僕のライフには余裕がある! お前の攻撃を耐え切って、次のターンになぶり殺してやる!!」

 

「さっき、アタシが山札の上をいじったこと忘れたのか? アタシの山札の上3枚は全て【Darpf(ダルフ)・Song】だ!!」

 

 ルシエラが全身にオーラを纏う。ルシエラが拳を強く握りしめて、光芒のように天を舞う!!!

 

「ルシエラで相手に攻撃ッッ!!! ぶっ倒れろ!!!!」

 

「そんな……馬鹿な……!! こ、この僕が初心者なんかに!!!」

 

 この刹那、僕は直感した。

 

 ここが後方師匠面する最大のチャンスだ!!

 

「海堂、君の敗因はただ一つ。ボクの弟子と戦ったことだ。思う存分、この結果を受け入れるといい」

 

「ば、ば、バカなアアアアア!!! ぐぺっ!?」

 

 海堂が大きく吹き飛ばされてホログラムが消滅する。灰音さんは倒れた海堂へ向けてこう言った。

 

「さあ、みんなから奪ったカード返してもらうよ!!」

 

 こうして今回のカード狩り事件は終息を迎えるのであった。

 

 そして……。

 

「本当にやる気? さっき結構熱めのデュエルやったばっかでしょ」

 

「だからこそだよ。今の熱いうちにアンタのメインデッキと戦いたい」

 

 ボクの実家もといカードショップにて。

 

 灰音さんはやる気満々といった感じでそう言う。

 

「まあいいよ。だけどボクをがっかりさせないでね」

 

 ボクは深呼吸を一度挟む。

 

 全神経を右手に宿らせる。

 

「あまり早く終わると消化不良になっちゃうから」

 

 ボクは前世から使い倒したヒーローカードを場に置くのであった。

 

 

 

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