シリカに覚悟ガンギマリ(後天的)幼馴染がいた話 作:五月雨と狐
はじまりの町の広場。そこから外れた狭い道を、泣き疲れてしまったシリカを背負いとぼとぼと行く宛もなく歩いていた。すでに空は赤く染まり、若干夜がこんばんわしている。
正式サービス開催の宣言の後、シリカは泣き続け....おそらく1時間経っているか、というくらいに疲れてしまったのか、崩れるように寝てしまった。混乱の続く広場に置いておくわけにはいかないので背負って人の少ないところに、できるなら宿屋にと思って動き出したわけなんだけど。
「どこだ、ここ....」
俺はすっかり迷子になってしまった。それもそうなのかもしれない、知識も何もない俺が、マップも見ずに―――両手はシリカを抱えるので手がいっぱい―――ここまできた。必然というか当然というかの結末である。
「くそ...英語が読めたらなぁ」
何も出来ない...宿屋すら見つけられない自分に腹が立つ。守ると決めたはずなのに、こんなこともできない。マップを見てもメニューを見ても英語ばっかり。見てもどうにもならないが、せめて英会話とかに行っていれば良かったと後悔する。
そう思った時から背中に背負った幼馴染の重みが強くのしかかる。...決して体重が重いというわけではない。小柄だし軽い方だ、多分。
「...しょうがない。一度広場に戻って落ち着いている人を探そう。せめて一部屋、シリカが泊まる部屋さえ確保できれば...」
最悪俺はシリカの泊まる部屋の入口の扉、そこに寄りかかって寝れば良い。情けないが俺はソードアート・オンラインみたいなゲームは初めてだ。
どんな危険があるかも分からないから、どんなことにも備えよう...なんて思いながら来た道を広場まで辿っていると。
「...にゃはは..なんでこんなことに..」
来たときにはいなかったフードを被った...女の人?が道端に壁を背もたれにして座っていた。顔が膝に押し付けていて分かんないけど声が女の人だった。
とても疲れたような、悲しんでいるような、我慢しているような...そんな声で笑っている。きっと顔は笑っていないだろうなと思う...どうしたほうが良いのか。
広場にも、こういう人はたくさんいた。叫ぶ人だっていたし周りの人に怒ってる人もいた...俺はそういう人たちの近くにシリカを置いていけないと思った、だから背負ってここまで来たのだ。
でも俺は今、そんな人たちに宿屋の場所を聞きに行こうとしてる。だったら、あの女の人に聞くべきではないだろうか。わざわざ沢山の人がいてうるさい場所に寝ているシリカを連れていきたくはない。でも、あの女の人にだって自分の都合があるはずだ。無理に助けを求めるのはなにか違うような気もする。でも俺はシリカを―――。
「...なに見てるのサ」
「っす、すいません」
どうやら見ていたことに気づいていたらしい。フードで見えなかった顔を少しだけ上げ、薄い茶色の瞳がこちらを見ている。疑いと警戒がたくさん含まれていたその目は...徐々に驚きだけになっていった。なんで?
「...ごめんナ。おネーサン少し気が立ってたヨ。子供に強く当たるなんテ酷いことしたネ」
あぁ...そういうこと。
「いえ、気にしないでください。こんなことになっちゃったんですから少しくらいそうなってもおかしくないです」
こうして謝ってくれているだけきっと他の人より冷静で優しい人なんだろう。あまり気にしないでほしい、俺もシリカがいなかったら確実に貴方よりも荒んでいたと思うから。
「ふふ...そうカ。やさしーナお前は。....それでさっきから背中に女のコ背負ってナニしてるんだ?こんな状況でお散歩ってわけにもいけないダロ?」
「......情けないんですけど、宿屋の場所がわからなくて」
「ハ?そんナのマップ見たら直ぐに出てきて....って、ア。そういうことカ?もしかして英語読めなかったりするノカ?」
「...そうです」
なんというか本当に情けない限りだ。初対面の女の人にこんなことまで言ってしまうのは。俺の言葉を聞いた女の人...俺より大分年をとっているだろうからお姉さんか?ともかくその人はどこか感心したように言葉を漏らした。
「ハハァ...そういうプレイヤーもいるノカ。もとがそういうゲームだからてっきり英語は全員できるとばかり...アレ?年齢制限あったヨナ?」
「...お父さんもお母さんも良いって言ったし、プレイしてもいいかなって」
なんの言い訳もできない。年齢制限自体は知っていたけどこうなるとは思ってなかった。...本当に、それを理由にプレイをしないことを選ぶべきだった。
「にゃはは、悪い子ダナ。まぁ、おネーサンもお前くらいの年だったらルールは破りたくなるサ..ん、よっと」
お姉さんはそう言って、立ち上がった。隠れていた顔が見えるようになりその顔には両頬に三本の線?なんかの髭みたいなものをつけていて、疲れたような顔をしているけど笑顔を浮かべていた。
「お前のことばっか聞いて悪かったヨ...でも話してたら元気出たゾ、ありがとナ」
良かった、どうやら元気になったらしい。特に俺が何をしたというわけではないけど誰かと話すだけで楽になるのであれば時間を使った甲斐があるってものだ。
「いや、いいんですよ。では、俺はコレで。お姉さんも気をつけてくださいね」
少し落ちていたシリカを再度背負い直す。そうこうしているうちにもう暗くなり始めている...宿屋を見つけないと。そう思いその場を離れようとしたのだが。
「イヤイヤイヤちょと待てヨ。普通おネーサンに聞くだロ?何去ろうとしてんダ?」
ガシッと...いや、シリカが寝ていることに気を使ってくれたのかポンッと肩を抑えられた。見ると、え?みたいな顔をしてお姉さんがこちらを凝視していた。
「え?だってさっきまで落ち込んでた人に聞くのもアレかなって思いまして。俺だって知りたいことはありますけど。なんというか...その、初対面はともかく話してた相手にそこまで無神経にはなれないかなって」
「...なんというか損な生き方してんナ。こんなコトになっちゃったんだから、もう少しくらい自分の利を考えたほうが良いゾ?」
若干呆れられているような気がする。言葉では言われてないけど、なんとなく察した。珪子もこういうことをしてくるタイプだからだ。
「んー。……なんというか、これでいいって思えなくなる気がするんです。決めたことは曲げたくないし、曲げた瞬間。多分俺は駄目になるんで」
俺はシリカを現実に戻すためならなんだってする。それが正しいことだと、俺のやってしまったことを償う唯一の方法だと思うから。でも、きっと。珪子はそういうのを嫌う。
俺は珪子に否定されることを、珪子自身の命の危険が迫るまでやるつもりはない。幼馴染に、せめて俺がこれかすることは正しいと胸を張っていたいのだ。
「...なるほどナ。でも、背中の女のコのためだから聞いといたほうがイイとおネーサン思うんだけどナー」
なんか大きな独り言みたいな調子で突然喋りだした。どうしたんですか急に。
「おネーサンはーさっき一方的に聞いちゃっカラ今ならタダで何でも教えるのにナー。本当に知りたい範囲のことなら多分なんでも答えられるのにナー?」
ジロジロとこちらを見てくる。それはもうジロジロと。というか二人...シリカもいれたら三人しかいないのになぜそんな調子で。
「宿屋の場所とカー、人が少なめの激イケスポットとかー、マップにも書いてないことを教えられるゾー?」
どんどん声が大きくなっていっている。
「...ん..」
シリカが背中でモゾモゾと動いた。こんな体勢なんだ、寝にくい事この上ないのにこのボリューム。シリカが起きてしまう。
「武器でモーなんでモー教えるのにナー。おすすめクエストとカー美味しいクリームとカー」
「わかった、わかりましたよ...!宿、宿屋、人が少ない宿屋を教えてください。なので、声の大きさ、少し考えてください...!」
もちろん小声で、それでもあふれる焦りを隠せなかった。勢いをそのままお姉さんに近づき頼み込む。シリカ寝させておきたいんで、もう少し静かにしてください。
「にゃはは、ソウソウ。そうやって頼っテいいーんだヨ、まだ子供なんだからネ」
何がおかしいのか、面白そうに笑うお姉さん。その茶色い目はとても優しいものだった。つい、それに毒気を抜かれてしまう。
「お前、名前は?あ、プレイヤーネームの方ネ」
念を押してくるあたり、俺が本名を言うと思っていたのか。
「はるh...クル、です」
正解だ。言われなかったら本名を言っていた。
「ホウホウ...そいじゃクルはオイラの初めてのお客さんだナー」
お客さん?そう疑問に思ったのだが、お姉さんはそんな俺を放っぽいって盛大に自己紹介を始めた
「オイラはアルゴ。情報とかナントカを取り扱って生きていこうって今し方決めた情報屋ダ。...それで、おネーサンの初仕事はオススメの宿屋の紹介で合ってるカナ?」
「...できれば人が少ないってのも付け加えてください」
もう何でもいい、シリカを寝かせられるなら、と。半ばヤケクソだと、俺は思った。
プログレッシブか無印………どっちがいい?
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そりゃオマエ無印だろ
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いいやプログレッシブだね
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いいとこ取りじゃね?
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シリカ出すなら何処でも