テンプレおじさんVS異世界美少女たち〜決死の忖度サバイバル!〜 作:鷹井オムニバス
「(海賊団と船団の癒着の証拠を見つけたわ。その際に海の種族からの『お願い』をされてしまったから、申し訳ないのだけれど……。詳細を詰めるために交渉に行かないといけないの……)」
「(……流石リーシャ。でも、もしかしてそれって……)」
「(…………お願いね)」
人魚姫が度々現れるという噂が流れる港町。俺はそこでピンときた。
——これ、俺のヒロインじゃね?
そこからは早かった。船を用意して俺のハーレムである人魚姫を救いに行くことを伝えると、珍しく渋るリーシャとノーリィを説得していた所、ぼーっとしてばかりのクゥも加勢してくれたからな。
「(クゥが気づいてくれて助かった……。洗脳能力の推測が当たるなんてね。子供みたいにゴネるこの男の危険性を、最近甘く見すぎていたかも)」
くっそボロい船に乗船した所、いきなり海賊団に囲まれるとは災難だったが……流石俺、運命に愛されてるぜ!
「(まさか本当に海の種族が近海の海賊程度に捕まってるなんて。しかもこっそり接触したらスリルが欲しくて遊んでるとか言ってたし勘弁して……)」
このボロい船を借りるのにリーシャが駆け回る理由がわからねぇが、まぁいい。ノーリィとクゥが俺の勇姿を見届けて、しっかり伝えるだろ。
「ゴッドさまー、あの船団全てが海賊王べジャンキーの手下ですー。船団全てを打ち倒さなければ、人魚姫たちが捕らえられた本船がでてきませんー(遊びで捕まってる海の種族しかいないけど)」
「マジ許せねぇなべジャンキー……! ちょっと待ってろ!俺が神の裁きで無双してきてやる!」
ここだ……! 俺は船頭に経ってできる限り決め顔を作りながら必殺技を放つ。
「ゴッドォォォ!!! タイフゥゥゥゥゥ……!ンンンン!」
「ブフッ(変顔と変なポーズやめて……。とりあえず、ゴーレムをクゥっぽい口調で褒めさせよう)」
「…………無双。最強、強い、かみー」
おお……! 日頃『……ん』とか『……うん』とかしか言わなかったクゥが……! 俺のことを称えているだと!
「クゥ! お前が初めて俺を称えたその声援に応えてやろう……!」
「え(もしかしてクゥ、一度も称賛したことなかった……?)」
遠くに逃げていく海賊どもを見据えて心を落ち着かせる。体の中心から流れ出るエネルギーに集中し、それを喉に貼り付かせ、そして——
「——ゴッドォォォォォォ!! タイフゥゥゥゥゥンンン! 2連射! フゥゥゥゥゥゥゥウンンンんん!!!」
「…………ッ(なに、これ?)」
あまりの凄さからか、ノーリィとクゥが双方景色に魅入ってしまっている。
そう、この必殺技はゴッドタイフーンを2連射もできるようになった、ゴッドタイフーンの進化系である。
「ガハハハ!!!」
遠くに逃げていた船団までタイフーンが届き、半壊して沈んでいく。
やがて俺が殲滅した海賊船の奥から、巨大なガレオン船のようなものが現れて、いよいよ海賊船の親玉が乗り出してきたのがわかった。
今行くぞ、人魚姫! 俺のヒロインよ……。
「……かっこいい。いけめん。さいきょー」
「クゥ、声援はいいんだが、もうちょっと抑揚がほしいぜ……!」
とはいえ、それもクゥの個性か。
固定メンバーのデレと、新規メンバーの補充。胸が高鳴るな〜!
「(棒読みすぎたか……。リーシャ早く帰ってきて……)」
◇◇◇◇◇
「俺はブラダ船団の——」
「私はアマンディ船団——」
「オメェなんだってんだ——」
「邪魔だ邪魔だ邪魔だぁぁぁぁ! 人魚姫を出さねぇと殺すぞ!!」
「(もう殺してるし、そもそもそれ強盗……)」
なんかやたらとべジャンキー海賊団の部下たちは自分の名前を冠した海賊団を名乗っていたな。
「な、何だね君! 私は——」
「私を殺せば侯爵が——」
豪奢な船を探索してる時、やたらブクブク太った貴族みたいな海賊がいたが、どうせ奴らも俺みたいな高貴な人間の格好をしたいだけのコスプレ海賊だろうな。
「(はぁ。こいつが暴れる前に交渉とか殺人教唆なんかの証拠提出間に合ってよかった。後少し遅ければ流石にヤバかったかも……)」
やがて見るからに何か囚われてそうな部屋の前にきた。
「おおーい! 人魚姫はいるか? 迎えに来たぞ! ハーレム!」
「ブフッ(な、なに? いきなりハーレムって……)」
ドアが開かないので、無理やり開けようとした所、横からノーリィが解錠した。
なるほど。さっきの海賊から鍵を回収してたのか。気が利くな〜。
そうして中を見ると、広い水槽の中に下半身だけを浸らせた、人魚姫がいた。
その人魚は、エラのようなものを頬から生やしていた。軽く身震いをして水のような髪色を震わせると、下半身が光り輝き、やがて人間の下半身になった。
おお、俺のハーレムになるために、人化の術を身につけていたとは。
「ハーレム〜! 出迎えごくろー、一緒に脱出しましょ〜」
「おお! やはり人魚か! 俺のハーレムになるべく、いつでも準備万端にしていたとは!」
「あはは、ハーレム、ハーレムー(名前も交わす前から所有物扱い、海賊たち以上におもろいなー)」
◇◇◇◇◇
その後船を乗っ取って操縦をノーリィに任せると、俺は甲板に出て新メンバーであるヴァイナと交流を深めていたのだが……。
「なぁ、ヴァイナは処女か?」
——瞬間、辺り一面が雲に覆われて雨が降り始めた。
「はい? 流石にデリカシーなさすぎて気持ちわるーー。いっぺん死んだら?」
ヴァイナが何か言っていたような気がしたが、それどころではない。
水に濡れてヴァイナとの初交流がずぶ濡れで終わるのは嫌だと思い、船に戻った。
ふう。それにしても、処女か聞いた瞬間、瞑っていた目が開いてびっくりしたな。
これはあれか。やはりあらあら系お姉さん枠ということか。
ラノベやアニメだといいもんだと思っていたが、リアルだと少し面倒くさいな。
まぁでもめちゃくちゃ美人だし、ハーレムにはいれてやろう。
あの照れ隠しの開眼はおそらく、処女確定だろう。やはりこれは恋の駆け引きってやつか。
ヴァイナに関してはリーシャたちの後でいいや。面倒くさそうだし。
◇◇◇◇◇
「(はぁ……。いきなり怒らせるなんて、想定可能だったけど、回避不可能だった。海の種族はこの男の力なんて意にも介さないだろうし、そもそもこの人魚、ただの野次馬だからなぁ)」
突然の大雨に驚いたノーリィが船を停止させて確認に来た。少しばかりヴァイナと交流してただけだと言ったら納得していたが。その後、ニコニコ笑顔のヴァイナと、少し足取りが重いノーリィがやってきた。
「ノーリィ、足取りが重いぞ、生理か?」
ヴァイナがなぜか笑いながらノーリィの肩を叩いた。
「(子供すぎなーい?)」
「(まぁ、そう。気にしないようにしてる……)」
おそらく人魚には生理がないからからかってるんだろうな。
「まぁ、あれだ。俺は生理なんてないから分からんが、頑張れよ! 俺のために」
「……(生理じゃなくてただの心労だけど……流石にイライラした)」
「……(あー、私に言ってきたらえいってしちゃおうかな)」
俺の言葉や優しさを感じ取って感無量になったのか、ノーリィどころかヴァイナまでも無言になった。
やれやれ、気遣いの天才だな俺は……。
その後、天候が安定したの確認し、ノーリィが出発前に俺の旅の目的であるアイテムを渡してきた。
「神ゴッド様ー、しずくを見つけましたー」
そのしずくは、盗賊王カンダタを倒した時と同じ形をしていた。
うーん、コレクションとして、地味すぎる。
持っとくのだるいな。預けとこう。
「これ、全部持っておいてくれ。全部集めたら俺が使うから」
「え……はい!(……よし。これで使う際にこの男から回収する手間が省ける)」
どこか喜色を浮かべて俺が渡したしずくを受け取るノーリィ。
俺のアイテムならどんなものでも受け取りたいってことか。
やれやれ、俺もとことん罪な男だな……。
ついでだ。新ハーレムメンバーのヴァイナに、俺の気遣いを見せてやるか。
「ヴァイナ」
「んーー?」
できるだけ決め顔を意識し、出来るだけ配慮の出来る男の目線を意識して、さりげなく下腹部を見る。
「人魚って、生理はあるのか? あるならどういう風なんだ?」
「は?」
そこからの記憶は、よく覚えていない。
◇◇◇◇◇
「うっ!!!」
痛ってぇぇぇぇぇ!!
腹が痛い!痛い!痛いィィィィィ!!!!
「破れる……!痛い!痛すぎる……!」
下腹部の辺りが殴られたように痛んでキツい……!
なんだこの痛みは……!
「や、やめてくれぇ……!痛いんだぁぁぁ!」
ゴスッ、ゴスッ。そんな音が聞こえるような痛み。キツすぎて立ってられない。というかここはどこなんだ……。
あれ、ここは海の中……?
突然、俺の下から謎の引力が発生し、引きずり込まれていく。
『お前に深海の痛みを与えよう』
「やめてくれぇ……! 深海に俺を引きずりこまないでくれ……!」
その後俺は深海の奥深くで二度と浮き上がろうとは思わなかった。
そうだ……、世界は、深海に……。
◇◇◇◇◇
「(ヴァイナ、何したの……?)」
「(んー?生理生理うるさいからー、味合わせてみた。あとはー、深海の引力も一緒にね)」
「(流石に顔面蒼白すぎるから、後は私に任せて)」
「(んふふ、ごめんなさーい)」
【あとがき】
べジャンキー海賊団以外の蹂躙された敵は全員、べジャンキー海賊団以上の悪人たちです。
神ゴッドはこのあとハーレムの夢を見させて無事復活しました。
なぜかこの後、生理の話はしなくなった謎。