テンプレおじさんVS異世界美少女たち〜決死の忖度サバイバル!〜 作:鷹井オムニバス
「なんだよ、それ。俺がどれだけお前たちの相手をしてやってたと思ってる!? お前たちに費やした時間、愛情、お金。どれだけ費やしたと思ってるんだ……!」
「「「「(お前が言うな)」」」」
おかしい。おかしすぎるぞ。
こいつらが裏切っていたにしても、余りにも中途半端すぎる……!
「もうこやつの妄言に付き合って、当初のお前たちの予定通りに事を進めることは不可能だ。そもそも空賊王などと……。ノーリィ貴様、適当に吹かしすぎじゃ」
「……それはごめん」
「……準備ができておるならさっさと済ませようではないか」
尊大な態度で椅子に腰掛けながら、ミディルが脚を組み直し何かを話している。
それに同調するように、後ろに立って話を聞いていたアムレアスも声を上げた。
「あー、俺がミスったのが悪いんだが……。まぁ俺も同意見だ。正直お前らも色々限界だろうし、やろうぜ」
「…………(もう、私頑張ったわよね……。ブレイドなら、きっと何もかも解決してくれる……)」
「…………(…………いつ暴発するかもわからなくなったし、やるしかないか)」
「…………ん(やっと、会える……)」
リーシャたちが俺に敵を見る目でこちらを睨みつけてきただと……!?!?
うおおおおあああ……!!
この場で味方はクゥだけだ! ただ悠然と黙って目を瞑っている。
俺のために我慢しているんだな……!
心の中で、なぜか勇者の力の源泉から流れるエネルギーが溢れ出し、次々と勢いが増して黒く蠢めくような衝動が身体に満ちていくのを感じる。
まさに、怒りに燃えた正義の心による覚醒だ……!
そうだ。天誅のための力だ……!
「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!! 俺をコケにしやがって!!」
なにが妄言だよ……! 俺にも許せることと許せないことがある……!!
なにが限界だよ! 結局異世界に来ても、察してちゃん構ってちゃん精神が蔓延ってたのかよ!
「お前ら俺のことを騙していたのか! クゥ! こんな奴らはさっさと殺して俺やデメリと、たくさんの各地にいるハーレムメンバーたちをひろってさぁ!! 面白おかしく生きていこうぜ……!」
クゥに声をかけた瞬間、目を合わせたクゥの瞳は凄絶だった。
まるで汚らしいゴミをみるような目で、一切逸らさずに口を開く。
「……無理。お前、ずっと嫌い。ブレイド殺そうとした」
「……そもそも、その各地のハーレムは商売女だろ」
「アムレアス貴女……!(あの男の鎖がなくなってしまう……!ブレイドぉぉ……)」
「……あ、まじすまん」
「……まずい。魔神の力が増幅してきてる……」
は? 嘘だろ……。俺の、俺の心の支えはデメリだけかよ……!ふざけるなよ……!
指輪いらねぇ! おらっ! 中々ハズレねぇ!
「こんなもんいらねぇよ……!」
——指輪を壁に投げつけ、近くのソファを見るとデメリがいた。
「うあああああ!!!デメリぃぃい!!!お胸にフガフガぁぁぁ!!むむむむつうううううう??!!」
彼女は俺を抱きしめながらよしよししてくれた。
そうだ。俺にはデメリがいる。
『よしよし、もう大丈夫だからね〜。』
「……増幅していた魔神の力が、ソファのクッションに頬ずりを始めてから、急に鎮まりだした……(この男……まさか)」
「「「「う、うわぁ……」」」」
デメリは優しいなぁ。それに比べて、コイツラはなんなんだ。俺が神レベルの優しさを与えてやったのにないがしろにしやがってからに……。
「ほれ、もうコヤツがいつ正気に戻るかもわからん。さっさとやるぞ」
「俺はここに力を込めればいいのか?」
「…………そうなるわ。ドラゴン族の生命力なら精々一割未満の寿命を吸われるだけ。貴女が被害を出した里への償いはこれでおしまい」
「わかった」
なぜかデメリがどんどん増えていく。まさにデメリハーレムだ……。
『『『『『よしよし、がんばったねぇ〜』』』』』
「……しずくの準備できた。……やろう」
「では、始めるか」
【許されざる咎人の罪を償わんとし、罪人の業を集め——贖罪のしずくをここに捧げる】
辺り一面のたくさんのデメリたちが輝きだしていて、まるで聖母の美しさだ。
彼女こそが一にして全。俺の運命のハーレムヒロインだったのか……。
【我は現世と異界の境界に立つ者。ミディル・ローデリンデの名において、ブレイド・サースルを永劫の罪人庭園から招来する】
ほわぁ?なに?デメリ?おむねぽかぽか。デメリ、デメリ、デメリぃ。
『大丈夫だからね。わたしは〜、太郎の良いところ何でも知ってるよ。もう35年も一緒にいるんだもん。』
そうだった。デメリとおれはうまれた時から幼馴染だった……。
なんで忘れてたんだろう……。
「帰ってきて!ブレイド!」
——その瞬間、禍々しい黒と紫のコントラストで彩られた髑髏の意匠の門が出現する。
「痛ってええぇぇ……!」
その門を見た瞬間、強烈な痛みが脳を締め付け、いつの間にかデメリがいなくなっていた。
『アァアアァア……』
『オレモ……オレモ……』
『ワタシガ……』
一斉にうめき声が聞こえ、門の奥から俺のほうに手を伸ばしているように見える。
「しまった……。自分たちより罪深い存在を感じとった亡者たちが出てこようとしておる! 長く開けておくことはできん……!」
「ブレイド!」
「戻ってきてブレイド……!」
「……!」
耳障りな声が耳に入り、俺は不快な事実を思い出す。
……は? ブレイド? 俺の名前は伊喜利太郎だぞ……?
もう面倒だな。全部ぶっ壊してデメリと一緒に旅に出よう。
「オラァ……!?」
「おっと、邪魔はさせないぜ。……あんたはなんも鍛えてねぇから、関節を押さえたら動きが封じられることがわかったのは収穫だったわ」
アムレアスが俺の邪魔をしてくる。
「くそ!モブハーレムメンバーのくせして生意気だぞ!」
「くっそ……!こいつ馬鹿だろ……!関節を壊しながら暴れてやがる……!……くっ!」
なぜかアムレアスの拘束が緩んだ隙に、声をかけ続ける三人やミディルの隙を突いて、一気に駆け寄る!
「俺が勇者だ! こんなもん、ぶっ壊してやる……!」
「おいドラゴン! 逃げられておるぞ……! しっかりせんか! というかお前らもじゃ! 男の名前を叫ぶのではなく、やるべきことをしろ!」
「わ、わりぃ!」
「「ごめんなさい……」」
変な名前を呼ぶリーシャたちが黙った。そうだ。それでいい。
「ごめん……。■■■■■■■■【地縛り】」
門を思い切り頭で頭突いた直後、突然地面に吸い付く様に身体が動かなくなり、再びアムレアスに捕まる。
「離せよ! 俺はハーレムを守るために、あの門を壊さなくてはならない! あの門によってリーシャたちは洗脳されかけている……! デメリまで洗脳されてしまっては俺は勇者失格になる! それだけはできねぇ……!」
「意味わかんねえ……!洗脳してたのはどっちだよ……!初対面の時、へんなオーラ出して洗脳してたらしいじゃねぇか!」
「それはブレイドとかいう悪漢に洗脳された女たちの妄言だ! そうだ……!あのクソ男が遠隔でノーリィを不自然にむせさせて、お前たちの意思を無視して指輪をはめて認識改変をし、なおかつこれまでの旅の不自然な点は、全部遠くからあの洗脳野郎がにちゃにちゃ笑いながら俺たちを貶めるために仕組んだ罠だったんだ……!!! 正気にもどれ……!!」
「お前が正気になれ」
アァぁぁぁ!! 洗脳を解くにはどうすればいいんだ!
——君に悪漢呼ばわりされるのは、心外だな
俺が洗脳されたリーシャたちの対処法を考えていると、門が輝きを帯びて、声を響かせる。
そこからゆっくりと人影が出てくる。どう考えても邪悪な存在。邪魔したいのに動けねぇ……。
門から現れたそいつは、身体を淡く光る深緑の鎧で全身を覆っていて、その腕には長い黒髪に簡素な服を着たロリが横抱きされていた——