テンプレおじさんVS異世界美少女たち〜決死の忖度サバイバル!〜   作:鷹井オムニバス

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後日談② 賠償問題

 

 なんと神神は、城の入り口にあるエントランスを問答無用で壊していたらしい。

 そこに飾っていた美術品ごと、色々と破壊されてしまったようだ。

 

「だいたい、タイミングが悪すぎるのだ。なぜわしが丁度メンテナンスのために防護魔法を解除していた時に襲撃してくるのじゃ」

「……申し訳ございません」

 

 リーシャが言うには天空城へ到着する前、訪問理由を聞くためにミディルが飛ばしていたガーゴイルを、全て神神が撃ち落としてしまったのだという。

 その増援が来なくなった瞬間、唐突に『ゴッドタイフーン』という技を前触れもなく放った被害というわけだ。

 

「…………天下の古代吸血鬼様が、自分の城に防護魔法かけ忘れてたのが悪い」

「ちょ、ちょっとノーリィ……!」

 

 ミディルとの因縁は分かるが、少しばかり私怨に偏りすぎているな。

 

「……え?……あっ」

 

 俺の横に座るノーリィの肩に手を回して軽く引き寄せ、鎮める。

 

「すまない。ノーリィは貴女が寛容だからこそ甘えているんだ。彼のやったこと、彼女たちの判断で起こった事故。それらの補填は、必ず果たそう」

「……ふん、まぁよかろう。テティルティ様の寵愛も得ているようだし、もはや貴様は我が義弟しゃ。その義弟の面倒を見る甲斐性程度はあるからの」

「は?」

「え?」

 

 ……ん?また既視感のある流れだ。

 俺の膝の上で甘えていたクゥが顔を上げた。

 

「……あの雌と血の繋がりがあるの?」

「ああ。我が一族の祖先、ブラウドラグル卿に連なるお方じゃ。ローデリンデの末席であるわしからすれば雲の上の御方。じゃからお前たちが心配するような恋だの愛だのではない」

 

 その言葉を聞いたリーシャたちは見るからにホッとしていた。

 まぁ分かってはいたが、ずっとノーリィのライバル視に釣られて交流が少なかったミディルにそんな事を言われると少しばかり照れくさいな。

 

「お前たちの状況は先程記憶共有で知ったが、そもそもお主たちに金銭的に払える余裕などないじゃろ」

「「うっ……」」

 

 もしや……。

 いざとなれば俺たちの冒険で貯蓄していた魔道具や財宝を売り払ってでも弁償しようと思っていたのだが……。

 

「えーと、ノーリィ。うちに残っている資産って後どれくらいなんだ……?」

「………………………………………………ごめん」

 

 ああ、なるほど。

 

 俺は色々と察した。

 

「ブレイド……。あの男への対策費を捻出するのに、冒険で得た物を売りに出す話を最初にしたと思うのだけれど……、ほとんど、なくなってしまったの」

 

 リーシャとノーリィがものすごく渋い顔で申し訳なさそうに謝ろうとしてくるのを制止する。

 

「そうか。それに関してはリーシャたちが無事ならそれでいいんだ。…………でも、かならず弁償は……」

「いや、城の修復やガーゴイルの生成はそこのノーリィをこき使ってやるから、それに関してはお主は気にせんでいい」

 

 ミディルはこちらの事情に配慮して合わせてくれるらしい。

 テティルティともども、本当に優しい一族だ。

 

「えぇ……。私も義姉妹ってことで免除にならない……?」

「ふん。数年前にお前の隠れ家を吹き飛ばしたのを根に持って、あやつをわざと制止しなかったことはわかっておるわ」

「む! その記憶は鍵をして記憶共有したはずなのに……まさか」

 

 またノーリィが甘えていたが、それを受け流しているミディル。

 なんだか再会してからの彼女は、神神が死んで以降、気が抜けているように見える。

 

 それだけ疲労が溜まっているのか……。

 

「あのような即興の記憶共有でできるような防衛対策など、わしにとっては大したことなどないわ。不自然に隠されていたが……。お前たちがあの男とここに乗り込んてきた際の記憶まで覗かせてもらったぞ。」

「…………それはマナー違反」

「訪問者対策のガーゴイルの大半と、城の一部をぶち壊すやつにマナー違反などと言われたくはないわ!」

「…………それはごめん」

 

 ようやく謝れたノーリィの頭を撫でて、こちらも軽く会釈をすると、鼻を鳴らして許してくれたらしい。

 ひとまず記憶云々は置いておいて、先の話をしようと思う。

 

「では、ノーリィがガーゴイルと城の修復をしている間に俺は城の建材などの買い出しが必要ならやらせてもらいたいが、必要なければ手伝いたいな」

「私もできることはするわ。特に建材の調達などは浮島に行って商談してくることもできるし、美術品も同じ物は無理でも、その作品ブランドを教えてもらえば心当たりの美術商を当たってみる」

「クゥはブレイドの手伝い」

 

 ……と、今できる範囲での提案をすると、ミディルではなく、横でここまでのやり取りをじっと聞いていた竜族の、アムレアスが口を開いた。

 

「…………なんか、すげぇな。俺は神神と数カ月一緒にいただけでもわりと限界だったのに、お前たちが1年もあいつ相手に耐えていた理由、わかった気がするわ」

「いや、ノーリィに関してはわりと陰湿に夢を媒介して憂さ晴らしをしておったようじゃ」

「わあぁぁぁぁぁ!! なんでいうの!!!」

「お主がわしにさっきやったことをもう忘れたのか?」

「ブレイド、嘘だから! 私そんな女じゃない……!」

 

 ノーリィが誤魔化そうとするが、まぁ……。

 

「わかってるよ。俺と出会ったばかりの頃や冒険で仲違いしたときなんか、俺もよくされたっけなあ……」

「ええ……!?!? なんで知ってるの……」

「わしが昔お前への嫌がらせで教えてやった」

「………………!!????」

 

 大暴走を始めたノーリィを、一旦抱きしめる。

 

「大丈夫だ、ノーリィ。お前のそんなところも含めて、愛するって誓ったんだから」

「ブ……ブレイドぉ……」

「これじゃ。せっかく当時はギクシャクすると思って伝えたのに、この男には効かなかったからのぅ……」

「うわー……やべぇなこいつ」

 

 涙目になったノーリィの涙を拭い、一度落ち着かせた。

 その際リーシャとクゥにも抱きしめることを要求されたのでしっかりと抱きしめて労いの言葉をかけたら満足してくれたらしい。 

 

◇◇◇◇◇

 

「まぁ、お前たちも色々と提案してくれたが、ノーリィ以外にやってもらいたいことはすでにあるのじゃ」

 

 場を仕切り直して改めてミディルが話した。

 

「まずはブレイドとクゥ。お前たち二人にはわしの指定した素材となる魔物、魔獣、動物を、場所を教えてやるから狩ってきてもらいたい。色々と研究材料が尽きてきていてな……」

 

 困ったように伝えるミディルに快諾する。俺たちの実力をよく知っている彼女なら、どんな依頼であっても、一線は越えてこないだろう。

 

 まぁ、一線ギリギリに迫ることはあるかもしれないが。

 

「もちろんだ、任せてくれ。」

「うん」

 

 次にミディルが目を向けたのは、名前を挙げなかったリーシャだ。

 

「リーシャ。お前にはその特異な聖属性の魔力で、わしの薬品作りの手伝いをしてもらうぞ」

「わかりましたわ」

 

 そして最後に目を向けたのはアムレアスだ。彼女はなにやら、贖罪のために同行していたらしいのだが……。

 

「子竜よ、お主はどうするのだ? 先程この男を庭園から呼び戻す際のしずくへの生命力補充と、神神への対処が終わった以上、故郷の里に帰ってももう許されると思うが……」

「俺は…………」

 

 アムレアスは深く悩みながら、何か言おうとしているようだ。

 言葉を選んでいるのか唸り声が応接室に響く。

 

「うーーん、もう少しお前らについていくよ。どうせ帰ってもつまんねーだろうし。せっかくならお前たちが落ち着くまで、リーシャたちがずっと待ち望んでたっていう旦那を近くで見て、謙虚堅実の意味を知りたい」

「謙虚堅実……?」

 

 疑問を口にすると、ミディルが少し笑っていた。

 

「ふふ、それはいいかもしれん。あの神神という男の口癖だったな。何かあるたびに『謙虚堅実で神々しく、奥ゆかしい寛大さをもつ俺』などと、記憶共有された際はその発言の頻度と状況のミスマッチに笑ってしまいそうになったわ」

「実際、あいつ自身ができてなかったんだよな……。でも、お前を見てたら色々勉強になりそうだし、なにより退屈しなさそうだ」

 

 そう言って笑うアムレアスに、リーシャとノーリィが真顔だった。

 

「アムレアス、もう里に帰ったほうがいいわ。ブレイドは竜族恐怖症なの」

「特に女の竜の近くにいると寿命が縮んでしまう病気」

「好きにすればいい」

 

 クゥの部族はおおらかだからなぁ。

 

 そう思いながら現実逃避していたら、声が響いた。

 

「もーー!終わってたなら早く呼んでよーー。というか、私もついていくからねー」

 

 そこには、彼女たちの旅に同行していた、人魚姫のヴァイナが肩を怒らせながらこちらに来ていた。

 

「ゼッテーー嘘だろ! 適当なこといってんじゃねぇ!」

「あー、私はちなみにー、深緑の鎧を着た罪人庭園から出てきた男性と一緒に旅をしないと、寿命が縮んでしまう病気でーーす」

「なんでヴァイナまで……!?」

「計算違い…………」

 

「ええい! うるさいぞおぬしら! 海の種族は何をするかわからんから入れてやったが、突然割って入って混ぜ返すな!」

 

 

 口々に全員が言いたいことを言って騒然とした空間。

 

 一斉に話をして混乱した場を鎮めると、ミディルの厚意で全員一緒に食事をすることになった。

 

 ひとまずアムレアスとヴァイナについては、後で本気なのかを個別に確認しよう。

 

 まぁ、リーシャたちが懸念するようなことはなさそうだと思うけどね。

 アムレアスは先程ついていくことを告げた際も、恥ずかしそうに目線はリーシャたちに向いていたし。

 

 ヴァイナという人魚姫はそもそも、ミディルへのいたずらをする時のノーリィのような表情をしていた。

 

 まぁそれも伝えた上で、彼女たち三人の意思次第かな。

 

 

 




【あとがき】
アムレアスはブレイドを口実にしてますが、実際の所は神神パーティで苦楽(ほとんど神神関連)を共にしたリーシャたちに仲間意識を持ったからこその発言です。謙虚堅実云々は言い訳ですね。
ヴァイナは魔法で聞き耳を立てていたので、神神とは別方面でおかしな精神性のブレイドに興味を持ったからこその便乗野次馬です。あとはリーシャたちへのイタズラもあったり。

ちなみにミディルがノーリィの隠れ家を吹き飛ばした件は、貸していた魔道書をいつまでも返さないノーリィに業が煮えた結果、無理やり持って帰ろうとした際に戦闘が起きて吹き飛びました。

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