テンプレおじさんVS異世界美少女たち〜決死の忖度サバイバル!〜 作:鷹井オムニバス
「ゴッド様、提案があるのですがよろしいでしょうか……?」
話が一段落したあと、リーシャが声をかけてきた。
「おう。何でも提案だけならいくらでも言ってくれ。俺は寛大で優しい男だ。なによりお前たちハーレムメンバーは、運命共同体だからな。」
「プッ(あ、まずい)」
ん?なんかノーリィの方から吹き出したような声が聞こえた気がしたが、後ろを振り返ると半目で無表情のままついてきている。
気の所為か……。
「え、えーと……、ゴッド様のその素晴らしいお力で、獣人を薙ぎ払ったのは覚えていらっしゃいますか?」
「あー、あのデカい獣か。元が美少女だったのに残念だ。俺はケモナー趣味じゃなかったんだがな……。元の美少女だったら飼ってやってもよかったんだが」
「「は?」ごほんっ……実は、彼女は生きているかもしれないのです。あの大きな獣の姿は一時的なもの。今は元の姿に戻っているはずなので、是非ゴッド様のハーレムに迎え入れて上げたいな……と」
うーん?俺が全力で吹き飛ばしたのに生きてるとは思えないが……。まぁ、見るだけならタダか。
「わかった。だがまた襲いかかってくるんじゃないのか? そしたら今度は完全に滅ぼすしかなくなるが……」
「(寛大で優しいとは……?)」
俺が憂慮を口にすると、こちらを上目遣いで見つめて力強くリーシャは語る。
「いえ! 彼女は絶対に大丈夫ですわ! 先程はゴッド様に取り憑いた、邪悪な存在に敵意を向けていただけのこと。落ち着いて話せば、そのような存在ではないのは一目瞭然です! 彼女もゴッド様の魅力によって改心することでしょう……」
「……そう。神ゴッド様はかっこいいので……」
やはり美少女は俺のハーレムになる運命か。
「しゃあねぇなぁ!ハーレムの主として、懐の深さぐらいはみせてやらねぇとな!」
「プッ」
「(ノーリィ!)」
「(本当にごめん……)」
……リーシャの説明によると、どうやら、ノーリィはたまにむせる持病があるらしい。俺に心配かけたくなくて黙っていたらしいのだが、伝えた方がいいと判断したリーシャが話してくれた。
病弱美少女か、いいじゃねぇか。
◇◇◇◇◇
「クゥ……」
「……なんとか暴走は収まったみたい。」
平原の中にポツンとうつ伏せで倒れていたオレンジの狼のような耳を生やした長髪に、軽装の美少女。やはり獣人といえばコレだよなぁ……!
リーシャも言っていたが、これからのハーレムを担う一角に相応しい美しさだ。ちと獣臭すぎるのが玉に瑕だ。
ちょっとばかりおいたに力を込めすぎたな。
まぁ、最初から一時的な獣化だって教えてくれなかったのが悪いんだが……。
「ふーむ、クゥも臭いな。リーシャ、最上位の浄化を頼むぞ?」
もちろん肯定が返ってくるかと思ったが、なぜか頷かない。
こいつまさか……。やはり先ほどの神聖魔法によって、本当は邪神みたいな存在に操られてるんじゃ……?
『私の全ては世界のために——』とか、まさに洗脳ワードだろ。
リーシャはこちらに向き直り、胸に手を当て、軽く目を伏せながら行儀よく口を開く。
「ゴッド様。クゥをこのまま浄化してしまうと、ゴッド様のご尊顔を見た瞬間に、先程楯突いた自責の念から自死しかねません。……ですので、一度あちらにある大木の方で浄化し、クゥが自分を気付けないように説得してからゴッド様の御前にお連れしてもよろしいでしょうか……?」
こちらに対して瞳に涙を堪えながら必死に訴え出る彼女は、とても美しかった。
なるほどな。獣人故に義理堅いのか。それなら仕方ないな。
なによりリーシャが可愛いからいいや。
「おう、わかった。クゥももう俺のハーレムメンバーだからな。勝手に死ぬことは許さねえ。そう言っておいてくれ」
「はいっ!さすがはゴッド様!その優しさは世界を包み込むかのよう!」
「神ゴッドさまは寛大で優しいです……」
そうだろうそうだろう!
ふふふふふ、これだ!これこそが!俺のハーレム!!
「俺様!ハーレム!やれやれ、美少女たちに慕われるのは辛いな……」
「プッ(な、なに今の!?)」
「大丈夫か?ノーリィ」
「だ、だいじょ、うぶです……」
ふ、俺の優しさに思わず心を震わせてしまったか。
あまり優しさを見せすぎるのも良くないな。
「それでは、行ってまいります!」
「いってきますね……」
◇◇◇◇◇
体感で数十分ぐらい経っただろうか?
俺はこの世界の空気を吸いながら、まだ見ぬ俺を待っているであろうドラゴン美女や女精霊、女帝や女神などを迎え入れる心構えを固めながら待っていると、体を綺麗にして見違えた美少女——クゥと共に、リーシャとノーリィがこちらに駆け寄ってきていた。
「ゴッド様の貴重なお時間を無駄にしてしまい、申し訳ございません……!大変お待たせいたしましたわ……!」
「ごめんなさい……」
「…………」
三人がそれぞれのやり方で頭を下げる。
うーん……。なんかこれはちょっとちがくないか?
「ちょっと思ったんだが、俺たちはもう、家族だ。「は?」……ん?」
なんかクゥからドスの効いた声が聞こえた気がしたが……。
ノーリィが杖でクゥの頭を叩いていた。
「ゴッド様……! 伝え忘れていましたが、クゥは声を発するのが難しく、つい感極まって声を出そうとすると、低い声が出てしまうのです。そこでノーリィが専門医として、声を発した後に体の中で不調が残らない様、特殊な技術で獣人の打診をしているのですわ!」
ものすごい早口かつ聞き取りやすい声でリーシャが一息に喋り通した。
……なるほど!だからさっきは謝罪の時に声を出さなかったんだな。
「……あれ?でもさっき、あの男と戦ってた時なんか喋ってたような……」
「あの時は、かつてゴッド様に取り憑いていた邪悪な存在を倒すために、無理をしていたのです……」
少し悲しげな表情をするリーシャ。まじか。俺に取り憑いていたらしい、俺の力を勝手に奪おうとしたやつは余計なことしかしねぇな。
「まぁ安心しろ、クゥ。俺はそんな邪悪な存在じゃねぇからな。俺ほど優しく、寛容で、なにより神々しくも謙虚で堅実な男は居ないと自負している……!」
「………………」
クゥはなぜかぼーっとしている。俺に見惚れたかな?
その横ではノーリィがまたむせそうになっていた。さすがに謙虚さをみせすぎたか。
やれやれ、優しさを見せようとしなくても自然と見せてしまう。俺も罪深い男だ……。
「さ、さ、流石ですわゴッド様……!!」
リーシャにも申し訳ねぇな。俺の魅力で既に参っている所を、どんどん新たな魅力が加算式に増えていってしまうのだから。彼女が言葉に詰まるのも無理はない。
……それはそうと、気になることがある。
「クゥは指輪をしないのか? 身分証明に使うという話だが……」
「……別に「彼女は部族故に、身分証明を必要としてなかったのです。それ故私たちが人間社会では常に一緒にいないといけなくて……」」
何かクゥが話そうとしていたが、うまく喋れないらしいクゥの代わりか、リーシャが説明してくれた。
「安心しろ、クゥ。俺がお前の身分証明だ……!」
「ぶはっ……」
「…………」
感動のあまり、感極まった反動か持病がでてしまうノーリィと、俺の器の大きさに驚いて表情が固まっているクゥ。
やれやれ、転移直後のハーレムメンバー相手にこの魅力加減なら、冒険が始まったら、民衆から既存の宗教なんかを塗り替えるレベルで崇められてしまうんじゃないか……?
「(笑いを堪える訓練の必要がありそうね……)」
「(…………うん)」
俺の存在こそが、これからの道標になるのは明らかだ。
安心していいぞ、クゥ。
【あとがき】
神ゴッドの存在こそが彼女たちの苦難の始まりでした。