テンプレおじさんVS異世界美少女たち〜決死の忖度サバイバル!〜 作:鷹井オムニバス
そうだ。
いよいよ異世界で冒険をするにあたって、聞いておきたいことがあった。
「そういえばリーシャたちって、何のために俺を召喚したんだ?」
正直日本には俺の格に見合った場所がなかったし、転移直後にいた諸悪の根源っぽい男を倒して、解放された美少女たちがハーレム入りしたからどうでもいいことではあるんだが。
前を歩いていたリーシャが立ち止まり、こちらに向き直る。
「——魔神をこの世界へと呼び戻すためですわ(あ……)」
……ん? ……そういえば、翻訳魔法使われた後、魔神様とかなんとか言われてたな。なるほど、俺に取り憑いてたあいつが、リーシャたちを洗脳して俺を魔神だと誤認してたのか。
そこに、俺の機転の良さから浄化魔法を使ったから、その魔神が浄化された……というわけか。
つまりリーシャたちは今、洗脳の影響で記憶が混濁してるらしいな。
俺が正してやらないといけない。やれやれ、手がかかるハーレム達だ……。
「いや、違うだろ? 勇者である俺の力が必要で、俺こそが世界を救う救世主で、俺がいなければ世界が滅びてしまうからこそ、呼び出したんじゃないのか?」
なぜか全員がフリーズした。そこから一呼吸置いてリーシャが話す。
「そ、そのことに気付くなんて、やはり救世の勇者さまに隠し事なんて謀事、あまりにも無意味な凡人の振る舞いでした……! 申し訳ございません、勇者神ゴッド様……!」
……ふ、なるほどな。
俺がまだ魔神の影響化にあると思って、試していたということだな。
しかし、俺の勇者魂が清すぎて魔神の影響がないことがわかったから、リーシャはここまで謝ってるのか。
ふふふ、この裏事情を理解するほど不快さが溜まっていたが、ここまで俺の偉大さを心底理解して謝罪するリーシャをみていたら気分が良くなる。
現代日本で俺を不快にさせた奴らより圧倒的美少女のリーシャに、俺が誠心誠意謝罪。
「気持ちええエエエ!!」
「ブフォ(なに!?)」
「あはは……」
罪悪感からノーリィもむせているし、まあ許してやろう。
「まぁいいぜ。俺は寛大な男だ。……もちろん、その魔神云々を言い出した事と、勇者である俺の救世の話は関係があるんだよな?」
そう言うとリーシャは胸に手を当てる。
「もちろんです。しかし……申し訳ないのですが、少々お待ちいただきたいのです。なにせ、少し込み入った事情がございますので……」
あまりにも悲しい理由が秘められているのか、先ほどからノーリィも頭に手を当てて苦悩していた。
そんな中でも我関せず、ぼーっとついてくるクゥはかわいいな。
あとでかわいがってやろう。
「(リーシャ、説明作れるの?)」
「(ごめんなさい、手伝って頂戴……)」
◇◇◇◇◇
リーシャから語られ、ノーリィからも補足された内容はあまりにも絶望的な状況だった。
そう、まさに俺がいなければ滅びていたかもしれない世界だ。
実は、この世界には様々な王を冠する称号を持った悪しき存在が数多く存在していて、世界を裏から支配しているらしい。
『盗賊王』、『山賊王』、『空賊王』、『海賊王』、『暴虐竜王』——
今一番世界を牛耳っているのがこの5人。なんかやたらと賊が多いが、そういう立場のやつから生まれやすいという話だ。
それらの存在を打ち倒し、隠し持っているはずの『封神玉』と呼ばれるアイテムの欠片である、『封神のしずく』を集めて、魔神に殺された神を復活させるのが俺の使命というわけだな。
おそらく、俺のハーレムメンバーの女神だろうから、絶対に救わんといかんな。
とはいえ、モチベーションに関わるからどっかで一度くらい顔を見てぇな。
◇◇◇◇◇
「そうすると、魔神云々はなんだったんだ?」
「それは……。」
目を伏せながらリーシャが口を開くのをためらっていると、ノーリィが代わりに喋り始める。
「それは——魔神も元は世界を牛耳る存在、魔王だったから。この世界の魔王だった存在が、増長の果てに魔神になり、やがて私たちと戦う中で逃げ出したやつが世界を飛び越えてゴッド様の世界に侵入した。だから、魔神を呼び戻してこの世界で迎え撃とうとしたの。」
なるほどな。
先程の世界の巨悪である、悪漢でクソ野郎かつ許されざる大罪人。
それを討伐するために力を振り絞りながら神々しいオーラを放った時、謎の声が心に干渉してきたことを伝えると、3人の様子が変わった。
俺に対して魔神が干渉してきたことがあまりにも悔しかったからかな?
または俺を召喚する過程で魔神を憑依させてしまったのがよっぽど自責の念に襲われてしまったからか。
リーシャは両手を握りしめてうつむき、ノーリィは暴れるクゥを押し留めながらなにか小声でぶつぶつと話していた。
……ふむ、ここまで反省を示すのなら、俺に対して変な魔神を憑依させた罪に関しては本格的に許してやろうかな。
◇◇◇◇◇
その後、俺が寛大な許しの言葉を与えたら、震える声で返答した2人。さすがにそろそろ気分を切り替えさせようと思って、俺は声を張り上げた。
「話をまとめると……。俺はあらゆる世界を滅ぼす魔神の干渉を受けて、心の強さや信念の強さ、そして何よりも正義の心があったからこそはねのけたというわけか……!」
「ぶふぉっ……!」
「だ、大丈夫?ノーリィ……!」
心がイケメンすぎた俺のエピソードを聞いたノーリィは激しくむせ返っていた。
「すまんな、ノーリィ……俺の心の強さは隠しきれねぇ……」
「ふ、ふ、ふぅ……いえ、だいじょうぶ、です」
俯いていたノーリィが途切れ途切れに話していた。
まぁ、ノーリィには何とか持病を直してもらわないといけないからな……。これも俺の愛の鞭ってやつだ。
「えーと……、魔神を倒すには、勇者であるゴッド様の力が必要で、でも召喚したばかりのゴッド様に倒してもらうのはあまりにも申し訳ないとリーシャや私は思ったの……」
「だから私たちは、逃げた魔神を呼び戻して最初はこの世界に生きる人間たちだけで倒そうとしたのです。ですが……」
その時、俺の脳裏に電流が走った。
かの有名な探偵が事件を推理する際に、突如閃めいたかのような点と点のつながり……!
「そういうことか……! あの初対面の俺に剣を向けてきた男! あの男が救世主である俺を、転移魔法陣に奴隷術式を組み込んで召喚しようとしたんだろう……!」
ここで少し息を落ち着かせて、流し目でリーシャたちに目を配る。
あまりの名推理に興奮したのか、メイスを握りしめてガッツポーズのようにして震えているリーシャ。
やれやれ……。インテリ無双の片鱗を意図せずに見せてしまったか。
「……それに反対したリーシャとノーリィが必死に術式を塗り替えた。しかしながらそれでも無理やり強行しようとするあの男に、クゥがしがみついたが引き止めきれずに中途半端に召喚された結果、俺と邪悪な存在が同時に召喚されたというわけだな……」
「…………………………………………………………………………………………そう」
「………………流石のご慧眼です。私たちの裏事情まで瞬時に見抜いてしまうその聡明さは留まるところを知りませんわ……!」
ノーリィは俺の神級推理力に驚いて声を発するのに時間をかけまくっていた。
やれやれ、俺なにかやっちゃったか?
「……………………」
クゥは相変わらずぼーっとしていた中、俺が推理をし始めてから、高等すぎて理解できなかったのか犬のように猛烈に地面を掘り起こしていた。
なんかアホそうだな。だが、かわいい。
「ククク……。まぁそれは事故だ。リーシャたちの気高さから俺を召喚したがらなかったのはよくわかったが……安心してくれ——」
俺は近くにあった岩に片足を乗せた後に左手で頭を抑え、流し目で三人を見ながら決め台詞を放つ。
「——かわいい女の子のためなら、男はいくらでも頑張れるのさ」
照れのあまり直視できなくなったのか、先を急ぐクゥと後ろを向くリーシャ。
感極まったのか片手で顔を覆いながら肩を震わせるノーリィ。
初めて子供の頃から温めていた決め台詞をやったが、ここまで感動させてしまうとは……。
現実は小説より奇なりというが、どんな物語の主人公よりも、俺は今輝いている自負があった。
【あとがき】
名探偵神ゴッドと、賊が多すぎる五王伝説攻略の始まりです。