アテンション・プリンセス~空っぽのワタシ、魔法少女になります~ 作:樫丹鏡花
首相は、しばらくのあいだ、何も言わなかった。両手をコートのポケットに入れたまま、手すりに軽く体を預けた姿勢も変わらない。答えを探しているようには見えなかった。むしろ、答えを誰かに取り次ぐための、間だけを取っているように見えた。震動のない機内で、サクラ自身の呼吸だけが、規則正しく続いている。
「君の意見が通じるかどうかはわからない」ようやく口を開いた首相の声は、それまでと変わらない張りを保っていた。「まあ、その時は、全てが終わるだけだ。ひとつ、やってみよう」
そう言うと、首相は、それまでサクラの位置からは死角になっていた一角へ、身体の向きを変えた。手すりの端、機体の内壁に沿って、折りたたみ式の小さな机がひとつ据えられている。座席の陰に半分隠れる位置にあり、搭乗してから今まで、誰も目を留めなかった場所だった。天板の縁には、ライフベストの収納袋についていたものと同じ形の点検タグが下がっていたが、記入欄はどれも空白のままだった。天板を固定する蝶番にも、使い込まれた擦り傷ひとつない。天板の上に、赤い電話が一台、置かれている。
黒々とした受話器の重みが、持ち上げた首相の手首をわずかに沈ませた。本体は艶のない赤で、角の丸まった旧式の造形をしている。メーカーの刻印も、型番の銘板も、どこにも見当たらない。ダイヤルがあるはずの位置には、数字も文字も刻まれていない、ただの平らな円盤があるだけだった。コードは、渦を巻いた形のまま、本体から機体の内壁の方へ短く伸び、そのまま壁の継ぎ目に吸い込まれるように消えている。継ぎ目の先に、配線らしきものは見当たらなかった。埃も、指紋も、どこにも付いていない。何につながっているのか、辿れる形では存在していない電話だった。
首相は、受話器を耳に当てた。呼び出し音は聞こえなかった。名乗りもなかった。ただ、耳に当てた瞬間から、何かに繋がっているかのように、首相の口が動き始めた。
「……ああ」
短い相槌だった。サクラの耳には、受話器の向こう側の音は、一切届いてこない。ローターの震動も消えた機内で、聞こえるはずの雑音さえ、そこにはなかった。首相の口の動きだけが、そこに相手がいることを示す唯一の手がかりだった。
「そうか」
もう一度、間があった。今度は、さっきよりも長い間だった。腕時計の秒針が動かないぶん、サクラは間の長さを、自分の呼吸の数で測るしかなかった。四つ、五つ——数え終わる前に、首相がまた口を開いた。
「いや」めずらしく、否定の形をした言葉だった。「それでは、こちらの立場がない」
反論なのか、確認なのか、抑揚だけでは判別がつかなかった。声の張りは、依然として変わらない。だが、コートのポケットに入れられたままの左手の指先が、一度だけ、生地の内側でわずかに動いたのを、サクラは見た。器の側にも、何かを堪える仕草があるのだと、そのとき初めて知った。
「……分かっている」
低く、それだけ言った。誰かに窘められたような響きが、その一言にだけあった。器のはずの声に、初めて、聞き手としての姿勢が滲んだ瞬間だった。A1は、操縦席の前に立ったまま、視線をサクラから外さなかった。命の共有が何を伝えているのか、サクラにはまだ分からない。それでも、A1が今、サクラの表情の方だけを見ていることは、確かに伝わってきた。
「……そうか、分かった」
そう言って、首相は受話器を置いた。フックへ戻す音は、小さく、硬かった。それきり、机の上の電話は、ただの赤い塊に戻った。コードの先が壁の中で何かを離れたのか、それとも最初から繋がってなどいなかったのか、サクラには判別のしようがなかった。
「続けろ(Show must go on)、だそうだ」
首相は、サクラの方を向いて、そう言った。声の調子に、変化はなかった。命令の中身が、賛成なのか反対なのか、その声だけからは判断がつかない言い方だった。英語のまま置かれた一言だけが、日本語の文の中で、そこだけ質の違う響き方をしていた。誰かが、わざわざ訳さずに使うことを選んだ言葉のように、サクラには聞こえた。
言い終えると同時に、首相は、右手をポケットから出した。指を、もう一度鳴らす。乾いた、小さな音だった。さっきと寸分違わない音だと、サクラは思った。同じ高さ、同じ長さ、同じ間——楽器で言うなら、同じ鍵盤を、同じ強さで叩いたときの音だった。
震動が、床から戻ってきた。尻から、背骨へ。ローターの唸りが、内側にこもった低い音で機内を満たし始める。天井の吹き出し口から、温風がまた流れ出した。壁面の温度計の針が、離陸時と同じ十八度の位置まで、迷いなく上がっていく。計器盤の緑色の光が、規則正しい点滅を続けたまま、高度計と速度計の針を、止まっていた位置から静かに動かし始めている。
「対空、異常なし」
操縦席の方から、抑揚のない声が届いた。振り向くと、そこには、いなくなっていたはずの二人の搭乗員が、それぞれの座席に戻っていた。両手を計器盤の上に置いた姿勢まで、消える前と同じだった。制帽の縁に付いていたはずの雪も、乾いたまま、同じ量だけ残っている。もう一人が、離陸したときと寸分違わない声で、数値を読み上げる。「高度、五百」「了解」——サクラは、その二つの声を、さっき聞いたばかりの気がした。中身も間合いも、記憶にある通りだった。A1が、銃口を、その二人の背へすぐに向け直す。視線に迷いはなかったが、構え直すまでの一瞬、A1の肩がわずかに強張るのを、サクラは見た。
窓の外、灰色一色だった景色に、変化が現れ始めていた。地平線を示していた一本の線だけが、まだそこに残っている。何もなかったはずの空間に、小さな光の粒が、一つ、また一つと浮かび始める。粒は最初、風に流されているだけの塵のように、方向を持たずに漂っていた。それが、いくつか集まると、面になった。面は、輪郭を描き始める——道路の線、ビルの縁、橋の欄干。街が、下から順に組み上がっていくのではなく、光の集まる速さのままに、あちこちで同時に結ばれていく。
停電していた区域と、復電していた区域の境目も、粒が集まるにつれて、はっきりと現れてきた。黒い帯と光る帯が、交互に七、八本。数えられる本数まで、消える前とまったく同じだった。東京タワーの鉄塔に灯る赤い一点も、同じ位置、同じ弱さで戻っている。国会議事堂の周辺だけが、周囲から浮き上がるように白く輝いているのも、変わらない。その外周を取り巻く警光灯の数珠つなぎも、四十を超える数のまま、規則正しい点滅を再開していた。湾の方角、橋を吊る二本の主塔にも、光の粒が先に集まった。白、次に赤、最後に緑——結ばれていく順番までが、消灯前に見た通りだった。何一つ、増えても減ってもいない。消える前の並びと、寸分違わないまま、そこにある。
機体の外壁を通して、下から届く音が、少しずつ戻ってきた。震動に混じって、遠くのサイレンらしき音が一度、途切れながら届く。無線のノイズが、操縦席の方から短く漏れた。踏切の警報音に似た、規則正しい電子音も、どこか遠くから一瞬だけ紛れ込んだ。灰色でしかなかった世界に、音の層が一枚ずつ足し戻されていくようだった。
腕時計の針が、動き出していた。消灯の直前で止まっていた位置から、何事もなかったかのように、秒針が時を刻み始めている。針の位置を見比べる暇もなく、時間の方が先に、何ごともなかった顔で流れ始めていた。
低い雪雲の切れ間、東京の空の高いところに、色の帯がかかっていた。緑と、薄い紫と、その境目に滲む白——雲の切れ目の形に沿って、光がゆっくりと形を変えていく。裾の方だけ、地上の光を映したように薄い橙が差していた。窓の外では、止まっていたはずの雪が、また横向きに流れ始めている。粒の一つ一つが、色の帯の光を受けて、瞬間だけ淡く発色しては消えていった。誰も、それが何であるかを口にしなかった。首相も、A1も、サクラ自身も、その光に、名前を与えないまま見上げていた。窓ガラスに映り込んだA1の横顔にも、同じ色が薄く乗っていた。
「君は」首相が、口を開いた。「次のステージに進みたまえ」
声には、それまでと違う質感があった。器の輪郭は変わらないまま、その奥に、ほんのわずかな疲れのようなものが混ざり始めている。長く働いた人間だけが持つ、抑揚の端が丸くなる感じだった。言い終えたあと、首相は、コートの肩から、乾いたままの雪を一粒、指先でつまんで払った。払われた粒は、床に落ちる前に、溶けもせず消えた。A1は、その一連の動きを見ながらも、腰のものを下ろさなかった。構えを解く理由が、まだどこにも見当たらないというように、視線だけを首相の手の動きに合わせていた。
機体が、傾いた。高度計の針が、今度は数字を減らす方向へ動き始める。四百、三百、二百——数字が減っていく速さは、上昇のときと同じだけ規則正しかった。エンジンの唸りが、下降に合わせて音程を落としていった。行き先を、誰も口にしなかった。管制との交信も、聞こえなかった。着陸予定地を尋ねる声も、操縦席から上がらない。ただ、機体は、あらかじめ決められた場所へ向かうように、迷いのない角度で降下を始めていた。誰かが選んだ場所へ、誰にも告げられないまま運ばれていく——その感覚だけが、降下の角度が深くなるほど、サクラの中ではっきりしていった。
代々木公園、イベント広場。十二月二十四日、深夜。雪はまだ落ちていたが、粒は夕方までの重さを失い、風に流されて斜めに舞う程度になっている。気温は氷点下二度、風速はおよそ三メートル——足元のモニター脇に置かれた気象表示端末が、五分おきに数字を更新していた。広場の四隅、進行台本に指定された位置へ、照明タワーは一基の狂いもなく立っている。カメラは十四台。クレーン付きが八台、望遠特化が二台、接写用に温存された残る四台は、まだレンズカバーをつけたままだった。系列五局、配信十二プラットフォーム、屋外ビジョン三十二箇所——半年前、企画意図の三行だけを書いた紙の上で組んだ数字が、今夜、この広場の隅々に実物として立ち上がっている。クロエは、耳に挿したイヤモニから流れる副調整室のカウントを聞きながら、その照合を、頭の中で一つずつ済ませていた。放送遅延バッファは七秒——不測の絵を切るための猶予として、台本の最終版で新たに足した数字だった。広場を囲む規制線の外には、報道関係者用の腕章をつけた人影が数十、雪の中でカメラを構えたまま並んでいる。警備の配置も、台本の別紙に描いた通りの位置に立っていた。二十五時十九分。台本にあった山場の照明キュー——C‐7からC‐12までの一斉切り替え——が、寸分違わずこの時刻に来ることを、クロエは誰にも確認する必要がなかった。進行台本の欄外に、その数字を鉛筆で書き込んだのは、半年前のクロエ自身だった。
舞台中央、照明の交点とカメラの放射のすべてが集まる一点に、直径十五センチほどの円形マーカーが、凍った土に埋め込まれている。表面は反射材で、周囲の照明を受けて淡く光っていた。ポジション・ゼロ——クロエ自身がこの位置に名付けた語が、今、クロエ自身の足の下にある。八基の照明のうち六基が、この一点を軸に角度を振られていた。技術チーフの計測では、角度のずれは〇・三度以内に収まっているという。カメラ十四台のうち八台、クレーンが描く弧の中心も、同じ一点だった。舞台中央に立つ、という言葉の意味を、これほど物理的な数字で確かめたことは、これまでなかった。半年前、ユカリに語って聞かせたときは、群舞と独奏の違いをバレエの語彙で説明するしかなかった——コール・ド・バレエは輪の中心を持たず、ヴァリアシオンだけが一点に光を集める。あのときは比喩でしかなかった位置が、今夜は反射材の円盤一枚として、クロエの足の下に実在している。比喩が実測値に変わる夜が来るとは、半年前のクロエは考えていなかった。
足元に据えられたモニターの一つに、この広場を映す自分のカメラの絵が流れている。画面の上端、暗い空の切れ間に、緑と薄紫の帯が滲んでいた。誰も、その名を口にしていない。中継スタッフの一人が「あれ、映していいんですか」とヘッドセット越しに尋ねてきたとき、クロエは画面から目を離さずに答えた。
「照明として、上等ですわ」
それ以上の説明はしなかった。誰の仕業かを問う声も、それきり上がらなかった。スタッフはヘッドセットの向こうで小さく笑い、「照明班、手柄にしていいですか」とだけ返してきた。クロエは答えなかった。空を見上げれば見えるものが、画面の中にも同じ形で収まっている——その二重の眺めを、クロエは特に不思議とも思わなかった。台本の色温度指定、三千二百ケルビンから五千六百ケルビンへ九十秒かけて上げる曲線の上に、この光は、誰の指示も受けずに重なって見えた。数字の外から来たものが、数字の中に、ちょうど収まって見える——その一致だけを、クロエは静かに記録した。
イヤモニの向こうで、副調整室のカウントが十を切った。同じ拍子で、遠くから低い羽音が近づいてくる。編隊灯を持たない機体だった。広場の東側、除雪してある一角——クロエが三日前、進行台本の別紙にだけ記しておいた着陸予定地点に、機体は迷いのない角度で降りてくる。管制との交信は、クロエの耳にも届いていない。誘導灯を振る係員の姿もない。それでも、機体の脚が接地したのは、マーカーの中心から測って、わずか一メートル二十センチの位置だった。技術チーフが小声で「……嘘だろ」と漏らすのが、イヤモニに拾われて届いた。クロエは何も答えなかった。答える必要のない数字だった。
自分の書いた通りに、物事が来た。クロエはそう思った。同じ出来事を、配達された、と読む者もいるだろう。どちらの読み方も、クロエの内側では区別されていなかった——脚本が当たったという確信と、届けられたという事実が、同じ重さのまま胸の内に収まっている。区別する理由が、今のクロエには見当たらなかった。
機体の側面扉が、左右に開く。ローターの風に雪が巻き上げられ、照明の中で粒が斜めに流れた。降りてきたのは、二つの輪郭だった。ひとつは淡い桃色の光を纏う小柄な人影——右手に、伸びた柄のようなものを提げている。もうひとつは、艶のない白。頭部を覆う面が下ろされ、素顔は見えない。桃のわずか半歩前に立ち、視線だけを広場全体に配っていた。右手は、腰のものへ触れる寸前の位置で止まったまま、抜かれることはなかった。二人の足元、雪を踏む音は、ローターの音の中でも、はっきり二人分聞こえた。歩く速さも、着地の重心の置き方も、揃っていた。クロエは今はまだ、二つの輪郭の絵としての良さだけを数えていた——画になる、と一言だけ、頭の隅に留めておく。
クロエは、マイクのスイッチが入っていることを、指先の感触で確かめた。息を一つ、いつもより長く吸う。声を出す前のこの一拍も、台本の口上ページに書き込んである間だった。カメラのレンズへ、まっすぐ視線を向ける。
「ごきげんよう、日本中の皆様。長い夜に、お付き合いいただき、感謝いたしますわ」
声は、いつものお嬢様口調の格調を保ったまま、中継用の張りを一段だけ足した高さで出た。
「この国を騒がせた、影のような方々が、ようやくこの舞台に降り立ちましたの。皆様がここまで見守ってくださった長い一日に、けじめをつける時が参りましたわ。ここから先は、わたくしにお任せくださいまし——どうぞ、最後の一幕まで、見届けてくださいませ」
台本のページに書かれていた文言と、一言一句、違わなかった。付け加えたのは、語尾の高さと、間の取り方だけだった。それすらも、練習で決めてきた高さと間だった。
足元のモニターの隅、同時接続数の桁が動いた。四十六万から、五十三万へ。数秒のうちに、また動く。六十一万。ヘリの到着から、まだ一分と経っていない。コメント欄も同じ速さで埋まっていく。「来た」「本物か」「姫様キター」「これ生放送だよな」——賛否の区別がつく前の、驚きだけの短い文字列が、画面の下から上へ流れ続けていた。切り抜き用の自動タグ付けが「着陸」「聖夜」「姫君」の三語をすでに拾い上げている。クロエはその三語を一瞥し、想定の範囲内、と確かめただけで視線を戻した。
クロエは視線だけを動かし、周囲のカメラの動きを確かめた。十四台、すべてのレンズが、まだ同じ一点——広場中央、雪の上に立つ二人の方へ向いている。回っている。当たり前のことを、クロエはあえて一つずつ確認した。回っていない画は、今夜、存在してはならなかった。クレーン八台の腕の角度も、望遠二台の絞りも、副調整室のモニターで一括表示されているはずだった。イヤモニの向こうから「全カメラ、ライブ」という短い報告が届く。クロエは、その報告に頷きも返事もしなかった。頷く必要のない報告だった。
視線を戻し、桃と白い輪郭を、あらためて見る。二人揃って降り立った瞬間から、クロエの内側では、ある処理が始まっていた。桃の光の強さ、白の輪郭の硬さ——それぞれを数値化し、二人という数で割り、薄まった分を見積もる。舞台に立つ者が増えるほど、一人あたりの強さは薄まる。半年前、ユカリに語って聞かせた法則そのものだった。群舞は個を薄め、独奏だけが濃く残る——その原則の上に、クロエはこれまでの全ての企画を組んできた。
いつもなら、この処理は一秒とかからず終わる。今夜は、終わらなかった。頭の中で組み立てるはずの一文——薄まっている、と分類——その語尾が、どこにも見つからない。目の前の二人は、二人であることによる目減りを、どこにも見せていなかった。桃の光は、単独で立っていたときと同じ濃さのまま揺れている。白の輪郭も、輪郭の硬さを一分たりとも失っていない。分類の言葉が言葉にならないまま、代わりに、声の方が先に出た。
「二人なのに」クロエは言った。「薄まっていませんのね」
自分の声だと、聞いてから気づいた。マイクは、切っていなかった。何十万人分の耳に、今の一言が届いたかどうか、確かめる余裕はなかった。イヤモニからも、副調整室の反応は返ってこない。数秒、誰も何も言わなかった。
舞台の中央に立ったまま、クロエは、雪の上の二人を見つめ続けていた。戦いは、まだ始まっていない。始まってすらいないのに、頭の中の一文だけが、まだ空白のまま置かれている。埋まらない語尾を、クロエは指先でペンを探るように、もう一度だけなぞろうとした。ペンは、コートのポケットの中にあるはずだった。指先が布地の上をなぞる。手帳は、今夜は持ってきていない——丸をつける相手を、今夜はまだ決めていなかったからだ。触れるものがないまま、指だけがポケットの中で止まる。
イヤモニから、次のカウントが流れてきた。副調整室の声は、いつもと同じ抑揚だった。クロエは、指を止めたまま、その声にだけ従って、次の一歩を踏み出した。空白は、空白のまま、連れて歩くしかなかった。